労働契約法と労働基準法の違いは?それぞれの役割や関連性
労働にかかわる法律は多々ありますが「労働基準法」と「労働契約法」にはどのような違いがあるのかご存知でしょうか。
よくわからない場合、それぞれの法律の役割や関連性を理解しておくことで、労使のトラブルを防止することにもつながります。
本記事では労働契約法と労働基準法の基本的なことについて解説していますので、ぜひお役立てください。
▼そもそも労働契約法とは?という方はこちらの記事をご覧ください。
労働契約法とは?その趣旨や押さえておくべき3つのポイント
【有期雇用契約の説明書】
1. 労働契約法と労働基準法の違い
労働契約法と労働基準法は名前が似ているため間違われやすいものですが、両者には決定的な違いが存在します。
まずは、それぞれの法律の違いについて解説します。
1-1. 労働契約法はどのような法律か
労働契約法は平成20年から実施されている労働契約の決まり事を明らかにした法律です。
就業形態の多様化にともない増加傾向にある労働紛争を防ぐことや、労働者と事業主との関係の安定を図ることを目的として作られました。
労使が対等の立場で合意することを原則としており、労働契約の締結や変更にかかわるあらゆる内容が規定されていますが、労働契約法を理解する上で重要なポイント2つご紹介します。
労働契約法3条における労働契約の原則
法3条では契約に関する基本的な理念や原則が示されています。
双方の合意をもって契約することが大前提としてあり、その他にも仕事と生活のバランスを配慮すべきとした事項や、権利の濫用は許されないことが定められています。
無期転換ルールについて
無期転換ルールとは、同じ企業で契約社員やアルバイト(有期契約労働者)の更新が5年を超えた場合、本人からの申し込みによって期限を定めない労働契約に転換できるルールです。
無期転換が申し込まれた場合、企業側は断ることができません。
労働契約にかかわる基礎的なことが定められたものが労働契約法ですが、位置付けとしては民法の特別法であるため私法として扱われます。
よって、違法であっても罰則等はなく行政指導の対象にもなりません。
しかし、もし個別労働紛争が民事訴訟にまで及んだ場合には、会社側は損害賠償を追う可能性も出てきますので、私法でも守らなければならい大切な法律です。
関連記事:労働契約法3条に定められた「労働契約の原則」を詳しく解説
関連記事:労働契約法18条に定められた無期転換ルールを分かりやすく解説
1-2. 労働基準法はどのような法律か
労働基準法は、日本国憲法の第27条第2項に基づいて昭和22年に制定された歴史の長い法律です。
労働基準法では労働に関する条件の最低基準が定められています。
労働とは人々が生きていくために必要不可欠なものであるため、労働基準法では生存権を保障することが基本理念として掲げられています。
労働基準法の主な内容は下記の通りです。
労働条件を明示すること
原則として書面で交付する必要があります。
契約期間や賃金労働時間や休暇に関することを明示します。
賃金の支払い
使用者は毎月1回以上一定の期日を定めて賃金を通貨で直接労働者に支払わなければならないことが定められています。
都道府県ごとに決められている最低賃金額を下回ることは、仮に労働者に同意を取っていたとしても認められません。
労働時間や休日について
労働時間は休憩時間を除いて1日8時間、週40時間と上限が決められています。
休日に関しては、最低でも1週間に1日もしくは4週間を通じて4日以上与える必要があります。
決められた上限を超えて労働させる場合、36協定を結んで労働基準監督署に届出することが必須です。
休憩
労働時間に応じて休憩時間は変動します。
1日6時間を超えて労働する場合は45分以上、8時間を超えての労働では1時間以上の休憩を取らなければなりません。
割増賃金
割増賃金とは、「時間外労働」「休日労働」「深夜労働」に適用されます。
割増率はそれぞれによって異なります。
年次有給休暇
雇用開始日から継続して6ヵ月勤務をし、なお労働日の8割以上出勤している場合は、有給休暇を与えなければなりません。
有給休暇が10日以上付与される場合は、年5日取得することが義務として定められています。
解雇や退職について
解雇をおこなう場合は、少なくとも30日以上前に予告するか、解雇予告手当を支払わなければなりません。
解雇は妥当な理由がない限り無効となります。
就業規則
10人以上の従業員を雇っている場合、会社は就業規則を作成して労働基準監督署に届け出る義務があります。
作成した就業規則は必ず労働者に周知しなければなりません。
労働基準法は、劣悪な労働条件で労働者を働かせることのないよう、正社員やアルバイト、派遣社員など雇用形態にかかわらず全ての労働者に適用されます。
契約を結ぶときは双方の合意があることが絶対条件ですが、たとえ合意があったとしても労働基準法で定める内容を下回る条件の場合は効力を有しません。
▼より詳しく労働基準法について知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
労働基準法とは?雇用者が押さえるべき6つのポイントを解説
2. 労働契約法と労働基準法の関連性
労働契約法と労働基準法の違いについてご説明しましたが、両者は「労働条件」について規定されているといった共通点があります。
内容も関連性を持っていて、労働契約法で定める規定は労働基準法がベースとなっている部分が多々あります。
しかし、私法か公法かという面に関しては大きな違いがあると言えるでしょう。
労働基準法は憲法に基づいて作られた法律であり、違反した場合の罰則が設けられています。
一方で、私法である労働契約法は主に条件が不当であるかどうかの判断基準が定められたものです。
また労働基準法は労働条件の最低基準が定められた労働者を保護するための法律なので、労働契約法よりも優先されます。
例えば、締結した労働契約の内容に「労働時間に関係なく休憩時間なし」「有給休暇の取得不可」といった労働者にとって不利な条件が書かれていたとしても、労働基準法で定める基準より低いため、この契約に効力はありません。
反対に、労働契約に労働基準法で定める内容以上に有利なことが記載されていた場合は労働契約の条件が優先されます。
3. 労働契約法と労働基準法に関するトラブル対処法
労働契約法と労働基準法の違いや関連性を理解していないと、労働者を雇う場面において問題が発生する可能性があります。
トラブルが起きてしまった場合の対処法についてもご紹介します。
3-1. 労働契約の際に起きるトラブル対処法
労働契約法において、労働契約が成立するためには合意が不可欠だと示しています。
これは必ずしも書面ではなく口約束でも合意さえあれば契約は成立することを意味しています。
ですが、労働基準法では労働条件を明示しなければならないと定めているため、書面の取り交わしはおこなうべきです。
何かしらの方法で契約を締結した証拠を残しておくことは、使用者と労働者の争いを防ぐことにもつながります。
契約時のトラブル回避の方法として労働基準法で決められている「絶対的明示事項」は必ず書面で明示しましょう。
関連記事:労働条件通知書とは?必要な理由や項目別の書き方について
3-2. 労働条件変更時に起きるトラブル対処法
雇用契約時に結んだ条件が何年も続くとは限らず、勤めている途中に変更される可能性もあります。
変更内容が労働者にとって、さほど支障のないものなら問題ありません。
しかし、基本給の減額や昇給の停止など、働いている側からして損になる変更がおこなわれることも場合によっては考えられます。
このような時はトラブルが発生しやすいため、労働条件の変更は順を追っておこなう必要があります。
条件を変更するには、契約時と同じように双方の合意が必要です。
不利益変更をおこなう際は、変更内容が合理的でなければなりません。
合理的であるかは、労働者に生じる不利益の程度や、条件を変更する必要性などで判断します。
トラブルを避けるためにも労働条件変更の際もできる限り書面などで同意を得た方が良いでしょう。
合意を得た後は、就業規則の内容を変更し労働者へ周知する必要があります。
4. 労働契約法と労働基準法の違いや役割を理解してトラブル回避しよう
労働契約法と労働基準法は私法か公法といった異なる点がありますが、どちらも労働条件にかかわる守るべき法律です。
従業員を雇う場合は、労働に関する法律をしっかり理解しておく必要があります。
特に最初に契約を結ぶ際は、労働基準法で定められた最低基準に基づいて労働条件を明らかにしておきましょう。
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