雇用保険料の計算方法とは?対象者や端数の処理など注意点を解説

雇用保険料は、従業員の失業給付や育児休業給付を支える公的保険制度の財源です。
給与計算のたびに正確な算出が求められ、算定対象となる賃金の範囲や料率の適用区分など、判断に迷いやすいポイントも少なくありません。
この記事では、令和8年度(2026年度)の最新料率をもとに、計算方法の基礎から実務手順・注意点まで解説します。
関連記事:雇用保険とは?パート・アルバイトの加入適用や給付内容についてわかりやすく解説
関連記事:令和8年4月の雇用保険料は引き上げ?引き下げ?企業への影響を解説
目次
正しい計算方法と加入条件をくわしく解説
雇用保険への加入は、従業員が離職した時の手当だけでなく、出産や労災による補償など、会社と従業員を守るための公的保険です。
健康保険など「ほかの社会保険」と同様に加入が義務付けられていますが、雇用保険だけ計算方法や負担割合が異なるため、注意しなければなりません。
万が一、誤って納付してしまった場合、未納分の保険料だけでなく、追徴金もまとめて徴収される可能性があります。
労働局から指摘を受けることがないよう、事前に確認しておきましょう。
「計算方法に不安がある」
「いつまでに加入させなければいけないの?」
「雇用保険料が毎月変わる理由を知りたい」
という方に向けた解説資料も用意しています。
賃金支給総額に含まれる範囲や⼊社・退職⽉の日割り計算など、併せて知っておきたい基礎知識もわかりやすく紹介しているので、ぜひこちらから無料でダウンロードしてご覧ください。
1. 雇用保険料の計算方法


雇用保険料は、次の計算式で求めます。
【計算式】雇用保険料=賃金総額×雇用保険料率
雇用保険料率は事業の種類によって異なり、算定対象となる賃金の範囲の正確な把握が重要です。
詳しい手順は「3. 雇用保険料の計算式と計算の流れ|月次給与の場合」で解説します。
関連記事:雇用保険料率とは?なぜ計算割合が異なるのかや令和8年度の変更案を解説!
2. 雇用保険料の計算前におさえたい基礎知識


雇用保険料を正しく計算するには、「だれが対象か」「何が賃金に含まれるか」「料率はいくらか」という3つの基礎知識が不可欠です。
計算式はシンプルですが、この前提知識を誤ると正しく保険料が算出されません。まずは次の3点を確認しましょう。
2-1. 雇用保険の加入条件
雇用保険料の徴収対象となるのは、雇用保険の被保険者である従業員です。原則として、次の条件を両方満たす場合に加入義務が生じます。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 同一事業主のもとで31日以上の雇用見込みがある
ただし、次のいずれかに該当する場合は適用除外となります。
- 季節的に雇用される者であって、4ヵ月以内の期間を定めて雇用される者、または週の所定労働時間が30時間未満の者
- 学校教育法に規定する学校の学生・生徒(通信・夜間学生などは除く)
- 特定漁船以外の漁船に乗り組むために雇用される船員(1年を通じて雇用される場合を除く)
- 国・都道府県・市区町村等の事業に雇用される者のうち、離職時に受ける諸給与が雇用保険の給付内容を超えると認められる者
パートやアルバイトであっても、上記の加入条件を満たす場合は雇用保険に加入し、雇用保険料の徴収が必要です。加入漏れがないよう雇用形態ごとに確認しましょう。
関連記事:雇用保険の加入条件とは?雇用形態ごとの条件や手続き方法を解説
2-2. 雇用保険料の算定対象となる賃金
雇用保険料の計算には、「労働の対価として支払われたすべての賃金」が対象となります。基本給だけでなく各種手当も含まれます。社会保険料や税金を差し引く前の総支給額を用いて計算することにも注意しましょう。
【算定対象となる賃金の例】
- 基本給
- 超過勤務手当・深夜手当・休日出勤手当
- 通勤手当(実費弁償分も含む)
- 家族手当・扶養手当・子供手当
- 資格手当・技能手当
- 住宅手当・転勤手当・単身赴任手当
- 賞与・インセンティブ
- 休業手当
- 前払い退職金(在職中に給与に上乗せして支払われるもの)
- 現物給与(食事・住居等を現物支給する場合、従業員からの徴収額が実際費用の3分の1を下回るときは、その差額が賃金とみなされ算定対象となる)
【算定対象に含まれない賃金の例】
- 役員報酬
- 退職金(退職時に支払われるもの)
- 慶弔手当・災害見舞金
- 出張旅費・宿泊費(業務上の実費精算)
- 休業補償(労基法26条に基づくもの)
- 会社が全額負担する生命保険の掛金
混同しやすいのが「通勤手当」と「出張旅費」です。通勤手当は雇用保険料の算定対象ですが、業務上の移動にかかる出張旅費は対象外です。
また、退職金は対象外ですが、在職中に給与に上乗せして支払われる前払い退職金は労働の対価とみなされ、算定対象となります。両者を混同しないよう注意しましょう。
関連記事:賃金総額とは?含まれるもの・含まれないものや計算方法を解説
関連記事:通勤手当とは?対象となる通勤手段や計算方法を解説
2-3. 令和8年度の雇用保険料率
令和8年度(2026年4月1日〜2027年3月31日)の雇用保険料率は、前年度から0.1%(1/1,000)引き下げられました。事業の種類ごとの料率は次のとおりです。
| 事業の種類 | 従業員負担 | 事業主負担 | 合計 | 主な該当業種 |
| 一般の事業 | 5/1,000 | 8.5/1,000 | 13.5/1,000 | 製造業、小売業、サービス業など |
| 農林水産・清酒製造の事業 | 6/1,000 | 9.5/1,000 | 15.5/1,000 | 農業、漁業、清酒製造業など |
| 建設の事業 | 6/1,000 | 10.5/1,000 | 16.5/1,000 | 建設工事、土木工事など |
事業の種類は会社単位ではなく、事業所ごとに判断します。例えば建設系であっても、本社の事務部門は「一般の事業」に該当する場合があります。また、農林水産・清酒製造の事業でも、園芸サービス・酪農・養鶏・養豚・内水面養殖・特定の船員を雇用する事業などは「一般の事業」と同じ料率が適用されます。
なお、事業主負担分が従業員負担分より高いのは、事業主分に「雇用保険二事業(雇用安定事業・能力開発事業)」の保険料が含まれているためです。
参考:令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内|厚生労働省
関連記事:雇用保険料率とは?なぜ計算割合が異なるのかや令和8年度の変更案を解説!
3. 雇用保険料の計算式と計算の流れ|月次給与の場合


月次給与での雇用保険料の計算は、次の4つのステップで進めます。順に詳細を解説します。
- ステップ1|雇用保険料の対象となる賃金を確認する
- ステップ2|月の賃金総額を計算する
- ステップ3|雇用保険料率を確認して雇用保険料を計算する
- ステップ4|端数処理をする
3-1. ステップ1|雇用保険料の対象となる賃金を確認する
まず、雇用保険料の対象となる賃金項目をリストアップします。基本給に加え、各種手当が対象となります。通勤手当・残業代・家族手当なども含まれる点に注意が必要です。
一方、出張旅費や退職金など、労働の対価に該当しないものは除外します。
3-2. ステップ2|月の賃金総額を計算する
対象となる賃金を合計して、月の賃金総額を算出します。
【計算例】
基本給280,000円+残業代35,000円+通勤手当15,000円=賃金総額330,000円
雇用保険料の算出には、社会保険料や所得税が控除される前の賃金総額を使用します。
3-3. ステップ3|雇用保険料率を確認して雇用保険料を計算する
自社の事業区分に応じた料率を確認し、賃金総額に掛け合わせます。
【計算例(一般の事業・令和8年度)】
従業員負担分:330,000円×5/1,000=1,650円
事業主負担分:330,000円×8.5/1,000=2,805円
3-4. ステップ4|端数処理をする
計算結果に1円未満の端数が生じた場合は、次のルールで処理します。
給与から源泉控除する場合
- 端数が50銭以下→切り捨て
- 端数が50銭1厘以上→切り上げ
従業員が現金で納付する場合
- 端数が50銭未満→切り捨て
- 端数が50銭以上→切り上げ
なお、「端数はすべて切り捨てる」など、労使間で慣行的な特約を定めることも認められています。自社のルールを確認しましょう。
関連記事:雇用保険料の端数処理方法とは?処理別の対応方法や注意点を解説!
4. 賞与の雇用保険料計算


雇用保険料は、賞与(ボーナス)に対しても課されます。計算方法は月次給与と同じで、次の計算式を使用します。
【計算式】雇用保険料=賞与の算定対象額×雇用保険料率
賞与に対する雇用保険料率は、月次給与と同じ料率が適用されます。例えば、一般の事業で賞与600,000円を支給した場合の計算例は次のとおりです。
従業員負担分:600,000円×5/1,000=3,000円
事業主負担分:600,000円×8.5/1,000=5,100円
退職後に賞与が支払われるケースでも、在職中の労働の対価として支払われる賞与であれば雇用保険料の控除が必要です。支給時期に関わらず、労働の対価かどうかで判断しましょう。
関連記事:雇用保険料は賞与から控除される?計算方法や保険料率、注意点を解説!
5. 雇用保険料の年度更新


毎月の給与から徴収した雇用保険料は、年1回まとめて申告・納付します。この手続きを「年度更新」といいます。
健康保険料や厚生年金のような月次納付とは仕組みが異なるため、年度更新の流れと期限の把握が重要です。
5-1. 年度更新とは
雇用保険料(労働保険料)は、毎月の給与から徴収するものの、実際の納付は年1回です。この年次の申告・納付手続きを「年度更新」といいます。
年度更新では、前年度の確定保険料と当年度の概算保険料を同時に申告・納付します。健康保険や厚生年金のような月次納付と仕組みが大きく異なる点を押さえましょう。
関連記事:労働保険の年度更新とは?提出期限や電子申請手続きのやり方をわかりやすく解説!
5-2. 年度更新における雇用保険料の計算方法
年度更新で申告する雇用保険料は、次の手順で計算します。
- 前年度(4月〜翌3月)に支払った賃金総額を集計する
- 賃金総額×雇用保険料率で確定保険料を算出する
- 前年度に納付した概算保険料と精算し不足分を追納、過払い分は翌年度概算保険料に充当する
- 当年度の概算保険料を申告・納付する
賃金の集計の際はパートタイム・アルバイト・賞与・年度途中の入退社者の賃金が漏れやすいため、給与データを網羅的に確認しましょう。
なお、集計の基準は「支払日」であり、その年度内に支払われた賃金が対象となります。例えば月末締め・翌月10日払いの場合、令和7年度の確定賃金は令和7年4月10日支給分から令和8年3月10日支給分までが対象です。
確定保険料と概算保険料はそれぞれ該当年度の料率を用いて計算します。令和8年度の年度更新では、確定保険料(令和7年度分)と概算保険料(令和8年度分)で適用料率が異なる点に注意が必要です。
具体的な計算例は次のとおりです。
【計算例(一般の事業・令和8年度・雇用保険料部分)】
確定保険料(令和7年度分/料率14.5/1,000)
前年度賃金総額:50,000,000円
雇用保険料:50,000,000円×14.5/1,000=725,000円
概算保険料(令和8年度分/料率13.5/1,000)
当年度見込み賃金総額:50,000,000円(前年度実績を使用)
雇用保険料:50,000,000円×13.5/1,000=675,000円
なお、実際の年度更新では雇用保険料のほか、労災保険料と石綿健康被害救済のための一般拠出金もあわせて申告・納付します。最終的な納付額はこれらを合算して算出します。
5-3. 年度更新の申告・納付期限
年度更新の申告・納付期限は、原則として毎年6月1日から7月10日です。
期限を過ぎると、申告が遅れた場合は確定保険料の10%にあたる追徴金が課されます。さらに納付が遅れた場合は年率9.1%(令和8年度)の延滞金も発生します。納付を怠った場合は財産差押えなどの滞納処分を受ける可能性もあるため、期限内に確実に申告・納付しましょう。
なお、一定の要件を満たす場合は延納(分割納付)制度を利用できます。
関連記事:労働保険料とは?計算方法や申告・納付方法をわかりやすく解説
6. 雇用保険料を計算する際の注意点


雇用保険料の基本の計算は単純ですが、実務では判断に迷いやすいポイントが複数あります。
計算ミスは追徴金リスクや従業員への過不足控除につながるため、次の注意点を押さえましょう。
6-1. 雇用保険料は日割り計算をしない
雇用保険料は、月の途中で入社・退職した場合でも日割り計算はしません。被保険者である期間に対応する賃金が支払われた場合、その全額に対して雇用保険料を計算します。
例えば、月の途中で入社した従業員がいる場合、その月に支払われた賃金の全額が算定対象となります。日数で按分する必要はありません。
6-2. 算定対象の判断ミスに注意
雇用保険料の計算ミスで多いのが、算定対象の判断の誤りです。特に注意が必要なのは次のケースです。
- 通勤手当は算定対象、出張旅費は対象外
- 会社が全額負担する生命保険料は対象外
- 賞与・インセンティブは対象(支給形態にかかわらず労働の対価であれば含む)
判断が難しい場合は、「労働の対価として支払われたか」という観点で確認し、不明な場合は所轄のハローワークに確認しましょう。
6-3. 65歳以上の従業員も雇用保険料を支払う
令和2年4月1日以降、65歳以上の従業員(高年齢被保険者)も雇用保険料の支払い義務があります。以前は免除されていたため、古い情報のまま運用していないか確認しましょう。
計算方法は一般被保険者と同様で、賃金総額に雇用保険料率を掛け合わせるだけです。65歳以上の従業員を雇用している場合は、必ず雇用保険料を徴収・納付しましょう。
また、複数の事業所で勤務する65歳以上の従業員などを対象とした「マルチジョブホルダー制度」があります。複数の事業所での労働時間がそれぞれ20時間未満でも、合算で20時間以上になる場合は対象となります。各事業所での雇用見込みが31日以上あれば、本人の申し出により「マルチ高年齢被保険者」として加入でき、各事業所がそれぞれの賃金に対して雇用保険料を計算します。
なお、マルチジョブホルダー制度では資格取得日はハローワークへの申出をおこなった日となり、過去に遡っての加入はできません。申出が遅れると受給資格期間に直接影響するため、対象となる従業員には早めに案内しましょう。
関連記事:雇用保険マルチジョブホルダー制度とは?メリットや手続きの流れをわかりやすく解説!
関連記事:65歳以上も雇用保険の対象?給与計算の注意点を解説
雇用保険料の計算ミスで実務上もっとも多いのが、通勤手当の取り扱いです。所得税では、例えば公共交通機関を利用する場合、月15万円までが非課税となります。そのため、「通勤手当は保険料の対象外では?」と誤解されることがありますが、雇用保険料は所得税の課税・非課税にかかわらず通勤手当の全額が算定対象です。給与計算システムの設定も含めて、必ず確認しましょう。
また、年度更新の時期はほかの業務と重なりがちです。賃金台帳や出勤簿などの整備を日頃から習慣づけておくことで集計漏れを防ぎ、申告期限内にスムーズに対応できます。
7. 雇用保険料を正しく計算して給与計算のミスをなくそう


雇用保険料の計算は、「賃金総額×雇用保険料率」という基本の式は単純ですが、算定対象となる賃金の範囲・料率の事業区分・端数処理・65歳以上の取り扱いなど、細かなルールが多く存在します。
特に令和8年度(2026年度)は料率が0.1%引き下げられています。年度更新の申告時には、前年度と異なる料率で計算されているかあわせて確認しましょう。
計算ミスは追徴金リスクや従業員への信頼損失につながります。給与計算システムを活用した自動化や、定期的なダブルチェック体制の整備など、ミスを防ぐ仕組みを整えましょう。
正しい計算方法と加入条件をくわしく解説
雇用保険への加入は、従業員が離職した時の手当だけでなく、出産や労災による補償など、会社と従業員を守るための公的保険です。
健康保険など「ほかの社会保険」と同様に加入が義務付けられていますが、雇用保険だけ計算方法や負担割合が異なるため、注意しなければなりません。
万が一、誤って納付してしまった場合、未納分の保険料だけでなく、追徴金もまとめて徴収される可能性があります。
労働局から指摘を受けることがないよう、事前に確認しておきましょう。
「計算方法に不安がある」
「いつまでに加入させなければいけないの?」
「雇用保険料が毎月変わる理由を知りたい」
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賃金支給総額に含まれる範囲や⼊社・退職⽉の日割り計算など、併せて知っておきたい基礎知識もわかりやすく紹介しているので、ぜひこちらから無料でダウンロードしてご覧ください。
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