療育手帳を保有している従業員の年末調整で障害者控除を申告する方法 - ジンジャー(jinjer)|クラウド型人事労務システム

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療育手帳を保有している従業員の年末調整で障害者控除を申告する方法

障害者手帳

療育手帳を保有している人は、障害者控除の所得控除を受けられます。これにより、課税所得が減り、税負担を軽減できます。企業に勤める従業員であれば、年末調整で障害者控除の適用が可能です。

本記事では、療育手帳を保有する従業員が年末調整で障害者控除を申告する際の手続きや記載方法をわかりやすく解説します。あわせて、手帳のコピー提出の要否や、所得金額調整控除との関係など、控除を適用する際に注意すべきポイントも紹介します。

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1. 療育手帳保有者が受けられる障害者控除とは

クエスチョンマーク

日本には障害者のために一定額の所得を控除する「障害者控除」という制度があります。どのような控除なのか、関係する療育手帳の等級と一緒にみていきましょう。

1-1. 障害者控除とは

障害者控除とは、本人や同一生計の配偶者、または扶養親族が所得税法上の「障害者」に該当する場合に受けられる所得控除です。通常、扶養控除の対象とならない16歳未満の扶養親族であっても、障害者に該当する場合は障害者控除を適用できます。

障害者に該当するかどうかは、主に「障害者手帳」の所持によって判断されます。なお、「障害者手帳」とは総称であり、次の3種類が含まれます。

  • 身体障害者手帳
  • 療育手帳
  • 精神障害者保健福祉手帳

このうち「療育手帳」は、知的障害のある方(子ども・大人を問わず)に交付されるもので、自治体によっては「愛護手帳」「愛の手帳」「みどりの手帳」などとよばれる場合もあります。療育手帳の交付は、児童相談所や知的障害者更生相談所での判定を経ておこなわれ、最終的に都道府県知事または指定都市の市長によって発行されます。

参考:障害者手帳|厚生労働省

参考:No.1160 障害者控除|国税庁

同一生計配偶者

同一生計配偶者とは、原則として、その年12月31日の現況において、次の4つの要件すべてを満たす人を指します。

  1. 民法上の配偶者であること(内縁関係の人は対象外)
  2. 生計を一にしていること(日常的に生活費を共有していること)
  3. 年間の合計所得金額が58万円以下(給与収入が123万円以下)であること
  4. 事業専従者(青色事業専従者や白色事業専従者)に該当しないこと
扶養親族

扶養親族とは、原則として、その年12月31日の現況において、次の4つの要件すべてを満たす人を指します。

  1. 配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)※里子や養護老人を含む
  2. 生計を一にしていること
  3. 年間の合計所得金額が58万円以下(給与収入が123万円以下)であること
  4. 事業専従者に該当しないこと

令和7年度税制改正により、給与所得控除の最低保障額は55万円から65万円へ引き上げられました。また、扶養親族等の所得要件も48万円以下から58万円以下へ緩和されました。これに伴い、同一生計配偶者や扶養親族の条件も一部変更されているので、正しく理解を深めておくことが大切です。

参考:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について|国税庁

参考:専門用語集|国税庁

関連記事:2025年(令和7年)の年末調整の変更点!手続きのポイントもわかりやすく解説参考:No.1160 障害者控除|国税庁

1-2. 療育手帳には等級がある

身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳には、それぞれに等級が設けられています。療育手帳の場合、重度の障害がある場合は「A区分」、それ以外は「B区分」とされます。なお、自治体によってはA・Bの区分をさらに細かく分類している場合もあります。

また、療育手帳を持っている方が受けられる支援やサービスの内容は、自治体によって異なるので注意が必要です。ただし、療育手帳を所持している人は全員、障害者控除の対象となります。障害の程度によって控除額が異なる場合もあります(後述)が、控除を受けられる点は共通です。

参考:療育手帳制度の概要|厚生労働省

参考:No.1160 障害者控除|国税庁

2. 障害者控除を受けるための療育手帳の条件と控除額

個々の属性を分類分けして分析する

療育手帳により障害者控除を受けるにはさまざまな条件を満たす必要があります。受けるための条件と控除額を確認しておきましょう。

2-1. 障害者控除の対象者と条件

療育手帳を取得できる条件は次のとおりです。

重度Aの基準

①知能指数がおおむね35以下で、次のいずれかに該当する。

  • ・食事、着替え、排便、洗面などの日常生活に介助が必要
  • ・異食や興奮などの問題行動がある

②知能指数がおおむね50以下で、盲・ろうあ・肢体不自由などの障害がある

それ以外(B)の基準

重度A以外

これらの区分は障害者手帳に明記され、それによって適用される制度にも差があるので注意が必要です。

参考:療育手帳制度の概要|厚生労働省

2-2. 控除額の決まり方

所得控除額は次の3つに分かれており、該当する区分によって受け取れる控除額が変化します。なお、1人の障害者控除を2人以上が重複適用することはできない点に留意が必要です。

区分

控除額

障害者(重度A以外のB区分)

  • 27万円

特別障害者(重度A)

  • 40万円

同居特別障害者

  • 75万円
特別障害者(重度A) とは

特別障害者(重度A)とは、知的障害がある人のうち、日常生活において常時介助や支援を必要とするなど、特に重度の障害と認定された人のことです。

療育手帳では「A区分(マルA・A2など)」がこれに該当します。この区分に認定されると、通常の障害者控除よりも控除額が大きく、所得税の負担をより軽減できます。

参考:No.1160 障害者控除|国税庁

同居特別障害者とは

同居特別障害者とは、特別障害者に該当する人(本人を除く)で、納税者やその配偶者、生計を一にするその他の親族と同居をしている人のことです。

具体的には、特別障害者が家庭内で生活している状態を示し、同居とは施設や病院に預けていない状態で、同一の居宅で生活を共にしている状態を指します。ただし、治療や一時的な措置のために入院している場合で、自宅に戻る予定がある場合などは同居とみなされることもあります。

3. 療育手帳によって障害者控除を受けたいときの年末調整の書き方

書類に記入する様子

年末調整は勤め先の企業が従業員の所得税を計算し、過不足金を調整する制度です。

年末調整で障害者控除を申請するときは、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」にある、C欄「障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」に記入します。

障害のある方が申告書を提出していない場合は、本人に確認をとりましょう。

障害者控除を受ける場合は扶養控除等申告書に記載をする必要があります。年末調整の書類はいくつかあるので、控除を受けるために必要な申告書やそれぞれの記載内容を把握しておく必要があります。

当サイトでは、年末調整の控除に必要な書類と記載事項をまとめた資料を無料で配布しています。年末調整に必要な控除の申告書のフォーマットと記載例も添付しているので、年末調整の控除の書類について正しく理解したい方はこちらから「年末調整のガイドブック」をダウンロードしてご確認ください。

3-1. 本人が療育手帳を持っていて所得控除を申請する場合

一般の障害者の場合は、次のように記載します。

  • 障害者にチェックを記入する
  • 本人+一般の障害者に〇を記入

区分/該当者

本人

同一生計配偶者

扶養親族

一般の障害者

 

 

特別障害者

 

 

 

同居特別障害者

 

 

 

障害者又は勤労学生の内容欄に次のとおりに記入します。

  • 障害者手帳の交付日時
  • 障害の等級

特別障害者の場合は、次のように記載します。

  • 障害者にチェックを記入する
  • 本人+特別障害者に〇を記入

区分/該当者

本人

同一生計配偶者

扶養親族

一般の障害者

 

 

 

特別障害者

 

 

同居特別障害者

 

 

 

障害者又は勤労学生の内容欄に次のとおりに記入します。

  • 障害者手帳の交付日時
  • 障害の等級

3-2. 扶養している家族が療育手帳を持っていて控除を受ける場合

一般の障害者の場合は、次のように記載します。

  • 障害者にチェックを記入する
  • 障害者又は勤労学生の内容欄に次の内容を記入
    • 控除を受ける扶養家族の氏名
    • 障害者手帳の交付日時
    • 障害の等級
  •  扶養家族・一般の障害者に〇を記入
    ※カッコ内には扶養家族の人数を記入する

区分/該当者

本人

同一生計配偶者

扶養親族

一般の障害者

 

 

〇(1人)

特別障害者

 

 

 

同居特別障害者

 

 

 

特別障害者(同居している場合)は、次のように記載します。

  •  障害者又は勤労学生の内容欄に次の内容を記入
    • 控除を受ける扶養家族の氏名
    • 障害者手帳の交付日時
    • 障害の等級
  • 扶養家族・同居特別障害者に〇を記入
    ※カッコ内には扶養家族の人数を記入する

区分/該当者

本人

同一生計配偶者

扶養親族

一般の障害者

 

 

 

特別障害者

 

 

 

同居特別障害者

 

 

〇(1人)

特別障害者(別居している場合)は次のように記載します。

  •  障害者又は勤労学生の内容欄に次の内容を記入
    • 控除を受ける扶養家族の氏名
    • 障害者手帳の交付日時
    • 障害の等級
  • 扶養家族・特別障害者に〇を記入
    ※カッコ内には扶養家族の人数を記入する

区分/該当者

本人

同一生計配偶者

扶養親族

一般の障害者

 

 

 

特別障害者

 

 

〇(1人)

同居特別障害者

 

 

 

3-3. 配偶者が療育手帳を持っていて控除を受ける場合

一般の障害者は次のように記載します。

  • 障害者にチェックを記入する
  •  障害者又は勤労学生の内容欄に次の内容を記入
    • 控除を受ける扶養家族の氏名
    • 障害者手帳の交付日時
    • 障害の等級
  • 同一生計配偶者・一般の障害者に〇を記入
    ※カッコ内には扶養家族の人数を記入する

区分/該当者

本人

同一生計配偶者

扶養親族

一般の障害者

 

 

特別障害者

 

 

 

同居特別障害者

 

 

 

特別障害者(同居している場合)は次のように記載します。

  •  障害者又は勤労学生の内容欄に次の内容を記入
    • 控除を受ける扶養家族の氏名
    • 障害者手帳の交付日時
    • 障害の等級
  • 同一生計配偶者・同居特別障害者に〇を記入
    ※カッコ内には扶養家族の人数を記入する

区分/該当者

本人

同一生計配偶者

扶養親族

一般の障害者

 

 

 

特別障害者

 

 

 

同居特別障害者

 

 

特別障害者(別居している場合)は次のように記載します。

  •  障害者又は勤労学生の内容欄に次の内容を記入
    • 控除を受ける扶養家族の氏名
    • 障害者手帳の交付日時
    • 障害の等級
  • 同一生計配偶者・特別障害者に〇を記入
    ※カッコ内には扶養家族の人数を記入する

区分/該当者

本人

同一生計配偶者

扶養親族

一般の障害者

 

 

 

特別障害者

 

 

同居特別障害者

 

 

 

4. 療育手帳で障害者控除を受ける際の注意点

注意の標識

原則として、療育手帳による障害者控除を受けるには、手帳の交付を受けている必要があります。ここでは、年末調整において療育手帳で障害者控除を適用する際の注意点について詳しく紹介します。

4-1. 年末調整では療育手帳のコピーを提出する必要はない

年末調整で障害者控除を適用する際、申告書への添付書類は原則として不要です。ただし、申告内容の正確性を確認する目的で、企業担当者が療育手帳の内容を確認する場合があります。

そのため、従業員には、必要に応じてすぐに提示できるよう療育手帳のコピーをあらかじめ用意しておくよう案内するとよいでしょう。あわせて、可能であれば申告書とともにコピーを提出してもらうことで、確認作業や控除の適用手続きがよりスムーズに進みます。

なお、療育手帳には障害の程度などの個人情報が含まれるため、コピーの提出はあくまで任意であり、義務ではありません。その点を明確に伝え、プライバシーに十分配慮した対応を心がけることで、従業員が安心して手続きをおこなえるようにしましょう。

4-2. 収入が850万円を超える場合は所得金額調整控除が受けられる

所得金額調整控除には「子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除」「給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除」の2種類あり、いずれも給与所得の金額から所定の金額を控除できる仕組みです。​

ただし、年末調整で適用できるのは前者のみであり、後者を適用したい場合は、従業員本人による確定申告が必要になります。「子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除」は、その年の給与収入が850万円を超え、次のいずれかに該当する場合に適用されます。

  • 本人が特別障害者に該当する
  • 23歳未満の扶養親族がいる
  • 特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族がいる

したがって、従業員本人や家族が特別障害者に該当し、療育手帳を所持している場合には、この控除を受けられる可能性があります。

年末調整の際には、給与収入が850万円を超える従業員について、該当条件に当てはまるか事前に確認するよう案内しましょう。社内案内や記入例を用いて、従業員が誤りなく申告できるよう丁寧にサポートすることが重要です。

参考:No.1411 所得金額調整控除|国税庁

関連記事:【2025年分】年末調整の計算方法を5ステップで解説!計算例も紹介

4-3. 年末調整に間に合わない場合は確定申告による適用も可能

障害者控除の判定は、原則としてその年の12月31日時点の状況でおこなわれます。そのため、年末調整の後であっても、その年の末までに療育手帳を取得した従業員は障害者控除の対象となります。この場合、税務署への法定調書の提出期限(翌年1月31日)に間に合うようであれば、年末調整のやり直し(再調整)で対応が可能です。

ただし、すでに源泉徴収票を交付済みなどで再調整が難しい場合には、従業員自身が確定申告で控除を申請できます。確定申告期間は基本的に翌年2月16日から3月15日までですが、還付申告であれば翌年1月1日から提出が可能です。

確定申告(還付申告)の際には、勤務先が交付する源泉徴収票が必要になります。そのため、企業としては翌年1月31日の期限までに源泉徴収票を交付することが重要です。また、該当する従業員に対して、確定申告の方法や注意点を案内しておくと、より丁寧な対応となります。

参考:障害者控除の適用を受けることのできる年分|国税庁

関連記事:年末調整の再調整は可能!方法やポイントをわかりやすく解説

5. 療育手帳を保有している従業員には年末調整までに申告書を作成してもらおう

書類を渡す様子

療育手帳を持っている従業員は、障害者控除の対象となります。ただし、企業が正しい手続きや確認をおこなわないと、控除が適用されずに従業員の税負担が重くなってしまうおそれがあります。

療育手帳を所持している従業員が障害者控除を受ける場合は、本人に「扶養控除等申告書」を提出してもらいましょう。なお、提出時に療育手帳のコピーを添付する義務はありませんが、申告内容を確認し、記載ミスを防ぐためにも、あらかじめコピーの提出をお願いするよう社内で取り決めておくと安心です。

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jinjer Blog 編集部

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