時短勤務の給料計算方法は?会社がおさえておくべき減額率の考え方 - ジンジャー(jinjer)|人事データを中心にすべてを1つに

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時短勤務の給料計算方法は?会社がおさえておくべき減額率の考え方

時短勤務の給料

働き方改革が進む今、注目されている制度が時短勤務です。時短勤務制度は、育児・介護休業法で定められており、各事業所でも制度の整備が求められます。ただし、働く時間が短くなるので、給料をどのように計算すべきか悩まれる方もいるでしょう。

時短勤務では提供される労働力が減少するため、それに合わせて給料も減額することが基本的な考え方です。しかし、労働者に不利益となる不当な減額があってはなりません。

今回は時短勤務時の給料計算について、人事担当者が知っておきたい基本的な考え方を解説します。

▼時短勤務についてより詳しく知りたい方はこちら
時短勤務とは?導入するための手順と問題点を解説

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1. 時短勤務とは?

時短勤務

時短勤務とは、2009年に改定された育児・介護休業法で定められた所定時間短縮措置のことです。厚生労働省の資料によると以下のように規定されています。

3歳に満たない子を養育する労働者に関して、1日の所定労働時間を原則として6時間とする短時間勤務制度を設けなければならない
要介護状態にある対象家族を介護する労働者に関して、所定労働時間短縮等の措置を講じなければならない

引用:厚生労働省「育児・介護休業制度ガイドブック」

この制度は、事業規模に関わらず全事業主に導入が義務付けられており、要件を満たした従業員から申請があった際は、時短勤務を認めなければなりません。時短勤務での労働時間は1日6時間が推奨されており、多くの企業でこれが採用されています。

なお、時短勤務制度が馴染まない業種などの労働者については「フレックスタイム制」や「出社・退勤時間の繰り上げ・繰り下げ」など、時短勤務の代替となる措置が必要です。

労働力が不足する分、企業が損をするイメージがあるかもしれませんが、給料を減額することは禁止されていません。そのため、時短勤務制度を採用しているほとんどの企業では、給料の減額がおこなわれています。ただし、給料を減額する際は、その金額が妥当なものであり、かつ従業員に不利益がない方法で実施されなければなりません。

2. 時短勤務の給料の2つの考え方

注意点

時短勤務における給料減額の基本的な考え方は以下の2つです。

  1. ノーワーク・ノーペイの原則
  2. 不利益取扱の禁止

育児・介護休業法には、給料の減額に関する明確な規定はありません。そのため、減額率は各事業主の裁量に任されますが、これらの考え方に従って自社の減額ルールを定める必要があります。

では、それぞれのルールを具体的に見ていきましょう。

2-1. ノーワーク・ノーペイの原則

ノーワーク・ノーペイの法則とは、労働基準法第24条で規定される給料計算の基本原則です。その名前の通り「働いていなければ給料は発生しない」という考え方を指します。

そもそも、給料とは労働者が提供した労働力の対価として雇用主が支払うものです。時短勤務は、フルタイム勤務に比べて提供される労働力も少なくなるため、ノーワーク・ノーペイの原則により短縮された労働時間分の給料減額が認められます。

2-2. 不利益取扱の禁止

不利益取扱の禁止は、育児・介護休業法内で取り決められている法令上の禁止事項のことです。育児や介護による休業や時短勤務を要請した従業員に対し、その要請を理由とした解雇やその他不利益な扱いをしてはなりません。

厚生労働省の資料によると、時短勤務を要請した従業員の不利益に該当する行為には以下のような例が当てはまります。

  • 時短勤務要請者を解雇すること
  • 期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと
  • 正社員を非正規雇用社員とするような労働契約内容の変更の強要すること
  • 労働者が希望する期間を超えて、残業制限や所定労働時間の短縮措置等を適用すること
  • 給料や賞与において不当な減額を行うこと
  • 昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと

 

特に、時短勤務を希望する正社員を、時給制のパートタイマーとして雇用する場合は要注意です。一般的に「正社員から非正規社員への雇用区分変更」は従業員にとって好ましいものではありません。この場合、従業員がその処遇に納得し同意した上での対応でなければ、従業員の不利益に該当します。

関連記事:時短勤務の残業時間とは?制限や企業の対応方法を解説

関連記事:時短勤務はいつまで取れる?気になる基準と就業規則の決め方

参考:厚生労働省「育児・介護休業制度ガイドブック」

3. 時短勤務の給料計算方法の例

給料減額率ここでは、一般的な時短勤務の給料の計算式や減額後の給料について解説します。
時短勤務時の給料は、以下の計算式で算出します。
基本給×時短勤務の所定労働時間÷通常の所定労働時間=時短勤務時の月給
では、具体的な条件を想定して計算してみましょう。

3-1. 時短勤務者の給料計算方法の例

【基本給】20万円
【通常の所定労働時間】1日8時間
【時短勤務時の所定労働時間】1日6時間
【月の出勤日数】20日

まずは、月の所定労働時間を算出します。

【通常の月の所定労働時間】 8時間×20日=160時間
【時短勤務時の月の所定労働時間】 6時間×20日=120時間

これらの数字を上記の計算式に当てはめます。

20万円(基本給)×120時間(実労働時間)÷160時間(所定労働時間)=15万円

減額された金額は5万円、つまり減額率は25%です。減額率について法令上の明確な規定はありませんが、25%までの減額であれば妥当であると考えられます。

3-2. 給料の手取り金額はさらに少なくなる

時短勤務時の給料の手取り金額は、基本給の減額率以上に少なくなります。なぜなら、時短勤務では原則として残業が発生しないうえ、改定月を迎えるまでは社会保険料や住民税も従来の金額が据え置かれるためです。

また、勤務時間の減少によって減額が認められるのは、月の基本給だけではありません。賞与についても減額が認められるため、従業員の年収は大きく減少します。時短勤務により基本給が25%減少した場合、手取り金額は半額程度まで減少すると想定しておきましょう。

ただし、育児休業後の時短勤務については社会保険料の改定制度も用意されています。このことを知らない従業員も多いので、担当者の方は時短勤務を希望する従業員に対して、保険料の減額措置も合わせて案内することを忘れないようにしましょう。

関連記事:時短勤務における社会保険の取り扱いや間違えやすいポイント

4. 時短勤務における給料減額率の考え方

控除額を確認する

時短勤務制度を適切に運用するため、適切な給料減額率の考え方を押さえておきましょう。
先述したように、ノーワーク・ノーペイの原則では時短勤務者の給料減額が可能となっています。つまり、企業側は自由に減額することができるのですが、従業員の不利益とならないよう、適切な減額率を定めなければなりません。

4-1. 基本給は労働時間の減少と比例して減額する

時短勤務が適用される従業員の給料は、労働時間の減少に比例して基本給が減額されます。具体的には、所定労働時間が8時間から6時間に短縮される場合、労働時間は通常の75%となります。したがって、基本給も通常の75%に設定され、給与計算が行われます。この方式は公平な給与計算の基本であり、時短勤務による労働時間の減少が直接的に基本給の減額に反映されることで、公平な給与体制を維持できます。

これにより、労働者に対する給与の透明性が確保され、企業としても法規制に準拠した適正な運用が可能となります。

4-2. 時間外割増・深夜割増・休日割増は適用される

時短勤務においても、時間外労働や深夜労働が発生した場合には、法定の割増賃金が適用されます。具体的には、時間外割増は法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超過する労働に対して25%の割増率が適用されます。なお、所定労働時間を超えただけでは時間外割増は適用されません。

深夜労働に関しては、22時から翌5時までの労働に対し25%の割増が適用され、これは時短勤務でも同様です。また、法定休日に労働があった場合も、休日労働に対する割増賃金を35%以上で支払う必要があります。

時短勤務の場合、特に育児や介護などの事情を抱える従業員が多いため、残業や深夜勤務、休日労働を求める際には本人の都合を十分に配慮する必要があります。

適法かつ公平な賃金計算を行うため、企業は関連法規を十分に理解し、適切に運用することが求められます。違反が発覚すると罰則が科される可能性もあるため、法律を遵守した対応が欠かせません。当サイトでは、時短勤務制度における法令遵守のための資料を無料で提供していますので、ぜひダウンロードしてご活用ください。

4-3. ボーナスは減額幅が大きいことも

時短勤務者のボーナスは減額される傾向があります。時短勤務により勤務時間が減少するため、月の基本給だけでなくボーナスの減額も認められ、その結果、従業員の年収は大きく減少します。ボーナス支給額は企業の就業規則に基づき計算され、主に次の方法があります。

まず、基本給を基準とする場合、例えば基本給の2か月分がボーナスであるとすると、時短勤務で基本給が25万円から18万7,500円に減少した場合、ボーナスも18万7,500円×2=37万5,000円となり、減額されます。

次に、企業業績や個人業績を基準とする場合も、フルタイム勤務と同様の基準で評価されますが、時短勤務の従業員には労働時間に応じた目標設定が必要です。これにより、公正な評価が可能となります。しかし、業績基準である以上、基本給の減少がそのままボーナスの減額に繋がることも少なくありません。したがって、時短勤務者のボーナスは企業や個人の評価基準に大きく影響を受け、減額幅が大きくなることが一般的です。

以上のように、時短勤務者の年収は基本給のみならずボーナスの減額によって大きく影響を受けるため、企業側は就業規則の明確化と適切な評価基準の設定が重要です。

5. 時短勤務の給料の注意点

注意点

給料というのは、企業が労働の対価として支払うものなので、時短勤務の給料も基本的には企業側が決められます。ただし、大幅な減額や不利益な取り扱いをしてしまうと、トラブルに発展するかもしれません。給料のトラブルが長引くと企業イメージもダウンするので要注意です。

ここでは、時短勤務における給料減額の注意点を解説します。

5-1. 給料や手当の減額率を就業規則に明記する

減給を伴う時短任務制度を実施する際は、就業規則に給料の減額率を明記しておきましょう。

基本的に、時短勤務時の給料減額に関しては、法令上の明確な規定がありません。そのため、給与の算出方法が不透明になりやすいので、事業主はわかりやすいルールを設定しておくことが重要です。また、減額率などは就業規則に明記して、従業員が安心して時短勤務制度を利用できる環境を整えることが大切です。

5-2. 社会保険料改定のために標準報酬月額を見直す

時短勤務により固定賃金が変更された従業員に対しては、社会保険料の適正な計算と支払いを行うために、必ず標準報酬月額の見直しを実施しましょう。

標準報酬月額は社会保険料の算出基準となる金額であり、通常は毎年4月から6月の3ヶ月間の平均給与から決定されます。しかし、固定賃金の変更により直近3ヶ月の平均給与に2等級以上の変動があった場合は、次の改定時期を待たずに標準報酬月額を改定します。これを標準報酬月額の随時改定と言います。

時短勤務では、この随時改定を行わないと社会保険料が減額されません。同様に、時短勤務からフルタイム勤務に戻る従業員に対しても標準報酬月額の見直しが必要です。そのため、時短勤務に関わる給与変動があった場合は適時見直しを行い、従業員の社会保険料を正確に管理することが重要です。

5-3. 給料の減額が適さない職種もある

時短勤務による給料の減額は違法ではありませんが、職種によっては給料減額が適さない場合があるので注意してください。

例えば、歩合制や裁量労働制で働いている従業員は「減額が適さない業種」に該当します。これらの働き方は、仕事の出来高で給料を決定するため、もともと労働時間が給料に影響しません。

このような場合は、時短勤務による仕事の出来高などを考慮し、労使双方が納得する形で給料を算出する必要があります。時短勤務開始後も仕事の出来高が分からないのであれば減給の必要はないでしょう。

5-4. 他の従業員との不公平を生まないようにする

近年では、福利厚生の一環として時短勤務でも給料を保証する会社が増えています。ただし、時短勤務に伴う減給を実施しない場合は、他の従業員との不公平が生まれる可能性があるので注意が必要です。

育児という明確な理由があるとはいえ、少ない労働時間で今まで通りの給料を受け取るわけですから、不公平に感じる従業員がいても不思議ではありません。不公平感というのは、モチベーションの低下につながります。

そのため、給料を保証する際は制度の趣旨をしっかりと示し、全従業員から理解を得ることが必要です。

6. 時短勤務でも給料が減らないのはいつから?

クエッションマークを浮かべる女性

現時点では、勤務先が給料保証をしていない場合の時短勤務に関しては、フルタイムで働けるようになるまで給料が減ることになります。ただし、「こども未来戦略方針」では「育児休業給付(仮)の創設」が検討されています。この施策は、時短勤務を選択することによる賃金の低下を補うためのもので、現在具体的な検討が進められています。

閣議決定した場合は、2025年の実施を目指すことになるので、スムーズに進めば2025年からは給料を減らすことなく時短勤務が可能になるかもしれません。まだ具体的なことは決まっていませんが、福利厚生などで給料保証ができない会社でも、給付されることで時短勤務の従業員の不満を解消出来る可能性があります。

参考:育児時短就業給付(仮称)の創設について|こども未来戦略方針

7. 育児・介護による時短勤務時の給料は正しく減額計算を!

最適な方法を選ぶ様子

時短勤務制度は、出産や育児、介護など従業員のライフスタイルに合わせて無理なく働くための制度です。時短勤務の給料に関しては、ノーワーク・ノーペイの原則によって減額が認められていますし、出産や育児で退職する従業員を減らせるというメリットがあります。

ただし、従業員が減額率などを理解していないと、給料に関して不満を持ってしまうかもしれません。また、給料を減らしたくないという思いから、時短勤務をしない従業員も出てくる可能性があります。そのため、時短勤務時の給料は明確なルールを定めてわかりやすく周知し、従業員が不満を持つことなく、気軽に時短勤務制度を利用できる環境を整えましょう。

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