社会保険料の定時決定とは?算定基礎届や提出時期、随時改定との違いを解説 - ジンジャー(jinjer)|クラウド型人事労務システム

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社会保険料の定時決定とは?算定基礎届や提出時期、随時改定との違いを解説

間違いがないか確認する様子

社会保険制度において、従業員の標準報酬月額を適正に維持するための重要な手続きが「定時決定」です。この手続きは、毎年実施される社会保険料の見直し制度であり、企業の人事労務担当者にとって重要な年次業務の一つとなっています。

本記事では、定時決定の概要から算定基礎届の作成方法、提出時期、さらに随時改定との違いまで、人事労務担当者が知っておくべき重要なポイントを詳しく解説します。

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  • 社会保険の随時改定:月額変更届の提出要件の確認
  • 賞与支払:賞与支払届を提出する際のポイント

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1. 社会保険の定時決定とは

書類を読む様子

定時決定とは、毎年決まった時期に従業員の標準報酬月額を見直す手続きのことです。この手続きは、従業員が実際に受け取る報酬(給与)と、社会保険料の計算基準となる標準報酬月額との間に生じる差異を調整することを目的としています。

定時決定における標準報酬月額は、従業員が4月から6月にかけて受け取った報酬の平均額をもとに計算します。ここでの「報酬」とは、基本給の他に各種手当なども含まれ、労働に対する対価として受け取る金額全体のことです。

1-1. 標準報酬月額とは

標準報酬月額とは、健康保険や厚生年金保険の保険料および保険給付額を算出するための基準となる金額です。従業員が受け取る報酬額を「等級」と呼ばれる一定の幅で区切り、等級ごとの標準報酬月額に対応する保険料額表に基づいて毎月の社会保険料が計算されます。

標準報酬月額は入社時に一度決定された後、毎年の定時決定や大幅な報酬変動時の随時改定によって見直されます。また、傷病手当金、出産手当金、老齢厚生年金などの給付額の計算基礎としても使用されるため、適正に標準報酬月額を計算することが重要です。

関連記事:標準報酬月額とは?調べ方や社会保険料の算出方法について解説

1-2. 算定基礎届とは?出さない場合のリスク

算定基礎届とは、定時決定のために4月から6月の従業員の報酬額を届け出るための書類です。この書類を日本年金機構や健康保険組合へ提出することで、9月から1年間適用される標準報酬月額が決定されます。社会保険料は、標準報酬月額の等級に応じた保険料額が適用される仕組みです。

算定基礎届の提出は法律で義務付けられており、提出しないまま放置すると 6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。提出期限を過ぎても出さない場合、年金事務所から文書や立ち入り調査による催促を受けることもあるため、必ず期限までに提出しましょう。

1-3. 随時改定との違い

随時改定とは、定時決定の時期以外でも給与の大幅な変動があった場合に標準報酬月額を見直す手続きです。定時決定は毎年定期的に実施される年に一度の手続きを指します。

一方、随時改定は月額変更届に基づいておこなわれ、従業員の昇給や降給など固定的賃金が著しく変動した際に、必要に応じて標準報酬月額を見直す手続きを意味します。いずれも社会保険料を適正化するための仕組みです。

随時改定が適用される具体的な条件としては、従業員の固定的賃金が変更され、その結果3ヵ月分の平均報酬月額と現行の標準報酬月額に大きな差異(2等級以上)が生じる場合です。この場合には月額変更届を提出し、変更後の固定的賃金が反映される報酬が発生した月から4ヵ月目に保険料の変更がおこなわれます。

関連記事:社会保険の随時改定とは?標準報酬月額を改定する条件や月額変更届の手続きを解説

2. 定時決定の対象と対象にならない従業員

対象者

定時決定の対象となるのは、7月1日現在で在籍しているすべての被保険者(社会保険加入者)です。

休職中の人、育児休暇や介護休暇を取得している人、厚生年金保険の資格を喪失する70歳の人、健康保険の資格を喪失する75歳以上の人でも全員が対象となります。

ただし、以下の条件に当てはまる従業員は、定時決定の対象になりません。

  • 6月1日以降に資格取得した従業員
  • 6月30日以前に退職した従業員
  • 7月改定の月額変更届を提出する従業員
  • 8月または9月に随時改定が予定されている旨の申し出をおこなった従業員

参考:定時決定(算定基礎届)|日本年金機構

3. 定時決定はいつから反映?定時決定のスケジュール

PROCESS

定時決定による標準報酬月額は、毎年9月分の社会保険料から翌年8月分までに反映されます。多くの企業では社会保険の翌月に控除をおこなっており、社会保険料が新保険料で天引きされるのは10月支給の給与からとなるケースが一般的です。

ただし、翌年8月までの間に随時改定があった場合は、途中で標準報酬月額が変更されることがあります。

4. 定時決定の手続きの流れ

資産

定時決定の手続きは次のような流れで進めていきます。

  • 4月~6月の給与から標準報酬月額を算定
  • 算定基礎届を作成し提出する
  • 算定基礎届をもとに標準報酬月額を確定する

それぞれについて詳しく解説します。

4-1. 4月~6月の給与から標準報酬月額を算定

定時決定の手続きは、4〜6月までの給与額をもとにおこなわれます。この期間の給与データを正確に集計することが重要です。特に、従業員の報酬に変更があった場合、その情報を反映させる必要があります。

ルールにそって正確な日数で支払基礎日数を届け出なければ、誤った標準報酬月額が決定されてしまうこともあるため、十分に留意しましょう。

4-2. 算定基礎届を作成し提出する

標準報酬月額が算定できたら、次に算定基礎届を作成します。届出用紙は6月中旬頃に日本年金機構から郵送されますが、電子媒体や電子申請システムで作成・提出も可能です。

提出期限は毎年7月10日です。遅れないよう余裕をもって準備しましょう。

4-3. 算定基礎届をもとに標準報酬月額が確定される

届出が年金事務所に受理されると、届出内容に基づいて各従業員の新たな標準報酬月額が決定されます。決定された標準報酬月額は「標準報酬決定通知書」で企業に通知されます。

決定通知を受け取ったら、届け出た標準報酬月額と相違なく決定されたことを確認し、給与計算に反映させましょう。

5. 標準報酬月額の算出方法

電卓

4月、5月、6月の3ヵ月間に受けた報酬の合計額を、3ヵ月の総月数で割ることで報酬月額が算出され、その報酬月額をもとに標準報酬月額が決定されます。この際、支払基礎日数が17日以上であることが条件です。

ただし、特定適用事業所に勤務する短時間労働者の場合、支払基礎日数が11日以上ある月があれば標準報酬月額が決定されます。

支払基礎日数とは、その月に支払う報酬を計算する際、支払い対象となった日数を指します。時給制・日給制では実際に勤務した日数(有給休暇取得日も含む)がそのまま支払基礎日数となる一方、月給制では原則として暦日数(例:30日や31日など)を記載します。

ただし、欠勤分を給与から差し引くルールがある場合は、就業規則や給与規程で定めた月の勤務日数から欠勤日数を差し引いた数を用いるのがポイントです。

支払い基礎日数のパターンによる標準報酬月額の算出方法は以下の表の通りです。

支払基礎日数

標準報酬月額の決定方法

3ヵ月とも17日以上ある場合

3ヵ月の報酬月額の平均額をもとに決定

1ヵ月でも17日以上の月があり、

他は 17 日未満の場合ある場合

17日以上の月の報酬月額の平均額をもとに決定

3ヵ月とも15日以上17日未満の場合17日未満の場合

3ヵ月の報酬月額の平均額をもとに決定

1ヵ月または2ヵ月は15日以上17日未満の場合(ただし、1ヵ月でも17日以上ある場合は除く)

15日以上17日未満の月の報酬月額の平均額をもとに決定

3ヵ月とも15日未満の場合

従前の標準報酬月額で決定

※短時間労働者の場合は11日以上ある月の報酬月額の平均額をもとに決定

5-1. 標準報酬月額の対象となる報酬

標準報酬月額の計算においては対象となる報酬とならない報酬があり、「労働の対価」として支払う報酬はすべて対象です。 ただし、臨時で支給するものや、支給が年 3 回以下の賞与などは定時決定の報酬に含まれません。

<標準報酬月額の対象となる報酬例>

  • 基本給
  • 役職手当
  • 職務手当
  • 勤務地手当
  • 宿直手当
  • 休職手当
  • 通勤手当
  • 住宅手当
  • 年4回以上支給される賞与

 

<標準報酬月額の対象にならない報酬例>

  • 年3回以下の賞与
  • 大入袋
  • 見舞金
  • 退職手当
  • 出張旅費
  • 交際費
  • 慶弔見舞金
  • 年3回以下の賞与

参考:標準報酬月額の決め方|全国健康保険協会

5-2. 標準報酬月額の算出事例

報酬月額を算出する際の一般的な手順として、月給制で欠勤控除がない場合の具体的な計算方法をご紹介します。

まず、支払基礎日数を4月、5月、6月の各月について記入します。例えば、毎月15日締め切りで当月25日払いの場合、4月の支払基礎日数は3月16日から4月15日までの31日となります。同様に5月と6月の日数も記入します。

次に、4月、5月、6月の各月の報酬額を計算し記入します。この3ヵ月間の報酬の平均額を求め、その金額を標準報酬月額表と照らし合わせて標準報酬月額を決定します。例えば、平均報酬額が290,333円であれば、標準報酬月額は「300,000円」です。

5-3. 標準報酬月額の有効期間とは

標準報酬月額の有効期間は、その年の9月から翌年の8月までの1年間です。

具体的には、毎年7月に算定基礎届を提出し、その結果に基づいて新たな標準報酬月額が決定されます。この新しい標準報酬月額をもとに、9月分から翌年の8月分までの社会保険料を給与から天引きします。

6. 定時決定の注意点

注意

定時決定を進める上で、見落としがちな特殊ケースや注意すべきポイントを解説します。休業者がいる場合や支給形態が特殊な場合などに注意が必要です。

6-1. 休業手当を支給した場合も算定基礎届の作成が必要

休業手当を支給した場合は、状況によって以下のように取り扱い方が異なります。

  • 7月1日時点で休業が解消されており、休業手当を含まない月がある:休業手当を含まない月のみを対象とする
  • 7月1日時点で休業が解消されており、すべての月で休業手当を支払っている:低額な休業手当等に基づいて決定または改定される前の標準報酬月額で決定
  • 7月1日時点で休業が解消されていない:休業手当を含む月と通常の給与の月を含めて平均額を計算する

6-2. 4〜6月が繁忙期で残業が多い場合の標準報酬月額

算定基礎届の注意点2つ目として、4月、5月、6月が繁忙期であるケースがあげられます。

算定基礎届は4〜6月の標準報酬月額の平均額がベースとなるため、繁忙期が重なると残業代などの関係上、標準報酬月額が高くなります。そうした場合、4〜6月をもとにした標準報酬月額と年間の平均額から計算した標準報酬月額の2つを比較し、その差が2等級以上のときは年間の平均額から計算した標準報酬月額を選ぶことが可能です。ただし、業務の性質上例年発生することが見込まれる場合に限られます。

年間の平均額から計算した標準報酬月額を選んだ場合、追加で申立書や従業員本人の同意書などの書類を提出する必要があるため注意しましょう。

6-3. 給与が翌月払いの場合の支払基礎日数

算定基礎届の注意点3つ目は、給与が翌月払いの場合です。支払基礎日数は報酬の計算基礎となる日数を記載するため、気をつける必要があります。

例えば、3月分の給与を4月に支払う場合、4月の支払基礎日数は3月勤務分の報酬の計算基礎となった日数を計算することになります。つまり、4月の支払基礎日数は31日となるのです。

間違えやすいポイントのため、給与が翌月払いのときは気をつけましょう。

6-4. 昇降給により2等級以上変わる場合は随時改定

7月、8月、9月に、随時改定により標準報酬月額が2等級以上変更になる場合には、定時決定の対象ではありません。昇給や降給などにより標準報酬が2等級以上変更した従業員の手続きを、算定基礎届で進めないように気を付けましょう。

6-5. 従業員が6月30日以前に退職した場合の記入方法

6月30日以前に退職した従業員の分について、算定基礎届に記載されている場合には、その該当者の欄に斜線を引き、右の備考欄に「○月○日退職」と記入する必要があります。退職者がすでに現時点で被保険者として在籍していないことを示すためです。データで提出する場合は退職済みの従業員を削除しましょう。

退職者は被保険者資格喪失届の提出も、漏れがないよう注意しましょう。

6-6. 従業員が4~6月の間に入社した場合の計算

4〜6月の間に新たに入社した従業員に関しては、算定基礎届の対象になるか、慎重に確認しましょう。

基本ルールとして、6月1日以降に入社(資格取得)した従業員は定時決定の対象に含めません。一方、4月入社や5月入社の従業員については定時決定の対象です。

もし1ヵ月分の給与が全額支払われていない月がある場合、その月は算定対象から外すことが認められます。この場合には、算定基礎届の備考欄に「途中入社」を○で囲み、さらにその従業員の具体的な入社年月日と給与の締日・支払日の明記が必要です。

6-7. 育児・介護休業や病気等の欠勤で4~6月の報酬がない場合

従業員が育児・介護休業や長期の病気で欠勤が続き、4月から6月の期間に一度も報酬が支払われていない場合、従前の標準報酬月額をそのまま継続して適用します。この場合、以下の記入が必要です。

  1. 支払基礎日数、支給額、合計の欄をすべて空欄にする
  2. 総計額と平均額もすべて空欄のままにする
  3. 算定基礎届の備考欄にある「病休・育休・休職等」の項目を○で囲む
  4. 備考欄のその他の欄に、「○月○日から育休」や「○月○日から病休」など具体的な理由と日付を記入する

6-8. 8〜9月に随時改定を予定している場合の計算

8月もしくは9月に昇給や降給などの理由で随時改定が予定されている場合には、その旨を届け出ます。

紙の算定基礎届の場合は、報酬月額欄を空欄にし、備考欄の「月額変更予定」という項目を○で囲みます。データで提出する場合は、随時改定予定者を除いて算定基礎届を作成します。これは、算定基礎届と随時改定が重複し、一方が他方に影響を与えないようにするための対策です。

随時改定予定者が、後日随時改定の要件を満たさないと判明した場合(2等級以上の変更がなかった場合など)は、その従業員の算定基礎届を作成したうえで速やかに提出します。

6-9. 賞与は年間の支給回数によって扱いが異なる

年に1〜3回支給される賞与は、定時決定の報酬月額に含めず標準賞与額として別途「被保険者賞与支払届」で届け出ます。

一方で、年4回以上賞与を支給している場合は定時決定で注意が必要です。前年の7月からその年の6月までに4回以上の賞与が支払われた場合は、支払われた賞与の合計額を12ヵ月で割った額を各月の報酬に加え、報酬月額を算出し届け出る必要があります。

7. 定時決定を正しく理解して算定基礎届を提出しよう

注意深く書類を見る様子

毎年の定時決定は、従業員の標準報酬月額を見直す重要な手続きです。この手続きにより、実際に受け取る給与や手当の金額が反映され、適正な社会保険料が算出されます。定時決定の対象となるのは7月1日時点の被保険者で、4月から6月の給与をもとに算定基礎届を作成し、提出することが必要です。提出後、標準報酬月額が決定され、9月から新しい保険料が適用されます。

定時決定は手間がかかりますが、その結果は従業員の給与や社会保険の給付額にも反映される大切なものです。社内の給与データをしっかり整備し、今回ご紹介した留意点を参考に算定基礎届を作成し、期限までに提出しましょう。

必要に応じて全国健康保険協会や日本年金機構のウェブサイトを参照しながら進めれば万全です。定時決定への理解を深め、正確な届出をおこないましょう。

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