パートタイム・有期雇用労働法の第8条について分かりやすく解説
パートタイム・有期雇用労働法第8条では、正社員と短時間労働者、有期雇用労働者の不合理な待遇差を禁止しています。
この記事では、人事担当者向けにパートタイム・有期雇用労働法第8条の内と、第8条に当てはまるケース、第8条を守るためにすべきことを解説します。
▼パートタイム・有期雇用労働法と併せて知りたい「同一労働同一賃金」についてはこちら
同一労働同一賃金とは?適用された理由やメリット・デメリットについて
目次
同一労働同一賃金に罰則はありませんが、放置すると損害賠償のリスクが高くなります。
同一労働同一賃金とは、「正社員と非正規社員を平等に扱う概念」のように認識されていても、具体的にどのような対策が必要かわからない方も多いのではないでしょうか?
本資料では、どのような状態が「不平等」とみなされうるのかや、企業が対応すべきことを4つの手順に分けて解説しております。 自社でどのような対応が必要か確認したい方は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1.パートタイム・有期雇用労働法の第8条とは?
パートタイム・有期雇用労働法の第8条とは、「不合理な待遇の禁止」を規定した条文です。
短時間・有期雇用労働者と正社員の業務内容や責任の程度を比較し、基本給や賞与、その他待遇に合理的でない差を設けてはならないとしています。[注1]
第8条は、均衡待遇規定(きんこうたいぐうきてい)ともいわれ「つり合いのとれた待遇を取ることを」規定している条文です。
待遇差を設けることを一切禁止するものではなく、設けるならば、職務内容と責任の程度などに応じた合理的なものであることを求めています。
第8条で考慮すべき事項は下記となります。
- 職務内容
- 職務内容・配置変更の範囲
- その他の事情
それぞれの内容を詳しく解説します。
[注1]短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律 | e-Gov法令検索
1-1. 職務内容
職務内容が同じか否かは、内容だけでなく、責任の程度も当てはまります。
正社員と短時間・有期雇用労働者の職務内容は、下記の手順で同一か判断します。
1. 職種を比較する(営業職・事務職、など)同じ場合は次を確認
2. 中核となる業務を比較する。なお、中核的業務とは以下の3つの基準に判断します。
- 職務内容に不可欠な業務
- 業務成果が事業所の業績に与える影響の大きい業務
- 従業員の職務全体に占める時間・賃金の割合が大きい業務
3. 責任の程度を比較する。責任の程度では以下の3つより総合的に判断します。
- 業務成果で求められる役割
- トラブル発生時の対応(クレーム対応や緊急時の対応)
- 成果に対する期待度(ノルマなど)
これらがほぼ同じなら、職務内容は同一の労働と判断されます。
関連記事:同一労働同一賃金で業務における責任の程度はどう変化する?
1-2. 職務内容・配置変更の範囲
職務内容・配置変更の範囲では、転勤の有無などを下記の手順で確認していきます。
- 転勤はあるか
- 転勤の範囲に違いはあるか(同一市内のみか、全国転勤かなど)
- 職務内容・配置転換はあるか(別の課に変わる可能性があるかなど)
- 職務内容・配置転換の範囲に違いはあるか(営業職から事務職に転換するなど)
上記が同一なら、職務内容・配置変更が同一の労働と判断されます。
1-3. その他の事情
「職務の内容」、「職務の内容・配置の変更の範囲」以外の事情で、個々の状況に合わせて、その都度検討します。
成果、能力、経験、合理的な労使の慣行、労使交渉の経緯は「その他の事情」として想定されています。
判例では、上記をただちに不合理とするのではなく、該当する賃金項目の趣旨(どのような理由で支払っているか)も考慮したうえで判断すべきとしています。
そのため、定年再雇用後の短時間労働者の待遇は、より総合的な判断が必要とされます。
以上の項目から総合的に同一の労働か否かを判断します。
関連記事:定年後再雇用は同一労働同一賃金の対象になる?メリット・デメリットも解説
関連記事:同一労働同一賃金における60歳以上の定年後再雇用の扱いとは
2.パートタイム・有期雇用労働法の第8条に当てはまること
パートタイム・有期雇用労働法第8条では、正社員と短時間・有期雇用労働者の職務や責任の範囲が同一である場合、あらゆる待遇に差を設けることを禁止しています。
待遇とは、何が該当するか解説します。
2-1.基本給
基本給は決定方法を確認しましょう。
- 能力や経験
- 業績や成果
- 勤続年数
もし、上記のような項目で評価しているなら、同一の労働者には同一の賃金を支給しなければいけません。
また、正社員とパートタイム・有期雇用労働者の賃金決定ルールが異なる場合は、そのルールが合理的であるかの判断も必要です。
ほかにも、昇給の有無も判断項目に含まれます。
2-2.賞与(ボーナス)
会社への貢献度に応じて支給しているなら、短時間・有期雇用労働者にも支払いが必要です。
また、全従業員一律で不支給としているケースでは該当しません。
関連記事:パートタイム・有期雇用労働法による賞与規定を詳しく解説
2-3.各種手当
役職手当、地域手当、通勤手当など、手当を支給している目的を明らかにし、その目的に含まれる労働者には全員に支給しなければいけません。
例えば、通勤手当の目的が「会社から支給する交通費の補助」であれば、通勤している全ての従業員に支給するものとなります。
関連記事:同一労働同一賃金で各種手当はどうなる?最高裁判例や待遇差に関して
2-4.福利厚生
食堂、休憩室、更衣室の利用を正社員のみとしている場合は、差別的取り扱いに該当します。
また、慶弔休暇の有無、健康診断時の勤務免除・有給保証、病気・休職時の扱い、通算勤続年数に応じた休暇の付与などを行っている場合は、短時間・有期雇用労働者も同一の条件としなければいけません。(第9条 均等待遇にも該当)
関連記事:同一労働同一賃金における福利厚生の待遇差や実現するメリットとは
2-5.教育訓練・キャリア開発
正社員に教育訓練を実施している場合、同等の労働条件のパートタイム・有期雇用労働者も受けられることが求められます。
職務遂行に必要な能力は、既に備えている場合を除き、必要な全従業員が受けられるようにしなくてはいけません。
3.パートタイム・有期雇用労働法の第8条に違反しない方法
パートタイム・有期雇用労働法の第8条に違反しないためにも、まずは従業員に短時間・有期雇用労働者が含まれているか確認しましょう。
次に、職務内容や責任の程度を確認し、賃金などに差が設けられている場合は、合理的なものか否かを判断します。
3-1.短時間・有期雇用労働者がいるか確認
まずは、会社内で短時間・有期雇用労働者を雇用しているか確認しましょう。もし、雇用していない場合は、以降の点検は必要ありません。
雇用している場合、その従業員の職務や責任の範囲、転換の有無などを確認します。
そのうえで、同一労働の正社員と違いがあるか確認しましょう。
3-2.正社員と比べ、賃金などに差が設けられていないか確認
職務内容で比較した結果、正社員と同じ職務や責任を負っている短時間・有期雇用労働者がいれば、基本給・賞与・その他の待遇の差が合理的か確認しましょう。
短時間労働者に賞与を支給しない理由が「人事評価制度を導入していないため」などなら、不合理な差であり、評価制度の見直しも含めて待遇差の解消が必要です。
3-3.合理性の無い差は解消する
点検の結果、正社員と、短時間・有期雇用労働者の間に不合理な差が設けられている項目は、早めに解消します。
解消に当たっては、短時間労働者の職務内容の見直し、賃金などの支給が考えられます。
注意点として、正社員の待遇を短時間労働者と同等に引き下げて差を解消する場合、「労働条件の不利益変更」に該当します。
変更には合理的な理由や労使の同意、就業規則の変更が必要なため、事前に確認しましょう。
また、パートタイム・有期雇用労働者から待遇に差を設けている理由を問われた場合は、説明の義務が生じます。現在「同一労働同一賃金」という名前に代わり、導入の法律的義務はありませんが、損害賠償リスクなどの危険性もあるため、導待遇差ないように対応される企業が増えてきています。
当サイトでは、同一労働同一賃金に関する基礎知識や説明責任、不合理な待遇差と判断されうる状況などを解説した資料を無料で配布しております。同一労働同一賃金への対応に関して不安な点があるご担当者様は、こちらから「同一労働同一賃金 対応の手引き」をダウンロードしてご確認ください。
4.パートタイム・有期雇用労働法第8条では不合理な待遇差を禁止している
パートタイム・有期雇用労働法第8条では、同一労働・同一賃金を考えるうえで重要な内容です。
第8条は、待遇に差をつけることを一切禁止するものではありません。
設ける場合は、職務内容や責任の程度などを考慮し、合理的なものであれば、認められています。
第8条を守るためにも、まずはどのような場合に同一労働と呼べるか確認が必要です。
そのうえで、雇用形態を理由として合理的でない差が生じている場合は、改善に向けて早めに取り組みましょう。
同一労働同一賃金に罰則はありませんが、放置すると損害賠償のリスクが高くなります。
同一労働同一賃金とは、「正社員と非正規社員を平等に扱う概念」のように認識されていても、具体的にどのような対策が必要かわからない方も多いのではないでしょうか?
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