労働者派遣法第30条の4第1項の規定に基づく労使協定とは?
更新日: 2024.8.23
公開日: 2021.11.25
YOSHIDA
2020年に行われた労働者派遣法改正の一環として、派遣労働者の賃金の決定に、労使協定方式か派遣先均等・均衡方式のいずれかを選択しなければならなくなりました。多くの事業者は労使協定方式を選んでいますが、適正な労使協定を結ぶにはどのようにすればよいのでしょうか。この記事では労使協定を行うポイントや注意点などについて説明します。
▼そもそも労働者派遣法とは?という方はこちらをお読みください。
労働者派遣法とは?その内容や改正の歴史を詳しく紹介
2021年4月に法改正され、すべての企業に同一労働同一賃金が適応されましたが、
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目次
1.労働者派遣法第30条の4第1項の規定に基づく労使協定とは
2018年に施行された働き方改革関連法(「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」)の一環として、2020年に労働者派遣法が改正されました。労働者派遣法第30条の4第1項の規定に基づく労使協定は、このとき新たに規定されたものです。
派遣会社は派遣労働者の賃金を決める方法として、派遣先均等・均衡方式か労使協定方式のどちらかを選ばなくてはならなくなりました。通常労働者と派遣労働者の待遇差を埋めて、同一労働同一賃金を実現するためです。
1-1. 派遣先均等・均衡方式とは
派遣先均等・均衡方式とは、派遣先の通常労働者の待遇と均等・均衡になるようにすることです。均等とは派遣労働者が通常労働者と同じ待遇で取り扱われることをいいます。均衡とは派遣労働者と通常労働者との間に不合理な待遇差がないことです。
1-2. 労使協定方式とは
これに対して労使協定方式は派遣会社と労働者代表との労使協定で賃金が決められます。賃金とは「厚生労働省が毎年定める賃金以上であること」が必要です。また「昇給があること」「賃金面以外の待遇について派遣先の労働者と不合理な相違がないこと」も協定に含まれなければなりません。
派遣会社の多くは労使協定方式を選択しました。派遣先均等・均衡方式を採用するには、派遣先から待遇に関する詳細な情報を得る必要があります。派遣先がいくつもある会社でこの方式を行うと給与事務が非常に煩雑になるほか、派遣先が難色を示すことなどが、労使協定を選んだ企業が多い理由です。
労使協定方式のメリットは、派遣先から受領しなければならない待遇情報が大幅に減るため、書類を簡略化できることや、派遣先にとらわれず賃金を決められること、派遣先が変わっても賃金が変動せず、連続性があることなどが挙げられます。
関連記事:労働者派遣法第30条の4第1項とは?その内容や注意点を解説
2.労働者派遣法第30条の4第1項の規定に基づく労使協定の対応ポイント
2-1.過半数代表者を選ぶ
まず必要なのは、過半数代表者を選ぶことです。派遣会社内に労働者の過半数以上が加入する労働組合がある場合は、労働組合が過半数代表者の代わりになります。
過半数代表者を選ぶ際は、労働者の過半数が支持していることが明確になるような民主的方法で選ばなくてはなりません。民主的な方法としては、集会での挙手や投票などといった手段が考えられます。
労働者の代表なので管理者ではいけません。また適正に過半数代表者が選ばれていない場合、労使協定は無効とされて強制的に派遣先均等・均衡方式が適用されるので注意してください。
2-2.比較対象労働者の待遇情報を受領する
次に必要なのは派遣先労働者の待遇情報を受領することです。労使協定方式は派遣先均等・均衡方式と比べると、受領する情報が少なくはなりますが、教育訓練、福祉更生施設といった賃金以外の待遇についての情報を受領する必要があります。情報提供がない場合は、労働者派遣契約ができません。
2-3.賃金の算出する
労働者の賃金について算出しましょう。賃金は「基本給・賞与・手当等」「通勤手当」「退職金」を合わせたものです。それぞれ算出の方法が異なります。
賞与、通勤手当、退職金は必須ではありませんが、派遣会社内の通常労働者に賞与などを支給していれば、同一労働同一賃金の観点から派遣労働者にも同様のものを支給しなければなりません。
基本給・賞与・手当等
基本給や賞与は「職種別の時給額の基準値×能力・経験調整指数×地域指数」で算出されます。「職種別の時給額の基準額」「能力・経験調整指数」「地域指数」は厚生労働省から毎年発表されているものです。[注1]
通勤手当
通勤手当は実費支給か1時間あたり72円を支給するかを選択します。
退職金
退職金は退職金制度を設けるか、「基本給・賞与・手当等」の基準値の6%を退職金分として前払い支給することもできます。
2-4.労使協定を締結する
賃金を算出したら、労使協定を締結しましょう。記載しなければならない項目には次のようなものがあります。
- 労使協定の対象となる派遣労働者の範囲
- 賃金の決定方法
- 能力等の向上があった場合の具体的な措置内容
- 評価の方法
- 賃金以外の待遇方法(教育訓練や福祉更生施設の利用)の決定方法
- 教育訓練
- その他(有効期限など)
2-5.締結した労使協定の周知・労働局への報告
労使協定を作成したら労働者へ周知しなければなりません。周知の方法としては書面やメールでの交付、社内ネットワーク内での共有、掲示、簿冊備え付けなどがあります。また毎年6月30日までに提出する事業報告書に労使協定を添付して、労働局へ報告することも必要です。
2-6.派遣先企業との労働者派遣契約
労使協定を選んだ場合、派遣先企業との契約に「派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度」と「派遣労働者を協定対象労働者に限るのか否か」という2点を追加で定める必要があります。
2-7.新規雇用者への説明
労使協定が締結されたあとに雇用された労働者に対して、従来の説明事項に加え「労使協定が適用されること」「労使協定の有効期限」を説明しなければなりません。またすでに雇用している労働者を派遣するときにも、都度この説明が必要です。
3.労働者派遣法第30条の4第1項の規定に基づく労使協定に関する注意点
3-1.労使協定でも賃金以外の待遇は派遣先に合わせなければならない
労使協定方式でも、派遣先均等・均衡方式のように派遣先の待遇に合わせなくてよいのがメリットです。しかし賃金以外の教育訓練を受ける権利や福利厚生施設を利用する権利は、派遣先と待遇差があってはいけません。
3-2.賃金は見直しが必要
賃金は一度決めたからといってそのままにはできません。賃金の算出に使用する厚生労働省のデータは毎年変化することから、賃金も毎年見直すことが必要です。
3-3.労使協定に不備があった際のリスク
労使協定に不備があると、強制的に派遣先均等・均衡方式が適用されます。過半数代表者が不適切に選ばれた場合も同様です。不備があれば労働局から行政指導の対象にもなります。さらに協定内容を守っていない場合は、労働者から損害賠償請求を起こされる可能性もあります。適切な運用を心がけなければなりません。
4.適切な労使協定を結び働きやすい職場を整えよう
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