賞与(ボーナス)から引かれる源泉所得税の計算方法をわかりやすく解説
更新日: 2025.12.17 公開日: 2022.3.22 jinjer Blog 編集部

賞与(ボーナス)にかかる源泉所得税の計算方法は、毎月の給与計算とは異なり、原則として「算出率の表」を用いておこないます。
ただし、賞与が前月の給与の10倍を超える場合や、前月に給与の支払いがなかった場合は、「源泉徴収税額表(月額表)」を使用する特別なケースもあるので、正しい理解が欠かせません。
本記事では、賞与から源泉徴収する所得税の基本的な計算手順をわかりやすく解説します。あわせて、源泉徴収や年末調整を効率的におこなうための実務ポイントも紹介します。
関連記事:所得税とは?源泉所得税や定額減税など複雑な処理を詳しく解説
目次
毎月の給与計算、特に所得税や住民税の計算は複雑で、法改正も発生するため「本当にこれで合っているだろうか…」と不安に感じる瞬間は少なくないはずです。
徴収や納付の遅延は、延滞税の発生や従業員との信頼関係にも影響しかねません。
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▼この資料でわかること
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間違いやすい所得税・住民税計算の具体的な注意点
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源泉徴収税額表の正しい見方と、年税額の算出プロセス
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1. 賞与(ボーナス)から天引きされる源泉所得税の計算方法


賞与(ボーナス)から天引きする源泉所得税は、「算出率の表」を使って計算するのが原則です。なお、賞与の定義は次の通りです。
賞与とは、定期の給与とは別に支払われる給与等で、賞与、ボーナス、夏期手当、年末手当、期末手当等の名目で支給されるものその他これらに類するものをいいます。
そのため、毎月支払う給与とは計算方法が異なります。ここでは、賞与に対する源泉所得税の計算の仕方について詳しく紹介します。
1-1. 扶養控除等申告書の提出有無を確認する
まず「扶養控除等申告書」の提出の有無を確認しましょう。提出がある場合は「甲欄」、提出がない場合は「乙欄」を使って計算をおこなうことになります(※この章では甲欄を使って求める方法を紹介します)。
なお、扶養控除等申告書の提出期限は、その年最初の給与支払日の前日までとされています。扶養親族等の人数(一定の配偶者や子など)によって源泉所得税の計算金額が変わってくるので、正しく申告してもらうことが重要です。
参考:A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告|国税庁
1-2. 前月の給与から社会保険料等を差し引く
次に、前月の給与から社会保険料等を差し引きます。なお、社会保険料等とは、所得税法上の社会保険料と小規模企業共済等掛金を指します。
1-3. 「算出率の表」を用いて税率を求める
前月の給与から社会保険料等を差し引いた金額と扶養親族等の人数を突き合わせて税率を求めます。
例えば、前月の給与総額30万円、社会保険料等6万円の場合、前月の給与から社会保険料等を差し引いた金額は24万円となります。
「扶養控除等申告書」に記載されている扶養親族等の人数が1人の場合、「252千円以上300千円未満」に該当し、税率は「6.126%」と求められます(※令和7年分の算出率の表を参考)。
参考:賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和7年分)|国税庁
1-4. 賞与から社会保険料等を差し引き税率を掛け合わせる
最後に、支給する賞与額から社会保険料等を差し引き税率を掛け合わせることで、賞与に対する源泉所得税が計算できます。
例えば、賞与総額50万円、社会保険料等10万円の場合、「1-3章」で求めた税率6.126%を用いると、次のように源泉所得税を計算できます。
源泉所得税: = (賞与総額:50万円 - 社会保険料等:10万円) × 6.126%
この計算された源泉所得税は、賞与を支払った月の翌月10日までに納付します。納期の特例を利用する場合、その年の7月10日と翌年1月20日が納付期限となります。
参考:No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例|国税庁
関連記事:所得税の納付方法は?納税方法の種類やおすすめの選び方・納付期限を解説
1-5.【注意】令和7年度税制改正により令和8年分から「算出率の表」が変更される
令和7年度税制改正により、基礎控除や給与所得控除の見直しなどがおこなわれました。これに伴い、令和8年分から「算出率の表」が変わります。数値が変わるだけでなく、扶養親族等の人数の判定(例:控除対象扶養親族から源泉控除対象親族に変更)も変わるので注意が必要です。
参考:賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和8年分)|国税庁
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2. 賞与が前月の給与の10倍を超える場合の源泉所得税の計算方法


賞与の金額が前月の給与に比べて極端に大きい場合には、通常の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」は使用せず、特別な計算方法で税額を求めます。なお、賞与が前月の給与の10倍を超えるかどうかは、それぞれの金額から社会保険料等を差し引いた後の金額で判定する点に注意が必要です。
このようなケースでは、「月額表」を用いて源泉所得税を算出します。ここでは、賞与が前月の給与の10倍を超える場合の源泉所得税の計算手順を詳しく説明します。
2-1. 賞与から社会保険料等を差し引いた金額を6または12で除する
まず、賞与の金額から社会保険料等を差し引きます。その後、控除後の金額を「6」または「12」で割ります(この金額をAと定義する)。なお、賞与の計算期間が6ヵ月を超える場合に「12」を使って計算するので注意が必要です。
2-2. 前月の給与から社会保険料等を差し引いた金額を加算する
次に、前月に支給した給与の額から社会保険料等を差し引き、その控除後の金額を求めます。この金額を、先ほど算出したAに加算します(この金額をBと定義する)。
2-3. 「月額表」を用いて税額を求める
Bをもとに源泉徴収税額表(月額表)を使って、税額を求めます(この金額をCと定義する)。このとき、扶養控除等申告書の提出状況をもとに、扶養親族等の人数に応じた該当する税額を確認します。この月額表を使う点が、通常の賞与計算方法(賞与用の税率表を使用)との大きな違いです。
2-4. 前月の給与の源泉所得税を差し引き6または12を掛け合わせる
Cから、まず前月の給与から実際に源泉徴収した所得税額を差し引きます。その差額に、最初に使用した「6」または「12」を掛け合わせることで、賞与に対する源泉所得税額が算出されます。
この計算により、賞与が特別に高額な場合でも、所得税の負担が月額ベースで適正に反映されるようになります。
関連記事:源泉徴収票の乙欄の意味とは?記載すべき内容や甲欄・丙欄との違いを解説
3. 賞与から引かれる社会保険料等の種類


賞与(ボーナス)に対する源泉所得税は、社会保険料等(社会保険料および小規模企業共済等掛金)を差し引いて計算する必要があります。ここでは、その社会保険料等に含まれる具体的な項目について説明します。
3-1. 健康保険料
健康保険料は、「標準賞与額 × 健康保険料率 ÷ 2」という式で算出されます。
標準賞与額とは、賞与の額面金額から1,000円未満を切り捨てた額のことで、額面金額が52万3,600円の場合、標準賞与額は52万3,000円となります。
健康保険料率に関しては、「協会けんぽ」では都道府県ごとに異なっているので、協会けんぽのホームページに載せられている保険料額表で確認するとよいでしょう。
関連記事:標準賞与額の意味や保険料を計算する方法を詳しく紹介
3-2. 介護保険料
40歳以上の方の場合は、健康保険料に加えて介護保険料も支払う必要があります。
上述した協会けんぽの保険料額表には、介護保険料率を加味したものも記載されているので、40歳以上の方はそちらの数値を参照して保険料の算出をおこなってください。
なお、健康保険組合がある企業にお勤めの場合は、健康保険料と介護保険料率が独自に決められています。
保険料を計算したい場合は、健保組合に問い合わせてそれぞれの料率を確認しましょう。
3-3. 厚生年金保険料
厚生年金保険料は、「標準賞与額 × 厚生年金保険料率 ÷ 2」という式で算出されます。
計算に用いられる料率が健康保険料率から厚生年金保険料率に変わった以外は、健康保険料の算出方法と同じです。
厚生年金保険料率は徐々に引き上げられていましたが、平成29年9月に引き上げが終了し、現在では18.3%で固定となっています。
3-4. 雇用保険料
雇用保険料は、「賞与額面 × 雇用保険料率」という式で算出されます。
健康保険料や厚生年金保険料では、標準賞与額を用いて算出していましたが、雇用保険料は賞与の額面金額をそのまま用いることには注意しておきましょう。
雇用保険料は企業と従業員それぞれで負担割合が定められています。健康保険料や厚生年金保険料は労使折半で計算しますが、雇用保険料と計算方法が異なるため注意が必要です。
雇用保険料率は企業の業態によって異なり、また、年度によっても変わるので詳しくは厚生労働省のページをご確認ください。
3-5. 小規模企業共済等掛金
賞与の源泉所得税を計算するときは、社会保険料だけでなく「小規模企業共済等掛金(例:iDeCo)」も考慮する必要があります。もっとも、この掛金を支払っていない人や、給与・賞与から天引きされていない人には関係しません。
小規模企業共済等掛金が源泉所得税の計算に影響するのは、所得控除の一つである「小規模企業共済等掛金控除」の対象となるためです。掛金を支払っている場合、その分所得が減り、課税対象額が小さくなるので、給与や賞与の源泉徴収税額にも反映されます。
参考:法第74条《社会保険料控除》及び第75条《小規模企業共済等掛金控除》関係|国税庁
4. 賞与における源泉所得税を計算する際の注意点やポイント


ここでは、賞与(ボーナス)に対する源泉所得税を計算する際の注意点やポイントを紹介します。
4-1. 前月の給与の支払いがない場合は「月額表」を用いて税額を求める
前月に給与の支払いがない場合は、通常の方法で賞与に対する源泉所得税を計算することができません。そのため、この場合は前月の給与を考慮せず、源泉徴収税額表(月額表)を用いて税額を算出します。
まず、賞与の額から社会保険料等を差し引いた金額を「6」または「12」で割ります。次に、その金額を「月額表」に当てはめて税額を求めます。最後に、その求めた税額に、最初に用いた「6」または「12」を掛け合わせることで、賞与から天引きすべき最終的な源泉所得税額が算出されます。
関連記事:給与計算における所得税の計算方法とは?源泉徴収の仕組みも解説
4-2. 年税額と源泉徴収税額の差は年末調整により精算する
賞与は支給のたびに源泉徴収され、あらかじめ概算の所得税が差し引かれます。しかし、年間を通して見た場合、この源泉徴収額と実際に計算される年間の所得税額には差が生じることがあります。これは、給与や賞与の源泉徴収があくまで目安として計算されているためです。
この差額は、年末調整という制度で精算されます。源泉徴収で多く徴収されていた場合には過剰分が還付され、逆に不足していた場合には追加で納付することになります。この仕組みにより、従業員は年間を通して適正な税額を納めることが可能となります。
関連記事:年末調整とは?目的や確定申告との違い、基本的な流れを人事担当者向けに解説
4-3. 給与等(給与や賞与など)の収入が2,000万円を超える人は確定申告が必要
その年の給与等の総額が2,000万円を超える従業員については、年末調整の対象外となります。したがって、企業側で年末調整をおこなうのではなく、従業員本人が翌年に確定申告をする必要があります。この「2,000万円超」の判定には、基本給や各種手当のほか、賞与も含まれる点に注意しましょう。
また、確定申告の際には、企業が発行する源泉徴収票が必要です。記載内容に誤りがあると、従業員の申告手続きに支障をきたすおそれがあります。「支払金額」「源泉徴収税額」「社会保険料控除額」などを正確に記載し、翌年1月31日までに交付するようにしましょう。
関連記事:年末調整の対象者とは?必要書類や確定申告との関係も解説
5. 賞与の源泉所得税の計算を効率化する方法


賞与(ボーナス)の源泉所得税を手作業で計算すると、時間がかかるだけでなく、入力ミスや税率の適用誤りといった人的ミスも発生しやすくなります。
こうした負担を減らし、正確かつ迅速に処理するためには、日常的に効率的な管理体制を整えておくことが大切です。ここでは、実務をスムーズに進めるための具体的な方法を紹介します。
5-1. 源泉徴収簿を活用する
賞与から天引きする所得税の計算や管理には、源泉徴収簿の活用が効果的です。賞与を計算する際は、各従業員の「前月の社会保険料控除後の給与額」や「扶養親族等の人数」など、源泉所得税の算出に必要な情報を正確に把握することが欠かせません。これらの情報に誤りがあると、源泉徴収額の過不足が生じ、後に修正対応が必要となる可能性があります。
源泉徴収簿をきちんと整備しておけば、賞与支給時に必要な情報をすぐに確認でき、計算作業を効率的に進められます。また、給与や賞与の支給履歴を通年で管理できるので、年末調整や法定調書(源泉徴収票など)を作成する際にも、信頼性の高い基礎資料として活用が可能です。
さらに、エクセルなどの表計算ソフトで源泉徴収簿を管理する場合は、税率表や扶養親族の情報を最新の内容に更新できる仕組みを整えておくことが重要です。毎年改訂される「源泉徴収税額表」に自動的に対応できるように設定しておけば、入力ミスや税率変更の見落としを防ぎ、より正確かつスムーズな処理が可能になります。
参考:A2-2 給与所得・退職所得に対する源泉徴収簿の作成|国税庁
関連記事:源泉徴収簿の作成方法・手順とは?必要性や注意点も解説
5-2. 給与計算ソフトを導入する
人的ミスを防ぎ、正確性を高めるためには、給与計算ソフトの導入が効果的です。賞与の源泉所得税を手作業で計算すると、算出率表の読み違いや端数処理の誤りなど、わずかなミスが大きな差額につながるおそれがあります。特に、従業員数が多い企業や賞与を複数回に分けて支給する場合には、確認作業にも多くの時間と労力が必要です。
給与計算ソフトを活用すれば、従業員ごとの基本給・賞与額・社会保険料・扶養家族の有無といった登録情報をもとに、源泉所得税を自動で算出できます。さらに、年末調整機能を備えたソフトであれば、毎月の給与や賞与の源泉徴収だけでなく、1年間の所得税の精算(年末調整)まで一貫して処理できます。
また、最新の税制改正や法令変更に自動対応できるシステムを導入すれば、税率表や控除額を手動で更新する必要もありません。常に最新のルールに基づいた正確な計算がおこなえるので、法令遵守を保ちながら、効率的でミスのない給与・賞与計算を実現できます。
関連記事:年末調整でマイナス表記が起きるのはなぜ?その理由と対処方法を詳しく解説
6. 賞与にかかる所得税の計算方法を正しく理解しよう


賞与(ボーナス)から差し引かれる源泉所得税は、原則として「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を用いて計算します。この際、前月の給与から社会保険料等を控除した金額や、扶養控除等申告書に記載された内容を反映させる必要があります。
なお、賞与の金額が前月の給与の10倍を超える場合や、前月の給与の支払いがない場合には、「月額表」を使用するなど、特別な計算方法で税額を求めるので注意が必要です。計算作業の効率化と精度向上のためには、源泉徴収簿の活用や給与計算ソフトの導入が効果的です。



毎月の給与計算、特に所得税や住民税の計算は複雑で、法改正も発生するため「本当にこれで合っているだろうか…」と不安に感じる瞬間は少なくないはずです。
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