法定外残業とは?残業代の計算方法や割増率について解説
法定外残業とは、労働基準法の定める労働時間の上限を超えた労働のことで、25%以上の割増賃金の支払いが必要です。
この記事では、人事担当者向けに法定外残業とはなにか、残業代の計算方法や、割増賃金が発生するケースを解説します。
残業時間は労働基準法によって上限が設けられています。
しかし、法内残業やみなし残業・変形労働時間制などにおける残業時間の数え方など、残業の考え方は複雑であるため、どの部分が労働基準法における「時間外労働」に当てはまるのか分かりにくく、頭を悩ませている勤怠管理の担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方に向け、当サイトでは労働基準法で定める時間外労働(残業)の定義から法改正によって設けられた残業時間の上限、労働時間を正確に把握するための方法をまとめた資料を無料で配布しております。
自社の残業時間数や残業の計算・管理に問題がないか確認したい人は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご覧ください。
1. 法定外残業とは、労働基準法で定められた法定労働時間を超えた残業
法定外残業とは、労働基準法で定められた法定労働時間を超えた残業のことで、法外残業や、法定時間外労働などと呼ばれることもあります。
また、法定労働時間とは、労働基準法第32条1項に記載されている労働時間の上限のことで、原則「1日8時間、1週40時間」まで、と定められています。[注1]
法律上、上記の労働時間を超えた残業は25%以上の割増賃金が必要です。
[注1]e-Gov法令検索:労働基準法
1-1. 法定内残業との違い
法定内残業とは、就業規則や雇用契約書で規定している所定労働時間は超えるものの、法定労働時間の範囲内にとどまる残業のことです。
所定労働時間とは、始業から就業までの時間から休憩時間を除外したもので、労働者が労働の義務を負う時間です。
労働基準法上、法定内残業では割増賃金の支払い義務はないため、割増した残業代を支給するか否かは、各企業の判断に委ねられます。
例えば所定労働時間を7時間と定めている会社で9時から19時まで労働した場合、9-17時までが法定労働時間、17-18時までが法定内残業、18-19時までが法定外残業となります。
18-19時の労働に対しては25%の割増率を乗じた残業手当を支払う必要がありますが、17-18時の労働に対して割増率を乗じるかは各企業次第となります。
本章で解説した法定外残業と法定内残業の定義は、残業管理をする上で最も重要になるので必ず覚えておきましょう。また当サイトでは、法改正によって設けられた上限規制についてや多くの企業が陥る課題に対する解決策をまとめた資料を無料で配布しております。自社の残業管理で不安な点がある方は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
2. 労働時間制別の法定外残業の考え方
法定外残業の考え方は、採用している労働制により扱いが異なります。
2-1. フレックスタイム制
フレックスタイム制とは、定められた期間(清算期間)の、総労働時間の範囲内で、労働者が自由に始業・就業の時刻を決定できる制度です。
例えば、清算期間を1ヵ月、総労働時間を160時間とした場合、その範囲内で労働者自身が自由に労働時間を設定できます。
そのため、1日8時間を超える労働をしたからといって、すぐに法定外残業とは見なされません。
フレックスタイム制では、清算期間における総労働時間を超えた労働と、期間終了時に週あたり50時間を越えた労働を法定外残業として処理します。
2-2. 変形労働時間制
変形労働時間制とは、労働時間を1ヶ月や1年単位で設定できる制度です。
設定した期間内の平均労働時間が、法定労働時間の総枠内であれば、1日や1週については、法定労働時間を超過しても問題ありません。
そのため、繁忙期のある会社や、週の中でも労働時間に差の生まれやすい企業などで利用します。
変形労働時間制では、所定労働時間により法定外残業の扱いが下記のように異なります。
- 1日の所定労働時間が8時間を超える場合は、所定労働時間を超えた時間が法定外残業。上記以外は、8時間を超えた時間が法定外残業
- 1週の所定労働時間が40時間を超える場合は、所定労働時間を超えた時間が法定外残業。上記以外は、40時間を超える時間が法定外残業。(1の残業を除く)
- 変形期間は、変形期間の法定労働時間の総枠を超えた労働時間が法定外残業。(1.2.の残業を除く)
下記の記事では変形労働時間制の残業の計算方法や、そもそもの変形労働時間制の導入についても詳しく解説しているので興味のある方はぜひご覧ください。
関連記事:1年単位の変形労働時間制とは?休日や残業の計算方法もわかりやすく解説
2-3. 裁量労働制
裁量労働制とは、実労働時間にかかわらず、「契約した時間分のみ働いたことと見なす(みなし労働時間)」労働契約です。
例えば1日の実労働時間が4時間であろうと、10時間であろうと、みなし労働時間を「7時間」としている場合、7時間働いたものとして扱います。そのため、原則、“残業”という概念はありません。
ただし、みなし労働時間自体が法定労働時間を超えている場合、(例えば9時間)は法定外残業として扱います。また、深夜および、法定休日労働の割増賃金は発生します。
2-4. 管理監督者
管理監督者とは、経営者と一体の立場にあるもので、休憩や休暇に囚われず活動が必要な、職務内容・権限・責任を持つ労働者です。
そのため、労働基準法上、法定外残業や休日労働に対する割増賃金の支払いは不要です。ただし、深夜労働の割増賃金は発生します。
なお、「管理職」という肩書であっても、実態として一般従業員と変わらない待遇や労働管理下にある場合は、管理監督者とは認められません。
3. 法定外残業の残業代の計算方法
法定外残業の残業代の計算方法は下記のとおりです。
「1時間あたりの賃金」×「法定外残業時間」×「1.25(割増率)」
ここでは算出の際注意が必要な、「1時間あたりの賃金」の出し方を確認します。
3-1.「1時間あたりの賃金」の算出方法
1時間あたりの賃金は、就業規則や賃金規程、給与明細などから確認できます。
また、下記の計算式で算出することも可能です。
(月給-除外手当)÷1日の所定労働時間×平均所定労働日数
従業員に支払う手当の中には、月給に含まれるものと含まないものがあります。
下記のように、「個人の事情に対して支払われる手当」は月給から除外します。
月給から除外する手当
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時に支払われた賃金
- 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
もし、上記の名目で支払われていても、「従業員全員、一律同額」である場合などは、月給に含まれるものとして扱います。例えば、賃貸・持ち家を問わず、全ての従業員に毎月一律1万円を支給しているなら、月給に含まれるものと考えます。
3-2. 法定外残業の残業代の割増率一覧
法定外残業は、通常25%以上の割増賃金が必要です。ただし、深夜労働や法定休日労働と重複する場合は、それらの割増率も合わせて、残業代を計算します。
以下は時間外労働の区分ごとに設けられている割増率の一覧表です。残業代を算出する際にご参考ください。
区分 |
割増率 |
法定外残業 |
25%以上 |
月60時間を超える分の法定外残業 |
50%以上(※) |
深夜労働(午後10時~翌日午前5時) |
25%以上 |
法定休日労働 |
35%以上 |
法定外残業+深夜労働 |
50%(25%+25%)以上 |
法定休日労働+深夜労働 |
60%(35%+25%)以上 |
月60時間を超える分の法定外残業+深夜労働 |
75%(50%+25%)以上 |
(※)2023年4月から中小企業も50%以上の割増率が適用になりました
3-3.割増賃金が重複した際の残業代の計算方法
下記を例に割増賃金を確認します。
13:00~23:00勤務、休憩1時間、実労働時間9時間の場合
13:00~16:00→所定労働時間
16:00~17:00→休憩時間
17:00~22:00→所定労働時間
22:00~23:00→法定外残業+深夜労働(割増賃金率50%以上)
1時間あたりの賃金が1,200円のなら、残業代は下記のとおりとなります。
1,200×1(時間)×1.50(割増賃金率)=1,800円
以上により、当日の賃金は
(1,200×8)円+1,800円=11,400円
上記のとおり、算出されます。
4. 法定外残業は他の割増率に注意して計算しよう
法定外残業が発生した場合、25%以上の割増賃金支払いが必要です。
残業の考え方は、労働制によっても違いがあるため、通常とは異なる場合は十分確認しましょう。
また、深夜や法定休日など、他の割増と重複するときは、賃金計算に割増分の漏れがないよう、注意することもポイントです。
残業時間は労働基準法によって上限が設けられています。
しかし、法内残業やみなし残業・変形労働時間制などにおける残業時間の数え方など、残業の考え方は複雑であるため、どの部分が労働基準法における「時間外労働」に当てはまるのか分かりにくく、頭を悩ませている勤怠管理の担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
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