労働安全衛生法違反とは?企業に課される罰則や責任・義務を解説 - ジンジャー(jinjer)|人事データを中心にすべてを1つに

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労働安全衛生法違反とは?企業に課される罰則や責任・義務を解説

オレンジ色の作業着を着てヘルメットを手に持つ労働者

「何が労働安全衛生法違反に該当するのか」

「労働安全衛生法に違反して事故が起きた場合の罰則を知りたい」

このようにお悩みの人事労務担当者も多いのではないでしょうか。

労働安全衛生法違反は、従業員の安全や健康を守るための法律で定められた事項を遵守していない状態を指します。違反した場合の罰則も定められており、労働安全衛生法を遵守するのは、企業が果たすべき義務です。

本記事では、労働安全衛生法に違反した場合の罰則や責任、義務について解説します。労働安全衛生法違反の影響を低減させる方法も紹介しているため、自社に合った対策の参考にしてください。


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1. 労働安全衛生法に違反した場合の罰則

penalty

労働安全衛生法に違反した企業に課せられる罰則は、2025年1月現在の現行法で以下のとおりに定められています。

罰則 対象の行為 労働安全委衛生法の条番
50万円以下の罰金 従業員の危険や健康障害防止の対策を怠った 第120条
6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金 労働災害防止のための措置や管理を怠った 第119条
1年以下の懲役または100万円以下の罰金 ・都道府県労働局長の許可を取らずに、危険な作業を要する機械などを製造し、または検査を受けなかった

・重度の健康障害の懸念がある化学物質を、厚生労働大臣の許可を得ずに製造した

第117条
3年以下の懲役または250万円以下の罰金 性能や製造時の検査担当者に賄賂を贈るまたは約束した 第115条の4
3年以下の懲役または300万円以下の罰金 政令で使用禁止されている化学物質を製造・輸入・譲渡・提供した 第116条

懲役刑や罰金を課せられる可能性があるほど、労働安全衛生法の遵守は従業員の安全と健康を守るための重要事項といえるでしょう。

参考:労働安全衛生法(令和4年6月17日施行)|e-GOV法令検索

2. 労働安全衛生法違反により企業が負う責任

リスクマネジメント

労働安全衛生法違反によって企業が負う責任は、以下の4つです。

  1. 民事上の責任
  2. 行政上の責任
  3. 刑事上の責任
  4. 社会的な責任

どのような責任が課されるのか、順番に見ていきましょう。

参考:5労働災害の発生と企業の責任について|厚生労働省

2-1. 民事上の責任

違反が原因で労働災害が発生した場合、民事上の責任として損害賠償を求められる可能性があります。

労災保険の給付によって、怪我の治療費は補償できますが、精神的苦痛は対象外です。従業員が安全・健康に働くための環境づくりを怠った企業は、民事上の責任として損害賠償の支払い義務が発生します

参考:労災補償|厚生労働省

2-2. 行政上の責任

違反により労働災害が発生する懸念がある場合、機械設備の使用停止や作業停止など行政処分の可能性があります。

行政処分は、未来の危険を防止するために実施されるものです。そのため、実際に労働災害が発生していなくても、行政上の責任が発生するケースがあります。

2-3. 刑事上の責任

労働安全衛生法で定められている労働災害の発生を防止するための措置を実施しなかった場合、同法の罰則が刑事責任として課されます。

刑事上の責任は、労働災害発生の有無に関係なく、違反が発覚したら罰則対象です。また、労働災害の防止を怠って従業員が死傷した場合、業務上過失致死傷罪に問われます。

2-4. 社会的な責任

違反によって、企業に社会的な責任も発生します。社会的な責任とは、企業が世間からの信用を失うことです。

民事・行政・刑事上の責任が発生した場合は、労働安全衛生法に違反したとして世間からの信用を失いかねません。信用を失うと既存顧客との取引停止や新規受注の減少など、事業への影響が考えられます

3. 労働安全衛生法で企業が果たすべき義務の一覧

ヘルメットをかぶった2人の労働者

労働安全衛生法において、企業が果たすべき義務を一覧で紹介します。

義務の内容 労働安全衛生法の条番
職場における従業員の安全と健康の確保 第1章/第3条

第4章/第20~27条

安全衛生管理体制の構築 第3章/第10~16条
委員会の設置 第3章/第17~19条
リスクアセスメントの実施 第4章/第28条の2
危険物の表示 第4章/第57条の1~4
従業員への安全衛生教育の実施 第6章/第59~60条の2
作業環境の測定と管理 第7章/第65条の1~4
従業員の健康維持のための措置 第7章/第66条の1~10、第69条

参考:労働安全衛生法(令和4年6月17日施行)|e-GOV法令検索

それぞれでどのような義務が発生するか、順番に見ていきましょう。

3-1. 職場における従業員の安全と健康の確保

従業員が安全に健康を維持しながら働ける環境を確保することは、企業が果たすべき責任です。単純に基準を守るのでなく、労働条件の改善や快適な職場環境を目指すことで、安全と健康を確保するよう定められています。

健康障害の原因となる化学物質を取り扱う場合や、高所作業による危険が伴う場合など、業種によって対策するべき危険はさまざまです。自社の状況に応じて、適切な環境づくりを実施しましょう。

3-2. 安全衛生管理体制の構築

職場の安全衛生管理体制を構築するために、以下の管理者または責任者の選任が定められています

管理者または責任者 職務内容
総括安全衛生管理者
  • ・安全管理者や衛生管理者などの指揮
  • ・労働安全衛生法で定められた義務の統括
安全管理者
  • ・職場の安全にかかわる技術的事項の管理
衛生管理者
  • ・衛生にかかわる技術的事項の管理
安全衛生推進者
  • ・労働安全衛生法で定められた義務の推進
産業医
  • ・ストレスチェックや面談など、従業員の健康管理にかかわる業務
作業主任者
  • ・労働災害を防止するための管理が必要な作業に従事する従業員の指揮
  • ・厚生労働省が定める事項の遂行
統括安全衛生責任者
  • ・建設業などの現場で労働災害の防止を統括管理
安全衛生責任者
  • ・統括安全衛生責任者との連携
  • ・厚生労働省令が定める事項の遂行

管理者または責任者ごとに職務内容が異なるため、それぞれの適任者を選任する必要があるでしょう。

3-3. 委員会の設置

労働安全衛生法では各種委員会の設置が、義務付けられています。設置が必要な委員会と、議論すべき事項は、以下のとおりです。

委員会 議論の内容
安全委員会
  • ・従業員の危険を防止するための対策
  • ・労働災害の発生原因や再発防止策のうち、安全にかかわる事項
衛生委員会
  • ・従業員の健康障害を防止するための対策
  • ・従業員の健康を保持するための対策
  • ・労働災害の発生原因や再発防止策のうち、衛生にかかわる事項
安全衛生委員会
  • ・安全委員会および衛生委員会と同じ

安全委員会と衛生委員会の両方が必要な場合は、安全衛生委員会のみの設置で問題ありません。

3-4. リスクアセスメントの実施

労働安全衛生法によるリスクアセスメントの実施も、企業が果たすべき責任の一つです。

リスクアセスメントとは、職場内の危険性や取り扱う化学物質の有毒性などを調査・記録し、対策を講じることを指します。調査対象として定められているものは、以下のとおりです。

  • 作業の危険性および有害性
  • 粉じん・蒸気・ガス・原材料・設備・建設物などによる危険性および有害性

従業員の健康を害する恐れのある化学物質を取り扱う場合、厚生労働大臣が定めるとおりにリスクアセスメントを実施する必要があります。

参考:リスクアセスメント|厚生労働省

3-5. 危険物の表示

取り扱う危険物の表示も、労働安全衛生法によって企業の義務と定められています。該当の化学物質の容器に表示するべき事項は、以下のとおりです。

  • 化学物質の名称
  • 取扱いの注意事項
  • 人体への影響
  • 厚生労働省が定める事項

容器への表示は、爆発や発火などの危険があるものや、健康障害の要因となる可能性のある化学物質に対して実施します。

3-6. 従業員への安全衛生教育の実施

従業員に対する安全衛生教育も、企業が果たすべき義務です。安全衛生教育は従業員の入社時に実施し、途中で担当業務を変更する際も実施します。

厚生労働省が定める危険性や有害性のある作業に従業員を従事させる場合は、安全・衛生についての特別な教育が必要です。

3-7. 作業環境の測定と管理

有害性のある作業を実施する場合、作業環境の測定および管理も企業の義務に該当します。

自社の状況に応じた測定を実施・記録するほか、結果に基づいた従業員の健康維持のための対策が必要です。対策内容の事例には、以下のような事項があります。

  • 作業環境の整備
  • 従業員の作業内容の管理
  • 勤務時間の管理

作業環境を測定した結果、対策が必要と判明した場合は、直ちに対策を検討しましょう。

3-8. 従業員の健康維持のための措置

労働安全衛生法において、従業員の健康維持のための措置も企業に義務付けられています。健康維持のための措置とは、健康診断の実施です。

有害性を伴う業務に従事している従業員に対し、厚生労働省が定める、医師による特別項目の健康診断を実施します。

4. 労働安全衛生法の違反事例

ラップトップの前で悩むオフィスワーカー

厚生労働省によると、労働安全衛生法の第20条に違反したとして、企業に6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金が課された事例があります。

建物内の高さ約5メートルの位置に設置した足場で作業中に、従業員が墜落して死亡する労働災害です。手すりの設置など、足場からの転落防止措置を取っていなかったため、企業に労働安全衛生法の罰則が適用されました

参考:労働安全衛生法違反被疑事件を書類送検-開口部に墜落防止措置を講じなかった疑い-|厚生労働省

5. 労働安全衛生法違反の影響を抑える方法

ラップトップを見て作業する日本人男性

違反した場合の影響を抑える方法として、以下のようなものが考えられます。

  • そもそも違反しない
  • 違反が判明したら事実確認を実施して対策する
  • 再発防止策を講じる
  • 行政からの指導に従って改善する

大前提として違反しなければ、影響を受けることはありません。

しかし、経営者が違反の事実を把握できていないことも考えられます。違反が判明した場合、状況を確認して必要に応じた対策をとりましょう。再発防止策を検討して実施することで、刑事罰が軽減される可能性があります。

行政処分の前に指導が入った場合、指示に従って改善しましょう。その場しのぎでなく、従業員の安全や健康を守る対策ができれば行政処分の対象になることはありません

6. 労働安全衛生法違反を防止して従業員が安全に働ける環境を作ろう

倉庫の安全会議

労働安全衛生法とは、従業員が安全で健康に働ける環境を整えるための法令です。違反した企業は、懲役や罰金などの刑事罰が課せられます。刑事罰以外に、行政処分や損害賠償、信用をなくしたことによる事業継続の危機に陥りかねません。

従業員の安全と健康を守るために、企業が果たすべき義務がさまざま定められています。取りこぼすことなく対応して労働安全衛生法違反を防止し、従業員の安全と健康を保持しながら働ける環境を整えましょう

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OHSUGI

OHSUGI

クラウド型勤怠管理システムジンジャーの営業、人事向けに採用ノウハウを発信するWebメディアの運営を経て、jinjerBlog編集部に参加。営業時代にお客様から伺った勤怠管理のお悩みや身につけた労務知識をもとに、勤怠・人事管理や給与計算業務に役立つ情報を発信しています。

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