時短勤務(短時間勤務制度)とは?制度の概要やメリット・デメリット、法改正内容を解説 - ジンジャー(jinjer)|クラウド型人事労務システム

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時短勤務(短時間勤務制度)とは?制度の概要やメリット・デメリット、法改正内容を解説

時短勤務

少子化や高齢化により、日本の労働人口は年々減少し続けています。そのため、人材を確保することが最重要課題となっている企業は少なくありません。そこで求められるのが、育児や介護と仕事を両立するための「短時間勤務制度」の導入です。

従業員は、仕事だけでなく、出産や育児・介護などのライフイベントもあるので、仕事と両立できる環境を整えることが大切です。従業員の離職を防ぎ、継続して働いてもらうためには、勤務時間を短くした分を育児や介護にあてられる職場環境を構築する必要があるのです。

ここでは、時短勤務(短時間勤務制度)の概要や導入手順、メリット・デメリットなどを解説していきます。

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1. 時短勤務(短時間勤務制度)とは?

時短勤務とは?

時短勤務(短時間勤務制度)とは、1日の所定労働時間を通常よりも短くできる制度で、育児や介護のためフルタイム勤務ができなくなった従業員でも働きやすい環境を整えることを目的としています。

多くの場合、就業規則によって決められている所定労働時間は8時間です。しかし、育児や介護をしていると定時出勤が難しくなったり、夕方も家のことをしなければならなくなったりするので、フルタイムで働き続けるのは厳しい環境です。

短時間勤務制度があれば、原則として1日の所定労働時間を6時間まで短縮できることから、仕事と育児・介護の両立も可能になります。

1-1. 育児介護休業法により国に定められた制度

時短勤務とは、2009年の「育児・介護休業法」の改正により導入が義務付けられた制度で、所定労働時間を原則1日6時間として短縮勤務することです。

短時間勤務は、1日の所定労働時間を原則として6時間とする措置を含むものとしなければなりません。
1日の所定労働時間を6時間とする措置を設けた上で、そのほか、例えば1日の所定労働時間を7時間とする措置や、隔日勤務等の所定労働日数を短縮する措置など所定労働時間を短縮する措置を、あわせて設けることも可能であり、労働者の選択肢を増やす望ましいものといえます。

引用:改正法の下での短時間勤務制度について②|厚生労働省

短時間勤務制度は、勤務時間を6時間に短縮することが原則となっていますが、会社によって時短勤務の時間を決めることができます。

例えば、業務内容や職種によっては4時間勤務にすることも可能なので、従業員の状況や希望に合わせた労働環境を整えられます。

1-2. 短時間勤務制度が導入された背景

少子高齢化社会に直面する日本では、労働力不足が深刻な問題となっています。また、働く親の増加により、家庭と仕事を両立させる必要性も高まっています。

従来の日本企業では、出産や育児、介護といった家庭の責任と仕事の両立を支援する制度が不十分で、これが働き続ける上での大きな障害となっていました。

この障害を解決するため、家庭生活と職業生活のバランスを保つことを目指し、育児・介護休業法が制定されました。この法律は複数回の改正を経ており、特に短時間勤務制度の導入が進められています。

これにより、家庭と仕事の両立を図り、豊かな家庭生活を築きながらも仕事で活躍できる環境が整えられつつあります。厚生労働省も少子化対策の一環として、これらの支援制度強化に力を入れています。

参考:育児・介護休業法が改正されます! |厚生労働省

1-3. 育児短時間勤務の導入状況

厚生労働省の調査によれば、育児短時間勤務を導入している事業所の割合は年々増加傾向にあります。具体的には、令和元年度の67.4%から令和4年度には71.6%に上昇しています。令和5年は導入割合は下がっていますが、これはテレワークを導入する企業が増えていることが原因かもしれません。

  令和1年 令和2年 令和3年 令和4年 令和5年
導入割合 67.4% 68.0% 68.9% 71.6% 61%

また、短時間勤務の最長利用可能期間に関しては、3歳未満が最も多く、次いで小学校就学の始期に達するまでの事業所の割合が高いです。令和5年度のデータでは数字は若干下がっているものの、3歳未満までの利用を認める事業所が48.8%、小学校就学の始期に達するまでの利用を認める事業所が14.1%でした。

  令和1年 令和2年 令和3年 令和4年 令和5年
3歳未満 55.7% 55.7% 53.6% 55.8% 48.8%
小学校就学の始期に達するまで 15.3% 15.0% 16.1% 13.9% 14.1%

このような背景を踏まえ、企業は育児短時間勤務の導入と運用を検討し、従業員のワークライフバランスをサポートすることが重要になります。

参考:令和3年度雇用均等基本調査|厚生労働省資料

参考:令和5年度雇用均等基本調査|厚生労働省資料

2.【2025年4月法改正】育児時短就業給付金とは

女性

育児時短就業給付とは、2歳未満の子育てをしている時短勤務労働者を対象にした、時短勤務中に減少する所得の補填をするための給付制度で、2025年4月より施行されます。

今までの時短勤務というのは、通常の所定労働時間よりも勤務時間が短くなることで、所得もその分減額されるのが一般的でした。そのため、従業員によっては時短勤務より所得を減らさないことを選択するので、短時間勤務制度を導入しても活用されないというのが課題でした。

しかし、この制度が新設されたことで、所得を減少させたくないという従業員でも、安心して短時間勤務制度を活用できます。

仕事と育児を両立できる職場環境になることで、企業へのエンゲージメントの向上も期待できるので、企業は離職防止や優秀な人材確保などのメリットを得ることも可能です。

2-1. 育児時短就業給付の要件

育児時短就業給付は、下記の要件を満たしている従業員が対象となります。

① 2歳未満の子を養育するために、1週間当たりの所定労働時間を短縮して就業する被保険者であること。
・ 「被保険者」とは、雇用保険の一般被保険者と高年齢被保険者をいいます。
② 育児休業給付の対象となる育児休業から引き続き、同一の子について育児時短就業を開始したこと、または、育児時短就業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある(ない場合は賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上ある)完全月が12か月あること。

引用:育児時短就業給付の内容と支給申請手続|厚生労働省

ただし、支給にあたっては、下記の支給要件を満たしていなければなりません。

① 初日から末日まで続けて、被保険者である月
② 1週間当たりの所定労働時間を短縮して就業した期間がある月
③ 初日から末日まで続けて、育児休業給付又は介護休業給付を受給していない月
④ 高年齢雇用継続給付の受給対象となっていない月

引用:育児時短就業給付の内容と支給申請手続|厚生労働省

つまり、支給対象の要件をみたしていても、支給要件を満たしていない場合は給付が受けられないので、従業員にしっかりと説明しておきましょう。

2-2. 育児時短就業給付の支給額

育児時短就業給付の支給額は、支給対象月に支払われた賃金額によって変わります。

A:支給対象月に支払われた賃金額が、育児時短就業開始時賃金月額の90%以下

育児時短就業給付金の支給額 = 支給対象月に支払われた賃金額 × 10%

B:支給対象月に支払われた賃金額が、育児時短就業開始時賃金月額の90%超~100%未満

育児時短就業給付金の支給額 = 支給対象月に支払われた賃金額 × 調整後の支給率

C:支給対象月に支払われた賃金額と、A又はBの合計額が支給限度額(*)を超える場合】

育児時短就業給付金の支給額 = 支給限度額- 支給対象月に支払われた賃金額

「支給対象月に支払われた賃金額」は、当該支給対象月に支払われる賃金で、臨時に支払われたり3ヵ月超の期間ごとに支払われたりする賃金は除くので、間違えないようにしましょう。

*支給限度額は459,000円(2025年7月31日までに支払われた支給額)

参考:育児時短就業給付の内容と支給申請手続|厚生労働省

3. 時短勤務の条件とは?

子供

時短勤務を活用すれば、従業員は余裕を持って子育てや介護ができます。しかし、子どもや要介護の家族がいる従業員すべてが対象となるわけではありません。

子どもの年齢や所定労働時間などによっては対象外となりますし、対象となっていても条件を満たしていなければ制度を活用できないので、担当者の方は対象者を間違えないように注意が必要です。

ここでは、対象者や対象期間、条件を解説します。

3-1. 対象となる労働者

時短勤務の対象となる労働者は、「子育てをしている人」もしくは「介護をしている人」です。ただし、一定の要件を満たしていることが条件となるため、例え子育てや介護をしているとしても、要件を満たしていなければ対象外となります。

また、時短勤務は正社員を対象にした制度と考える人も多いようですが、パート・アルバイトや有期雇用でも週3日以上勤務しており、所定労働時間が6時間を超えていれば、時短勤務を利用できる可能性があります。

当然ですがその場合も、一定の要件を満たしていなければなりません。

つまり、時短勤務の対象者は、雇用形態で決まるものではなく、要件を満たしているかどうかで決まるということを覚えておきましょう。

3-2. 対象期間、条件

育児・介護休業法における時短勤務の対象期間は、「子どもが3歳の誕生日を迎える前日まで」となっています。そのため子どもが3歳になった日からは適用外となります。

また、時短勤務を利用するためには、企業ごとに異なる条件を満たす必要がありますが、育児・介護休業法で以下の5つの条件すべてを満たす必要があります。

  1. 3歳に満たない子を養育する労働者であること
  2. 1日の所定労働時間が六時間以下でないこと
  3. 日々雇用される者でないこと
  4. 短時間勤務制度が適用される期間に育児休業をしていないこと
  5. 労使協定により適用除外とされた労働者ではないこと

このように、時短勤務の条件を理解し、適切に運用することで、企業の人事担当者やマネージャーは労働者の働きやすさを向上させることができます。

参考:改正育児・介護休業法が全面施行されま 全面施行されます!!|厚生労働省資料

3-3. 時短勤務は小学生まで取得可能か

結論からいうと、小学生まで取得可能かどうかは企業によって異なります。

前述していますが、法律で定められている時短勤務期間は「子どもが3歳になる日の前日まで」です。そのため、3歳以降は時短勤務に関する法的な規定はなく、企業に対する強制力もありません。

ただし、企業によっては「3歳から小学校就学前」「小学生まで取得できる」など、独自で対象期間を設けているところもあります。これは、あくまでも企業の福利厚生の1つなので、自社で対象期間をいつまでにするかを自由に決めることが可能です。

従業員からすると、対象期間は長ければ長いほど嬉しいものですが、3歳以降に関しては業務に支障がでたり他の従業員への負担が大きくなったりすることも考慮して設定しましょう。

4. 時短勤務のメリット

付箋

時短勤務制度は、子どもや介護者のいる従業員は時間に余裕ができるというメリットがありますが、企業からすりと働き手が少なくなるというデメリットを感じるかもしれません。

しかし、時短勤務を導入すると、下記のようなメリットが得られます。

  • 社員の離職を防げる
  • 社会的評価がアップする
  • 社員のワークライフバランスを支援できる

ここでは、従業員が安心して働ける「時短勤務導入」のメリットについて解説します。

4-1. 社員の離職を防げる

時短勤務を導入すれば、従業員は家庭と仕事を両立しやすくなるので、離職を防ぐことができます。

人手不足が深刻になっている昨今では、子育てや介護の時間を確保するために離職されるというのは大きな損失ですし、求人広告費用もかかってしまいます。また、求人募集をしても、求めている人材が集まるとは限りません。

特に優秀な社員の場合、短時間でも働いてもらい、育児や介護が一息ついた時点で復帰をしてもらえることは、生産性の点からみても企業にとっては大きなメリットです。

また、従業員に寄り添った制度の導入は、満足度もアップするので会社への貢献も期待できるでしょう。

4-2. 社会的評価がアップする

今や働く価値観は大きく変化しており、企業戦士としてばりばり働くというよりは、プライベートを重視する人が増えています。例え労働基準法に則った就業規則を整備していても、プライベートの時間が取れないような職場は敬遠されがちです。

しかし、時短勤務を導入していれば、育児や介護に関して理解のある企業と認識されるので、社会的評価がアップするというメリットが得られます。

そもそも、優秀な人材を確保するには、仕事内容だけでなく会社自体の評価がとても重要です。

社員を大切にしているというイメージがある会社は、求人への応募も増えますし、提供するサービスへの付加価値にもなるので、事業の発展につながる効果も期待できます。

4-3. 社員のワークライフバランスを支援できる

時短勤務制度を導入すると、従業員は家庭と仕事のバランスを保ちやすくなります。

家族や家庭に対する責任が大きい従業員にとって、労働時間を短縮できることは大きな助けとなるので、子育てや親の介護が必要な家族を持つ従業員も安心して働けます。その結果、労働意欲が向上し、生産性が増加する効果につながるかもしれません。

また、心理的ストレスの軽減も期待できるので、職場の雰囲気が悪化することを防ぎ、従業員同志の結束が高まる可能性もあります。ワークライフバランスは、いち従業員の努力だけで保てるものではないので、企業が「時短勤務制度」で後押しをすればエンゲージメント向上にも役立つかもしれません。

5. 時短勤務のデメリット

注意点

時短勤務は、対象の従業員にとってはメリットが感じられやすいですが、会社側や対象外の従業員にとってはデメリットがあるのも事実です。デメリットをしっかり把握しておかないと、対象外の従業員の不満や不公平感が高まってしまうリスクがあるので要注意です。

ここでは、時短勤務のデメリットを解説します。

5-1. 業務の再配分や見直しが負担になる

フルタイム勤務していた従業員が6時間勤務になった場合、2時間分の労働をほかの従業員が担当しなければいけません。

そのため、管理者やリーダー、人事担当は業務の再配分や見直しをする必要があります。遅刻や早退などの配分であればそれほど手間はかかりませんが、一定期間の再配分となるとかなり難しく、業務内容の見直しだけでも負担になってしまうというのがデメリットです。

また、一部の従業員だけに負担を増やさないようにするには、人手不足という問題がでてくることもあるでしょう。このような問題をできる限り簡単に解決するためには、不足した労働力をアウトソーシング化する、システム化できる部分はシステムを導入するなどのサポートで再配分業務の負担を減らしましょう。

5-2. 社員の不満がたまりやすい

時短勤務は、対象となる従業員にとっては「労働時間が短くなる」「業務負担が減る」などのメリットが得られます。

しかし、2時間分の業務負担が増えると、社内で不公平感が生じてしまいやすくなり、社内の雰囲気が悪くなってしまうというデメリットがあります。対象外の社員の中には、必要な制度だとわかっていても、「ずるい」「不公平」などの不満を感じる人がいるかもしれません。

そのため、仕事へのモチベーションが低下するというデメリットがあります。モチベーションが低下すると、生産性が下がったり業務効率が悪くなったりするため、業績に影響がでることも考えられます。

モチベーションの低下を防ぐには、制度の目的の周知を徹底すると同時に、給料の減額や残業をしても割増がないことなど、対象の社員も単に楽をしているわけではないということを周知するのがベストです。

5-3. 時短勤務者の減収対策が必要

時短勤務を選択すると、給与が減額されることが多く、経済的な負担となる可能性があります。

例えば、以前8時間フルタイムで働いていた人が勤務時間を6時間に短縮した場合、月給制や年俸制に関わらず、基本給は75%程度に減額されるのが一般的です。具体的には、基本給が20万円の人が時短勤務を選択すると、基本給は15万円に減ります。

これは25%の減少を意味します。また、時短勤務により残業代や諸手当も減少するため、手取り額は基本給の減額分以上に減少することが考えられます。

ただし、2025年4月からは育児時短就業給付制度が施行されるので、対象の従業員をしっかり把握して減額分を少なくするようにすればデメリットを回避できるでしょう。

6. 時短勤務の給与計算方法の注意点

CUT

賃金払いは、「ノーワーク・ノーペイの原則」という基本原則があります。

この原則は、「賃金は提供された労働力の対価として支払われるものである」と定義されているので、労働力が減少すれば賃金も減少することになります。

しかし、企業側が勝手に決めた分を差し引いて良いというものではありません。

時短勤務の給与計算にはルールがあるので、従業員に不利益にならないようにしましょう。ここでは、時短勤務の給与計算方法の注意点について解説します。

6-1. 時短勤務者の給与は減額して計算する

「ノーワーク・ノーペイの原則」を時短勤務に当てはめた場合、1日8時間だった労働力が6時間に減少するので、給与を減給するのは当然といえるでしょう。そのため、企業側が時短勤務の従業員に対して、働いていない分の賃金を減少させるのは何の問題もありません。

ただし、減給できるのはあくまでも減少した労働力分だけで、時間でいうと2時間分/1日のみです。不当に、必要以上の減給をした場合は「不利益取扱の禁止」に抵触する可能性があるので注意してください。

また、従業員によっては減額分の内訳を質問してくることもあるので、減少した労働時間と賃金を説明できるようにしておくと良いでしょう。

▼時短勤務の給料に関する詳しい記事はこちら
時短勤務時の給料はどうなる?知っておきたい減額率の考え方

計算方法の例

時短勤務の給与は下記のような計算式で算出しますが、例えばフルタイム勤務が8時間で時短勤務が6時間の場合、通常の75%となります。

基本給(月額)×月の合計実労働時間÷月の合計所定労働時間

これに基づいて、月額の基本給が20万円の場合の時短勤務給与を算出すると下記ようになります。

基本給:20万円/月
所定労働時間:8時間/日
実労働時間:時短勤務により6時間/日
所定労働日数:20日

200,000円×(6時間×20日)÷(8時間×20日)=150,000円

このように、時短勤務により基本給は20万円から15万円に減少します。

6-2. 残業を免除する場合

時短勤務者は、会社の就業規則に記載がある場合、残業免除を請求することが可能です。この請求をおこなう場合は、従業員が書面で申請する必要があります。

この請求をおこなわなくても、時短勤務者は勤務時間が短いため、基本的に残業が免除されるのが一般的です。しかし、法定内残業や法定外残業が発生する可能性はゼロではありません。

法定内残業とは、所定労働時間を超えているが、法定労働時間の範囲内の労働であり、時短勤務においてはフルタイムより2時間少ない6時間が所定労働時間となります。このため、1日に2時間までの残業が法定内残業となり、通常の賃金が支払われます。法定外残業はその範囲を超える労働なので、どちらの場合でも残業代を支払わなければなりません。

もしも、固定残業代にしている場合は、残業免除の申請を受理した時点でカットとなります。固定残業代とは、実働時間にかかわらず一定時間の残業を見込んで支払われる制度ですが、時短勤務はそもそも残業が発生しないことを前提としています。残業免除の場合は固定残業代が不要となるので、支払う必要がないということを覚えておきましょう。

6-3. 休憩時間の扱いにも注意

労働基準法に基づき、6時間を超える勤務する場合は休憩時間を提供する必要があります。これは、時短勤務者にも適用される原則です。

1日の労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩時間が必要です。したがって、時短勤務でも6時間を超える勤務がある場合は、法的に休憩時間を提供しなければなりません。

時短勤務制度を導入する際は、社員の勤務時間を詳細に確認し、適切な休憩時間を設けることが求められます。例えば、労働時間が6時間以内の場合は休憩を設けなくても違法ではありませんが、従業員の働きやすさを考慮して休憩時間を導入するこのがベストです。

休憩時間に関しては、できる限り柔軟に対応することが従業員の満足度向上につながります。

参考:労働時間・休日|厚生労働省

7. 時短勤務の導入手順

時短勤務の導入方法

時短勤務は、「なんとなく必要だから」「義務だからとりあえず」という感覚で導入してしまうと失敗するかもしれません。担当者の方は、なぜ時短勤務が必要なのか、時短勤務を導入することでどのような問題が発生するのかよく考えてから決める必要があります。

ここでは、導入手順を紹介するので、1つ1つの項目をチェックして導入しても問題ないかしっかり検討してみてください。

7-1. 育児介護休業法の内容を確認する

時短勤務を導入する前に、まずは「育児介護休業法」の内容を確認しましょう。

企業は、就業規則などに短時間労働制度に関する事項を記載しなければなりません。時短勤務(短時間勤務制度)は、育児介護休業法によって定められている制度なので、対象者や支給要件などの規定があります。そのため、就業規則は制度に則った内容にする必要があります。

また、短時間勤務制度を開始する場合には、従業員だけでなく管理者や現場のリーダーなどにも説明をしなければなりません。その際、育児介護休業法の内容と就業規則にずれがないように、事前に確認をしておくことが求められるのです。

7-2. 申請方法を定める

育児介護休業法の内容を確認し、支給要件などを把握したら、次は申請方法を定めます。

ここで重要となるのは、「煩雑な申請方法にしない」ということです。手続きが面倒だと、従業員は利用しづらくなってしまいます。

申請書への記入事項や必要書類はできるだけミニマムにして、承認までに時間がかからないようにすることで、従業員の利用を促進できます。申請書には記入例をつけるなどの工夫をすると、手続きがよりスムーズになるでしょう。

また、申請方法を決める際には、申請期限を決めておくのも重要です。時短勤務は、ほかの従業員に仕事を割り振ったり、新たな人材雇用が必要になったりするのですぐに対応できません。余裕を持って対応するためにも、申請期限は必ず決めておきましょう。

7-3. 業務内容や引き継ぎの調整

時短勤務になると勤務時間が短くなるため、これまでの業務量をこなせなくなってしまうケースがあります。
このような場合は、勤務時間内に業務を終わらせられるように仕事量の調整や業務の振り分けが必要になるでしょう。

また、その際はフルタイム勤務の従業員の仕事量が多くなってしまうかもしれません。時短勤務のせいで、他の従業員が残業しなければならないとなると、職場の雰囲気が悪化する可能性があります。

業務負担が増える従業員にストレスを溜めないようにするためにも、時短勤務になる従業員とフルタイム勤務の従業員でしっかり引き継ぎをして、どの程度の仕事を負担するのか引き継ぎの調整をおこなうなど、よく話し合って振り分けを決めるようにしましょう。

7-4. 時短勤務中の評価方法を決める

時短勤務中には減給するのが一般的ですし、賞与なども減額できます。しかし、業務に関する評価はしなければいけないので、評価方法をしっかりと決めておきましょう。

時短勤務の場合、「働く時間が短いことで低評価になるのではないか」という不安を抱える従業員が多いといわれています。評価が低いと昇進や昇給への影響も考えられるので、短時間勤務制度の利用をためらってしまうこともあるかもしれません。このような不安をクリアにするためにも、評価方法を決めておくことが重要です。

評価方法を決める場合は、上司や担当者だけでなく、対象者と面談をして意見をすり合わせ、双方で納得できる内容にしましょう。

7-5. 就業規則の変更を周知する

時短勤務の導入にあたり就業規則が変更された際は、従業員に周知することが重要です。
周知をするのは、時短勤務を希望する対象者だけでなく、全従業員におこなうようにしましょう。現時点では対象者にならないとしても、結婚や子作りを検討している従業員や高齢の両親を抱えている従業員がこの制度を知れば、安心して働けるようになります。

また、時短勤務があるというのは、従業員の満足度アップにもつながります。

従業員満足度が高い会社は社員のモチベーションが上がるため、業務効率が良くなるだけではなく、離職率の低下や有望な社員が入社しやすくなるなどのメリットがあります。

8. 時短勤務制度の運用方法

手でOKのマークを作る男性時短勤務を運用する場合、下記の点にも対応が必要になります。

  • 時短勤務中の賞与への対応
  • 時短勤務中の有給休暇への対応
  • 時短勤務中の社会保険料への対応

ここでは、これらの対応方法について解説していきます。

8-1. 時短勤務中の賞与への対応

賞与(ボーナス)の支給は、法律での義務付けはありません。そのため、時短勤務中の賞与への対応は、企業によって就業規則で定めることができます。

当然ですが、法的な規定がないので、時短勤務中は賞与なしとすることも可能です。ただし、時短勤務をする従業員は経済的な不安を抱えていることも多いので、可能な限り賞与を付与することが望まれます。

基本給を基準としている場合は時短勤務中の基本給、個人や企業の業績を基準としている場合は、時短勤務の労働時間に合せた目標設定にして付与すると、公平性のある支給が可能になるでしょう。

8-2. 時短勤務中の有給休暇への対応

時短勤務中であっても、従業員には有給休暇を取得する権利があります。これは、パート・アルバイトや有期雇用者も同様ですが、週の稼働日数によって付与日数が変わります。

週5日間勤務する時短勤務者には、法令で定められている勤続年数に合せた日数を付与しなければなりません。

勤続年数による有給休暇の付与日数は、下記のようになります。

勤続年数 付与日数
0.5 10
1.5 11
2.5 12
3.5 14
4.5 16
5.5 18
6.5以上 20

週4日以下30時間未満の時短勤務者の場合は、下記のような比例付与となります。

所定労働日数 1年間の所定労働日数 継続勤続年数(年)
0.5 1.5以上 2.5以上 3.5以上 4.5以上 5.5以上 6.5以上
付与日数 4日 169日~216日 7 8 9 10 12 13 15
3日 121日~168日 5 6 6 8 9 10 11
2日 73日~120日 3 4 4 5 6 6 7
1日 48日~72日 1 2 2 2 3 3  

有給の付与に関しては、所定労働時間は関係ないので、取得対象者から申請があった場合は必ず付与しましょう。

8-3. 時短勤務中の社会保険料への対応

時短勤務中でも、所定労働時間が通常勤務の3/4となる場合は社会保険の適用となります。

また、2016年に社会保険の適用範囲が拡大されたため、下記の要件を満たしていれば社会保険の適用が認められます。

  • 週の所定労働時間が20時間以上であること
  • 雇用期間が1年以上見込まれること
  • 賃金の月額が8.8万円以上であること
  • 学生でないこと
  • 特定適用事業所(※)に勤務していること

※被保険者数の合計が1年のうち6カ月以上101人以上の企業等(令和6年10月からは51人以上の企業等に拡大)

社会保険料は、毎年4~6月の標準報酬月額を基に算出します。その金額が、9月から翌年8月までの1年間に渡り徴収されるというシステムです。

この間に時短勤務を開始した場合、時短勤務によって給与が減額しても、減額前に算出した保険料が適用されます。

ただし、育児休業が終了した時点で「報酬月額変更届」を提出すれば、時短勤務開始から3ヶ月間の標準報酬月額を基準とした社会保険料に変更することが可能です。とはいえ、新たに算出した保険料は時短勤務を開始してから4ヵ月目に適用となるため、それまでは従来の保険料を徴収します。

9. 短時間勤務から通常勤務へ戻す際のポイント

お互いに気遣いながら傘をさす短時間勤務から通常勤務に戻す際には、下記のようなポイントがあります。

  • 時短勤務者の家庭環境に配慮する
  • 意識的にコミュニケーションをとる
  • 派遣社員の場合は派遣元への連携が必要

ここでは、これらのポイントについて説明します。

9-1. 時短勤務者の家庭環境に配慮する

通常勤務(フルタイム)に戻す場合、まずは家庭環境の考慮が欠かせません。時短勤務時には育児・介護や家事など、家族内で役割分担がされていることが多いです。フルタイム勤務に復帰すれば、これらの負担が他の家族に影響を与える可能性があるため、事前に通常勤務に戻すスケジュールを伝えて、従業員の家庭環境とすり合わせておく必要があります。

また、従業員のライフプランも考慮しましょう。個々のキャリア目標や仕事の優先度により、フルタイム勤務に戻る際の準備や対応が異なるためです。

キャリアアップを目指す場合、資格取得や研修時間も必要となるかもしれません。こういった従業員には、育児や介護の部分はファミリーサポートのような外部サービスの利用などをアドバイスをすると良いでしょう。

9-2. 意識的にコミュニケーションをとる

時短勤務の場合、通常勤務の従業員とのコミュニケーションが希薄になります。

また、子育てや介護などをしていると、新年会や忘年会などのイベントにも参加できないので、通常勤務に戻る際に周りと馴染みにくいと感じる従業員は少なくないようです。そのため、時短勤務だった従業員は浮いてしまいやすくなるので、管理者や同僚などが意識的にコミュニケーションを取るようにしましょう。

会社側からコミュニケーションを取るようにすれば、時短勤務者も働きやすくなります。せっかくフルタイム勤務に戻ってもらっても、職場に馴染めないと離職のリスクが高まります。

時短勤務は離職防止の目的もあるので、時短勤務者が戻りやすい雰囲気を作っておきましょう。

9-3. 派遣社員の場合は派遣元への連携が必要

法律で定められた短時間勤務制度は、派遣社員も対象です。ただし、派遣社員の雇用主は派遣元となるので、時短勤務を通常勤務に戻すもしくは派遣社員が希望する場合、派遣元の会社と手続きを進めます。

この場合、派遣先は勝手に労働時間を変更できないので注意してください。

また、近年は1日4~6時間勤務を基本とする時短派遣という選択肢も増えています。そのため、時短勤務期間が終了したからといっていきなり通常勤務にするというのではなく、派遣社員に勤務時間の希望を聞いておく必要があるかもしれません。

通常勤務ではなく時短派遣を希望する場合も、派遣元と連携して手続きをおこないましょう。

10. 時短勤務は法律を遵守したうえで利用しやすい環境づくりが重要

女性 ポイント

時短勤務を導入すれば、対象となる従業員は育児や介護と仕事の両立がしやすくなり、企業にとっては従業員の離職を防げるというメリットがあります。

ただし、1人の従業員の勤務時間が短くなることでほかの従業員の負担が増えると、時短勤務を利用しにくくなりますし、不満が出てくる可能性もあるため注意が必要です。

時短勤務を気兼ねなく利用してもらうには、フルタイム勤務の従業員の負担が増えないようにする、制度の内容を周知して理解してもらうなどの環境づくりが重要です。また、それぞれの従業員に適した働き方が選択できるよう、リモートワーク制度やフレックスタイム制などの導入を検討してみるといいでしょう。

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jinjer Blog編集部

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