振替休日を強制して休日出勤させるのは違法?割増賃金の発生などパターン別に解説!
労働基準法では必ず「毎週1日」もしくは「4週間で4日」以上は休日にしなければならないルールがありますが、場合によってはやむを得ずに出勤する場合も少なくないでしょう。休日とは本来、労働から解放されるべき日であり、当然ながらその分の手当を支払う必要があります。
しかし「振替休日」を与え、労働基準法にある「週40時間」の労働勤務を超えなければ、別途手当は発生しません。では実際のところ、休日出勤を振替休日にして運用していくことは可能なのか、以下から詳しく見ていきましょう。
人事担当者の皆さまは、労働基準法における休日・休暇のルールを詳細に理解していますか?
従業員に休日労働をさせた場合、代休や振休はどのように取得させれば良いのか、割増賃金の計算はどのようにおこなうのかなど、休日労働に関して発生する対応は案外複雑です。
そこで当サイトでは、労働基準法にて定められている内容をもとに、振休や代休など休日を取得させる際のルールを徹底解説した資料を無料で配布しております。
「休日出勤させた際の対応を知りたい」「代休・振休の付与ルールを確認したい」という人事担当者の方は「【労働基準法】休日・休暇ルールBOOK」をぜひご一読ください。
目次
1. 休日出勤を振替休日で運用する際の基本ルールのおさらい
それでは振替休日を正しく理解するために、改めて基本ルールについて振り返ってみましょう。振替休日とは、休日出勤を前提に、事前に休日と他の労働日を交換する制度です。これにより、本来の休日が労働日として扱われ、他の日が休日として扱われます。企業は振替休日を運用する際、事前に従業員に交換する休日と労働日を明確に指定する必要があります。
1-1. 振替休日の場合、休日労働手当は不要
振替休日を適用する際のポイントとして、法定休日の労働に対して休日労働手当が適用されないことを理解する必要があります。労働基準法では、法定休日に労働させる場合、休日労働に対する割増賃金を支払う義務があります。しかし、振替休日を与える場合、本来の法定休日が労働日として扱われ、通常の勤務日として処理されるため、休日労働に対する割増賃金は不要となります。これにより、振替休日を適切に運用することで、余計なコストを防ぐことができます。ただし、振替休日の適用は適切な手続きと運用が必要であり、労働基準法に違反しないよう注意を払うことが重要です。
【例1】日曜日(法定休日・8/22)に出勤⇒振替休日:当該週の水曜日(8/18)
事前の指定によって振替休日にしており、月火木金日(週5日)×8時間で週40時間内に収まっているため、手当は発生しません。
【例2】土曜日(公休日・8/21)に出勤⇒振替休日:当該週の水曜日(8/18)
法定休日の出勤ではなく、月火木金土(週5日)×8時間で週40時間内に収まっているため、手当は発生しません。
このように8時間勤務の週休2日制で、完全な振替休日にするためには、実質的には休日出勤が発生する週に代わりの休みを取る運用になります。割増分の手当が生じないようにするためには、勤務時間数の徹底的な管理が欠かせません。
当サイトでは、振替休日や代休を管理する上で必須になる、そもそもの定義や取得させる際の対応方法を解説した資料を無料で配布しております。適切な管理方法としてシステムを用いた解説もしておりますので、対応方法がイメージできていない担当者様は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1-2. 取得日や取得期限は法的にルールがない
振替休日の取得日やその期限に関しては、労働基準法では明確な規定がありません。企業の裁量に任されているため、各企業で独自にルールを設定できます。ただし、賃金計算の観点から、月をまたいで振替休日を設定すると、管理が複雑になり、賃金算出ミスを誘発する可能性があります。そのため、振替休日は休日出勤と同週やその前後1週間以内程度で設定するのが理想です。少なくとも、休日出勤と同月内に取得させるようにしましょう。また、振替休日に取得期限はありません。これは、振替休日を設定する段階でどの日を休日とするか事前に定めているからです。
2. 振替休日を強制して休日出勤させることはできるのか?
振替休日は、就業規則に定めている場合に限り利用できます。
そのため何の規定もないまま「振替休日にして休日出勤してほしい」といったとしても、従業員に強制することはできません。
2-1. 就業規則に定めている場合に限り利用可能
就業規則に振替休日についてのルールを定めている場合、会社から従業員へ振替休日を使って休日出勤してほしいと指示することは可能です。就業規則で定められているため、従業員は従う義務があります。
企業の就業規則には、休日出勤を振替休日で調整する旨を明記し、具体的な手続きや対象労働者について詳細に記述することが重要です。
2-2. 就業規則への記載例
就業規則への記載は、以下のような文言で規定することをお勧めします。
「会社は業務の都合を鑑みて、休日を振り替えることがある。また、その際は前日までに振り替え休日を特定して従業員へ通知する。」
これにより、振替休日の制度が明確になり、労使間の透明性が確保されます。また、手続きの明確化により、不必要なトラブルを未然に防ぐことができます。
3. 休日出勤をさせた際に振替休日なしの運用は違法になる?
休日出勤の際に振替休日なしの運用が違法かどうかについては、36協定の有無が関係します。36協定がない場合、法定労働時間(1日8時間、週40時間)内での勤務と、週1日もしくは4週間に4日の法定休日の取得が法律上のルールとなり、振替休日なしに働かせたことで、これを守れない場合は法律違反となります。
36協定が締結されている場合、その協定内で時間外労働や休日労働の上限が明記され、その範囲内であれば振替休日を与えなくても法律上問題はありません。ただし、上限を超える場合には振替休日を与えるなどの調整が必要です。特に、週をまたぐ振替休日の設定には時間外労働が増えることもあるため、注意が必要です。
法律上は振替休日を与えなくても問題ないケースも存在しますが、従業員の心身にかかる負担を考慮し、可能な限り休日を与えることが望ましいです。これは従業員の労働環境の改善やモチベーション維持に繋がります。
4. 振替休日に休めなかった場合は割増賃金の支払いが必要
先ほども出てきたようにきちんと就業規則に定めた上で振替休日の取得ルールを守るのであれば、休日出勤を振替休日にすることは可能です。また就業規則においても、基本的なルールとして「休日出勤は事前申請制として原則は振替休日とする」と規定しても問題はありません。しかし業務の都合上、どうしても指定の振替休日に休めない場合も出てくる可能性はあります。このケースについて詳しく説明します。
4-1. 休日出勤手当として支給する
指定した振替休日に休まなかったとしても、「休日出勤手当を支払わない」・「ペナルティを科す」といった行為はできません。 もし事前に指定した振替休日にやむおえず労働しなければならなくなった場合、休日に労働したことになるため、必ず相当分の休日出勤手当を支給する必要があります。
ただし、休日手当を支給するといっても、法定休日か法定外休日のどちらの日に出勤したかによって、割増賃金の割合が異なるので注意が必要です。
当サイトでは、振替休日を理解するのに必要な休日や休暇の定義や、振替休日と代休の違いなどを解説した資料を無料で配布しております。割増賃金が何%になるか不安な方や振替休日と代休の違いが不安な方は、こちらから「休日・休暇ルールBOOK」をダウンロードしてご覧ください。
5. 振替休日を取得しても割増賃金が発生するケースに注意
振替休日であれば割増賃金や休日出勤手当の計算は必要ないと思われるかもしれませんが、場合によっては別途割増賃金が生じることもあります。
そもそも押さえておきたいのが、休日出勤の定義です。休日出勤とは、厳密には「法定休日」に勤務した場合を指します。
仮に週休2日制のうち「法定外」となる所定休日に出勤し、労働基準法の週40時間を超えた勤務をした場合には、発生したのは「時間外労働」です。また休日出勤と時間外労働では、割増賃金の計算方法は変わります。
5-1. 休日出勤時の割増賃金の計算方法
振替休日に出勤した場合、通常の勤務日と同様に扱われますが、別の日に振り替えるか、割増賃金を支給する必要があります。また、振替休日を設定していたにもかかわらず、業務の都合で出勤させる必要が生じることもあります。
法定休日に出勤し、その代わりに振替休日を設けた場合、労働日と法定休日を入れ替えているため、振替休日自体が法定休日となります。この場合、出勤日は法定休日労働となるため、休日労働に対する割増賃金を計算して支払うことが求められます。
また、休日出勤した日が所定休日の扱いであった場合も同様に、振替休日として設定した日が所定休日として扱われます。この日に法定労働時間をこえる労働があった場合は、時間外労働に対する割増賃金が必要となります。
これにより、労働者に対する公正な扱いや適切な賃金支払いが確保されます。
休日出勤の場合は、1時間ごとの所定賃金×1.35、時間外労働の場合は1時間ごとの所定賃金×1.25と比率が異なります。なおそれぞれの示している割合については、各企業で柔軟に設定して問題ありませんが、休日出勤なら×1.35、時間外労働なら×1.25が最低ラインです。
では具体例を挙げて見ていきましょう。
例えば1日実働8時間・土日休みの週休2日制で、法定休日を日曜日としているケースでは、以下のように考えられます。
5-2. 法定労働時間を超過した時間外労働の場合
振替休日で休日出勤を帳消しにしても、週40時間・1日8時間の労働基準法の規定を超えた分は、時間外労働分の割増賃金が発生します。
【例1】日曜日(法定休日・8/22)に出勤⇒振替休日:翌週の水曜日(8/25)
事前の指定よって振替休日にしており、休日出勤手当は発生しません。
ただし月火水木金日(週6日)×8時間で週48時間勤務しているため、8時間分の時間外労働に対しての割増分のみ手当を支払う必要があります。
なお振替休日で通常勤務分は相殺されるため、別途支給するのは、1時間ごとの所定賃金×0.25~×8時間の割増賃金分です。
【例2】土曜日(公休日・8/21)に出勤⇒振替休日:翌週の水曜日(8/25)
法定休日の勤務ではないため、休日出勤手当は発生しません。
ただし月火水木金土(週6日)×8時間で週48時間勤務しているため、上記にある(例2)と同じ計算の割増賃金分のみは発生します。
5-3. 休日出勤が深夜時間に及んだ場合
休日出勤が深夜に及ぶ場合、深夜労働の割増賃金を支払う義務があります。深夜労働は22時から翌朝5時までの時間帯を指し、この時間帯の労働には基礎賃金の25%以上の割増が必要です。その休日出勤が時間外労働や休日労働に該当しない場合でも、深夜の労働が発生すれば割増賃金を支払わねばなりません。
時間外労働と深夜労働が同時に発生した場合、基礎賃金の25%以上の割増賃金(時間外労働分)とさらに25%以上(深夜労働分)を合わせた50%以上の割増賃金が必要です。同様に、休日労働と深夜労働が同時に発生した場合、休日労働の35%以上と深夜労働の25%以上を合わせた60%以上の割増賃金を支払う必要があります。このため、休日出勤が深夜に及ぶ場合、適正な割増賃金を漏れなく支払うよう慎重に運用することが重要です。
6. もし代休で運用した場合には割増の方法が異なる
休日に労働をする場合、どこかで代わりに休んでもらうこともできます。その方法として「振替休日」と「代休」の2つがあります。
まず、振替休日の詳細をお話する前に「振替休日」と「代休」の違いについて振り返りましょう。
6-1. 振休と代休の違い
振替休日と同じような言葉として代休が使われることが多いですが、法的にいえば全く性質の異なるものです。
まず、振替休日とは、事前に会社から日付を指定して、労働日と休日を入れ替えるものです。例えば通常の勤務は月〜金曜日の企業で、どうしても休日である土曜日に労働することが必要となったとします。そこで振替休日を用いて、通常の勤務日である金曜日ともともと休日であった土曜日を入れ替えます。いつも土・日が休日でしたが、この週だけ金・日が休日となるのです。
おさえておきたいポイントとしては、土曜日は通常の勤務日として扱われるため、休日の労働に対する割増賃金は発生しないという点です。
一方で代休は、休日出勤をした事後に休日を与えるものです。利用シーンとしては、全く想定していなかったイレギュラーな業務が発生してしまい、やむ負えず休日に労働しなくてはいけなくなった、などが考えられます。振替休日のように事前に労働日と休日を入れ替えているわけではないので、休日の労働に対する割増賃金が発生します。
しかし場合によっては休日出勤の場合も割増賃金が発生しない場合もあります。下記の記事ではどのような場合に割増賃金が発生しないのか、また割増賃金の計算方法についても解説しておりますので興味のある方はぜひご覧ください。
関連記事:休日出勤手当はもらえない場合も?条件や割増率の計算をわかりやすく解説
祝日法で定められている振替休日は別物
日本における祝日が日曜日に重なった場合、その祝日を後の平日に振り替えて休日とします。
これは、国民の祝日に関する法律で定められているもので、上記で説明した振替休日とは別物です。
ちなみに、土曜日と祝日が重なった場合は振替休日は発生しません。同法上では土曜日は平日と同等のものとして扱われている、と捉えられます。
一般的なイメージでは土曜日と日曜日は休日という認識が広くありますが、法律や会社の規定によって解釈は様々だということを頭の片端においておくといいかもしれませんね。
それでは代休で運用する場合の割増賃金の計算について、先ほどの例を使って、代休にした場合の計算方法も見ていきましょう。
【例1】日曜日(法定休日・8/22)に出勤⇒代休:翌週の水曜日(8/25)
月火水木金日(週6日)×8時間で週48時間の勤務なので、休日出勤分の支払い義務があります。
ただし代休で相殺となるため、支払うのは1時間ごとの所定賃金×0.35~(休日)×8時間の割増賃金分のみです。
【例2】土曜日(公休日・8/21)に出勤⇒代休:翌週の水曜日(8/25)
法定休日の勤務ではないため、休日出勤手当は発生しません。
ただし月火水木金土(週6日)×8時間で週48時間勤務しているため、1時間ごとの所定賃金×0.25~×8時間の割増賃金分の支払いが必要です。(通常勤務分は代休で相殺)
7. 休日出勤の振替休日運用は労働基準法を遵守した管理が必須
まず振替休日を運用していくためには、就業規則による規定が不可欠です。
その上でなるべく割増賃金が発生しないように振替休日を割り当てることは可能ですが、当然ながら強制はできないので注意しておかなければなりません。
なおかつ振替休日にした場合でも、労働基準法を超過した勤務になった際には、必ず割増賃金分の支払いは必要です。知らずに違法な振替休日にしてしまわないように、適切な管理をするようにしましょう。
関連記事:休日出勤は残業に含まれる?残業時間の数え方と賃金計算方法
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