時短勤務はいつまで取れる?気になる期限と就業規則の決め方
更新日: 2025.10.17 公開日: 2021.11.12 jinjer Blog 編集部

短時間勤務制度(以下、時短勤務)は、育児・介護休業法により定められた制度です。従業員からの申し出があれば、1日の所定労働時間を短縮する対応が義務付けられています。
しかし、いつまでその時短勤務が利用できるかは、育児目的か介護目的かによって異なります。本記事では、時短勤務の期限や2025年の法改正による影響、就業規則の定め方、フルタイム勤務へ戻す際の注意点などを解説します。
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目次
1. 時短勤務の利用期間は育児・介護により異なる


時短勤務の法定の利用期間は、育児の場合は子どもの年齢によって上限が定められていますが、介護の場合には明確な上限がありません。それぞれのケースで法律上どこまで取得できるのかを押さえておきましょう。
1-1. 育児の場合:子どもが3歳未満の期間
育児・介護休業法では、3歳未満の子どもを育てている従業員がいる場合、時短勤務制度を設けなければならないことが定められています。つまり、時短勤務が適用されるのは、「3歳になる誕生日の前々月まで」です。
また、対象となる子どもは1人に限りません。例えば、2人の子どもがいる場合、上の子どもが3歳になったとしても、下の子どもが3歳未満であれば引き続き時短勤務の権利があります。
上の子どもが3歳になったからといって、一律に時短勤務を打ち切らず、兄弟姉妹の年齢を含めて確認をしましょう。
1-2. 独自の時短制度で法定を超えた設定も可能
企業独自の制度として、法定を超えた期間の時短勤務を認めることも可能です。実際、厚生労働省の令和5年度雇用均等基本調査によると、6割以上の企業が子どもが3歳以上になっても時短勤務を利用できる制度を整備しています。いつまでの期間を設定するかの目安としては、各ライフステージにおける育児と仕事の両立課題への対応があります。
- 小学1年生:就学直後は下校時刻が早く、保育園時代のような長時間の預かりがないため、学童保育や学校生活に慣れるまで保護者のフォローが必要になりがちです。いわゆる「小1の壁」への対応として、入学直後の数ヵ月や小1修了時まで延長する運用が見られます。
- 小学3年生:「学童保育(放課後児童クラブ)の退室時間に合わせ親が迎えにいけるよう退勤時間を早めたい」というニーズに応えるため、小3修了時まで延長することがあります。
- 小学6年生:多くの自治体で学童保育の対象が小3までにとどまるため、小4以降は預け先の確保が難しくなるケースが増えます。いわゆる「小3の壁」に対し、親が早く帰宅できるように短時間勤務の適用を小6修了まで認める企業も見られます。
また、2025年10月からは3歳から小学校就学前の子どもを養育する従業員に対して一定の措置を講じることが義務化されており、そのひとつとして時短勤務が含まれる点にも注意が必要です(※詳細は後述)。
1-3. 介護の場合:利用開始日から連続する3年以上の期間
介護を理由とする時短勤務の場合、法律上は「利用開始日から連続する3年以上の期間」と規定されています。さらに「3年以上の期間で2回以上利用できる」ことも明記されています。
取得期間に上限がある育児の場合とは異なり、明確な期限は設けられていないと解釈ができます。そのため、少なくとも3年以上、複数回利用できるようルールを定め、就業規則に記載しましょう。
2. 2025年法改正の時短勤務への影響


2025年施行の法改正では、時短勤務に関連して対応すべき新たなポイントがいくつか盛り込まれました。ここでは時短勤務にかかわる改正点をピックアップして解説します。
育児・介護休業法改正の全体像について知りたい方は、関連記事もご覧ください。
関連記事:2025年の育児・介護休業法改正のポイントは?2025年4月・10月の施行内容と企業の対応をわかりやすく解説
2-1. 3歳から小学校就学前の柔軟な働き方を実現するための措置
2025年10月施行の育児・介護休業法改正では、3歳から小学校就学前の子どもを育てる従業員向けに、柔軟な勤務制度の整備が義務化されました。具体的には、5つの措置のうち2つ以上を選択して講じなければなりません。従業員は講じられた措置の中から1つを選択して利用できます。
①始業時刻の変更等(フレックスタイム制もしくは時差出勤)
②テレワーク等(月に10日以上利用できるもの)
③保育施設の設置運営等(企業内保育所の設置やベビーシッター費用補助など)
④就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇(養育両立支援休暇)の付与(年10日以上)
⑤短時間勤務制度(原則1日6時間勤務とする措置を含むもの)
従来、法定の時短勤務は3歳未満までしか義務化されていませんでした。しかし改正後は、⑤の時短勤務も柔軟な勤務制度の選択肢のひとつに含まれており、企業がこれを選択し従業員が利用を希望した場合、小学校就学前までが時短勤務期間となります。
関連記事:2025年10月施行!柔軟な働き方を実現するための措置の内容と企業の対応事項を解説
2-2. 時短勤務の代替措置にテレワーク追加
2025年4月施行の育児・介護休業法改正では、3歳未満の子どもを養育する従業員に対する時短勤務制度にも変更がありました。従来より、業務の性質上どうしても時短勤務を適用できない場合には代替措置を講じる義務がありましたが、その代替措置の選択肢に「テレワーク」が新たに追加されています。
具体的には、従来代替措置は①育児休業に関する制度に準ずる措置、もしくは②始業時刻の変更等でしたが、新たに③テレワークも代替措置として認められることになりました。
2-3. 育児時短就業給付金の新設
2025年4月より、雇用保険の改正により短時間勤務制度を利用する従業員の経済的負担を軽減するために「育児時短就業給付金」が新設されました。2歳未満の子どもの養育のために時短勤務をした場合、減少した賃金の一部を補填する仕組みです。
対象となるのは雇用保険の被保険者で、過去2年以内に一定期間雇用保険に加入していた人など、一定の要件を満たす場合に限られます。給付金の支給額は、基本的に時短勤務中に支払われた賃金の10%相当です。ただし、時短勤務開始時の賃金水準を超えないように調整されます。
また、支給限度額(月額)として2025年8月時点で47万1,393円が上限とされており、時短勤務中の賃金と給付額を合計して上限額を超える部分については支給されません。
関連記事:育児時短就業給付はいくら支給?対象者・申請方法と注意点を解説
3. 就業規則に定める時短勤務の期間と申請内容とは


ここでは、時短勤務の期間や申請方法について就業規則上の定め方と、そのポイントを解説します。
3-1. 時短勤務の期間を就業規則で定める
育児・介護に関する時短勤務は法律上の制度ですが、自社で利用できる期間や条件を就業規則で明示しておくことが大切です。就業規則に具体的な労働時間と取得可能期間を明記し、従業員にも周知するようにしましょう。
時短勤務利用時に賃金の変更がある場合は、その旨もわかるように記載されている必要があります。
また、就業規則の新規作成や変更の際には、「労働者代表に意見書を書いてもらうこと」「管轄の労働基準監督署へ届け出ること」などを忘れずにおこないましょう。
3-2. 時短勤務の申請期限を就業規則で定める
時短勤務となる場合は、該当の従業員が担当している業務や作業を、他の従業員へ引き継がなければなりません。場合によっては代替要員の採用が必要になることもあるので、余裕をもって申請してもらうことも重要です。
申請から時短勤務開始までの期間が短いと、引き継ぎや代替要員ができず業務に支障をきたすこともあるので、就業規則には申請期限も記載しておきましょう。
申請期限に関しては法律の定めがないので自由に決められますが、1ヵ月前後が一般的です。介護の場合は突発性も考慮し2週間前を期限とする例もあります。
3-3. 就業規則への記載例
就業規則に時短勤務の内容を記載する際、具体的な文言の例を知っておくとスムーズです。記載方法に規定はありませんが、従業員にわかりやすい内容にする必要があります。
ここでは就業規則への記載例を紹介するので参考にしてみてください。
育児時短勤務の期間の記載例
|
第〇条(育児短時間勤務)
|
なお、期間は「労働者との話し合いにより決定する」などでも問題ありません。
また、3歳以上でも時短勤務を利用できるように定めたい場合は、別途「会社が認めた場合、小学校○年修了まで育児短時間勤務を利用できる」などと記載しましょう。
介護時短勤務の期間の記載例
|
第〇条 (介護短時間勤務)
介護短時間勤務を利用する際は、原則として当該勤務予定日の2週間前までに、短縮を開始する日と終了する日を明らかにし、介護短時間勤務申出書により会社に申し出なければならない。 |
回数に関しては、期間内で2回以上と定められているため、就業規則で2回までと定めても問題ありません。ただし、企業独自に1回とすることはできません。
また、突発的に介護が必要となるケースも考えられるため、申請期限も2週間前とするのが一般的です。
3-4. 管理監督者への適用の注意点
労働基準法でいう管理監督者は、労働時間の規定が適用除外となるため、育児・介護休業法上の短時間勤務制度の取得対象外となります。法律上は時短勤務制度を提供しなくても差し支えないものの、厚生労働省の見解では「管理監督者であっても短時間勤務制度に準じた措置を導入することは可能であり望ましい」とされています。
ただし、管理監督者に時短勤務相当の措置を認める場合には注意が必要です。
労働時間の裁量が前提のため、安易に給与を時間比例で控除すると「実態は管理職ではない」と判断されるおそれがあります。その結果、割増賃金の支払い義務が発生するリスクもあるでしょう。
例えば、所定労働時間の短縮を認めつつも賃金は減額せず据え置くことや、本人合意のもと短縮時間相当を減額した金額を時短期間中の賃金とする、などが考えられます。管理監督者本人の意向を十分に確認し、法律上の扱いを維持したまま柔軟な働き方を提供できないか慎重に検討することが重要です。
4. 時短勤務からフルタイム勤務に戻す際の注意点


時短勤務の利用期間が定められていても、従業員の状況によっては、早めにフルタイム勤務へ戻りたいという希望が出てくる場合があります。例えば、1年間の予定で時短勤務に入っていたものの、経済的事情やキャリアの意向により途中で通常のフルタイム勤務に戻したい、といったケースです。
申請した期間中であっても、本人の申し出があればフルタイムへ変更すること自体は可能なので、柔軟に対応しましょう。ここでは、時短勤務から通常の勤務体制へ切り替える際に押さえておきたいポイントを解説します。
4-1. フルタイムへの希望は速やかに対処する
従業員から「時短勤務を終了してフルタイム勤務へ戻りたい」と申し出があった場合、できるだけ速やかに対処するようにしましょう。ただし、その際には本人の意志だけでなく、実際にフルタイム勤務で無理なく働ける環境かも確認することが望ましいです。
子どもや家族の介護状況など、フルタイム復帰後の体制が整っているかを本人と話し合い、問題ないようであれば早めに手続きを進めます。
もし、フルタイムに変更したいとの申し出があり、正当な理由なく時短勤務を強要した場合「時短勤務を申請したことを理由とする不利益な取り扱い」に該当します。
4-2. 不利益な取扱いの禁止
前述の通り、育児・介護休業法では時短勤務の申請・利用を理由とする不利益な取扱いを禁止しています。
- 解雇
- 減給
- 賞与の不利益な算定
- 人事考課の不利益な算定(降格や時短勤務者のみ昇進をおこなわないなど)
- 契約社員の契約更新をおこなわない
- 正社員からアルバイトなど労働契約内容の変更を強要
ただし、ノーワーク・ノーペイの原則に従い、短縮された労働時間分に応じた賃金・賞与などの減額は不利益な取扱いに該当しません。
4-3. 労働者の配置に関する配慮
家族に介護や育児が必要な者がいる従業員に対して、転勤や部署換えなどの配置換えをする際は、特に配慮する「配慮義務」が法律で定められています。
具体的には、次のようなことへの配慮が求められます。
- 労働者本人の意志を汲み取る
- 労働者の介護・育児が必要な家族の状況を把握する
- 転勤した際の介護・育児の代替手段の有無を確認する
特に、労働者に対して「通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる」転勤命令は、裁判の結果で無効となったケースも存在するため、必ず本人の意志や状況を確認することが重要です。
参考:全情報|全基連(公益社団法人全国労働基準関係団体連合会)
4-4. 給与・社会保険料などの変更
時短勤務からフルタイムへの変更の際は、給与計算や社会保険料の計算が変わるケースがよくみられます。例えば、次のような項目に変更が発生します。
- 所定労働時間の変更
- 残業代の発生
- ボーナスの査定
- 社会保険料の変更
時短勤務中の社会保険料は、「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」が適用されます。
フルタイムに変更すると、従前の標準報酬月額から変更となる可能性もあるため、人事担当者は特に注意しましょう。
関連記事:時短勤務時の給料はどうなる?知っておきたい減額率の考え方
関連記事:時短勤務における社会保険の取り扱いや間違えやすいポイント
5. 時短勤務制度を導入して働きやすい環境を整えよう


介護・育児休業法で、育児時短勤務は「子が3歳に達する日まで」、介護時短勤務は「介護時短勤務の開始日から連続する3年以上の期間」取得できるようにすることが義務付けられています。
2025年の法改正では、3歳から小学校就学前の子どもを持つ従業員について、柔軟な働き方を実現するための措置がとられました。さらに、育児のための時短勤務で収入が減る分を補填するための「育児時短就業給付金」が創設され、賃金のおおむね10%相当額が給付される仕組みもスタートしています。
このように国も制度面・経済面でバックアップを強化しているため、企業は率先して時短勤務制度を整備・周知し、従業員が育児と仕事を両立しやすい職場環境づくりに努めることが求められます。
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