年末調整を2箇所でしてしまったら?ダブルワークの注意点と正しい対処方法を解説 - ジンジャー(jinjer)|クラウド型人事労務システム

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年末調整を2箇所でしてしまったら?ダブルワークの注意点と正しい対処方法を解説

PCを見て驚く女性

働き方の多様化に伴い、副業などで2箇所以上から給与を受け取る人が増えています。2箇所以上から給与を受け取る場合は、年末調整の処理に注意が必要です。

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は主たる給与を受け取る1箇所の勤務先にしか提出できません。しかし、従業員がこのルールを知らずに、誤って2箇所の勤務先で年末調整をおこなってしまったらどうなるのでしょうか。

本記事では、年末調整を2箇所でおこなってしまった場合の具体的な対処法、人事労務担当者が取るべき対応、そして確定申告を忘れた場合のリスクをわかりやすく解説します。

年末調整のギモン、一問一答でスッキリ解決しませんか? 複雑な年末調整をケース別で解説

「特定親族特別控除」が新設されるなど、例年以上に複雑になる令和7年の年末調整。
従業員からの問い合わせが増える年末に、最新の制度をどう案内すればいいか、不安に感じていませんか?
◆よくある質問
Q. 大学生などのアルバイト収入が増えても、親の控除額は減らない?
Q. 年末調整の対象者は?
Q. 退職者や二か所で働く従業員の年末調整は必要?
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1. 年末調整を2箇所でしてしまったらどうする?

クエスチョンマーク

従業員から「2箇所の会社で年末調整をしてしまったかもしれない」と申告があった場合、人事労務担当者はどう対応すべきでしょうか。

2箇所の会社で年末調整をしてしまった場合、本来よりも所得税が少なく計算され、従業員が税務署から指摘を受け、追徴課税(延滞税・過少申告加算税など)が課されることもあります。

担当者としては、従業員の不利益を防ぐため、ミスに気づいた時点あるいは申告を受けた時点ですぐに正しい手続きを案内する必要があります。次の章で、会社側が取るべき具体的な対処法を順に解説します。

関連記事:年末調整の書類で間違いに気づいたときの正しい訂正方法

2. 2箇所で年末調整をしてしまった場合の会社側の対処法

計算する女性

従業員から申告を受けたら、担当者は速やかに是正措置をとる必要があります。対応は、「自社がどちらの勤務先にあたるか」と「時期・期限」によって決まるため、次の流れでおこないましょう。

2-1. 2箇所の勤務先のどちらが「主たる給与」「従たる給与」かを判断する

まず、従業員に確認し、自社が「主たる給与(メインの勤務先)」か「従たる給与(サブの勤務先)」かをはっきりさせます。

国税庁の定義によれば、「主たる給与」とは、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人に支払う給与をいいます。そして、「従たる給与」とは、「主たる給与」以外の給与をいいます。

本来、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は1箇所にしか提出できません。従業員がこの申告書を誤って両方の会社に提出してしまった場合は、まず従業員にどちらを「主たる給与」とするか(通常は収入が多い方)を明確にしてもらう必要があります。

自社がどちらに該当するか確認できたら、「従たる給与」となる会社側が、扶養控除申告書を取り下げる処理をおこないます。自社が「主たる給与」である場合は、もう一社の勤務先で扶養控除申告書を取り下げる処理をおこなうよう従業員に案内してください。

参考:No.2520 2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収|国税庁

2-2. 扶養控除申告書を取り下げる

自社が「従たる給与」の会社となった場合、重複した年末調整を取り消す処理をおこないます。このとき、「法定調書の提出期限(1月31日)を過ぎているか」がポイントになります。

法定調書の提出期限(1月31日)より前の場合

まだ税務署や市区町村への提出が間に合うため、社内で次の対応をおこないます。

  • 従業員から提出された「扶養控除等申告書」を取り下げ(返却)扱いにします。
  • 年末調整の再計算をおこない、適用していた基礎控除などの所得控除をすべて取り消します。
  • 従業員には、年末調整の適用を外した(=乙欄適用、あるいは年末調整未済となった)正しい源泉徴収票を再発行します。

法定調書の提出期限(1月31日)を過ぎている場合

すでに税務署や市区町村へ源泉徴収票や給与支払報告書を提出済みのケースです。

この場合、年末調整をやり直して各種書類を再提出するのは多大な手間がかかります。社内での修正はおこなわず、次に説明する「2-3. 従業員自身で確定申告をしてもらう」方法を案内してください。

2-3. 従業員自身で確定申告をしてもらう

従たる給与の会社で年末調整のやり直しが間に合ったかどうかに関わらず、最終的には従業員自身による確定申告をおこない、重複控除を正しく是正します。

担当者は従業員に対し、次の2点を準備して、確定申告期間(原則翌年2月16日~3月15日)に手続きをおこなうよう案内しましょう。

  • 主たる給与の会社が発行した「年末調整済みの源泉徴収票」
  • 従たる給与の会社が発行した「年末調整が未・済の源泉徴収票」

特に、2-2章の1月末までのやり直しが間に合った場合は、自社が再発行した年末調整をおこなっていない源泉徴収票を必ず使うように案内をします。

もし2-2章の1月末を過ぎてやり直しが間に合わなかったケースであっても、従業員は確定申告が可能です。その際は、誤って年末調整が適用された源泉徴収票を使って申告しても、申告の過程で2社分の収入を合算し、控除を正しく適用し直すため、結果として正しい税額に修正されます。

会社側としては、従業員が確定申告を忘れないよう、必要な源泉徴収票を速やかに発行し、手続きを促すことが重要です。

確定申告の期間は、原則として翌年2月16日から3月15日です。もしこの申告・納税を怠った場合、追徴課税といったペナルティを受ける可能性もあるため、余裕を持って申告できるよう従業員をサポートしましょう。

関連記事:年末調整とは?確定申告との違いや必要書類、計算の流れをわかりやすく解説

3. 年末調整を2箇所でしてしまった場合の注意点

注意のイメージ

2箇所で年末調整をしてしまった場合、原則として確定申告で是正が必要です。しかし、従業員の収入状況によっては、確定申告が不要となるケースもあります。担当者として、次の2つの注意点を正しく理解し、従業員に説明できるようにしておきましょう。

3-1. 副業所得が年20万円以下なら確定申告は不要

「主たる給与」の会社で年末調整が完了している場合、「従たる給与」の年間収入金額(額面給与)が20万円以下であれば、所得税の確定申告は不要になります。

副業が業務委託契約などで「雑所得」にあたる場合は、収入から経費を引いた「所得」が20万円以下である場合確定申告は不要です。

しかし、この20万円ルールは、あくまで所得税の確定申告が不要になる特例です。住民税(市町村民税・道府県民税)にはこの特例が適用されないため、収入が20万円以下であっても、原則として市区町村への申告が必要です。

「所得税の申告は不要でも、住民税の申告は必要」と明確に区別して案内しないと、従業員が住民税の申告漏れを起こし、後日追加徴収の通知が届く可能性があるため注意しましょう。

3-2. 合計収入が160万以下なら所得税は発生しない

従来は、いわゆる「103万円の壁」として、年間の総収入が103万円以下であれば所得税が発生しませんでした。これは、給与所得控除(55万円)と基礎控除(48万円)を合計すると103万円になり、課税所得金額がゼロになるためです。

しかし、2025年の税制改正により給与所得控除と基礎控除の金額が見直され、課税所得がゼロとなる収入目安は160万円に引き上げられました。つまり、給与収入のみであれば、年間の総収入が160万円以下であれば原則として所得税は発生しません。

この場合、仮に2箇所で年末調整をおこなって控除を二重に適用したとしても、そもそも年間の所得税額がゼロであるため、結果的に税額に影響はなく、追徴課税は発生しません。

ただし、これはあくまで結果論であり、2箇所に申告書を提出する手続き自体が誤りです。会社側としては、こうした手続きの混乱を未然に防ぐためにも、「年末調整は主たる給与の会社1箇所のみでおこなう」という基本ルールを従業員へ周知することが大切です。

関連記事:年収103万円以下のアルバイトは年末調整が不要?令和7年分から160万円以下へ基準が変更!

4. 確定申告を忘れてしまったらどうなるか

はてなマーク

「2-3. 従業員自身で確定申告をしてもらう」章で解説したように、2箇所で年末調整をしてしまった従業員は、原則として確定申告(是正申告)が必要です。

もし、この確定申告を期限(原則3月15日)までにおこなわず放置してしまった場合、従業員本人に次のようなペナルティが課されます。これらは会社ではなく、従業員本人が納付するものです。

担当者としては、こうしたリスクを明確に従業員に伝え、申告を強く促す必要があります。

4-1. 無申告加算税(2024年1月から罰則強化)が発生する

無申告加算税は、期限である3月15日までに確定申告をしなかった場合、追加で課されるペナルティです。

確定申告を期限までに行わなかった場合、無申告加算税というペナルティがかかります。

  • 税務署から指摘を受ける前に自主的に申告すれば5%
  • 調査後の申告では、より高い税率(段階的に引き上げ)で計算される

2024年(令和6年)以降は制度が厳格化されているため、従業員が申告漏れに気づいたら、早めに期限後申告をおこなうよう促しましょう。

参考:No.2024 確定申告を忘れたとき|国税庁

4-2. 延滞税が発生する

延滞税は、法定納期限(3月15日)の翌日から、実際に税金を納付する日までの日数に応じて課される、「利息」に相当する税金です。

税率は、納期限の翌日から2ヵ月を経過する日を境に、2段階で重くなります。令和7年(2025年)1月1日以降の期間に適用される税率(年率)は、次のとおりです。

  • 納期限の翌日から2ヵ月を経過する日まで
    原則「年7.3%」と「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い割合を適用
    (参考:令和7年1月1日から12月31日までの期間は年2.4%)
  • 納期限の翌日から2ヵ月を経過した日以降
    原則「年14.6%」と「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合を適用
    (参考:令和7年1月1日から12月31日までの期間は年8.7%)

延滞税は、4-1章の無申告加算税に加えて発生します。納付が遅れれば遅れるほど、日割りで負担が増え続けるため、1日でも早い申告・納付が必要です。

参考:延滞税の割合|国税庁
参考:延滞税の計算方法|国税庁

関連記事:年末調整しないことによる罰則内容を詳しく紹介
関連記事:年末調整をしないとどうなる?会社側のリスクや間に合わなかった時の対処法を解説

5. 年末調整を間違えないための対策

書類に記入する女性

2箇所での年末調整というミスは、従業員本人だけでなく、会社側の再計算や源泉徴収票の再発行などの事後処理にも多大なコストを発生させます。

こうした事態を未然に防ぐために、担当者が先回りしておこなうべき対策を3つ紹介します。

5-1. 副業・ダブルワークの制度を整備して社内周知をおこなう

根本的な対策として、従業員が副業やダブルワークをしていることを会社が把握できる体制を整えることが重要です。

従業員が「副業を会社に知られてはならない」と感じていると、年末調整の相談もできず、結果としてミスにつながります。就業規則で副業を原則禁止あるいは許可制にしている場合でも、許可を得て働いている従業員や、アルバイトを掛け持ちしている従業員への手続き案内は必要です。

入社時はもちろん、年末調整の時期以外にも定期的に、「副業や掛け持ちをしている場合は、年末調整の手続きがほかの従業員と異なる」ことを社内で周知し、担当部署に相談しやすい環境をつくることがミスの防止につながります。

5-2. 従たる給与についての扶養控除等申告書を提出する

主なミスの原因は、年末調整に必要な「(主たる)給与所得者の扶養控除等申告書」を、従業員が2箇所に提出してしまうことです。前提として、「(主たる)給与所得者の扶養控除等申告書」は主たる給与の会社1箇所にしか提出しないように徹底周知をしましょう。

名前がよく似た様式として、「従たる給与についての扶養控除等(異動)申告書」という書類があります。これは年末調整とは無関係で、月々の源泉徴収税(乙欄)の計算を調整するための書類です。

担当者は、「(主たる)給与所得者の扶養控除等申告書」の重複提出というミスを防ぐため、従たる会社にはこれを提出させず、代わりに「従たる給与についての扶養控除等(異動)申告書」を提出させましょう。その際、この書類を提出しても年末調整はおこなわれず、最終的な確定申告は別途必要であるとの案内も重要です。

参考:従たる給与についての扶養控除等(異動)申告書|国税庁

5-3. 年末調整をおこなう前に従業員へ周知する

年末調整の書類を配布する際や、オンラインでの入力を依頼する際に、具体的な注意喚起をおこなうのが最も効果的です。

例えば、次のような一文を案内メールや書類の表紙に添えるだけで、多くの「うっかりミス」を防ぐことができます。

注意喚起の文例

※2箇所以上から給与を受け取っている方へ(副業・掛け持ちなど)

「給与所得者の扶養控除等申告書」は、原則として1箇所の勤務先にしか提出できません。

他社で年末調整をおこなう(申告書を提出する)予定の方は、当社では年末調整の対象となりませんので、この申告書は提出不要です。

どちらに提出すべきか不明な場合は、必ず担当者までご相談ください。

6. 2箇所で年末調整をしてしまった場合も落ち着いて手続きしよう

書類に記入する

副業や掛け持ちが一般化する中で、2箇所での年末調整は、従業員が意図せずおこなってしまう「うっかりミス」の典型例です。ミスが発覚した場合には、速やかに是正の対応をしましょう。

人事労務担当者は、まず自社が「主たる給与」か「従たる給与」かを確認します。もし「従たる給与」であれば、「扶養控除等申告書」を取り下げ、年末調整の再計算または取り消しをおこないましょう。

最終的には、従業員本人が2社分の源泉徴収票を用いて「確定申告」をおこなうことで、正しい税額に修正できます。なお、この是正手続きを怠ると、「無申告加算税」や「延滞税」などのペナルティが課されるおそれがあります。

事後の対応と処理は、担当者にとっても、従業員にとっても大きな負担となります。

だからこそ、年末調整の書類を配布する際には、「扶養控除等申告書は1箇所にしか提出できない」という基本ルールを明確に周知し、ミスを未然に防ぐことが重要です。

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Q. 大学生などのアルバイト収入が増えても、親の控除額は減らない?
Q. 年末調整の対象者は?
Q. 退職者や二か所で働く従業員の年末調整は必要?
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