在宅勤務導入時に就業規則は変更する?在宅勤務規程は作る?
更新日: 2025.9.30 公開日: 2021.11.12 jinjer Blog 編集部

新型コロナウイルスの感染拡大を機に、在宅勤務をスタートさせた企業も多いのではないでしょうか。しかし、新たに在宅勤務を導入する場合は、在宅勤務に関する就業規則を作らなければなりません。また、就業規則の見直しをおこなう場合は、細かい部分の取り決めまで見直す必要があるでしょう。
新たに作成するもしくは見直す場合、在宅勤務の定義や在宅勤務の対象者、サテライトオフィスなどの措置、服装規程や労働時間、残業や通勤手当の有無など細かい部分まで決めなければなりません。
ここからは厚生労働省が正式に発表している「テレワークモデル就業規則~作成の手引き~」をもとに、在宅勤務に対応した就業規則の決め方を解説していきます。
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目次
新型コロナウイルスの蔓延によって急激に普及したテレワーク。
現在でも法改正により、3歳未満の子を持つ従業員などに対してテレワークを選択できるような措置が求められているため、単なる一時の対応ではなく、恒久的な制度として環境を整備、運用していく必要があります。
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◆この資料でわかること
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勤怠管理:自己申告制で見えづらい労働時間を正確に把握する方法
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ルール整備:就業規則で定めるべき通信費の負担や労働時間の規定
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1. 在宅勤務には就業規則の変更が必要


在宅勤務を導入する場合は、各企業で就業規則を変更もしくは見直すことが求められます。従業員の働き方や業務内容に合った規定を設けることで、業務の円滑な進行が期待できます。
在宅勤務を開始する際には、業務の目的や具体的な定義を明確にし、在宅勤務に関する服務規定や業務報告の方法についても「在宅勤務」という特殊な状況に合わせた規則を設けてください。
労働時間に関しては、在宅勤務者がどのように労働時間を記録するか、在宅勤務に伴い発生する通信費などの負担についても、労使間での取り決めを明確にすることが重要です。従業員に不利益にならないよう、現行の就業規則を適切に見直し、改善を図る必要があります。
1-1. 就業規則の変更が必要な理由
原則として、在宅勤務に切り替えた場合でもこれまでの就業規則で対応可能とされており、法的にも問題ありません。
ただし、在宅勤務は通常の勤務と異なるため、既存の就業規則では規定のなかった以下の項目を新たに就業規則を定める必要があります。
- 通信費の負担
- 機材の調達
- 在宅勤務における労働時間
会社勤務であれば、インターネットや電話の通信費は会社側が支払いますが、自宅で働く場合は従業員負担になります。また、機材に関しても従業員が調達することもあり、在宅勤務の労働時間を管理する新たなシステム構築も必要になるので、就業規則を変更しなければなりません。
労働基準法第89条による負担の取り決め
労働基準法第89条、第5号には「労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項」という取り決めがあります。この法律では、労働者に負担させる費用をあらかじめ就業規則に記載することを求めています。
「就業規則の変更が必要な理由」にも記載していますが、在宅勤務は従業員が自宅で業務をおこなうため、ネット回線の整備や通信費の支払いは従業員がしなければなりません。
そのため、労働基準法第89条を順守するには、在宅勤務で新たに生じる通信費や機器の費用に関する、負担の有無を就業規則でしっかり提示しなければならないのです。
関連記事:労働基準法第89条で定められた就業規則の作成と届出の義務
在宅勤務によって働き方が大きく変わる
また、法律の観点以外にも、在宅勤務導入によって従業員の働き方が大きく変更される点も考慮する必要があります。例えば以下のようなことです。
- 在宅勤務の対象者
- 勤務場所
- 情報セキュリティ
- 連絡体制
- 評価制度
まずは在宅勤務に切り替える従業員の選別と、勤務場所の指定をおこないます。
在宅勤務は上司や同僚がいない分、自発的な行動が求められるため、新入社員などにとっては在宅勤務に適応できない可能性があります。
そのため、在宅勤務で勤務場所を指定しておかないと、カフェやレストランなどで業務をおこない、社内の情報が不意に流出する可能性も否めません。情報セキュリティの観点からも、情報を持ち出さない、パソコンは自宅以外で使用しないといった定めをする会社もあります。
また、在宅勤務切り替えにあたり、これまでの連絡体制を見直す必要も出てきます。
社員に一任してしまうと、社員間でツールが乱立したり、個人用ツールの使用でセキュリティが損なわれたり、トラブルの発生原因となる可能性があります。
在宅勤務時に使うツールは会社側が決めることはもちろん、利用規則を定めておきましょう。特に、緊急時の連絡方法についてはしっかり話し合うべきです。ツールは不具合が生じる可能性もあるので、連絡ツールが使えない場合にも業務の滞りがないようにしましょう。
このように、在宅勤務には様々な変化や手間が伴いますが、在宅勤務を導入することで離職防止や生産性向上など、企業にとってプラスの効果も多く得られます。
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関連記事:在宅勤務時のセキュリティ対策で押さえるべきポイント
2. 就業規則と在宅勤務規程の関係


従業員が遵守すべき労働条件を細かく定めたものを「就業規則」といい、在宅勤務に関する「在宅勤務規定」も就業規則の一部です。
例えば、在宅勤務に関する規則を定めた場合は就業規則に記載しますが、規則には他に給与規程や旅費規程などもあります。そのため、就業規則中に在宅勤務に関する規定が定められているという形になるのです。
新しい働き方として導入されつつある在宅勤務も、しっかり就業規則を定めなければいけない点に注意しましょう。特に、在宅勤務を導入する際には労働時間や勤務形態に関する具体的な規定を明示することが重要です。 これにより、従業員は自身の業務に対する責任や働き方を理解しやすくなります。
在宅勤務規程を明確に定めることは、企業にとってのリスク管理や労働環境の向上にも寄与する要素となります。 したがって、在宅勤務を導入する際は、就業規則の変更や見直しを通じて、会社側は管理のしやすさを、従業員側には働きやすさ考慮した取り決めを行いましょう。
2-1. 在宅勤務規程の例
在宅勤務規程を策定する際は、具体的な例を参考にすることが重要です。厚生労働省によって、在宅勤務規程の規定例が公開されています。これを参考にすることで、必要な項目を漏れなく盛り込みつつ、法令に準じた適切な規程を作成することができるでしょう。
このように、実際のガイドラインを参考にすることで、効果的な在宅勤務規程の構築が可能になるでしょう。
3. 在宅勤務に対応した就業規則の作成ポイント


在宅勤務に対応した就業規則を作成するには、以下のようなことがポイントになります。、
- 在宅勤務の対象者と定義
- 通勤手当や残業代
- 労働時間
- 費用負担
ここからは、これらのポイントを解説していきます。
3-1. 在宅勤務の対象者を定める
在宅勤務の対象者を定める際には、業務内容や職種に応じて慎重に判断することが求められます。例えば、チームでの密な連携が必要な業務や、新入社員のように経験の浅い社員を対象者にしてしまうと、業務効率が悪くなってしまう可能性があります。
そのため、対象者は「入社〇年以上」「自分でタスク管理ができる」「能動的に業務を遂行できる」というような基準を設けることが重要です。基準を明確に設定することで、従業員が各自の役割を理解し、無理なく業務を遂行できる環境が整います。
また、在宅勤務を許可する際の条件を具体的に決定し、就業規則に明文化することで社内の透明性を高めることにも重要です加えて、在宅勤務による業務の進捗状況や業務成果についても報告の義務を設けると効果的な運用が可能になります。
このように、明確なルールを設けることが、在宅勤務の導入による混乱を防ぐことにつながります。
3-2. 通勤手当や残業代
在宅勤務をすることで通勤手当を変更する場合には、就業規則や賃金規程または在宅勤務規程に、どのような計算方法で通勤手当を支給するのか記載をする必要があります。
例えば、「仮払いをして月締めで清算する」「経費精算書を提出してもらい給与を支給する際にまとめて支給する」というように、具体的な方法を明記しましょう。
また、判定が難しい残業代に関しては、明確な取り決めをおこない、社員に徹底した周知活動をおこなってください。。
上司に残業申請をして仕事するという方法もありますが、このやり方は残業の実態を把握しにくいので、各種管理ツールや監視ツールを活用して正確に把握できるようにしましょう。
関連記事:在宅勤務に交通費は必要?クリアにしておきたい線引きや注意点
関連記事:在宅勤務における監視の必要性やツール活用のポイント
3-3. 労働時間
在宅勤務は会社に出社しない分、労働時間の管理が難しくなります。
この場合、勤怠管理システムの利用や、出勤時間・退勤時間の申請の有無など、労働時間に関する新たな規定が必要になります。
特に業務の開始と終了は、従業員に報告を義務付け、管理できるようにするしなければなりません。
労働時間の管理方法は、電子出勤簿への入力やメールなどを使った申告などがありますが、完全な自己申告となるので不正が生じるリスクがあります。適切に管理するには、出退勤打刻をWebでおこなえる勤怠管理システムがおすすめです。
勤怠管理システムであれば、打刻時の位置情報をチェックできるものもあるので、不正打刻を防ぐことも可能です。
関連記事:テレワーク・在宅勤務導入後の労働時間管理におすすめな方法3選
3-4. 費用負担
費用負担に関しては、特に注意して就業規則を決めましょう。
出勤時は会社が負担していた通信費が、実質社員の負担になってしまうので、負担分をしっかり明記しなければなりません。対応は企業に委ねられますが、中には交通費の分をそのまま通信費の手当てとして支給したり、「テレワーク手当」を新たに決める企業もあります。
また、、業務に必要な機器やソフトウェアの費用負担についても考慮する必要があります。在宅勤務では、従業員が自宅で快適に業務をおこなえるよう環境を整えることが求められるため、必要な設備の貸与や補助制度の導入が効果的です。
費用負担に関しては、労使間で十分に話し合いをおこない、合意の上で明確に規定することで、後々のトラブルを防ぐことができます。
社員にヒアリングをして、よりよい手段を選ぶのも一つの手です。どのような方法が最も適切かは、企業の方針や従業員の意見を反映させながら、柔軟に対応していくことが重要です。
関連記事:在宅勤務手当とは?支給額の相場や支払い方法を詳しく紹介
4. 就業規則を定める際に気を付けたいポイント


就業規則は労働基準法にも定められており、10人以上の労働者を雇う場合には必ず作成しなければならないものなので、。法律違反にならないようにしましょう。
ここでは、労働基準監督署への届出と従業員への周知について解説します。
4-1. 労働基準監督署に届け出を出す
就業規則を変更した場合には、労働基準監督署への届出が必要です。具体的には、変更案が経営陣から承認を受けたら、従業員代表の意見書を添付して、管轄の労働基準監督署に提出します。
なお、本社と各事業所の変更内容が同じであれば、「本社一括届出制度」を利用して、まとめて届け出ることも可能です。提出時には「就業規則」「届出書」「意見書」それぞれを2部ずつ用意し、管轄の労働基準監督署の窓口や郵送、電子申請などの方法で提出します。
ただし、提出をすればよいというものではなく、記載事項に不備があったり従業員に不利益な内容があったりすると受理されないので注意してください。
参考記事:就業規則の変更を届出る際の提出方法と気をつけるべき4つの注意点
4-2. 従業員に周知させる
就業規則は、労働基準法第106条に基づき、従業員に周知させる必要があります。
具体的には、各作業場の見やすい場所に掲示したり書面を交付したりするなどの方法で、従業員がいつでも内容を確認できる状態を整えなければなりません。
周知させる理由は、就業規則が労働者の権利を守るための規則だからです。作成や変更がおこなわれても、従業員が内容を知らなければ権利が守られているかを確認できません。そのため、労働基準法第106条では周知を義務づけているのです。
周知が不十分な場合、周知義務違反として罰則が科される可能性があるため、特に注意しなければなりません。
5. 在宅勤務に切り替える場合は就業規則に定める必要がある


新たに在宅勤務に移行する企業は、在宅勤務に合わせた就業規則を決めなければいけません。
その理由は、在宅勤務が出勤時の働き方と大きく異なり、既存の就業規則が当てはまらない可能性があるからです。
また、在宅勤務の就業規則を定める際にも、基本的な労働基準法からは外れてはいけません。在宅であっても法定労働時間内の業務が基本ですし、出勤することがあれば通勤手当を支払う必要があるので、法律に則った在宅勤務規定を作成してください。
在宅勤務を導入する場合は際、従業員を混乱させないようしっかり事前準備をおこないましょう。



新型コロナウイルスの蔓延によって急激に普及したテレワーク。
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