転職で住民税の支払いはどうなる?納付方法や時期について解説
更新日: 2025.6.11
公開日: 2025.6.2
jinjer Blog 編集部
「転職した社員の住民税の支払い方法はどうすれば良い?」
「いつまでに、どのような切り替え手続きをすれば良いかわからない」
上記のような疑問をお持ちではないでしょうか。
転職する社員の住民税は、転職先の有無によって納付方法が変わることがあります。手続きの違いによって給与からの天引きが一時的に止まったり、個人で納付したりする必要がある点を押さえておきましょう。
転職の時期によっては、住民税の納付方法を「特別徴収」から「普通徴収」への変更が必要です。
本記事では、転職時の住民税の仕組みや納付方法などを解説します。人事・労務担当者や転職後の住民税について疑問がある方は、ぜひ参考にしてください。
目次
1. 転職の際の住民税の決まり方
転職すると住民税の納付方法が変わることがあります。
転職前後で住民税がどのように決まるのか、納付方法はどう変化するのか以下の順に理解しておきましょう。
- 住民税は教育や行政サービスにかかる税金
- 住民税は転職者の前年の所得が基準となる
1-1. 住民税は教育や行政サービスにかかる税金
住民税とは、学校運営やゴミ収集など地域の公共サービスの財源となるお金です。住民税は「市町村民税」と「道府県民税」の2つから構成され、均等割と所得割に分かれています。
均等割は一律の金額が課され、所得割は所得金額に応じた税率で計算される仕組みです。1月1日時点でその自治体に住所がある人に課税されます。
住民税は地域の教育、福祉、ゴミ処理、道路整備など行政サービスに使われるケースが大半です。
参考:個人住民税|総務省
1-2. 住民税は転職者の前年の所得が基準となる
住民税は前年の1月から12月までの所得に基づいて計算されます。翌年の6月から翌々年の5月までの期間に納付する「後払い型」の税金です。そのため、転職して現在の収入が増えても減っても、その年度の住民税額は前年の所得をもとに計算されます。
住民税の納付方法は「特別徴収」と「普通徴収」の2種類です。
特別徴収は勤務先の会社が従業員の給与から、毎月自動的に住民税を天引きして市区町村に納付する方法があります。普通徴収は、市区町村から直接納付書が送られてきて個人が自分で支払う方法です。
転職後の住民税は、納付金額だけでなく納付方法が異なる点にも注意しましょう。
2. 住民税の納付方法は転職先によって異なる
住民税の納付方法は転職先の状況によって変わります。
- 転職先が決まっている社員
- 転職先が決まっていない・空白期間がある社員
上記の転職先の状況別に、住民税の納付パターンと必要な手続きを見ていきましょう。
2-1. 転職先が決まっている社員
転職先が決まっている従業員の場合、住民税の特別徴収を引き継いで利用できます。
転職前の会社で「給与所得者異動届出書」が提出されたのち、市区町村から特別徴収税額通知書が届き、特別徴収が引き継がれる流れです。この場合、従業員の給与から住民税を天引きし、納付を代行する義務があります。
入社時に前職での住民税の徴収状況について確認し、必要に応じて特別徴収への切替手続きを案内しておくと、従業員と会社双方のトラブルを防止できるでしょう。
2-2. 転職先が決まっていない・空白期間がある社員
転職先が決まっていない、または退職後に空白期間がある従業員の場合、住民税は「普通徴収」に切り替わるのが一般的です。
従業員が退職する際には、退職後の住民税の納付方法を説明し、普通徴収に切り替わる可能性があることを伝えましょう。市区町村から納付書が直接元従業員に送付されるため、確実に受け取れる住所を確認しておくと親切です。
退職時には「給与所得等の特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を市区町村に提出します。この手続きを怠ると、会社に特別徴収の義務が残ったままになる可能性があるため注意が必要です。
3. 転職時期によっては住民税の納付時期が変わる
住民税の課税は転職時期によって納付方法や時期が変わる点を押さえておきましょう。ここでは、以下の時期に分けて対応方法を解説します。
- 1月1日~4月30日に転職する場合
- 5月1日~5月31日に転職する場合
- 6月1日~12月31日に転職する場合
3-1. 1月1日~4月30日に転職する場合
1月〜4月に転職する従業員については、5月分までに収める必要がある住民税を、退職する月の給与から天引きして一括徴収します。
ただし、退職月の給与と退職金の合計額が住民税額より少ない場合、普通徴収への切替が可能です。
新入社員については、前職での住民税納付状況を確認し、一括徴収済みか普通徴収に切り替わっているかを把握しておきましょう。6月からの住民税については、5〜6月頃に届く「住民税決定通知書」で確認できます。
3-2. 5月1日~5月31日に転職する場合
5月に転職する従業員の住民税は、6月に給与から差し引かれるため、一括徴収の必要はありません。
6月以降の新年度分は普通徴収に切り替えるか、転職先が決まっている場合は特別徴収を引き継ぐための手続きを忘れずおこないましょう。
3-3. 6月1日~12月31日に転職する場合
6月から12月に転職する従業員の場合、特別徴収か普通徴収のいずれかを選択できます。従業員の希望に応じて、手続きしましょう。
従業員から依頼があれば、退職月から翌年5月分までの住民税を退職月の給与または退職金から一括で徴収することもできます。
この時期は年度の途中であるため、社内での手続きが複雑になりがちです。従業員との連携を取りながらトラブルを防止しましょう。
4. 転職者の住民税に関する注意事項
人事・労務担当者として転職者の住民税を扱う際は、以下の点に注意して手続きを進める必要があります。
- 特別徴収の引継ぎミスによる二重徴収・未徴収
- 住民税の納付が漏れた場合の対応方法
4-1. 特別徴収の引継ぎミスによる二重徴収・未徴収
退職手続きで書類の提出漏れや特別徴収の引継ぎ不足があると、住民税が二重徴収されるケースがあるため注意しましょう。万が一、二重徴収が発生した場合でも、過誤納金還付により超過分が戻ってくるため心配は不要です。
普通徴収の切り替え忘れや、新しい会社での特別徴収開始の手続きが遅れたりしていると、徴収漏れが発生したりする可能性があります。後から大きな金額の請求が従業員に届き、トラブルになりかねません。
上記の問題を防ぐためには、社員の入社時に前職での住民税の納付状況を必ず確認することが重要です。退職する従業員に対しては、住民税の仕組みや手続きを説明しておきましょう。
4-2. 住民税の納付が漏れた場合の対応方法
住民税の支払いが漏れた場合、市区町村から督促状が送付されます。放置すると期限の翌日から納付日までの日数で延滞金が発生し、未納期間が長くなるほど負担が増えるため注意してください。
納付してから反映までに1~2週間程度かかるため、納付済みにもかかわらず行き違いで督促状が届く場合もあります。住民税の納付書の控えや振込記録は必ず保管しておきましょう。
督促状発送後も納付がない場合、催告書が送付され、最終的には財産の差し押さえなどの滞納処分がおこなわれる可能性があります。会社の信用問題にもつながるため、住民税の納付管理は的確におこないましょう。
参考:市税を納期限内に支払えなかった場合、どうなりますか。|横浜市
5. 転職者の住民税の徴収方法を理解して未納・給与トラブルを防ごう
転職者の住民税に関するトラブルを防ぐには、納付方法や手続きの理解が重要です。特に、転職時期や転職先の状況によって、納付方法を変更する必要があると理解しておきましょう。
新入社員には前職からの引継ぎ手続きを、退職する従業員には住民税の納付方法を説明しておくと安心です。
住民税に関する知識を押さえて、二重徴収や未納などのトラブルを防ぎましょう。
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