時短勤務の給料計算方法は?2025年の減額率の考え方 - ジンジャー(jinjer)|クラウド型人事労務システム

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時短勤務の給料計算方法は?2025年の減額率の考え方

時短勤務の給料

働き方改革が進む今、注目されている制度が時短勤務です。時短勤務制度は、育児・介護休業法で定められており、制度の対象となっている事業所では早急な整備が求められています。ただし、働く時間が短くなるので、給料をどのように計算すべきか悩まれる方もいるでしょう。

時短勤務では提供される労働力が減少するため、それに合わせて給料も減額することが基本的な考え方です。しかし、労働者に不利益となる不当な減額があってはなりません。

今回は、時短勤務の考え方や給与計算の例、時短勤務の給料計算の注意点など、人事担当者が知っておきたい時短勤務について解説します。

▼時短勤務についてより詳しく知りたい方はこちら
時短勤務とは?導入するための手順と問題点を解説

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1. 時短勤務とは?

時短勤務

時短勤務とは、2009年に改定された育児・介護休業法で定められた所定時間短縮措置のことです。厚生労働省の資料では、以下のように規定されています。

事業主は、その雇用する労働者のうち、その三歳に満たない子を養育する労働者であって育児休業をしていないもの(一日の所定労働時間が短い労働者として厚生労働省令で定めるものを除く。)に関して、厚生労働省令で定めるところにより、労働者の申出に基づき所定労働時間を短縮することにより当該労働者が就業しつつその子を養育することを容易にするための措置(以下この条及び第二十四条第一項第三号において「育児のための所定労働時間の短縮措置」という。)を講じなければならない。

引用:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律|厚生労働省

この制度は、事業規模に関わらず全事業主に導入が義務付けられており、要件を満たした従業員から申請があった際は、時短勤務を認めなければなりません。時短勤務での労働時間は1日6時間が推奨されており、多くの企業でこれが採用されています。

なお、時短勤務制度が適さない業種の労働者については、「フレックスタイム制」や「出社・退勤時間の繰り上げ・繰り下げ」など、時短勤務の代替となる措置が必要です。

労働力が不足する分、企業が損をするイメージがあるかもしれませんが、給料を減額することは禁止されていません。そのため、時短勤務制度を採用しているほとんどの企業では、給料の減額がおこなわれています。ただし、給料を減額する際は、その金額が妥当なものであり、かつ従業員に不利益がない方法で実施されなければなりません。

2. 時短勤務の給料の2つの考え方

注意点

時短勤務における給料減額の基本的な考え方は以下の2つです。

  1. ノーワーク・ノーペイの原則
  2. 不利益取扱の禁止

育児・介護休業法には、給料の減額に関する明確な規定はありません。そのため、減額率は各事業主の裁量に任されますが、これらの考え方に従って自社の減額ルールを定める必要があります。

では、それぞれのルールを具体的に見ていきましょう。

2-1. ノーワーク・ノーペイの原則

ノーワーク・ノーペイの法則とは、労働基準法第24条で規定される給料計算の基本原則です。その名前の通り「働いていなければ給料は発生しない」という考え方を指します。

そもそも、給料とは労働者が提供した労働力の対価として雇用主が支払うものです。時短勤務は、フルタイム勤務に比べて労働時間が減少し、提供される労働力も少なくなるため、短縮された労働時間分の給料を減額しても問題ないとなります。

ただし、減額できるのは「減少した時間分」です。例えば、労働時間が8時間から6時間になるのであれば、減額していいのは2時間分だけで、それ以上減額すると「従業員の不利益」にあたるので注意してください。

2-2. 不利益取扱の禁止

不利益取扱の禁止は、育児・介護休業法内で取り決められている法令上の禁止事項のことです。育児や介護による休業や時短勤務を要請した従業員に対し、その要請を理由とした解雇やその他不利益な扱いをしてはなりません。

厚生労働省の資料によると、時短勤務を要請した従業員の不利益に該当する行為には以下のような例が当てはまります。

  • 時短勤務要請者を解雇すること
  • 期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと
  • 正社員を非正規雇用社員とするような労働契約内容の変更の強要すること
  • 労働者が希望する期間を超えて、残業制限や所定労働時間の短縮措置等を適用すること
  • 給料や賞与において不当な減額をおこなうこと
  • 昇進・昇格の人事考課において不利益な評価をおこなうこと

特に時短勤務を希望する正社員を、時給制のパートタイマーとして雇用する場合は要注意です。一般的に「正社員から非正規社員への雇用区分変更」は従業員にとって好ましいものではありません。この場合、従業員がその処遇に納得し同意した上での対応でなければ、従業員の不利益に該当します。

関連記事:時短勤務の残業時間とは?制限や企業の対応方法を解説

関連記事:時短勤務はいつまで取れる?気になる基準と就業規則の決め方

参考:Ⅱ 妊娠・出産・育児休業等を理由とする不利益取扱い」|厚生労働省

3.時短勤務は給料が減る

注意

時短勤務になれば労働時間が少なくなるため、給料が減るというのも当たり前のことです。

しかし、給料の減額はすべての従業員に当てはまるというわけではありません。実は、人事制度によって減るケースと減らないケースがあります。

ここでは、給料が減る例と減らない例を紹介するので、自社の人事制度と照らし合わせ、時短勤務の給料を適切に計算できているか再確認してみてください。

3-1.給料が減る例

給料が減るのは、下記の人事制度です。

  • 時間管理制
  • 時給制

時間管理制は、通常の「法定労働時間」に基づいて給与計算をおこないます。そのため、従業員が短時間勤務を申請した場合は、「給料減額率」により給料が減ります。時給制は、「時給×労働時間」で給与を計算するため、直接的に減ることになります。

時短勤務による給与減少を緩和する目的で、2025年7月から賃金の10%を補填する「育児時短就業給付」が施行されますが、実際に支払う給与は勤務時間と比例するので、結果的には「減る」可能性があることを理解しておきましょう。

3-2.給料が減らない例

給料が減らないのは、下記のような人事制度です。

  • 裁量労働制
  • 成果主義

裁量労働制というのは、仕事の業績や質で評価する人事制度なので、労働時間は関係ありません。つまり、裁量労働制で「8時間のみなし労働」の協定を締結しているのであれば、労働時間が4時間でも10時間でも「8時間働いている」ことになるので減給されないという例があります。

成果主義も、労働時間ではなく「成果」に対して報酬が決まる人事制度なので、成果さえ上げていれば減給されないのが一般的です。成果主義で給与が減少するのは、ノルマを達成できず成果を上げられなかった場合に限るので、時短勤務は給与には影響しないといえるでしょう。

3. 時短勤務の給料計算方法の例

給料減額率時短勤務時の給料は、下記の計算式で算出します。

基本給×時短勤務の所定労働時間÷通常の所定労働時間=時短勤務の月給

ただし、この計算で算出できるのは「給与」であって、実際の手取りはもう少し減少します。これらの仕組みを理解していないと、従業員から質問があった時に対応できないかもしれません。従業員は不当に減額されていると思ってしまうこともあるので、しっかり理解しておきましょう。

にここでは、一般的な時短勤務の給料の計算式の例や減額後の給料について解説します。

3-1. 時短勤務者の給料計算方法の例

【基本給】20万円
【通常の所定労働時間】1日8時間
【時短勤務時の所定労働時間】1日6時間
【月の出勤日数】20日

まずは、月の所定労働時間を算出します。

【通常の月の所定労働時間】 8時間×20日=160時間
【時短勤務時の月の所定労働時間】 6時間×20日=120時間

これらの数字を上記の計算式に当てはめます。

20万円(基本給)×120時間(実労働時間)÷160時間(所定労働時間)=15万円

減額された金額は5万円、つまり減額率は25%です。減額率について法令上の明確な規定はありませんが、25%までの減額であれば妥当であると考えられます。

3-2. 給料の手取り金額はさらに少なくなる

時短勤務時の給料の手取り金額は、基本給の減額率以上に少なくなります。なぜなら、時短勤務では原則として残業が発生しないうえ、改定月を迎えるまでは社会保険料や住民税も従来の金額が据え置かれるためです。

また、勤務時間の減少によって減額が認められるのは、月の基本給だけではありません。賞与についても減額が認められるため、従業員の年収は大きく減少します。時短勤務により基本給が25%減少した場合、手取り金額は半額程度まで減少すると想定しておきましょう。

ただし、育児休業後の時短勤務については社会保険料の改定制度も用意されています。このことを知らない従業員も多いので、担当者の方は時短勤務を希望する従業員に対して、保険料の減額措置も合わせて案内することを忘れないようにしましょう。

関連記事:時短勤務における社会保険の取り扱いや間違えやすいポイント

4. 時短勤務における給料減額率の考え方

控除額を確認する

時短勤務制度を的確に運用するためには、適切な給料減額率の考え方を押さえておく必要があります。
先述したように、ノーワーク・ノーペイの原則では時短勤務者の給料減額が可能となっています。つまり、企業側は自由に減額することができるのですが、従業員の不利益とならないよう、適切な減額率を定めなければなりません。

そこで、ここでは時短勤務における給料減額率の一般的な考え方を解説していきます。

4-1. 基本給は労働時間の減少と比例して減額する

時短勤務が適用される従業員の給料は、労働時間の減少に比例して基本給が減額されます。

具体的には、例えば所定労働時間が8時間から6時間に短縮される場合、労働時間は通常の75%となります。したがって、基本給も通常の75%に設定した状態で、給与計算がおこなわれます。

この方式は公平な給与計算の基本であり、時短勤務による労働時間の減少が直接的に基本給の減額に反映されることで、公平な給与体制を維持できます。

これにより、労働者に対する給与の透明性が確保され、企業としても法規制に準拠した適正な運用が可能となります。

4-2. 時間外割増・深夜割増・休日割増は適用される

時短勤務においても、時間外労働や深夜労働が発生した場合には、法定の割増賃金が適用されます。

具体的には、時間外割増は法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超過する労働に対して25%の割増率が適用されます。ただし、所定労働時間を超えただけでは時間外割増は適用されません。

深夜労働に関しては、22時から翌5時までの労働に対し25%の割増が適用され、これは時短勤務でも同様です。また、法定休日に労働があった場合も、休日労働に対する割増賃金を35%以上で支払う必要があります。

時短勤務の場合、特に育児や介護などの事情を抱える従業員が多いため、残業や深夜勤務、休日労働を求める際には本人の都合を十分に配慮する必要があります。

適法かつ公平な賃金計算を行うため、企業は関連法規を十分に理解し、適切に運用することが求められます。違反が発覚すると罰則が科される可能性もあるため、法律を遵守した対応が欠かせません。当サイトでは、時短勤務制度における法令遵守のための資料を無料で提供していますので、ぜひこちらからダウンロードしてご活用ください。

4-3. ボーナスは減額幅が大きいことも

時短勤務者のボーナスは、減額される傾向にあります。時短勤務というのは勤務時間が減少するため、月の基本給だけでなくボーナスの減額も認められ、その結果、従業員の年収にも影響するので計算ミスがないようにしましょう。

ボーナス支給額は企業の就業規則に基づき計算されますが、一例をあげると以下のような計算方法になります。

基本給を基準とする場合、例えば基本給の2か月分がボーナスであるとすると、時短勤務で基本給が25万円から18万7,500円に減少した場合、ボーナスは18万7,500円×2=37万5,000円です。

企業業績や個人業績を基準とする場合は、時短勤務の従業員には労働時間に応じた目標設定が必要です。時短勤務者はフルタイム勤務者よりも労働時間が短く成果を出しづらくなるので、労働時間に応じた目標設定をすることにより、公正な評価が可能となります。

しかし、業績基準である以上、基本給の減少がそのままボーナスの減額に繋がることも少なくありません。したがって、時短勤務者のボーナスは企業や個人の評価基準に大きく影響を受け、減額幅が大きくなることが一般的です。

以上のように、時短勤務者の年収は基本給のみならずボーナスの減額によって大きく影響を受けるため、企業側は就業規則の明確化と適切な評価基準の設定が重要です。

5. 時短勤務の給料の注意点

注意点

給料というのは、企業が労働の対価として支払うものなので、時短勤務の給料も基本的には企業側が決められます。

ただし、大幅な減額や不利益な取り扱いをしてしまうと、トラブルに発展するかもしれません。給料のトラブルが長引くと、企業イメージがダウンするだけでなく、求人採用も難しくなる可能性があるので要注意です。

ここでは、時短勤務における給料減額の注意点を解説します。

5-1. 給料や手当の減額率を就業規則に明記する

減給を伴う時短任務制度を実施する際は、就業規則に給料の減額率を明記しておきましょう。

基本的に、時短勤務時の給料減額に関しては、法令上の明確な規定がありません。そのため、給与の算出方法が不透明になりやすく、これが従業員の不満やモチベーションの低下、会社への不信感を引き起こしてしまうことがあります。

このような状況を防ぐためにも、事業主はわかりやすいルールを設定しておくことが重要です。また、減額率などは就業規則に明記して、従業員が安心して時短勤務制度を利用できる環境を整えると、満足度やエンゲージメントのアップにつながります。

5-2. 社会保険料改定のために標準報酬月額を見直す

時短勤務により固定賃金が変更された従業員に対しては、社会保険料の適正な計算と支払いをおこなうために、必ず標準報酬月額の見直しを実施しましょう。

標準報酬月額は社会保険料の算出基準となる金額であり、通常は毎年4月から6月の3ヶ月間の平均給与から決定されます。しかし、固定賃金の変更により直近3ヶ月の平均給与に2等級以上の変動があった場合は、次の改定時期を待たずに標準報酬月額を改定します。これを標準報酬月額の随時改定と言います。

時短勤務では、この随時改定をおこなわないと社会保険料が減額されません。同様に、時短勤務からフルタイム勤務に戻る従業員に対しても標準報酬月額の見直しが必要です。

そのため、時短勤務に関わる給与変動があった場合は適時見直しをおこなって、従業員の社会保険料を正確に管理することが重要です。

5-3. 給料の減額が適さない職種もある

時短勤務による給料の減額は違法ではありませんが、職種によっては給料減額が適さない場合があるので注意してください。

例えば、歩合制や裁量労働制で働いている従業員は「減額が適さない業種」に該当します。これらの働き方は、仕事の出来高や成果で給料を決定するため、もともと労働時間の給料への影響はありません。それなのに、インセンティブなどを減らしてしまったら、従業員からの反発が起こったりモチベーションの低下を引き起こしたりする可能性があります。

歩合制や裁量労働制の制度を導入している場合は、時短勤務による仕事の出来高などを考慮し、労使双方が納得する形で給料を算出する必要があります。そもそも、時短勤務開始後も仕事の出来高が変わらないのであれば、減給の必要はないでしょう。

5-4. 他の従業員との不公平を生まないようにする

近年では、福利厚生の一環として時短勤務でも給料を保証する会社が増えています。ただし、時短勤務に伴う減給を実施しない場合は、他の従業員との不公平が生まれる可能性があるので注意が必要です。

育児という明確な理由があるとはいえ、少ない労働時間で今まで通りの給料を受け取るわけですから、不公平に感じる従業員がいても不思議ではありません。不公平感というのは、モチベーションの低下につながります。

仕事や会社への愛着がなくなると、離職するリスクも高くなります。

そのため、給料を保証する際は制度の趣旨をしっかりと示し、全従業員から理解を得ることが必要です。

6. 時短勤務でも給料が減らないのはいつから?

クエッションマークを浮かべる女性

現時点では、勤務先が給料保証をしていない場合の時短勤務に関しては、フルタイムで働けるようになるまで給料が減ることになります。

ただし、「こども未来戦略方針」では「育児時短就業給付金」が2025年4月より施行されます。この施策は、時短勤務を選択することによる賃金の低下を補うためにおこなわれます。

支給額や支給率は、原則として育児時短就業中に支払われる賃金の10%相当です。ただし、賃金水準を超えないように調整し、賃金額と支給額の合計が支給限度額を超えた場合は減額されます。

支給対象や支給期間も決まっているので、担当者の方はしっかり確認しておきましょう。

参考:2025年4月から「育児時短就業給付金」を創設します|厚生労働省

7. 育児・介護による時短勤務時の給料は正しく減額計算を!

最適な方法を選ぶ様子

時短勤務制度は、出産や育児、介護など従業員のライフスタイルに合わせて無理なく働くための制度です。時短勤務の給料に関しては、ノーワーク・ノーペイの原則によって減額が認められていますし、出産や育児で退職する従業員を減らせるというメリットがあります。

ただし、従業員が減額率などを理解していないと、給料に関して不満を持ってしまうかもしれません。また、給料を減らしたくないという思いから、時短勤務をしない従業員も出てくる可能性があります。

そのため、時短勤務時の給料は明確なルールを定めてわかりやすく周知し、従業員が不満を持つことなく、気軽に時短勤務制度を利用できる環境を整えましょう。

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