フレックスタイム制に関わる就業規則のポイント・記載例を紹介!
フレックスタイム制の就業規則を作成する際は、「始業・就業の時刻を労働者の自主的な決定に委ねる」旨を記載する必要があります。また、就業規則は作成するだけではなく、従業員に周知して初めて効力を発揮する点に注意しましょう。
今回は、フレックスタイム制に関わる就業規則のポイントと記載例を紹介します。
フレックスタイム制の導入には、労使協定の締結や就業規則の変更・届出など、行うべき手続きが存在します。
また、フレックスタイム制を導入した後に、「出勤・退勤時間が従業員によって異なるので、勤怠管理が煩雑になった」「残業時間の計算方法と清算期間の関係がよく分からない」といったお悩みをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方に向け、当サイトでは「フレックスタイム制度を実現するための制度解説BOOK」をご用意しました。
「フレックスタイム制の導入手順を詳しく知りたい」「清算期間・残業の数え方や勤怠管理の方法を知りたい」という方は、ぜひこちらからダウンロードしてご覧ください。
1. フレックスタイム制に関わる就業規則のポイント
フレックスタイム制とは、あらかじめ定められた期間の総労働時間の中で、労働者が自由に始業・就業の時刻を決定できる制度です。
フレックスタイム制を企業で導入する場合は、就業規則などへの規定と、労使協定の締結が必要になります。それぞれ記載が必要な事項がありますので、確認していきます。
1-1. 就業規則
就業規則、その他これに準ずるものには、「始業・終業の時刻を労働者の自主的な決定に委ねる」旨を記載しなければいけません。
上記については、フレキシブルタイムやコアタイムの有無にかかわらず、必ず記載が必要になります。もし、フレキシブルタイムに時間帯制限を設けている場合は、就業規則のただし書以降に、指定時間帯などを記載しましょう。
また、労働時間の管理方法や、コアタイムにおける必須勤務時間も明記しておくことが重要です。これにより、従業員は自らの労働時間を適切に管理できるほか、企業側でも労働時間の透明性を確保することができます。
さらに、万が一時間外労働が発生した場合の取り決めについても、明確に定めておく必要があります。
1-2. 労使協定
フレックスタイム制を導入する際は、就業規則の作成だけでなく、労使協定の締結も必要です。労使協定では、下記のように、フレックスタイム制の基本的枠組みを定める必要があります。
【対象となる労働者の範囲】 【清算期間】 【清算期間における総労働時間】 【1日の標準労働時間】 【コアタイム(任意)】 【フレキシブルタイム(任意)】 |
「対象となる労働者の範囲」「清算期間」「清算期間における総労働時間」「1日の標準労働時間」は、労使協定に必ず記載することに気をつけましょう。
当サイトでは、フレックスタイム制について概要から導入方法までまとめた資料を無料で配布しております。本章で解説した労使協定については具体例も紹介しているため、より詳しく知りたい方は必見です。フレックスタイム制の導入を考えている人事担当の方は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
関連記事:フレックスタイム制に関する労使協定のポイントを解説
関連記事:フレックスタイム制の清算期間の仕組みや総労働時間の計算方法を解説
2. フレックスタイム制に関わる就業規則の注意点
フレックスタイム制に関わる就業規則では、必要事項を漏れなく記載しなければいけません。また、清算期間を延長する際や、時間外労働が発生するときは、別途、労使協定の締結が必要ですので注意しましょう。
2-1. 「始業・終業の時刻を労働者の自主的な決定に委ねる」旨を記載する
就業規則には、「始業・終業の時刻を労働者の自主的な決定に委ねる」ことを漏れなく記載します。たとえば、下記のような記載方法は認められませんので注意しましょう。
- 始業や終業時刻のどちらか一方のみ労働者に委ねると記載する。
- 始業や終業時刻には触れず、8時間勤務のみ労働者に委ねると記載する。
さらに、フレックスタイム制を導入する際は、コアタイムやフレキシブルタイムの具体的な時間帯を明示することが重要です。これにより、従業員は自らの労働時間を効果的に管理し、業務とプライベートの両立を図ることができるようになります。
また、労働時間の記録方法や、時間外労働が発生した場合の取り扱いについても具体的に規定しておく必要があります。これにより、労使間のコミュニケーションが円滑になり、制度に対する理解と信頼を深めることができるでしょう。
2-2. 就業規則の周知義務を徹底する
就業規則を新たに作成したり、変更したりした場合は、下記の方法などにより、従業員へ周知しなければいけません。
- 各作業場の見やすい場所に常時、掲示したり、備え付けたりすること
- または、書面で公布すること
就業規則の周知義務は労働基準法第106条で規定されており、周知して初めて効力を発揮します*。
*参考:福井県HP 労働委員会事務局 「職場のトラブルQ&A ~就業規則の周知義務~」
2-3. 清算期間の上限延長は労使協定の締結が必要
労働基準法32条の3第4項の規定により、清算期間を1ヵ月から3ヵ月に延長する場合は、労使協定を締結し、所管の労働基準監督署に届出が必要です*。
そのため、1ヵ月を超えるフレックスタイム制を導入する際は、1.就業規則、2.労使協定、3.労使協定の届出、の3点が必要となります。
なお、届出を怠った場合は、同上の規定により、30万円以下の罰金が課される恐れがあるため、速やかに提出しましょう。
参考:e-Gov法令検索「昭和二十二年法律第四十九号 労働基準法第四章 第四章 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇(時間外、休日及び深夜の割増賃金)第三十七条」
2-4. 時間外労働(残業)は36協定の締結が必要
フレックスタイム制でも時間外労働が発生する時は、別途、36協定の締結が必要です。
なお、フレックスタイム制の時間外労働は、下記が基準となります。
- 清算期間が1ヵ月以内の場合:法定労働時間の枠組みを超えた分
- 清算期間が1ヵ月をこえる場合: 清算期間全体の労働時間のうち、週平均40時間を超えた分、2. 1ヵ月ごとの労働時間が、週平均50時間を超えた分。
定時制とは残業の考え方が異なるため、正しく理解する必要があります。当サイトでは、フレックスタイム制における残業時間の考え方を表を用いて解説した資料を無料で配布しております。フレックスタイム制の導入を検討しているが不安な点があるというご担当者様は、こちらから資料をダウンロードしてご覧ください。
関連記事:36協定の届出とは?作成の方法や変更点など基本ポイントを解説
3. フレックスタイム制に関わる就業規則の記載例
最後に、就業規則の記載例を紹介します。就業規則の文言を最初から作成するよりも、労使協定の一部を就業規則として利用すると、簡潔にまとまるでしょう。
3-1. 就業規則の記載例1:労使協定を規則の一部とする場合
第〇条 労使協定の締結により、フレックスタイム制を適用する従業員は、第〇条の規定にかかわらず、始業・就業の時刻を労使協定第〇条で定める範囲において、自由に決定できるものとする。
なお、フレックスタイム制の運用にあたり、従業員は毎月の労働時間を適切に管理し、時間外労働が発生する場合には、所属長に事前の届け出を行う義務を負うものとする。また、従業員はコアタイムとフレキシブルタイムに関するガイドラインを遵守し、無断欠勤や遅刻を避けるとともに、自らの労働時間の記録を正確に行うことが求められる。
3-2. 就業規則の記載例2:労使協定を規則の一部としない場合
(適用範囲)
第〇条 営業部門及び、研究開発部門に所属する従業員にフレックスタイム制を適用する。
(清算期間)
第〇条 清算期間は1カ月間とし、起算日は毎月1日とする。
(清算期間における総労働時間)
第〇条 清算期間における総労働時間は160時間とする。
(標準労働時間)
第〇条 1日の標準労働時間は7時間とする。
(コアタイム)
第〇条 所属長の承認のない限り、所定の労働に従事する時間帯(コアタイム)は、午前10時から午後3時までとする。なお、正午から午後1時までの休憩時間は除くものとする。
(フレキシブルタイム)
第〇条 フレックスタイム制が適用される従業員については、始業・就業の時刻を従業員の自主的な決定に委ねる。ただし、始業時刻について、従業員の自主的な決定に委ねる時間帯は、午前6時から午後10時まで、就業時刻について、従業員の自主的な決定に委ねる時間帯は、午後3時から午後8時までとする。
(超過時間の取扱)
第〇条 清算期間中の実労働時間が総労働時間を超過したときは、会社は、超過した時間に対して第〇条の規定により割増賃金を支給する。
(不足時間の取扱)
第〇条 清算期間中の実労働時間が総労働時間より不足したときは、不足時間を次の清算期間に法定労働時間の範囲内で繰越すものとする。なお、法定労働時間を超える不足分については、不足時間に相当する賃金を基本給から控除し、支払うものとする。
(その他)
第〇条 前条に掲げる事項以外については、労使で協議し決定する。
4. フレックスタイム制の就業規則に関するよくある質問
またフレックスタイム制に関わる就業規則に関連してよくある質問を紹介します。とくに就業規則を設定する上で参考になりますので、ポイントを押さえておきましょう。
4-1. フレックスタイム制の規定は?
フレックスタイム制は一日の労働時間内で一定の時間(コアタイム)は必ず出勤しなければならない時間帯と、それ以外の時間(フレキシブルタイム)は始業・終業時間を労働者が自由に設定できる時間帯に分けるものです。
各企業の就業規則により、その具体的な設定時間や適用対象者、フレキシブルタイムの扱いなどは会社によって異なるため、詳細は個々の企業の就業規則を確認する必要があります。規定例として10時~16時までをコアタイムとし、会議や打ち合わせは主にそのコアタイム内の中で行い、その他の時間はフレキシブルタイムとして設定している企業の例もあります。
4-2. フレックス勤務の就業時間は?一日の労働時間は?
フレックスタイム制の就業時間は、労働者が自由に設定できる「フレキシブルタイム」と全員が出勤しなければならない「コアタイム」に分けられ、一日の労働時間はこれらを合わせた時間となります。ただし、始業・終業時間の範囲や最大労働時間は企業の就業規則によりますし、労働基準法の1日8時間、週40時間の規定も適用されます。
またフレックスタイム制を導入することで、残業時間の定義が変わるため、結果的に残業が減る場合もあります。下記の記事ではフレックスタイム制における労働時間の管理や、フレックスタイムにおける残業代の計算方法についても解説しているのでぜひご覧ください。
関連記事:フレックスタイム制で残業代は減る?残業の考え方や計算方法も紹介
4-3. フレックスタイム制の始業時間は強制ですか?
フレックスタイム制では、「コアタイム」と呼ばれる一定の時間帯は全員が出勤しなければならない時間帯で、これは基本的に遵守する必要があります。しかし、「フレキシブルタイム」と呼ばれる時間帯は、労働者が始業・終業時間を自由に設定できます。
したがって、フレックスタイム制の始業時間が強制されるかどうかは、それがコアタイム内であるか、フレキシブルタイム内であるかによります。ただし、企業によってはフレキシブルタイムでも始業・終業の時間帯に制限を設けることがありますので、具体的な規定は各企業の就業規則をご確認ください。
4-4. 10人未満の会社でもフレックスタイム制の導入時には就業規則の作成が必要?
フレックスタイム制を導入するにあたり、10人未満の会社では就業規則の作成や届出は不要です。
少人数の事業場でも、始業・終業の時刻を労働者の自主的な決定に委ねる旨を記載した書面での運用が可能ですが、労使協定の締結は必要です。この制度を適切に活用するためには、労働者との合意形成が不可欠です。ポイントを押さえて運用しましょう。
5. フレックスタイム制度の就業規則のポイントは労働者の自主的な決定
フレックス制度の就業規則では、始業と就業の時刻を労働者が自由に決定できることが分かるように作成する点がポイントです。就業規則を簡潔にまとめたい場合は、労使協定書を規定の一部として利用するとよいでしょう。
また、作成した就業規則は従業員への周知も忘れてはいけません。
関連記事:フレックスタイム制とは?清算期間の仕組みやメリット・デメリットを解説
フレックスタイム制の導入には、労使協定の締結や就業規則の変更・届出など、行うべき手続きが存在します。
また、フレックスタイム制を導入した後に、「出勤・退勤時間が従業員によって異なるので、勤怠管理が煩雑になった」「残業時間の計算方法と清算期間の関係がよく分からない」といったお悩みをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方に向け、当サイトでは「フレックスタイム制度を実現するための制度解説BOOK」をご用意しました。
「フレックスタイム制の導入手順を詳しく知りたい」「清算期間・残業の数え方や勤怠管理の方法を知りたい」という方は、ぜひこちらからダウンロードしてご覧ください。
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