変形労働制でも残業代は出さないとダメ!知っておくべきルールとは
変形労働時間制は、月単位・年単位の法定労働時間に合わせて1日ごとの労働時間を設定できる制度です。繁忙期の時間外労働を閑散期の労働時間短縮で調整するなど、活用次第で残業代の削減につながります。
しかし、変形労働時間制にも、月ごと、年ごとの設定期間の間に定められた法定労働時間があります。それを超えた労働はすべて時間外労働となり、25%の割増賃金を支払わなければなりません。
今回は、変形労働時間制の残業代を支払うケースや条件について、設定期間のタイプごとに詳しく解説します。
関連記事:働き方改革による残業規制の最新情報!上限や違反した際の罰則を解説
残業時間は労働基準法によって上限が設けられています。
しかし、法内残業やみなし残業・変形労働時間制などにおける残業時間の数え方など、残業の考え方は複雑であるため、どの部分が労働基準法における「時間外労働」に当てはまるのか分かりにくく、頭を悩ませている勤怠管理の担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方に向け、当サイトでは労働基準法で定める時間外労働(残業)の定義から法改正によって設けられた残業時間の上限、労働時間を正確に把握するための方法をまとめた資料を無料で配布しております。
自社の残業時間数や残業の計算・管理に問題がないか確認したい人は、ぜひ資料をダウンロードしてご覧ください。
目次
1. そもそも変形労働時間制とは?
変形労働制とは、1週間の平均労働時間が法定労働時間である40時間を超えない範囲において、所定労働時間を日ごとや月ごとで自由に調整できる制度です。平均した時間が法定労働時間内であれば、1日の労働時間を8時間以上に設定することも可能です。
閑散期と繁忙期がはっきりしている業種に向いている制度で、うまく調整することで残業代削減や過度な長時間労働の防止につながります。
1-1. 変形労働時間制は主なものとして年単位と月単位がある
変形労働時間制は、労働時間を変形させられる単位として、多くの会社で利用しているのは月と年の2種類があります。それぞれ、1ヵ月の間、1年の間で計算して週平均が40時間になれば、それぞれの日や週について自由に所定労働時間を設定することが可能です。ただし、1年単位の場合には1日10時間、1週は52時間が上限時間となります(対象期間が3ヶ月を超える場合には対象期間中に48時間を超える所定労働時間を設定できるのは連続3週などの制限がかかりますので注意が必要です)
なお、法定労働時間は1日や週ではなく変形期間で考えます。それぞれの労働時間の上限(法定労働時間)は以下のとおりです。
【1ヵ月単位の変形労働時間制の法定労働時間】
・28日の月(2月)…月160時間 |
【1年単位の変形労働時間制の法定労働時間】
・365日の年…年2085.7時間 |
関連記事:1年単位の変形労働時間制の定義やメリット・デメリット
1-2. 変形労働時間制とフレックスタイム制の違い
変形労働時間制は月もしくは年単位で労働時間を調整できる働き方です。一方、フレックスタイム制とは始業・終業時間を従業員が決定できる働き方です。フレックスタイム制では次のような2つの時間帯を設定することも可能です。
- フレキシブルタイム:従業員が選択できる労働時間帯
- コアタイム:必ず仕事すべき時間帯
変形労働時間制とフレックスタイム制は労働時間帯の決定が会社にあるか、従業員にあるかの違いです。変形労働時間制の場合、会社が業務状況に応じて従業員の労働時間を変更します。一方、フレックスタイム制は会社が所定労働時間を定めますが、何時から働きはじめるか、何時に退勤するかは従業員が決定可能です。
1-3. 変形労働時間制と裁量労働制との違い
変形労働時間制、フレックスタイム制以外の多様な働き方の例として裁量労働制が挙げられます。
裁量労働制とは勤務時間や時間の配分を従業員に任せる働き方です。たとえば、1日のみなし労働時間を8時間とした場合には、10時間勤務しても、5時間勤務しても8時間働いたものとします。そのため給料も8時間分支払われます。
裁量労働制を採用することで、従業員のパフォーマンス向上や人件費の管理負担の軽減などが期待できます。しかし、すべての従業員、業種で裁量労働制が認められるわけではありません。裁量労働制が認められる業種や職種は限られています。
2. 変形労働時間制であっても規定の労働時間を超えれば残業になる
「変形労働時間制では残業が発生せず、残業代も必要ない」と思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、変形労働時間制であっても時間外労働は発生します。したがって、残業代の支払いも必要になります。
変形労働時間制における残業時間は、日ごと、週ごと、対象期間に分けて考えます。日ごとの残業時間は、所定労働時間が8時間以上の場合、所定労働時間を超えた時間が時間外労働になり、所定労働時間が8時間未満の場合は8時間を超えた時間が時間外労働になります。週単位でも同じように考えます。最後に対象期間での総枠を超えた分を時間外労働とします。
変形労働時間制では、特定の日や週において法定労働時間よりも長い所定労働時間を設けることができ、その場合は法定労働時間を超えても残業代が発生しないため、誤解されることが多いのでしょう。変形労働時間制における残業時間をしっかりと把握し、労使間のトラブルを防ぎたいものです。
2-1. 変形労働時間制でも残業の割増率は同じ
変形労働時間制は「法定労働時間を超えて働いても残業代が出ない日がある」というだけで、設定期間内の法定労働時間が上限を超える労働は残業扱いになります。残業代の計算方法についても、通常の労働契約同様、労働基準法で定められた下記の計算方法で求めます。
残業代=残業時間×1時間あたりの賃金×割増率
また、割増率は通常の場合と変わらず、時間外労働(残業)には1.25倍、休日労働は1.35倍、深夜残業は1.5倍となります。
なお、残業に関する法律と適切な管理方法を社内で確認したい方は「法律に対応した残業管理実現BOOK」をご覧ください。
関連記事:残業による割増率の考え方と残業代の計算方法をわかりやすく解説
3. 変形労働時間制における残業時間の計算方法
変形労働時間制の残業時間は、基本的に日ごと・週ごと・設定された変形期間に分けて計算します。
また、労働基準法で認められている変形労働時間制には、細かく分けると以下のの4つのタイプがあります。
- 1ヵ月単位の変形労働時間制
- 1年単位の変形労働時間制
- 1週間単位の非定型的変形労働時間制
- フレックスタイム制
それぞれ残業代が発生するケースや計算の方法が異なるため、それぞれタイプについて、残業時間の計算方法を解説します。
3-1. 1ヵ月単位の変形労働時間制の場合
1ヵ月単位の変形労働時間を導入するには、就業規則等への具体的な記載が必要です。法労働時間内に収まる所定労働時間の設定や、始業・終業時刻、開始日などです。
残業代は1日ごと、1週間ごと、設定された変形期間ごとに定められた基準をもとにそれぞれ算出します。法定時間外労働となる時間は次の通りです。
1日ごとの場合
8時間以上の所定労働時間を定めている場合は、実際の労働が所定労働時間を超えた時間に当たります。所定労働時間が8時間未満の場合は、8時間を超えて労働した時間分が残業時間です。
例)ある1週間について、以下の所定労働を定めている場合の残業時間は表に記載の通りです。
1週間ごとの場合
40時間以上の所定労働時間を定めている場合は、実際の労働が所定労働時間を超えたときが残業にあたります。所定労働時間が40時間未満の場合は、40時間を超えて労働したときが残業時間です。(※ただし、1日ごとの基準日で残業扱いになった時間は除外します。)
例)ある1週間について、先ほどの例を用いると、2時間が週の残業時間となります。
設定された変形期間(1ヵ月ごと)の場合
実際の労働がその月の上限労働時間(暦日数÷7×40時間)を超えた時間が、残業時間となります。(※ただし、「1日ごと」「1週間ごと」の基準で残業扱いになった時間は除外します。)
例)暦日数が28日のある1ヵ月について、所定労働時間と実労働時間がこれまでに挙げた例と4週間とも同じであった場合、1日あたりの残業時間4時間と週の残業時間8時間を差し引いて、変形期間での残業は0時間となります。この時、残業代は12時間分に基礎賃金と割増率1.25をかけて支給することになります。
もし変形期間での残業が発生した場合、残業代は以下のように日ごと・週ごとと変形期間内の残業時間で分けて計算し、その合計を支給します。
・日ごと、週ごとの残業時間の合計×1時間あたりの基礎賃金×1.25
・変形期間で発生した残業時間×1時間あたりの基礎賃金×0.25
3-2. 1年単位の変形労働時間制の場合
1年単位の変形労働時間制を導入するには労使協定を締結し、労働基準監督署に提出する必要があります。
1ヵ月単位の変形労働時間制と同様に、1日ごと、1週間ごと、設定された変形期間ごとに定められた法定労働時間の上限を超えた時間を残業時間とし、計算方法は同じです。
1年単位の変形労働時間制には、労働時間制限が設けられており、原則1日10時間、週52時間までとされています。なお、1年単位の変形労働時間制には、特別措置対象事業場の特例は適用されません。
3-3. 1週間単位の変形労働時間制の場合
1週間単位で調整したい場合は、「非定型的変形労働時間制」を採用します。1日の労働時間が10時間以内、週40時間以内という条件のもとであれば、週単位で労働時間が調整できる制度です。
ただし、導入できる業種は従業員が30人未満の小規模小売業や旅館、飲食店などに限定されています。
以下のページでは、変形労働時間制を導入している企業における勤怠管理システムの活用方法を解説しています。
勤怠管理システムを導入しようか検討されている方や現状の勤怠管理に課題を感じる方はぜひご覧ください。
関連サイト:勤怠管理システムを用いた変形労働時間制の運用|ジンジャー勤怠
3-4. フレックスタイム制の場合
フレックスタイム制は、清算期間中に定められた総労働時間の中で、1日の出退勤時刻や労働時間を従業員自身が調整できる制度です。
そのため、1日8時間以上、あるいは週40時間以上の労働が必ずしも残業扱いになるわけではありません。フレックスタイム制の残業(時間外労働)とは、1~3ヵ月の清算期間における法定労働時間(清算期間の暦日数÷7×40時間)を超えて労働した時間のことを指します。
また、フレックスタイム制の清算期間が1ヵ月を超える場合は、1ヵ月ごとの労働時間が週50時間(平均)を超えた時間は残業扱いとなり、時間外労働として25%の割増賃金の支払いが必要になります。
フレックスタイム制の残業時間の計算方法についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
▶フレックスタイム制での残業時間の考え方や計算方法
4. 変形労働時間制における残業の注意点
変形労働時間制は残業の考え方が変則的であるため、残業時間の数え方や運用に誤解が生じることがあります。ここでは、変形労働時間制を活用するうえで、知っておきたい注意点を2つご紹介します。
4-1. 残業時間を所定労働時間で相殺することはできない
変形労働時間制は変形期間の中で所定労働時間を自由に定められることが魅力ですが、残業時間と所定労働時間を相殺することはできません。所定労働時間を自由に繰り下げたり、繰り上げたりすることはできないのです。
例えば、ある日の所定労働時間が8時間で、10時間働いた場合、残業時間は2時間となります。このとき、翌日の所定労働時間から残業した2時間を差し引いて相殺することはできません。
同様に、ある日の所定労働時間が8時間のところ、6時間しか働かなかった場合に、翌日に所定労働時間よりも2時間働いたから、前日の不足分を相殺する、といった取り扱いはできません。
4-2. 変形労働時間制での残業の上限
変形労働時間制であっても、時間外労働をさせる場合には36協定の締結が必要になりますが、残業時間にも上限が定められています。変形労働時間制の残業時間の上限は、1ヵ月単位の場合、通常と同じく月45時間、年360時間となり、1年単位の場合、月42時間、年320時間となっています。
なお、特別条項を結んだ場合は、変形労働時間制であっても通常と同じく、月100時間未満、年720時間以内が残業時間の上限となります。また、上限時間を超えられるのは年に6回まで、2~6ヵ月の平均を月80時間以内におさめなければならない条件も同じです。
上記のように残業の上限時間が整備されたのが2019年の法改正のタイミングであったことはご存じでしょうか?
このタイミングで、残業時間の上限規則だけでなく、有給管理の取得義務や高度プロフェッショナル制度の創設など、6つの項目について見直されました。
当サイトでは、残業時間の上限規則が法改正前後でどのように変わったのか、図を用いて解説した資料を無料で配布しております。法改正での変更内容に不安な個所があるかたは、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
関連記事:36協定における残業時間の上限を基本からわかりやすく解説!
5. 変形労働時間制を導入する方法
変形労働時間制を導入する際は大きく次のような工程を踏む必要があります。
- 労使協定の締結
- 就業規則への明記
変形労働時間制の導入は罰則にもかかわるため、適切に対応しましょう。
5-1. 労使協定の締結
変形労働制を導入するためには、企業は従業員と労使協定を締結しなければなりません。従業員と労使協定を結ばずに変形労働制を導入すると、罰則を科せられる可能性があります。従業員と労使協定を結んだら、所轄の労働基準監督署に提出しなければなりません。所轄の労働基準監督署に労使協定を提出しなかった場合も罰則を科せられてしまいます。
関連記事:変形労働時間制の労使協定に関する基礎知識を詳しく紹介
5-2. 就業規則への明記
労使協定を締結したら、就業規則に変形労働時間制について記載します。変形労働時間制について就業規則に記載する際は、次のような項目を載せましょう。
- 適用される従業員の範囲
- 対象期間と起算日
- 変形労働時間制の労働日と勤務時間
- 労使協定の有効期間
これらの情報を就業規則に明記しないと変形労働時間制が認められない可能性があります。
6. 変形労働時間制では残業の考え方に注意
変形労働時間制度は設定期間ごとに残業代が発生するケースや条件が異なります。とくに1年単位の変形労働時間制は注意が必要です。
上手く調整したつもりであっても、繁忙期が長引いた年や休日が少ない年などは、年間の労働時間が法定労働時間を超えてしまい、結局は残業代が発生してしまったというパターンは少なくありません。
変形労働時間を導入し、残業代削減につなげたい場合は、従業員の労働時間をしっかり管理し、法定労働時間を超えないよう調整しましょう。
関連記事:残業時間の定義とは?正しい知識で思わぬトラブルを回避!
残業時間は労働基準法によって上限が設けられています。
しかし、法内残業やみなし残業・変形労働時間制などにおける残業時間の数え方など、残業の考え方は複雑であるため、どの部分が労働基準法における「時間外労働」に当てはまるのか分かりにくく、頭を悩ませている勤怠管理の担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方に向け、当サイトでは労働基準法で定める時間外労働(残業)の定義から法改正によって設けられた残業時間の上限、労働時間を正確に把握するための方法をまとめた資料を無料で配布しております。
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