年末調整の電子化は義務?令和3年からの改正内容と電子申請のやり方を解説
更新日: 2025.12.11 公開日: 2021.4.7 jinjer Blog 編集部

「年末調整は電子化が義務化されている」と聞くと、自社ではまだ紙様式で申告書を処理していると心配になる人事担当者もいるのではないでしょうか。
申告手続きを紙でおこなっていること自体は違法ではありません。ただし、電子化が必要な手続きがあるほか、申告手続きなどもまとめて電子化しないと、年末調整の作業が増え、時間を取られるおそれもあります。
本記事では、年末調整の電子化の義務の正しい意味や対象となる企業、電子化を進めるポイントを解説します。
「特定親族特別控除」が新設されるなど、例年以上に複雑になる令和7年の年末調整。
従業員からの問い合わせが増える年末に、最新の制度をどう案内すればいいか、不安に感じていませんか?
◆よくある質問
Q. 大学生などのアルバイト収入が増えても、親の控除額は減らない?
Q. 年末調整の対象者は?
Q. 退職者や二か所で働く従業員の年末調整は必要?
このようなよくある疑問から、記載ミスや、申告内容・扶養の変更、税務署からやり直し通知を受けた際などの対応方法まで年末調整のあらゆる疑問をまとめた「年末調整と源泉徴収Q&A」を無料配布しています。
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1. 年末調整の電子化の義務とは


年末調整の電子化の義務とは、税務署や市町村へ提出する法定調書をe-Taxや光ディスクなどで提出する義務を指します。企業内の申告手続きを電子でおこなうことではありません。
まずは年末調整の電子化の義務について、正しい内容を確認しましょう。
関連記事:年末調整の電子化はここまで進んでいる!気になる手続きの方法
1-1.電子化の義務の対象は法定調書の提出のみ
年末調整で電子化が義務づけられているのは、税務署や各市町村へ法定調書を提出する手続きのみです。法定調書とは、所得税法や法人税法などで提出が求められている資料を指します。年末調整に関係する法定調書は次の2点です。
- 給与所得の源泉徴収票:国(税務署)へ提出
- 給与支払報告書:従業員が1月1日時点で居住している市町村へ提出
義務化の対象となる場合、法定調書をe-Tax(※)またはCD・DVDなどの光ディスク等により提出する必要があります。
※国税電子申告・納税システム。所得税や消費税などの申告や法定調書の提出、届け出、申請などの手続きをインターネット上でおこなうためのシステムです。
1-2.年末調整の申告手続は義務化されていない
年末調整の電子化と聞くと、従業員から申告書を提出してもらう作業の電子化をイメージする方が多いのではないでしょうか。しかし、申告手続きの電子化は令和7年現在、義務とされていません。
ただし、法定調書を電子で提出する必要がある以上、申告手続きも電子化できれば提出用データが作成しやすくなり、業務効率化につながる可能性が高くなります。法定調書の電子提出に対応する必要がある企業は、申告手続きも電子化できないか検討しましょう。
1-3. 年末調整の電子化はいつから?
法定調書の提出の電子化は、一定の要件に該当する企業にすでに義務づけられています。
一方、年末調整の申告手続きの電子化は令和7年現在、義務づけられている企業はなく、義務化される予定も今のところありません。
しかし、申告手続きの電子化を進めると、法定調書の電子化にもスムーズに対応しやすくなります。年末調整は毎年対応が必要な業務で、かつ人事担当者にとって負担が大きくなりがちなため、業務効率化の観点で申告手続きの電子化を検討するのは有効でしょう。
2. 年末調整の電子化が対象となる企業


法定調書の電子化は着々と広まっており、義務の対象となる企業の範囲も今後拡大される予定です。
対象となる企業の条件を正しく理解しておかないと、自社が対象になった場合に見落としてしまうおそれがあります。この章では、義務化の対象となる企業の条件を確認しましょう。
2-1. 法定調書の提出枚数が100枚以上
法定調書(年末調整)の電子提出が義務づけられているのは、前々年度(2年前)に発行した法定調書が種類ごとに100枚以上である企業です。
「種類ごとに」とは、1種類の法定調書を単独で数えるという意味です。次の表の「対象とならない例」のように法定調書すべてを合計して100枚以上となっても、それぞれの法定調書の提出枚数が100枚未満であれば義務化の対象には該当しません。
|
対象となる例 |
対象とならない例 |
|
|
給与所得の源泉徴収票 |
30枚 |
70枚 |
|
給与支払報告書 |
100枚 |
80枚 |
|
合計 |
160枚 |
150枚 |
基準となる年度にも注意しましょう。例えば、令和5年に発行した給与所得の源泉徴収票が120枚であった場合、令和7年度の申告では、給与所得の源泉徴収票は電子で提出しなければなりません。
参考:e-Tax等による法定調書の提出が義務化されています!|国税庁


電子化が義務づけられているにもかかわらず、法定調書を書面で提出した場合、その申告は無効となり無申告加算税の対象となる可能性があります。ただし、災害その他の理由によって、e-TAXによる申告書の提出が難しい場合は、所轄の税務署長の承認を得たうえで書面提出をおこないます。
自社が電子化の対象になっているか確認しておきましょう。
参考:電子申告の義務化の対象法人が書面により提出した場合はどうなりますか。|e-Tax
参考:電子申告の義務化の対象法人ですが、インターネット回線の故障でe-Taxによる提出を行うことができません。どうすればよいですか。|e-Tax
2-2. 令和9年からは電子化が義務づけられる企業の範囲が拡大
令和9年からは、年末調整の電子化が義務化される企業の範囲が拡大予定です。令和8年までは法定調書の種類ごとに100枚以上になる企業が対象ですが、令和9年からは30枚以上の企業に基準が引き下げられます。
法定調書の提出枚数が100枚に満たず、令和8年までは義務化の対象とならない企業でも、令和9年以降は対象となる可能性があるでしょう。
令和9年から義務化の対象となる場合、令和8年におこなう年末調整の申告手続きから業務プロセスを見直さなければなりません。直前に気づいて慌てないよう、該当する可能性がある場合は早めに対応を検討しましょう。
3. 年末調整の社内手続きの電子化を進めるポイント


電子化の義務は法定調書の提出のみとはいえ、そのほかの年末調整の手続きを紙で処理したままにすると、必要な作業が増える可能性があります。年末調整の電子化がスムーズに進められれば、毎年の作業にかかる時間を大幅に減らせる可能性もあるでしょう。
業務効率化を図るための、年末調整の電子化を進めるポイントを3点解説します。
年末調整の電子化のメリットや流れは関連記事をご覧ください。
関連記事:年末調整をDX化するには?デジタル化するメリットや手順を詳しく解説
3-1. 自社に合ったシステムを導入する
年末調整を電子化する場合、専用のシステムを導入するのが一般的です。代表的なシステムとして国税庁が提供している「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア」(年調ソフト)がありますが、ほかにも民間企業からさまざまなサービスが提供されています。
導入するシステムを選ぶ際は、次のように自社の状況や業務プロセスに合ったものを選びましょう。
|
自社の状況・業務プロセス |
候補となるシステム |
|
ITに不慣れな従業員が多い |
マニュアル案内やヘルプデスクなどサポート体制が充実している |
|
従業員の外出やテレワークが多い |
場所を選ばずに、従業員のスマートフォンなどから申告が可能 |
|
証明書をダブルチェックするため紙の原本が必要 |
証明書原本の提出を促す機能がある |
3-2. 年末調整の手続全体を電子化する
法定調書の提出以外の作業を紙で処理し続けると、提出用のデータを整える作業が新たに発生し、非効率です。
毎月の給与計算業務や申告手続きなど、年末調整にかかわる業務全体を電子化できれば、法定調書の提出データも作成しやすく、業務効率化につながります。手入力による打ち間違いなどのミスも防げるでしょう。
電子化に対応する際は、年末調整の手続き全体を電子化できないかどうか、社内で十分に検討しましょう。
3-3. 従業員のサポート体制を整える
年末調整の申告手続きを電子に切り替える場合、最初はシステムの使い方がわからず、紙での申告よりも時間がかかったり、正しく申告ができなかったりする従業員もいるでしょう。
電子化したあとも従業員が正しくスムーズに申告できるよう、サポート体制の整備が重要です。具体的には、次のような取り組みが考えられます。
- 全従業員向けに申告方法の説明会を実施する
- 入力用のマニュアルを整える
- 従業員向けのヘルプデスクを設置する
システムによっては、マニュアルのテンプレートを提供していたり、電話によるサポートに対応していたりするケースもあります。自社に合ったサービスを活用して、効率よく社内のサポート体制を整えましょう。
4. 年末調整の電子化の義務に対応して効率よく手続きを進めよう

年末調整の電子化は、法定調書の提出で義務づけられています。前々年の法定調書の提出枚数が種類ごとに100枚以上の企業は、その年の法定調書をe-Taxまたは光ディスク等によって提出しなければなりません。
法定調書の提出のみを電子化するのはかえって非効率です。電子化に対応する必要がある場合は、申告手続きも含めた年末調整の作業全体を電子化できないか検討しましょう。
関連記事:年末調整がめんどくさい4つの理由と楽にするコツを解説



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