在宅勤務の就業規則の在り方や見直しのポイントを解説
新型コロナウイルスの感染拡大を機に在宅勤務をスタートさせた企業も多くあります。在宅勤務を始めるにあたって就業規則の見直しをおこなう場合は、細かい部分の取り決めまで見直さなければなりません。
例えば在宅勤務そのものの定義から始まり、在宅勤務の対象者、サテライトオフィスなどの措置、服装規定や労働時間、残業や通勤手当の有無など、根本から見直すのがおすすめです。
ここからは厚生労働省が正式に発表している「テレワークモデル就業規則~作成の手引き~」をもとに、在宅勤務に対応した就業規則の決め方を解説していきます。
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在宅勤務の定義や導入を成功させる4つのポイントを解説
1. 在宅勤務に対応した就業規則とは?
在宅勤務の開始に伴い、具体的に以下のような取り決めをしなければなりません。
- 在宅勤務を命じる規定
- 在宅勤務時の労働時間に関する規定
- 通信費や機材費など、今までは必要のない負担に関する規定
就業規則を見直す際は、労働基準法に則って作成し、従業員に周知します。
従業員の合意を得ることなく、就業規則を適用させることのないよう十分注意しましょう。
1-1. 就業規則を新たに作成するか、規則に加えるか
在宅勤務に対応した就業規則を定める際は以下のどちらかの方法で、在宅勤務に関する就業規則を定めます。
- ひな形などをもとに「在宅勤務規程」を新たに作成する
- 既存の就業規則の各項目に、在宅勤務に関する規定を加える
どちらの方法をとるかは企業ごとに選択可能です。
1-2. 就業規則と在宅勤務規則規程の関係
従業員が遵守すべき労働条件を細かく定めたものを「就業規則」といいますが、在宅勤務に関する就業規則は、就業規則の一部として考えられます。
例えば、在宅勤務に関する規則を定めた場合、別に給与規程や旅費規程があり、その中で在宅勤務に関する規定が定められているという形がとられます。
新しい働き方として導入されつつある在宅勤務も、しっかり就業規則を定めなければいけない点に注意しましょう。
2. 在宅勤務に対応した就業規則の見直しが必要な理由
原則として、在宅勤務に切り替えた場合でもこれまでの就業規則で対応可能とされています。
法的にも問題ありません。
ただし、既存の就業規則では規定のなかった以下の項目を新たに就業規則を定める必要があります。
- 通信費の負担
- 機材の調達
- 労働時間
- 残業に関する取り決め
ここでは労働基準法に則って、在宅勤務における就業規則見直しの必要性を解説していきます。
2-1. 労働基準法第89条による負担の取り決め
労働基準法第89条、第5号には「労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項」という取り決めがあります。
これは労働者に負担させる費用をあらかじめ明示する必要があるという取り決めで、明示のないまま雇用契約を結ぶと、労働条件の明示義務違反に該当する可能性があります。
よって、在宅勤務で新たに生じる通信費や機器の費用は、負担の有無を就業規則でしっかり提示しなければなりません。
関連記事:労働基準法第89条で定められた就業規則の作成と届出の義務
2-2. 在宅勤務によって働き方が大きく変わる
また、法律の観点以外にも、在宅勤務導入によって従業員の働き方が大きく変更される点も考慮する必要があります。例えば以下のようなことです。
- 在宅勤務の対象者
- 勤務場所
- 情報セキュリティ
- 連絡体制
- 評価制度
まずは在宅勤務に切り替える従業員の選別と、勤務場所の指定をおこないます。
在宅勤務は上司や同僚がいない分、自発的な行動が求められるため、新入社員などにとっては在宅勤務に適応できない可能性があります。
また在宅勤務で勤務場所を指定しない場合、カフェやレストランなどで業務をおこない、社内の情報が不意に流出する可能性も否めません。
情報セキュリティの観点からも、情報を持ち出さない、パソコンは自宅以外で使わないなどの就業規則を定めます。
また、在宅勤務切り替えにあたり、これまでの連絡体制を見直す必要も出てきます。
社員に一任してしまうと、社員間でツールが乱立したり、個人用ツールの使用でセキュリティが損なわれたり、トラブルの発生原因となる可能性があります。
在宅勤務時はこのツールを使って連絡を取ると、使用するツールおよび利用規則を定めておきましょう。
特に、緊急時の連絡方法についてはしっかり話し合うべきです。
ツールには不具合が生じることも考慮し、連絡ツールが使えない場合にも業務の滞りがないようにしましょう。
ここまで在宅勤務にすることで生じる手間について解説したため、「面倒くさいな」などと感じられた方もいるかもしれません。ただし在宅勤務にすることで離職防止や生産性向上など、企業にとってプラスの効果も多く得られます。
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関連記事:在宅勤務時のセキュリティ対策で押さえるべきポイント
3. 在宅勤務に対応した就業規則のポイント
在宅勤務規程を定めるにあたって、覚えておきたいポイントがあります。
具体的なポイントは次の通りです。
- 在宅勤務の対象者と定義
- 通勤手当や残業代
- 労働時間
- 費用負担
以上4つのポイントに沿って就業規則を決めていくのが大切です。
ここからは在宅勤務に対応した就業規則のポイントを解説していきます。
3-1. 在宅勤務の対象者を定める
在宅勤務に切り替える際、大切なのがどんな状況で在宅勤務を許可するかです。
全ての業務を在宅勤務に切り替えられればよいものの、業務の関係上、対面でおこなわなければならないときもあります。
また、在宅勤務を許可する対象者を決めておかないと、従業員のなかには在宅勤務で実力が発揮できない方もいるかもしれません。
- 在宅勤務を許可する社員
- 在宅勤務によって業務に支障をきたさないか
以上2つのことを十分注意し、対象者や定義、期間等を就業規則に盛り込みましょう。
3-2. 通勤手当や残業代
在宅勤務をすることで通勤費を変更する場合には就業規則や賃金規程または在宅勤務規程にどのような計算方法で通勤費を支給するのか記載をする必要があります。
また、判定が難しい残業代に関しては、明確な取り決めをおこない、社員に徹底した周知活動をおこないましょう。
上司に残業申請をして、その分仕事するという手もありますが、各種管理ツールや監視ツールを活用すると、より明確に分かりやすくなります。
関連記事:在宅勤務に交通費は必要?クリアにしておきたい線引や注意点
関連記事:在宅勤務における監視の必要性やツール活用のポイント
3-3. 労働時間
会社に出社しない分、労働時間の管理が難しくなります。
この場合、勤怠管理システムの利用や、出勤時間・退勤時間の申請の有無など、労働時間に関する新たな規定が必要になります。
特に業務の開始と終了は、従業員に報告を義務付け、管理できるようにする必要があります。
関連記事:テレワーク・在宅勤務導入後の労働時間管理におすすめな方法3選
3-4. 費用負担
先ほども少し触れましたが、費用負担に関しては特に注意して就業規則を決めましょう。
出勤時は会社が負担していた通信費が、実質社員の負担になってしまうので、負担分をしっかり明記する必要があります。
対応は企業に委ねられますが、中には交通費の分をそのまま通信費の手当てとして支給したり、「テレワーク手当」を新たに決める企業もあります。
社員にヒアリングをして、よりよい手段を選ぶのも一つの手です。
関連記事:在宅勤務手当とは?支給額の相場や支払い方法を詳しく紹介
3-5. 就業規則を定める際に気を付けたいポイント
最後に、新たな就業規則を決める際の注意点があります。
具体的にはつぎのとおりです。
- 就業規則を変更した場合は、従業員代表の意見書を添付し、労働基準監督署に届出をする
- 従業員に周知をする
就業規則は労働基準法にも定められており、10人以上の労働者を雇う場合には必ず必要になる規則です。
また、従業員の意見も反映するため、代表者の意見書も添付します。
最後に従業員全体に周知を徹底するよう、十分注意してください。
4. 在宅勤務に切り替える場合は就業規則に定める必要がある
新たに在宅勤務に移行する企業は、在宅勤務に合わせた就業規則を決めなければいけません。
これは、在宅勤務が出勤時の働き方と大きく異なり、既存の就業規則が当てはまらない可能性があるからです。
また、在宅勤務の就業規則を定める際にも、基本的な労働基準法からは外れてはいけません。
在宅勤務に切り替えた際、従業員を混乱させないようしっかり事前準備をおこないましょう。
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