年末調整での還付金(返金)処理はいつ・いくら発生する?仕組みや方法を解説
更新日: 2025.12.11 公開日: 2021.9.28 jinjer Blog 編集部

年末調整の時期になると、「今年はいくら戻ってくるか」と気になる従業員も多いでしょう。同時に、人事・労務担当者にとっては、この還付金(または追加徴収)の計算と処理が年末の重要な業務となります。
この記事では、年末調整で還付金が発生する仕組み、人事担当者向けの具体的な処理方法、そして還付金に影響する各種控除をわかりやすく解説します。
「特定親族特別控除」が新設されるなど、例年以上に複雑になる令和7年の年末調整。
従業員からの問い合わせが増える年末に、最新の制度をどう案内すればいいか、不安に感じていませんか?
◆よくある質問
Q. 大学生などのアルバイト収入が増えても、親の控除額は減らない?
Q. 年末調整の対象者は?
Q. 退職者や二か所で働く従業員の年末調整は必要?
このようなよくある疑問から、記載ミスや、申告内容・扶養の変更、税務署からやり直し通知を受けた際などの対応方法まで年末調整のあらゆる疑問をまとめた「年末調整と源泉徴収Q&A」を無料配布しています。
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1. 年末調整での還付金(返金)の仕組み


年末調整とは、毎月の給与から源泉徴収された概算の所得税額と、年間の総給与額に基づいて計算された本来納めるべき所得税額との差額を精算する手続きです。
多くの場合、毎月の源泉徴収額は控除(扶養控除など)を最低限しか見積もらず、少し多めに設定されています。
そのため、年末調整で生命保険料控除や配偶者控除などの申告により、本来の税額が再計算され、払いすぎた税金が「還付金」として戻ってくるのです。逆に、年の途中で扶養家族が減った場合など、源泉徴収額が本来の税額より少なければ「追加徴収」が発生します。
関連記事:年末調整とは?目的や確定申告との違い、基本的な流れを人事担当者向けに解説
1-1. 年末調整の還付金はいつ受け取れる?
年末調整の還付金がいつ従業員の手元に渡るかは、会社の給与計算スケジュールによって異なりますが、12月分または1月分の給与と合わせて支払うのが一般的です。
会社の年末調整業務が11月中に完了し、12月の給与計算や12月支給の賞与などで精算できる場合は12月支給となります。それらの精算に間に合わない場合は1月支給となります。
会社の給与計算スケジュールによっては、精算が2月以降の給与にずれ込む場合もあるため、支給タイミングは従業員へ事前に周知しておくとスムーズです。
2.【人事向け】年末調整の還付金(返金)処理の方法


人事・労務担当者が還付金処理をおこなう際の基本的な実務の流れと方法を解説します。
2-1. 還付金が発生する対象従業員を確認する
まず、全従業員の年末調整の計算を完了させます。給与システムを利用している場合は、計算結果が自動的に集計されます。この計算結果に基づき、各従業員の「還付額」または「追加徴収額」を正確に把握します。
2-2. 返金方法を決める
還付金の精算方法には、明確な法令上のルールは存在しません。会社が決定した方法で精算をおこなうことができます。給与や賞与に過不足分を合算して調整する以外に、過不足分のみを単独で精算することも可能です。
実務上は次の2つの方法が主流です。
2-2-1.手渡しによる返金
還付額を現金で用意し、従業員に直接手渡す方法です。小規模な事業所で、給与を現金支給している場合などに用いられることがありますが、管理コストや紛失リスクが伴います。
2-2-2. 給与口座への返金
最も一般的で効率的な方法です。12月分または1月分の給与に還付額を上乗せして、通常の給与振込口座に振り込みます。この際、給与明細には「年末調整還付」などの項目を設け、通常の給与とは区別できるように記載します。
2-3. 従業員へ説明する
年末調整の結果は、従業員の関心が高い事項です。
いつ(例:12月給与)、どのような方法で(例:給与口座振込)、どのように通知されるか(例:給与明細に記載)を事前に明確にアナウンスし、問い合わせを減らして混乱を防ぎましょう。
3. 年末調整で還付金・追加徴収が発生するケースと計算例


年末調整では、さまざまな控除の申告によって年税額が変動します。ここでは、還付・徴収が発生するケースの具体例を見ていきましょう。
3-1. 配偶者控除・生命保険料控除のケース
年の初めには申告していなかった控除(配偶者控除や生命保険料控除など)を年末調整で申告した場合、課税所得が減り、年税額が下がります。具体的には、次のようなケースが挙げられます。
- 年の途中で結婚したため、年末調整で初めて「配偶者控除(または配偶者特別控除)」を申告する場合。
- 年の初めは配偶者の所得見込みが多く控除対象外だったが、年末時点で(パート収入が減るなどして)所得が控除の範囲内になった場合。
- 年の途中で新しく生命保険に加入したため、その分の「生命保険料控除」を申告する場合。
これらは、毎月の給与計算(源泉徴収)では考慮されていなかった控除です。そのため、年末調整でこれらを申告すると、その結果、毎月多めに納めていた税金が還付されます。
3-2. 住宅ローン控除のケース
住宅ローン控除(2年目以降)は、税額控除とよばれる効果の大きい控除です。算出された年税額から「直接」控除額を差し引くため、還付金が発生する(または納付額が0になる)代表的なケースです。
3-3. 扶養親族が障害者のケース
扶養親族が障害者(または特別障害者)に該当する場合、通常の扶養控除に加えて障害者控除が適用されます。
これも、年の初めに扶養控除等申告書を提出した時点では申告していなかったものの、年の途中で障害者手帳の交付を受けたり、年末調整で初めてその事実を申告したりするケースが該当します。毎月の給与計算で考慮されていなかった控除が適用されるため、控除額が大きく増え、還付金が発生しやすくなります。
3-4. 追加徴収があるケース
年末調整では、追加徴収(不足税額の納付)が発生する場合もあります。これは、1年間に源泉徴収された税額(概算)が、確定した年税額よりも少なかった場合に起こります。追加徴収が発生しやすいのは、次のようなケースです。
年の途中で扶養家族が減った場合
子どもの就職や配偶者の収入増(例:103万円の壁超え)などで扶養から外れたにもかかわらず、会社への届出が遅れた場合が該当します。毎月の源泉徴収額が低いままだったため、年末調整で再計算した結果、不足分を徴収します。
賞与(ボーナス)が多かった場合
賞与から引かれる所得税は、前月の給与を基に計算されるため、年収全体で見た場合の税率とズレが生じることがあります。その結果、年収総額で年税額を計算し直すと、毎月の天引き額の合計では足りず、追加徴収となる場合があります。
適用していた控除が、年の途中で適用外になった場合
年末時点の状況により、年の初めには適用されていた控除が外れたり、金額が減少したりした場合も追加徴収の原因となります。
- 保険料控除の適用外:生命保険や地震保険を解約・減額したため、控除額が減った、または適用できなくなった場合。
- 掛金控除の減額:iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金を減額したため、小規模企業共済等掛金控除の額が減った場合。
- 障害の程度変更:扶養親族の障害の程度が変わり、障害者控除の区分が変更された結果、控除額が減った場合。
関連記事:年末調整でマイナス表記が起きるのはなぜ?その理由と対処方法を詳しく解説
4. 年末調整の還付金はいくら?


年末調整の還付金が「いくらになるか」は、個々の従業員の状況によって異なります。 還付金の額は、次の2つの要素で決まります。
(1)年間の源泉徴収税額(給与・賞与から天引き済みの税金)
(2)年末調整で確定した年税額(本来納めるべき1年間の税金)
還付金額=(1)年間の源泉徴収税額-(2)年末調整で確定した年税額
(2)年末調整で確定した年税額は、年収から各種控除(社会保険料、扶養控除、生命保険料控除など)を差し引いた「課税所得金額」によって決まります。
そのため、控除できる項目が多い人ほど、確定した年税額が下がり、還付金が多くなる(または追加徴収が少なくなる)傾向があります。
5. 年末調整で還付金に影響する控除の種類


年税額を計算するために重要な所得控除・税額控除のうち、年末調整で申告できる項目は次のとおりです。これらの控除額が多いほど、還付金が増える(または追加徴収が減る)ことにつながります。
関連記事:所得控除とは?控除の種類や所得控除を受ける方法を解説
5-1. 基礎控除
基礎控除は、納税者本人の合計所得金額に応じて適用される基本的な所得控除で、原則としてすべての人が対象となります。
2025年分(令和7年分)からの改正により、合計所得金額132万円以下の人は控除額が95万円となるなど、所得水準に応じて控除額が引き上げられました。多くの給与所得者は58万円〜88万円の範囲で基礎控除が適用されます。
また、合計所得金額が2,350万円を超えると控除額が段階的に縮小し、2,500万円を超えると基礎控除は適用されません。
年末調整では、改正前の「48万円」「2,500万円超で0円」といった条件と混同せず、改正後の控除額および所得制限を適用して計算することが重要です。
参考:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について|国税庁
5-2. 配偶者控除・配偶者特別控除
配偶者控除と配偶者特別控除は、配偶者の所得状況によって年末調整の還付額に影響しやすい代表的な控除です。
配偶者控除(控除額:38万円)
配偶者の合計所得金額が58万円以下(給与収入のみの場合は123万円以下) の場合に適用され、税額が大きく下がりやすい控除です。
配偶者特別控除(控除額:最大38万円)
配偶者の所得が58万円を超えても、133万円以下(給与収入のみの場合は123万円超〜201万5,999円以下)の範囲で適用されます。特に配偶者の年収が123万円を少し超える水準では控除額が大きく、還付額への影響も出やすくなります。
参考:No.1191 配偶者控除
参考:No.1195 配偶者特別控除
関連記事:年末調整は結婚したら何が変わる?結婚後の書き方や結婚予定がある場合の対応を解説
5-3. 扶養控除
扶養控除は、従業員と生計を一にする16歳以上の扶養親族がいる場合に適用される控除で、年末調整の還付額に影響しやすい所得控除のひとつです。
令和7年度の改正により、所得要件は「合計所得金額58万円以下」(給与収入のみなら123万円以下)に引き上げられ、該当する扶養親族が増える可能性があります。そのため、扶養親族の所得見積額がこの新基準を満たしているかの確認が重要です。
なお、配偶者控除の所得基準(48万円以下)とは異なり、扶養控除は配偶者以外の親族が対象となる点に注意が必要です。特に、大学生・専門学校生の扶養判定は還付額に直結しやすい控除のため、所得金額の見積りに注意しましょう。
また、19歳以上23歳未満の子どもについては、令和7年度改正により「特定親族特別控除」が新設されました。この控除によって合計所得金額が58万円超〜123万円以下(給与収入のみなら123万円超〜188万円以下)の場合でも、所得に応じて段階的に控除を受けられます。そのため、大学生でアルバイト収入が多いケースでも、納税者である親の税負担が急激に増加するのを防ぐ仕組みとなりました。
参考:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について|国税庁
5-4. 障害者控除
障害者控除は、従業員本人・同一生計配偶者・扶養親族のいずれかが障害者に該当する場合に適用され、控除額が大きいため還付額に与える影響も大きい控除のひとつです。区分によって次のように控除額が大幅に変わる点が特徴です。
- 障害者:27万円
- 特別障害者:40万円
- 同居特別障害者:75万円
関連記事:年末調整の障害者控除とは?対象範囲やいくら戻るのか、書類の書き方を解説
5-5. 寡婦控除
寡婦控除は、夫との死別や離婚後に再婚していないなど、一定の要件を満たす女性が対象となる控除で、控除額は27万円です。本人の合計所得金額が500万円以下であることも条件となり、該当する場合は所得税が軽減され、年末調整で還付が発生しやすくなります。
5-6. ひとり親控除
ひとり親控除は、性別を問わず適用される所得控除で、控除額は35万円と大きく、年末調整における還付額への影響も大きい制度です。適用を受けるには、「生計を一にする子(合計所得金額58万円以下)」がいること、そして本人の合計所得金額が500万円以下であることが要件となります。
関連記事:年末調整のひとり親控除とは?寡婦控除との違いや対象者を解説
5-7. 勤労学生控除
勤労学生控除は、学生でありながら給与所得がある方の税負担を軽減するための控除で、控除額は27万円です。
令和7年度の改正により、所得要件が 「合計所得金額85万円以下(給与収入のみなら150万円以下)」 に緩和され適用対象が広がりました。そのため、該当者がいる場合は年末調整で還付が発生しやすい控除のひとつとなります。
参考:No.1175 勤労学生控除|国税庁
参考:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について|国税庁
5-8. 社会保険料控除
社会保険料控除は、給与天引き分だけでなく、従業員本人が個別に支払った国民年金保険料や、同一生計の配偶者・親族の保険料も対象となるため、控除額が大きくなりやすい代表的な控除です。控除証明書がある保険料は全額が所得控除となるため、適用があれば年末調整で還付につながる可能性が高くなります。
関連記事:年末調整の社会保険料控除とは?対象となる保険や計算方法を解説
5-9. 生命保険料控除
生命保険料控除は、加入している保険の種類に応じて一般・介護医療・個人年金の3区分で適用され、年末調整の還付額に影響しやすい主要な控除です。
新契約(平成24年以降)と旧契約(平成23年以前)では控除上限が異なるため、どちらの契約に該当するかで控除額が変わります。
また、保険期間が5年未満の短期契約は控除対象外となるため、控除証明書を確認して対象契約かどうかを判断する必要があります。
5-10. 地震保険料控除
地震保険料控除は、地震保険料(および旧長期損害保険の経過措置分)が控除対象となり、支払額がそのまま所得控除に反映されるため、還付額に結びつきやすい控除です。
一方、火災保険料は控除対象外のため、従業員が誤解しやすい点として注意が必要です。
5-11. 小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済、iDeCo(個人型確定拠出年金)、心身障害者扶養共済制度などの掛金は全額が所得控除となるため、生命保険料控除よりも還付額への影響が大きい控除です。
対象者は限られますが、掛金が高額となるケースも多く、該当者がいる場合は還付額が大きく動きやすい点が特徴です。
5-12. 住宅ローン控除(2年目以降)
住宅ローン控除は、所得控除ではなく税額から直接差し引く「税額控除」であるため、該当者がいる場合は還付額が大きくなりやすい控除です。
年末調整で適用できるのは2年目以降で、初年度は必ず確定申告が必要です。年末調整で適用する際は、前年に税務署から送付される「年末調整用の計算明細書」を使用して計算します。
5-13. 【具体例】年末調整の返金(還付金)が発生するケース
年末調整では、年間の源泉徴収税額よりも、実際に計算した年税額が少なくなる場合に還付金が発生します。次の表では、どの控除が適用されると還付が生じやすいのかを、具体例とともにまとめました。なお、控除を適用しても年税額の方が大きい場合は還付は発生しません。
|
控除の種類 |
還付が発生しやすい具体例 |
ポイント |
|
基礎控除 |
・途中入社で年収が想定より下がった ・残業が少なく年間所得が減った |
全員対象のため影響は小さいが、所得が低いほど還付しやすい |
|
配偶者控除 |
・配偶者の収入が103万円以下だった ・扶養内に戻った(パート時間を減らした) |
控除額38万円が入ると還付が増えやすい |
|
配偶者特別控除 |
・配偶者の収入が103~150万円付近にある ・月収変動で見込み所得が下がった |
控除額が大きく影響が出やすい |
|
扶養控除 |
・大学生の子どものアルバイト収入が基準(58万円以下)に収まった ・扶養親族が増えた(転居・同居など) |
控除額38万円〜63万円で、還付額が変わりやすい |
|
障害者控除 |
・親族の障害者認定が新たに認められた ・区分が「特別障害者」または「同居特別」に該当 |
控除額が大きく、還付への影響も大きい |
|
寡婦控除 |
・年中に状況が該当するようになった ・所得が500万円以下に収まった |
控除27万円が追加される |
|
ひとり親控除 |
・年収500万円以下に収まり、子の所得58万円以下で要件を満たした |
控除35万円が追加される |
|
勤労学生控除 |
・学生アルバイトの所得が85万円以下に収まった |
控除27万円、学生従業員によくあるケース |
|
生命保険料控除 |
・新規加入した ・旧契約で控除額が満額適用される |
証明書の金額で還付額が左右される |
|
地震保険料控除 |
・地震保険料を支払った ・旧長期損害保険の経過措置がある |
支払額がそのまま控除に反映される |
|
小規模企業共済等掛金控除 (iDeCoなど) |
・iDeCoを毎月積立している ・小規模企業共済の掛金を支払っている |
全額控除なので還付への影響が大きい |
|
住宅ローン控除 (2年目以降) |
・年末ローン残高が多い ・所得税額より控除額の方が大きい |
年末調整で反映される還付が大きくなる控除のひとつ |
生活環境や家族構成の変化により、新たに控除の対象となるケースは少なくありません。年末調整で正しく申告されれば還付につながるため、従業員に必要な控除の確認を促すことが重要です。特に、保険料控除や住宅ローン控除などは申告漏れが起こりやすいため、証明書類に関する周知が不備を防ぐポイントとなります。
このように、控除の種類は複数あり、それぞれの条件や必要書類を確認しながら業務を進めていく必要があります。当サイトでは、控除ごとの条件や必要書類をリスト形式で確認できる資料を無料で配布しています。年末調整業務に不安のある方は、こちらから「年末調整ガイドブック」をダウンロードして、控除や年末調整業務の理解にご活用ください。
6. 年末調整で申告ができない控除


次の控除は年末調整では処理できません。従業員から問い合わせがあった場合は、会社では対応できず、従業員本人が確定申告(還付申告)をおこなう必要がある旨を案内しましょう。
6-1. 医療費控除
医療費控除は、納税者本人や同一生計の家族が支払った医療費が一定額を超える場合に適用される控除ですが、年末調整では申告できません。
医療費控除額は、次のように計算します。
医療費総額−保険金等による補填額−10万円(※所得200万円未満は所得の5%)
また、通常の医療費控除の代わりにセルフメディケーション税制を選択できる場合もありますが、両制度の併用は不可です。いずれにしても、従業員本人が確定申告で手続きをおこなう必要があります。
6-2. 雑損控除
災害・盗難・横領などにより、生活に必要な資産(住宅・家財など)が損害を受けた場合に適用されますが、年末調整では取り扱いできません。従業員には、該当する場合は確定申告での手続きが必要であることを案内します。
6-3. 寄付金控除
寄附金控除は、国や地方公共団体、認定NPO法人など一定の団体への寄付が対象となります。ふるさと納税も寄附金控除の一種ですが、原則としていずれも確定申告が必要です。
ただし、ふるさと納税については、寄付先が5団体以内で、各自治体へワンストップ特例の申請をしている場合に限り、確定申告をせずに控除を受けることができます。
年末調整では寄附金控除は扱えないため、該当する従業員には、本人が確定申告で手続きする必要があることを案内しましょう。
6-4. 住宅ローン控除(初年度)
住宅ローン控除は、税額控除として大きな節税効果がありますが、初年度は年末調整では適用できません。最初の年は、従業員本人が確定申告で手続きをおこなう必要があり、2年目以降は年末調整で適用できます。
7. 年末調整の返金(還付金)の注意点やポイント


年末調整で還付が発生する場合でも、処理方法や従業員への案内にはいくつか注意が必要です。ここでは、人事労務担当者が押さえておきたいポイントをまとめます。
7-1. 年末調整で対応できない場合は確定申告で還付金を受け取ってもらう
年末調整は「扶養控除等(異動)申告書」を提出している従業員のみが対象です。提出がない従業員は年末調整ができないため、還付が見込まれる場合でも、本人が確定申告(還付申告)をおこなう必要があります。なお、確定申告の期限を過ぎても、還付を受ける場合は5年間の還付申告が可能です。
関連記事:年末調整の対象者とは?必要な書類や確定申告との関係も解説
7-2. 従業員によっては返金ではなく追加徴収となる可能性もある
年末調整をおこなっても、必ず還付金が発生するわけではありません。その年の源泉徴収税額が、年末調整により計算された年税額よりも低い場合、還付ではなく追加徴収が必要となります。例えば、扶養親族が減った、保険料控除が前年より減った、副業による所得が増えたなどの場合が考えられます。
7-3. 給与明細書へ正しく返金内容を反映させる
還付金を12月給与などと合わせて支給する場合は、給与明細に「年末調整還付金」であることの明確な記載が重要です。同様に、追加徴収が発生する場合も、名称と金額を明示し、従業員が理解できる表示にしましょう。
7-4. 返金(還付金)の金額は源泉徴収票でも確認できない
源泉徴収票には、還付金そのものの金額は記載されません。
従業員から金額確認の問い合わせがあった場合は、給与明細(12月または1月支給分)を確認するように伝えましょう。
なお、源泉徴収票の「源泉徴収税額」欄に記載されるのは、年末調整後に確定した年間の最終的な所得税額です。これが0円の場合、その年に源泉徴収された税額はすべて還付されたことになります。
関連記事:源泉徴収票の発行の仕方とは?いつ発行するか、どこでもらえるか解説
8. 正しく年末調整の返金(還付金)の仕組みを理解しよう


年末調整で確定した所得税額が、1年間に源泉徴収された税額より少ない場合、その差額が従業員へ還付されます。還付の方法は会社が決定し、12月または1月の給与と合わせて精算するのが一般的です。
一方で、年の途中で扶養親族が減った場合など、計算上の税額が源泉徴収額を上回ると、追加徴収となることもあります。
なお、医療費控除、寄附金控除、住宅ローン控除の初年度などは、年末調整では申告できない控除です。該当する従業員から申し出があった場合は、会社では手続きできず、従業員本人が確定申告で申請する必要がある旨を案内しましょう。
さらに、2025年(令和7年)分は、基礎控除の引き上げ(最大95万円)や扶養控除の所得要件引き上げ(58万円)など、控除内容に大きな改正が反映される年です。
人事労務担当者はこれらの改正点を正しく理解し、計算ミスの防止と、従業員へのわかりやすい説明を心がけることが重要です。



「特定親族特別控除」が新設されるなど、例年以上に複雑になる令和7年の年末調整。
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