コアタイムなしのフレックスタイム制とは?導入メリット・デメリットも紹介
更新日: 2025.10.7 公開日: 2021.9.2 jinjer Blog 編集部

コアタイムなしのフレックスタイム制とは、出退勤時間が完全に自由なフレックスタイム制です。従来のフレックスタイム制は、「○時から○時までは就業時間」というコアタイムがあったため、従業員は必要性に関係なくコアタイムは就業していなければなりませんでした。そのため、コアタイムなしのフレックスタイム制になれば自由度は高く、より働きやすくなります。
ただし、勤怠管理担当の負担が増えたり、社員同士が顔を合わせる機会が減ったりするなどのデメリットがあるのも事実です。
そのため、導入の際は、自社にとってのメリット・デメリットをしっかりと見極めることが必要です。本記事では、コアタイムなしのフレックスタイム制の概要や導入のメリット・デメリット、さらには導入フローや導入のポイントを紹介します。
フレックスタイム制の導入には、労使協定の締結や就業規則の変更・届出など、複雑な手続きが存在します。
また、フレックスタイム制を導入した後に、「出勤・退勤時間が従業員によって異なるので、勤怠管理が煩雑になった」「残業時間の計算方法と清算期間の関係がよく分からない」といったお悩みをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方に向け、「フレックスタイム制度を実現するための制度解説BOOK」をご用意しました。
資料では、フレックスタイム制導入の流れや手続の他に、残業の数え方や効率的な勤怠管理の方法も解説しておりますので、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. コアタイムなしのフレックスタイム制とは


コアタイムなしのフレックスタイム制は、大手企業が続々と導入を始めたことで注目を集めています。
従来のフレックスタイム制もある程度出退勤時間の自由度が高いですが、コアタイムがないと完全に従業員の裁量で出退勤時間を決めることが可能なので、「フレックスタイム制」のメリットを十分に得ることが期待できます。
ここでは、コアタイムなしのフレックスタイム制について、また裁量労働制との違いについて解説します。
1-1. 完全自由裁量のフレックスタイム制
コアタイムなしのフレックスタイム制とは、コアタイムである「必ず出社しなければならない時間」を設けないフレックスタイム制で、「スーパーフレックスタイム制」とも呼ばれます。
一般的なフレックスタイム制は、必ず出社していなければならない「コアタイム」と自由裁量の「フレキシブルタイム」で構成されていました。社員は、会社が定めるコアタイムに合わせて出勤する必要があり、勤務形態選択の自由は一部制限されていたといえます。
コアタイムなしのフレックスタイム制は、この制限を撤廃した勤務形態です。社員がいつ出退勤するかは完全に自由裁量の範囲内で、フレックスタイム制よりも遙かに自由度は高いといえます。
1-2. 裁量労働制との違い
「勤務形態について労働者の自由裁量を認める」という点で、コアタイムなしのフレックスタイム制と裁量労働制は混同されがちです。しかし、裁量労働制は以下の点でスーパーフレックス制度と異なります。
- 法律で定められた一定の業務に従事する労働者に限定される
- 賃金は「みなし労働時間」によって支払われる
裁量労働制は、専門性が高いなどの特定業務に従事する社員が対象です。また、賃金支払は実労働時間に基づきません。あらかじめ労使で定めた労働時間分について、「働いた」とみなして支払われます。みなし時間より実労働時間が多くても少なくても、賃金は同じです。
当サイトでは、本章で解説したフレックスタイム制と裁量労働制について、概要だけでなく導入ステップまでを表などを用いて解説した資料を無料で配布しております。
フレックスタイム制と裁量労働制の違いが事細かにわかるため、違いがあやふやな方や、導入検討しているが自社に合うのがどちらかわからないというご担当者様は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
関連記事:スーパーフレックス制度とは?導入の方法や注意点を解説
2. コアタイムなしのフレックスタイム制を導入するメリット

コアタイムなしのフレックスタイム制を導入すると、下記のようなメリットが得られます。
- 個々の事情に即した働き方ができる
- 業務効率が上がる
- 常習化した長時間労働を抑制する
- 優秀な人材を確保しやすくなる
ここでは、これらのメリットについて詳しく解説していきます。
2-1. 個々の事情に即した働き方ができる
フレックスタイム制のコアタイムの撤廃は、社員の裁量に任される範囲がより広くなるということです。社員の裁量で出退勤時間を決められるということは、個々に事情に即した働き方が出来るというメリットにつながります。
社員は、勤務に関する時間的な拘束に不都合を感じることがなくなるので、肉体的・精神的負担が軽減されます。特に、介護や育児との両立を迫られる社員は、より働きやすくなるでしょう。
また、働きやすさが向上することで、社員の意欲や業務に対する責任感が高まり、生産性の向上にも寄与します。このように、企業としても従業員満足度の向上が期待でき、長期的な利益に繋がる可能性があるというのもメリットです。
2-2. 業務効率が上がる
コアタイムをなくすことで、社員の出退勤時間は完全に自由となります。
社員は自身の体調や予定・仕事量に応じて出社のタイミングを決められるため、高いパフォーマンスを出しやすくなります。「体調が悪いのに我慢して働く」「PCの前で座っているだけ」などの状況が起こりにくくなることで、業務の効率が上がるでしょう。
また、出退勤時間を自分で決めるとなれば、計画性も必要です。社員が、これまで以上に進捗管理を真剣におこなうようになれば、全社的な業務効率化も期待できるかもしれません。
さらに、この制度は育児や介護を担う社員にとって大きな利点となります。自由な出退勤が可能になることで、家庭やプライベートの事情に応じた働き方が実現し、結果的に職場の多様性を向上させることに繋がります。
このように、コアタイムなしのフレックスタイム制は、社員のワークライフバランス向上に寄与し、従業員の定着率向上や企業の競争力強化につながるというメリットもあるのです。
2-3. 常習化した長時間労働を抑制する
コアタイムなしのフレックスタイム制では、従業員が残業という概念に縛られずに柔軟に勤務時間を設定できるため、長時間労働の常態化を抑制できるというメリットがあります。
例えば、前日に多くの時間を働いた場合、「昨日は10時間勤務したので、今朝は2時間遅らせて出勤しよう」というように、次の日の出勤時間を遅らせることで、自分のペースで働き続けることができるため、働きすぎを防ぐことができます。
この制度を導入すれば、仕事の負担を軽減したり、長時間の労働を抑制し心身の健康を保てたりすることで、効果的に業務を遂行するというメリットも得られます。
2-4. 優秀な人材を確保しやすくなる
コアタイムなしのフレックスタイム制が導入されている企業は、「社員目線の配慮がある企業」という印象を持たれやすくなります。求人を出す際は大きなアピールポイントとなり、優秀な人材を確保しやすくなるというのがメリットです。
社員目線の施策をおこなってくれる企業であれば、従業員は愛情・愛着を感じやすくなります。そのため、企業と社員の間のエンゲージメントが高まって、離職者が出にくくなるというメリットもあります。社員が「会社のために働こう」という気持ちになれば、社員全体の質が向上し、結果的に企業文化の向上にも寄与してくれるでしょう。
また、育児や介護などの理由で制約の多い社員が、安心して働ける場を提供することは、企業の社会的責任を果たすことにもつながります。
こ単に経済的な利益を追求するのではなく、社会に対しても配慮した運営をおこなっている、という評価を受けることができれば企業のブランド価値が向上するので、有利な採用活動や顧客の獲得に寄与することも期待できます。
3. コアタイムなしのフレックスタイム制を導入するデメリット


コアタイムなしのフレックスタイム制は、社員にとっても会社にとってもたくさんのメリットがありますが、一方で下記のようなデメリットもあります。
- 社員間コミュニケーションの希薄化
- 全社的な適用が困難なケースがある
- 勤怠管理が難しくなる
ここでは、コアタイムなしのフレックスタイム制のデメリットについて解説します。
3-1. 社員間コミュニケーションの希薄化
コアタイムは、社員の就業時間を定めることで、適切な社員同士のつながりを維持する目的があります。そのため、コアタイムがなくなることで、上下・横のつながりが希薄化し、コミュニケーション不足が希薄化するというのがデメリットです。
コミュニケーション不足で特に懸念されるのは、必要な情報共有ができなくなることです。そのため、コアタイムなしにする場合は、コミュニケーション・情報共有の仕組みをしっかりと確立する必要があります。
コミュニケーションの仕組みを確立するには、例えば、定期的なオンラインミーティングや社内チャットツールの活用、プロジェクト管理ツールの導入などが挙げられます。
これにより、社員が自分の都合に合わせて働きやすくなる一方で、情報が滞らない仕組みを作ることができるのです。
また、リモートワークの普及に伴い、顔を合わせる機会が減った社員同士でも、意識的に交流を促進する施策が求められています。社内イベントやランチミーティングを定期的に開催することで、業務以外のコミュニケーションも盛んにし、信頼関係を深める効果が期待できます。
3-2. 全社的な適用が困難なケースがある
自由出社が認められるとはいえ、社外とつながりの強い業務に関わる社員への適用は難しいかもしれません。取引先の勤務時間に合わせて出社するとなれば、どうしても個人の都合は後回しになりがちです。
そのため、全社的な適用が困難なケースがあるというのがデメリットです。コアタイムなしのフレックスタイム制というのは、ある程度自分の都合に合わせて働けるので、従業員にとってはとても魅力のある勤務制度といえるでしょう。
そのため、自分の就いている業務のせいでフレックスタイム制が適用されないというのは、従業員の不満につながるというデメリットがあります。
このデメリットを解決するには、例えば営業・広報などの渉外業務が多い部門でコアタイムを撤廃する場合は、業務内容・管理方法の見直しが必要です。
3-3. 勤怠管理が難しくなる
社員ごとに出退勤時間が異なると、勤怠管理が複雑化するというデメリットが発生します。コアタイムなしのフレックスタイム制では、従来のような一括管理は難しく、個別に出退勤時間を見なければならないので、業務負担も大きくなるでしょう。
また、フレックスタイム制では、退勤時間だけを見ても個々の残業の有無が判断できません。残業計算もより複雑になり、勤怠管理の手間は大幅に増大します。
勤怠管理をいかに効率的におこなうかは、非常に重要なポイントです。具体的には、従業員が自由に出退勤時間を設定できる環境を整えるためには、適切な勤怠管理システムを導入することが不可欠です。
このシステムによって、出勤・退勤の記録を自動で収集し、リアルタイムで確認することが可能となります。さらに、月末や年末における勤怠データの集計や残業時間の管理も容易になり、労務管理担当者の負担を軽減することができるでしょう。
関連記事:スーパーフレックス制度とは?導入の方法や注意点を解説
4. コアタイムなしのフレックスタイム制の導入方法


コアタイムなしのフレックスタイム制を導入するには、下記のルールを遵守しなければなりません。
- 就業規則等への規定
- 労使協定で所定の事項を定めること
ここでは、これらのルールについて解説していきます。
4-1. 就業規則への記載
フレックスタイム制を導入する場合は、内容の詳細を就業規則に記載してください。
就業規則には「フレックスタイム制が適用される社員の始業および終業の時刻については、社員の自主的決定に委ねるものとする」という一文を入れなければなりません。
これは、労働基準法第32条第3項に基づく決まりであり、厚生労働省による「導入の手引き」にもその旨が記載されています。
(ⅰ)就業規則等に、始業・終業時刻を労働者の決定に委ねることを定め
てください。
引用元:フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き|厚生労働省
そのため、新たに導入する際には、上記の一文を必ず記載しましょう。
関連記事:フレックスタイム制に関わる就業規則のポイント・記載例を紹介!
4-2. 労使協定の締結
フレックスタイム制の導入では、以下の項目について労使協定を結ばなければなりません。
- 対象となる労働者の範囲:全社員または一部
- 清算期間:上限3ヵ月
- 清算期間における総労働時間:所定労働時間
- 標準となる一日の労働時間
- コアタイム(任意)
- フレキシブルタイム(任意)
上記について労使協定を締結すれば、フレックスタイム制の導入が可能となります。ただし、清算期間が1ヵ月を超える場合は、労使協定届を管轄区の労働基準監督署長に提出しなければなりません。
ここまで概要から導入手順まで簡単に解説してきましたが、導入イメージがまだ具体的に持てていない方もいらっしゃるのではないでしょうか。 当サイトでは、フレックスタイム制の概要からメリット、導入方法までを事細かにまとめた資料を無料で配布しております。フレックスタイム制の導入後のイメージを具体的に持ちたい人事担当の方は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
関連記事:フレックスタイム制に関する労使協定のポイントを解説
5. コアタイムなしのフレックスタイム制を成功に導くポイント

コアタイムなしのフレックスタイム制を安易に導入すると、社内に混乱を招くだけとなるかもしれません。特に勤怠管理が煩雑化する点については、しっかりと対策を取っておきましょう。
ここでは、導入前に取っておきたい対策について紹介します。
5-1. 勤怠管理ツールを導入する
全社的にコアタイムなしのフレックスタイム制を導入した場合、勤怠管理が非常に煩雑になります。そのため、フレックスタイム制に対応できる勤怠管理ツールを導入するのがおすすめです。
勤怠管理ツールなら、イレギュラーな勤務形態に対応できるものも少なくありません。社員の情報を全て一元管理できるため、残業代の計算等も簡単です。
部署別・職種別に管理できるものも多いため、勤怠管理を効率的におこなえるでしょう。
さらに、週ごとや月ごとの労働時間の集計や分析を自動でおこなう機能を持つシステムもあります。これにより、経営者や人事担当者は、柔軟な勤務時間にすることでどのような影響があるかを、リアルタイムで把握しやすくなります。
5-2. 積極的に社員コミュニケーションの場を設ける
コアタイムなしのフレックスタイム制で懸念される「情報共有のしにくさ」「コミュニケーションの取りにくさ」は、社内のコミュニケーションツールを見直すことで解消できます。
Web会議ツールや社内チャット機能などを活用し、常にお互いの状況がわかるようにしておきましょう。また、雑談専用の会議室を設けるなどをしておくと、対面で会えない社員とも密なコミュニケーションを取りやすくなります。
他にも、定期的なオンラインチームミーティングを開催するなど、各自の進捗状況を共有しやすくする対策も効果的です。
さらに、業務に関連する情報や社内イベントなどを定期的に発信するためのニュースレターを作成し、社員間の情報の透明性を高めることを検討するのもおすすめです。
このような取り組みによって、フレックスタイム制の環境下でも社員同士の連携が強化され、より円滑な業務遂行が可能になります。
6. コアタイムなしのフレックスタイム制の導入は適切な勤怠管理がカギ

コアタイムなしのフレックスタイム制は、必ず出勤しなければならない「コアタイム」を設けないフレックスタイム制です。
出退勤時間が完全に自由裁量に任されるため、社員は柔軟な働き方が可能となります。個々のライフワークバランスが整い、パフォーマンス向上が期待できるでしょう。
ただし、コアタイムなしのフレックスタイム制は企業にとって「勤怠管理の煩雑化」という問題もあります。そのため、導入の際は、自社の勤怠制度に合った適切な勤怠管理ツールも併せて導入することをおすすめします。
機能や価格等を比較して、自社に合うツールを選択しましょう。
関連記事:フレックスタイム制とは?清算期間の仕組みやメリット・デメリットを解説



フレックスタイム制の導入には、労使協定の締結や就業規則の変更・届出など、複雑な手続きが存在します。
また、フレックスタイム制を導入した後に、「出勤・退勤時間が従業員によって異なるので、勤怠管理が煩雑になった」「残業時間の計算方法と清算期間の関係がよく分からない」といったお悩みをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方に向け、「フレックスタイム制度を実現するための制度解説BOOK」をご用意しました。
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