社会保険資格喪失証明書とは?発行手続きと国民健康保険への切り替え方法、必要書類を解説
更新日: 2025.9.17 公開日: 2022.1.18 (特定社会保険労務士・中小企業診断士)
事業所ごとに加入していた社会保険は、従業員が退職した後に権利を喪失します。従業員は退職後に新たに他の会社の社会保険に手続きするか、任意継続被保険者となるか、国民健康保険に加入しますが、資格喪失の証明書が正しく取得できないと、新たな保険手続きの妨げになる可能性があります。
今回は、社会保険喪失証明書の発行までの流れや書き方とあわせて、国民健康保険への切り替え方法、発行されないときの対策について解説していきます。
▼社会保険の概要や加入条件、法改正の内容など、社会保険の基礎知識から詳しく知りたい方はこちら
社会保険とは?概要や手続き・必要書類、加入条件、法改正の内容を徹底解説
目次
従業員の入退社、多様な雇用形態、そして相次ぐ法改正。社会保険手続きは年々複雑になり、担当者の負担は増すばかりです。
「これで合っているだろうか?」と不安になる瞬間もあるのではないでしょうか。
◆この資料でわかること
- 最新の法改正に対応した、社会保険手続きのポイント
- 従業員の入退社時に必要な手続きと書類の一覧
- 複雑な加入条件をわかりやすく整理した解説
この一冊で、担当者が押さえておくべき最新情報を網羅的に確認できます。煩雑な業務の効率化にぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 健康保険資格喪失証明書(社会保険喪失証明書)とは
健康保険資格喪失証明書とは、退職などによって健康保険の被保険者資格を喪失したことを証明する書類です。会社が発行することもあれば、年金事務所または健康保険組合に依頼をして発行することもあります。
退職によって加入資格を喪失した場合、喪失日として退職日の翌日の日付が証明書に記載されます。被扶養者がいる場合には、その分も含めて資格喪失が証明されるため、被扶養者分の証明書としても有効です。
1-1. 健康保険資格喪失証明書の提出が必要なケース
退職後に国民健康保険へ加入する場合は、健康保険資格喪失証明書を求められることがあります。国民健康保険の加入手続きは、原則として資格喪失日(退職日の翌日)から14日以内に行わなければならず、その際に証明書を求められます。
手続きが14日を過ぎても加入は可能ですが、その場合の保険料の支払方法などは市区町村によって異なるため、市区町村に問い合わせて確認してください。
1-2. 健康保険資格喪失証明書の提出が必要ないケース
主に以下のケースでは、健康保険喪失証明書の提出は原則必要ありません。
退職後に別の会社に転職する場合や退職後も加入していた健康保険の任意継続制度を利用する場合です。転職先の会社が加入している健康保険の被保険者になるため、一般的には転職先から健康保険資格喪失証明書の提出を求められるケースは少ないです。
ただし、新たに加入する健康保険組合によっては資格喪失証明書を提出しなければならないことがあるため、転職先の会社に確認しておくとよいでしょう。また、退職後に健康保険の任意継続制度を利用する場合も、資格喪失証明書は不要です。任意継続期間の満了後は、加入していた健康保険から「任意継続被保険者資格喪失通知書」が送られるため、それが資格喪失の証明書となります。
2. 健康保険資格喪失証明書(社会保険喪失証明書)の発行までの流れ


社会保険喪失証明書は、一般的に退職した従業員が国民健康保険加入手続きの際に必要な重要書類です。
事業主は従業員から証明書発行の申し出を受け次第、手続きを行います。
手順は次の通りです。
2-1. 資格喪失届の手続きをおこなう
健康保険資格喪失証明書を取得するためには、まず資格喪失手続きを完了させる必要があります。資格喪失の手続きとして、事業所を管轄する日本年金機構の事務所もしくは日本年金機構の事務センターに、健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届を提出しましょう。被保険者資格喪失届の提出にあたっては健康保険被保険者証も必要なので、退職する従業員からか事前に回収しておくとスムーズに手続きが進みます。
2-2. 健康保険資格喪失証明書の作成と添付書類を準備する
資格喪失の手続きを完了させたら、健康保険資格喪失証明書を作成します。社会保険資格喪失証明書のフォーマットに定めはないため、独自で用意できます。しかし、万が一の不備に備えて自治体が用意したフォーマットの活用がおすすめです。なお退職した従業員がフォーマットを指定するケースもあります。
証明書に必要事項を記載したら原本を退職する従業員に渡します。従業員の自宅に郵送するのが一般的です。
従業員に渡すのはあくまで原本です。後日、問い合わせがあった際に備えてコピーを会社で保存しておきましょう。
3. 健康保険資格喪失証明書(社会保険資格喪失証明書)の書き方


ここでは実際に健康保険資格喪失証明書を作成する際に必要な項目をご紹介します。以下の健康保険資格喪失証明書の記載項目例を参考にしましょう。
3-1. 被保険者に関する情報
- 氏名
- 生年月日
- 現住所
- 保険者番号
- 被保険者証番号
- 取得年月日
- 喪失年月日
上記の項目を確認の上、間違いのないよう被保険者に関する情報を記載します。
3-2. 被扶養者に関する情報
- 氏名
- 生年月日
- 続柄
- 認定年月日
- 喪失年月日
健康保険資格喪失証明書には、被保険者の情報だけでなく、被保険者が扶養している人物の情報も記載します。また、最後に署名のような形式で事業所の情報を記載し、最後に相違がないことを証明するために、日付を記載します。
3-3. 事業所に関する情報
- 事業所名称
- 所在地
- 代表者名
- 電話番号
実際にPDF形式でダウンロードできるので、自社で作成できない方は有効に活用してみてください。健康保険資格喪失証明書以外にも、厚生年金や雇用保険の資格喪失届や離職証明書の発行など、資格喪失時には複数の対応が必要になります。本サイトでは上記の社会保険の手続きに関して、資格取得時と資格喪失時の対応についてまとめた資料を無料で配布しております。従業員の入社時や退社時の対応で不安な点があるご担当者様は、こちらから「社会保険の手続きガイド」をダウンロードしてご確認ください。
4. よくある質問


また健康保険資格喪失証明書に関してよくある質問をまとめました。正しく対応できるよう従業員から質問が発生しやすいケースを把握しておきましょう。
4-1. 健康保険資格喪失証明書の発行は義務ですか?
健康保険資格喪失証明書の発行は、企業の義務ではありません。退職する従業員が協会けんぽ加入者であれば、自ら年金事務所の窓口で請求できます。
しかし、スムーズに手続きをするために、資格喪失の手続きとあわせて証明書発行を進めていきましょう。
4-2. 従業員が証明書を紛失した場合は再発行できる?
健康保険資格喪失証明書を紛失した場合、再発行は基本的に可能です。自社で証明書を発行しているのであれば、保存しているデータに基づいて再発行しましょう。また、協会けんぽ加入者であれば年金事務所に問い合わせることで再発行できます。協会けんぽ以外の健康保険に加入していた場合も、各健康保険組合に連絡を取り、資格喪失証明書の再発行を依頼可能です。従業員から問い合わせがあったら、再発行方法を案内しましょう。
4-3. 証明書はいつ届く?
健康保険資格喪失証明書は、資格喪失の手続きが完了してから発行します。従業員が被保険者喪失日証明願を健康保険組合に提出して請求するケースでは、退職日を含めると、実際には1週間程度かかることが多いです。従業員から「届かない」「いつ届く」といった質問を受けたら、1週間ほどを目安に伝えましょう。または自社で作成することも可能です。
5. 国民健康保険等に加入する際の案内方法


続いて、国民健康保険への切り替え方法を紹介します。日本では国民全員が健康保険に加入することが義務づけられており、加入していない場合は医療費が全額自己負担になる可能性があります。そのため、退職した従業員に対して、国民健康保険への加入手続きを適切に案内しましょう。
▼そもそも社会保険と国民健康保険の違いが判らない方はこちらをご覧ください
社会保険と国民健康保険の違いや切り替え時の手続きとは
5-1. 国民健康保険に切り替える際の必要書類
国民健康保険に切り替える際は、届出が必要です。届出にあたっては必要書類が発生するため、退職する従業員に伝えておきましょう。
市区町村によって必要な持ち物は多少異なるものの、一般的に以下のものを求められることが多いようです。
- 健康保険資格喪失証明書
- 世帯主と加入者全員のマイナンバーがわかるもの(個人番号カード・通知カード)
- マイナンバーカードなどの本人確認書類
この他にも市町村によってはキャッシュカードや通帳、銀行届出印などを求められることもあるため、申請を行う市町村に確認を取ることを、従業員へ促しましょう。ホームページで持ち物を公表している所もあります。
5-2. 国民健康保険に切り替える際の提出先と提出方法・提出期限
国民健康保険への切り替えは、市町村の国民健康保険担当課で手続きを行います。手続きができる時間帯は役所によって異なるため、必要書類とあわせて、従業員に確認を伝えておくとスムーズに手続きが可能です。
また、提出期限は社会保険喪失日から14日以内です。社会保険喪失日は退職日の翌日なので、仮に4月1日に退職した場合は4月2日が社会保険喪失日となり、4月2日から14日以内に国民健康保険に加入する必要があります。
関連記事:社会保険と国民健康保険の切り替え手続きや任意継続保険の特徴について
6. 会社で証明書の発行をおこなわない場合の案内方法


健康保険資格喪失証明書は国民健康保険加入のための重要な書類です。しかし、会社に証明書発行の義務はなく、企業によっては発行の慣習がないケースがあります。会社が証明書を発行しない場合、代替案を従業員に案内しましょう。
6-1. 代替案①:退職日が確認できる書類を渡す
健康保険資格喪失証明書を発行できない場合、次のような退職日が確認できる書類を従業員に渡しましょう。
- 離職票
- 退職証明書
退職日が確認できれば国民健康保険への切り替えをしてもらえることもあります。
6-2. 代替案②:従業員に直接手続きしてもらう
健康保険資格喪失証明書は退職する従業員自身でも取得可能です。
全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入していたのであれば、最寄りの年金事務所もしくは事務センターに健康保険・厚生年金保険資格取得・資格喪失等確認請求書を提出することで、証明書が発行されます。健康保険・厚生年金保険資格取得・資格喪失等確認請求書は日本年金機構のホームぺージからダウンロード可能です。
窓口で手続きする際はマイナンバーカードもしくは免許証やパスポート、在留カードといった身分証明書の持参が必要です。郵送の場合、身分証明書のコピーを添付します。
ただし、退職後に会社が被保険者資格喪失届を提出していない場合は、手続きできない可能性があります。そのため、会社は被保険者資格喪失届を忘れずに年金機構に届け出ましょう。
参考:日本年金機構 | 国民健康保険等に加入するため、健康保険の資格喪失証明等が必要になったとき
7. 退職時の社会保険手続きを再確認しよう


健康保険資格喪失証明書は退職後、国民健康保険への切り替えに必要な書類です。保険料は退職日を起点として納めるため、社会保険が失効する退職日の証明が必要になるのがポイントです。
企業は健康保険資格喪失証明書を発行する義務がないものの、退職する従業員がスムーズに手続きを進めるためにも、早めに自社で発行しましょう。証明書の様式に定めはないものの、不備を防ぐために自治体が発行している様式の活用がおすすめです。
しかし、企業によっては慣習として証明書を発行していないケースもあります。証明書を発行できないのであれば、離職票や退職証明書を退職日の証明として使用してもらう、全国健康保険協会に加入していた場合は、最寄りの年金事務所で直接発行手続きをしてもらうことを伝えましょう。



従業員の入退社、多様な雇用形態、そして相次ぐ法改正。社会保険手続きは年々複雑になり、担当者の負担は増すばかりです。
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