標準報酬月額とは?調べ方や社会保険料の算出方法について解説
更新日: 2026.3.30 公開日: 2024.7.2 jinjer Blog 編集部

標準報酬月額とは、社会保険料の計算を簡単にするため、被保険者の給与を一定範囲に分けて区分した値のことです。社会保険料は、標準報酬月額を基準にして計算します。
しかし「標準報酬月額を用いた社会保険料の計算方法がよくわからない」と、お悩みの方もいるでしょう。
そこで本記事では、標準報酬月額の概要や調べ方、決定時期・変更するタイミングについてわかりやすく解説します。具体的な社会保険料の計算方法も紹介しているので、標準報酬月額について深く理解したい方はぜひ最後までご覧ください。
目次
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1. 標準報酬月額とは


標準報酬月額とは、社会保険料の計算を簡単にするため、給与を一定範囲に分けて区分したものです。健康保険と厚生年金では、以下のように等級の範囲が異なります。
- 健康保険:1等級(58,000円)〜50等級(1,390,000円)
- 厚生年金:1等級(88,000円)〜32等級(650,000円)
標準報酬月額を用いれば、残業代などにより月々の給与が変動しても控除する社会保険料が一定になります。なお、標準報酬月額は、傷病手当金や出産手当金の支給額の計算の基準です。
1-1. 標準報酬月額の調べ方
保険者が協会けんぽの場合、標準報酬月額は協会けんぽのホームページで確認できます。一方、保険者が組合健保の場合は、所属する組合によって保険料率や保険料額表が異なるので確認が必要です。
健康保険の標準報酬月額は都道府県ごとに設定されており、毎年改定されます。そのため、会社の所在地がある都道府県の標準報酬月額を確認し、最新の情報で計算しましょう。
| 標準報酬 | 報酬月額
以上~未満 |
|
| 等級 | 月額 | |
| 1 | 58,000円 | 63,000円 |
| 2 | 68,000円 | 63,000円~73,000円 |
| 3 | 78,000円 | 73,000円~83,000円 |
| 4(厚生年金1等級) | 88,000円 | 83,000円~93,000円 |
| 5 | 98,000円 | 93,000円~101,000円 |
| ≀ | ≀ | ≀ |
| 19 | 240,000円 | 230,000円~250,000円 |
| ≀ | ≀ | ≀ |
| 35(厚生年金32等級) | 650,000万円 | 635,000円~665,000円 |
| ≀ | ≀ | ≀ |
| 50 | 1,390,000万円 | 1,355,000円以上 |
報酬月額とは、毎月の給与や手当の合計額で、標準報酬月額を決める際の給与の目安です。例えば次のような給与の場合、報酬月額は235,000円となり、標準報酬月額は240,000円です。
例)
- 基本給 210,000円
- 住宅手当 10,000円
- 家族手当 10,000円
- 通勤手当 5,000円
上記の例では、報酬月額235,000円ではなく、標準報酬月額の240,000円で社会保険料の計算をします。
2. 標準報酬月額の報酬の範囲とは


標準報酬月額に該当する報酬は、給与だけに限りません。通勤の際に使う定期券など、労働の代わりとして支給されている現物も報酬に含まれます。
ただし一般的に月々に受け取ることがない交際費や慶弔費などの一時的な手当は、報酬に含まれないため注意が必要です。この章では標準報酬月額の対象となる報酬を現金支給と現物支給に分けて解説します。
参考:算定基礎届の記入・提出のガイドブック令和7年度|日本年金機構
2-1. 対象となる報酬
現物支給の場合、労働の対象か、日常的な支給か、実費弁済や恩恵的な支給ではないか、などの観点から報酬に該当するかを判断します。
| 現金支給 | 基本給、残業代、住宅手当、役職手当、通勤手当など |
| 現物支給 | 社宅、食事代、定期券など |
2-2. 対象とならない報酬の例
実費精算や労働の対価ではない恩恵的な給付は原則報酬の対象外です。
現物支給の食事や食券は従業員負担が3分の2以上の場合は、報酬の対象にはならず、従業員負担が3分の2未満の場合は報酬に該当するので注意しましょう。
| 現金支給 | 慶弔見舞金、出張旅費、退職金、賞与など |
| 現物支給 | 食事や食券(まかない)、作業服など |
3. 標準報酬月額を決定・変更する4つのタイミング


標準報酬月額の決定時期・変更するタイミングは、次のとおりです。
- 定時決定
- 随時改定
- 資格取得時
- 産前産後・育児休業終了時
順に詳細を解説します。
3-1. 定時決定
定時決定とは、4月、5月、6月支払分給与の平均金額をもとに、標準報酬月額を改定することです。新たな標準報酬月額は、変更した年の9月から翌年の8月まで適用されます。
ただし、4月、5月、6月の3ヵ月間で原則それぞれの月で17日以上の支払基礎日数が必要であり、17日に満たない月は計算対象に含みません。その場合17日以上の月だけで定時決定をします。なお、すべての月の支払基礎日数が17日未満の場合は15日以上17日未満の月で定時決定し、すべての月で15日未満の場合は従前の標準報酬月額を引継ぎます。
原則、4月、5月、6月支払い分給与の平均額が標準報酬月額の等級ですが、例外的に次の3つの条件を満たせば年間平均で定時決定ができます。
- 4月、5月、6月の平均から計算した標準報酬月額の等級が、前年7月から6月までの年平均の標準報酬月額の等級より2等級以上差があること
- その差が業務の性質上、例年発生する見込みであること
- 被保険者本人が同意していること
つまり、低い方の標準報酬月額で申立てができ、原則の定時決定よりも社会保険料を低く抑えることが可能です。ただし、支払う社会保険料が少なくなると、将来受給する年金の金額にも影響を与えるため、本人の同意が必要です。
関連記事:社会保険料の定時決定(算定基礎届)とは?対象者や算出方法、手続きの流れを解説
3-2. 随時改定
随時改定とは、定時決定以外の期間に、給与の金額に大きな変動があった際におこなう標準報酬月額の改定のことです。
次の要件を満たしたとき随時改定をしなければなりません。
- 固定賃金が変動した
- 変動があった月から3ヵ月連続で標準報酬月額が2等級以上変わる
- 変動があった3ヵ月の各月の報酬支払基礎日数がそれぞれ17日(短時間労働者は11日)以上ある場合
また、定時決定と同様に、随時改定も次の要件を満たした場合、年間での標準報酬月額計算が可能です。
- 現在の標準報酬月額と通常の随時改定の標準報酬月額の差が2等級以上
- 通常の随時改定の標準報酬月額と年間平均で出す標準報酬月額の差が2等級以上
- 現在の標準報酬月額と年間平均で出す標準報酬月額の差が1等級以上
昇給により固定給が上がった時に随時改定をおこなうことが多く、繁忙期による残業代の増加のみでは随時改定の対象外です。なお、随時改定で使用する届出は「月額変更届」なので、一般的にこれを略して「随時改定」のことを「月変」と呼びます。
3-3. 資格取得時
入社時に社会保険に加入する場合は資格取得の手続きが必要であり、その際、報酬月額を計算し、標準報酬月額を確定させます。なお、標準報酬月額の適用期間は、次のように入社した月で異なります。
- 1月から5月末までに資格を取得した場合:同じ年の8月まで
- 6月から12月までに資格を取得した場合:次の年の8月まで
1月から5月末までに入社した場合はその年の「定時決定」の対象になるため、資格取得時の標準報酬月額は8月までの適用です。
入社条件として提示した労働条件通知書や雇用契約書に記載されている給与をもとに、標準報酬月額を決定します。
参考:資格取得時の決定|日本年金機構
参考:随時改定(月額変更届)|日本年金機構
関連記事:社会保険被保険者資格取得届とは?書き方や提出先、添付書類について解説/
3-4. 産前産後休業・育児休業終了時
産前産後・育児休業終了時も、標準報酬月額を変更できるタイミングの一つです。終了日の翌日を含む月から3ヵ月間の標準報酬月額に1等級以上差がある場合、4ヵ月目から改定することができます。
標準報酬月額の適用期間に関しては、1月から6月までに改定した場合はその年の8月まで、7月から12月に改訂された場合は翌年の8月までです。
標準報酬月額が下がれば、支払う保険料が下がり将来受給する年金の金額に影響を与えます。そこで、原則3歳までの子の養育などで標準報酬月額が下がる場合は、特例として「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」の申請が可能です。
この制度は、支払う保険料は時短勤務開始後等の低い標準報酬月額で計算しますが、年金金額を受給する際は従前のフルタイムで働いていた時の標準報酬月額が適用されます。つまり、養育によって就労時間が減っても将来受給する年金のことを気にせずに働ける制度です。
ただし、「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」は申請しなければ適用されないため、対象者には制度の概要を説明し書類を案内しましょう。
参考:産前産後休業終了時報酬月額変更届の提出|日本年金機構
参考:養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置|日本年金機構
関連記事:養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置とは?申請期間や必要書類を解説
標準報酬月額とは社会保険料の計算を簡素にするための仕組みです。しかし、標準報酬月額の計算が簡単というわけではありません。間違いやすいポイントもいくつかあり、特に通勤手当は注意が必要です。通勤手当は原則非課税ですが、社会保険料の計算の対象です。税と社会保険で扱いが異なり混同しやすいため気を付けましょう。なお、このルールにより遠方から通勤している従業員は通勤手当が多くなるため、社会保険料が高くなりがちです。
4. 社会保険料の計算方法


ここまで、標準報酬月額について解説しましたが、この章では実際に社会保険料の計算方法を健康保険、厚生年金保険、労災保険、雇用保険の4つに分けて解説します。
4-1. 健康保険料の計算方法
標準報酬月額に則った健康保険料の計算方法は、以下のとおりです。
健康保険料=標準報酬月額×健康保険料率
健康保険料率は各都道府県によって異なるので、計算する際には注意が必要です。令和7年度の東京都の9.91%を例に、報酬月額が235,000円のケースでの健康保険料を計算すると次のとおりです。
- 報酬月額が235,000円の場合、標準報酬月額は19等級の240,000円
計算式は、「240,000円×9.91%」=23,784円
この保険料を会社と従業員が50%ずつ折半して負担します。ただし、被保険者が40歳以上65歳未満の場合は介護保険料が上乗せされるので、保険料率は11.50%です。
4-2. 厚生年金保険料の計算方法
標準報酬月額に則った厚生年金保険料の計算方法は、次のとおりです。
厚生年金保険料=標準報酬月額×厚生年金保険料率
例えば、報酬月額が235,000円の場合、標準報酬月額は19等級の240,000円です。計算式は、「240,000円×18.3%=43,920円」となります。
なお、平成29年9月以降、厚生年金保険の保険料率は18.3%で固定されています。
4-3. 労災保険料の計算方法
保険料の計算に標準報酬月額を使用する健康保険や厚生年金保険とは異なり、労災保険の場合は実際の賃金に基づいて保険料を計算します。計算方法は次のとおりです。
労災保険料=賃金総額×労災保険料率
労災保険料率は事業の種類によってそれぞれ異なり、保険料は全額事業主が負担します。労災保険の保険料率は事業の種類ごとに定められ、労災事故が起きやすい事業ほど保険料率が高くなっているのが特徴です。
4-4. 雇用保険料の計算方法
雇用保険料も労災保険料と同様に実際の賃金に基づいて保険料を計算します。
雇用保険料=賃金総額×雇用保険料率
雇用保険は業種によって保険料率が定められており、令和7年の保険料率は次のとおりです。
| 業種 | 労働者負担 | 事業主負担 | 雇用保険料率 |
| 一般の事業 | 5.5/1,000 | 9/1,000 | 14.5/1,000 |
| 農林水産・清酒製造の事業 | 6.5/1,000 | 10/1,000 | 16.5/1,000 |
| 建設の事業 | 6.5/1,000 | 11/1,000 | 17.5/1,000 |
なお、労災保険と雇用保険をまとめて「労働保険」といい、年に1度、労働保険料を計算し、納付することを「年度更新」と呼びます。健康保険や厚生年金保険は、被保険者個人ごとに保険料を計算します。対して「労働保険」は、対象者の賃金の総額で1年分まとめて保険料を計算するのが特徴です。
参考:雇用保険料率|厚生労働省
関連記事:雇用保険料の計算方法は?保険加入後の計算時期や計算するときの注意点
関連記事:労働保険の年度更新とは?提出期限や電子申請手続きのやり方をわかりやすく解説!
5. 標準報酬月額に関する人事の実務


ここまで標準報酬月額の基本的な仕組みを紹介しましたが、日々の実務で注意すべきポイントについて解説します。
5-1. 日次業務|標準報酬月額の変動有無を確認
人事労務業務では、昇給や雇用形態の切り替えなど、給与金額が変更されるような人事異動が起こります。
このような人事異動を把握し、社会保険の「資格取得」や「随時改定」が必要なのかを正確に記録することが重要です。
また、役員から契約社員への切り替えや、定年退職しそのまま再雇用する場合は、同日に社会保険の資格を喪失し取得する「同日得喪」という手続きをおこなうこともあります。これは「随時改定」とは異なり、即時に標準報酬月額を改定できます。
5-2. 月次業務|給与計算と社会保険のずれを確認
月次業務では現在適用されている標準報酬月額を確認しましょう。また、昇給などの「随時改定」の対象者がいるかどうかの確認も重要です。
「随時改定」は給与の変動があった月から4ヵ月目に申請をおこないます。変動があった月から申請するまで期間があり、手続きを忘れがちなので注意しましょう。
いつ給与に変動があったのか、いつ手続きをするのか、正確なスケジュールの把握が大切です。正しい社会保険料が反映できているか、最終的な給与計算の際にも確認しましょう。
5-3. 年次業務|算定基礎届
年に1度、標準報酬月額の改定がおこなわれる「定時決定」ですが、4月、5月、6月に支払った分の給与の平均金額で標準報酬月額を改定します。
つまり、6月支払い分の給与が確定しなければ、定時決定で報告する報酬月額の確定ができません。
そのため、6月上旬から休職者や中途入社者などを確認し対象者のピックアップ等をあらかじめ進めて、給与確定後スムーズに定時決定の計算をはじめましょう。
6. 標準報酬月額のよくある質問


本章では「標準報酬月額」についてのよくある質問をもとに曖昧になりやすい部分を解説します。
6-1. 標準報酬月額に賞与は含まれる?
賞与は「標準報酬月額」の計算に含まれません。賞与にかかる社会保険料は「標準報酬月額」ではなく「標準賞与額」を基準に計算します。一定範囲で区分されていた「標準報酬月額」と違い、「標準賞与額」は賞与の1,000円未満を切り捨てた金額です。
保険料は「標準賞与額」に月次の給与と同じ保険料率をかけて計算します。標準賞与額には上限があり、健康保険は年間累計573万円、厚生年金は1回あたり150万円を超える部分には保険料がかかりません。ただし、年4回以上支給する場合は賞与ではなく報酬になり、「標準報酬月額」の算定の基礎に含まれるので注意が必要です。
6-2. 標準報酬月額はいつから反映される?
「定時決定」によって改定された標準報酬月額は毎年9月からの適用です。9月分給与が10月に支払われ、社会保険料が前月徴収の場合は、10月支払い分給与から改定後の標準報酬月額が反映されます。一方、「随時改定」では、給与の変動のあった月から4ヵ月目に改定後の標準報酬月額が反映されます。
6-3. 標準報酬月額はどうやって調べる?
標準報酬月額は毎年見直される標準報酬月額表で確認できます。毎年3月分から更新されるので最新の情報を確認しましょう。
7. 標準報酬月額の手続きは正しく実施しよう


標準報酬月額とは、社会保険料の計算をしやすくするために区分された報酬の目安です。標準報酬月額を正しく理解していなければ、「定時決定」や「随時改定」などの社会保険料を改定する場合に正しい保険料の計算ができません。
何が報酬になるのか、いつ手続きをおこなうのかなど、標準報酬月額の基本ルールを理解し、正しく手続きをおこないましょう。



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