運送業の労働時間管理をエクセルでおこなう際の2つのポイント
更新日: 2025.2.14
公開日: 2020.3.3
OHSUGI
運送業や運輸業は長時間輸送の仕事が多いため、従業員の労働時間を正確に管理するのが難しい業種です。
毎日定時での出社・退社をするわけではないため、単純に1日の法定・所定労働時間に時間外労働を足し算し、労働時間を計算することはできません。そこで、活躍してくれるのがオフィスソフトのエクセル(Excel)です。
エクセルに搭載されている数式やマクロの機能を使えば、拘束時間や休息期間の計算をはじめ、労働時間が法令に違反していないか自動でチェックすることも可能です。
この記事では、労働時間管理をエクセルでおこなう2つのポイントを解説します。
【関連記事】労働時間について知らないとまずい基礎知識をおさらい!
運送業の法改正は2024年4月から!
運送業界では、36協定の特別条項における残業の上限規制は2024年4月から適用されることに加え、上限時間も通常の職種とは異なります。罰則付きの規制であるため、上限規制の内容をしっかりと把握して対応しなくてはなりません。
「上限規制の詳細までは理解できていない」「上限規制に向け、必要な対応が分からない」という方に向け、当サイトでは建設業界の上限規制について法改正の内容ととるべき対応をまとめた資料を無料で配布しております。
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目次 [非表示]
1. 運送業の労働時間管理をエクセルでおこなう方法は?数式やマクロで半自動化
運送業や運送業の労働時間管理に役立つのが、オフィスソフトのエクセル(Excel)です。
運送業の労働時間管理では、終業時間から始業時間までの「拘束時間」を計算し、改善基準告示に違反していないかを確認しなければなりません。また、拘束時間と拘束時間の間の「休息期間」を計算し、インターバルが適切かどうかの管理も必要です。
エクセルの数式やマクロを使えば、始業時間のセルから終業時間のセルを引き算するだけで、簡単に拘束時間を計算できます。他にも、次の始業時間のセルから前の終業時間のセルを引き算すれば、休息期間を算出できます。これらの機能を使って拘束時間や休息期間を月次で集計すれば、給与や割増手当の計算もかのです。
ただし、日付をまたぐ場合は処理を工夫する必要があるなど、数式やマクロを扱うには相当な知識が求められます。そのため、オフィスソフトの運用ノウハウがない場合は、無料公開されているテンプレートなどを活用するのが一般的です。
【関連記事】働き方改革で必須の労働時間管理をエクセルでおこなうメリット・デメリット
2. 運送業の1日の運転時間は?
運送業における1日の運転時間は、2日を平均して9時間以内と定められています。
具体的には、運行日(特定日)から48時間を対象に次のように平均の運転時間を算出します。
(特定日前日の運転時間+特定日の運転時間)÷ 2
(特定日の運転時間+特定日翌日の運転時間)÷ 2
ただし、このような計算式があってもわかりづらいので、実際にどのように算出するのかは下記の運転時間の例を参考にしてみてください。
パターン | 特定日前日の運転時間 | 特定日の運転時間 | 特定日翌日の運転時間 | 特定日前日+特定日の運転時間平均 | 特定日+特定日翌日の運転時間 |
パターンA | 9時間 | 9時間 | 9時間 | 9時間 | 9時間 |
パターンB | 10時間 | 9時間 | 10時間 | 9.5時間 | 9.5時間 |
パターンC | 10時間 | 9時間 | 9時間 | 9.5時間 | 9時間 |
パターンAは、ともに平均が9時間以内に収まるため問題ありません。
一方、パターンBは特定日前日+特定日の運転時間平均と、特定日+特定日翌日の運転時間平均のいずれも9時間を超えているため、法定労働時間内労働とは認められません。
また、パターンCは特定日前日+特定日の運転時間平均の平均時間は9時間を超えているものの、特定日+特定日翌日の運転平均時間は9時間以内に収まっているので問題ない、ということになります。
参考:トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント|厚生労働省
3. 運送業の労働時間管理で覚えておきたい2024年問題
運送業の労働時間管理をエクセルでおこなう前に、2024年問題についても把握しておきましょう。
運送業をはじめ、これまでトラックドライバーは働き方改革による時間外労働の上限規制が猶予されてきました。しかし、2024年4月よりトラックドライバーの時間外労働に上限が設けられるようになりました。
その結果、トラックドライバーの労働時間が短くなってしまったため、事業への影響が懸念されています。これが、「運送業の2024年問題」です。
2024年よりドライバーの時間外労働に上限規制が設けられているため、適切に労働時間を管理しなければなりません。
そのため、単に労働時間や休憩時間を算出できるだけの機能しかないエクセルではなく、今後は労働時間の上限を超えるとアラーム通知で教えてくれる機能がある勤怠管理システムなどの検討が求められます。
4. 運送業の労働時間管理をエクセルでおこなうときの2つの注意点
運送業の労働時間管理をエクセルでおこなう場合は、次の2点に注意しましょう。
- 深夜労働で日付をまたぐシフトの場合
- 労働時間の上限管理
ここでは、これらの注意点について解説します。
4-1. 深夜労働で日付をまたぐ場合の処理に注意
運送業や運輸業は、長距離の移動や輸送をおこない、日付をまたぐ深夜労働が多々あります。そのため、日付をまたぐ際の拘束時間の計算は注意が必要です。
例えば、出勤時間が23時19分で、退勤時間が翌日の11時37分だった場合、単純に退勤時間のセルから出勤時間のセルを引き算すると、拘束時間がマイナスになってしまいます。
このような場合は、ExcelのIF関数の処理を使いましょう。IF関数を使えば、出勤時間と退勤時間のどちらが大きいか=日付をまたいでいるかどうかを判定できます。また、出勤時間の方が大きい時に1(24時間)を足す処理をおこなえば、日付をまたぐ場合も正確に拘束時間を計算できます。
4-2. 改善基準告示に基づく労働時間の上限管理を
運送業や運送業の拘束時間は、厚生労働省、国土交通省の「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)」で上限が決められています。
改善基準告示によれば、1日の拘束時間は原則として13時間以内で、最大16時間までは延長ができます。この場合には、1日の拘束時間が15時間を超える回数は、1週間について2回以内としなければなりません。
これらの基準を遵守するには、エクセルでの労働時間管理で、拘束時間が改善基準告示の基準値に収まっているかチェックする処理をおこなう必要があります。
この場合、日付をまたぐ処理と同様にIF関数を使い、拘束時間が13時間または16時間以内であるか判定すれば問題ありません。
【関連記事】運送業者は要確認!労働時間の上限規制内容を詳しく紹介
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5. 運送業で使えるエクセル以外の労働時間管理方法2つ
エクセルによる勤怠管理は、入力さえすれば正確な労働時間や休憩時間が算出できます。しかし、入力する数字を間違えてしまうと、集計すべてが間違ってしまうというリスクがあります。
このようなリスクを防ぐには、オフィスソフト以外の方法を検討する必要があるでしょう。ここでは、運送業で使えるエクセル以外の労働時間管理方法を紹介します。
5-1. ネットワーク機能付きのタイムレコーダー
タイムレコーダーには、ネットワーク機能を持ち、外出先からスマホやタブレット、フューチャーフォンなどで打刻できる機種が存在します。手書きの日報での自己申告と違い、長距離輸送をおこなった先でも、「誰が」「いつ」打刻したかを客観的な記録として保存することが可能です。
ただし、運送業は深夜労働が多いため、日勤だけでなく夜勤にも対応している機種を選びましょう。
5-2. 運送業に対応したWebの集計サービス
Webの集計サービスを利用すれば、出勤時間・退勤時間・休息期間などを入力するだけで、労働時間を自動で集計できます。Web集計サービスというのは様々な業種に対応しているものが開発されており、運送業に特化したWeb集計サービスもあるので、複雑な計算作業の業務負担を大幅に軽減できます。
拘束時間や休息期間、改善基準告示の上限規制のチェックなど、ネットワーク環境さえあれば、誰でも手軽に労働時間を管理できます。Excelのシートを作成する必要がなく、手間もかかりません。
ただし、給与計算システムなどとの連携はできないので、他のシステムと連携させたい場合は勤怠管理システムの導入がおすすめです。
【関連記事】物流・運送業界における勤怠管理の課題 | 勤怠管理システム導入のメリットとは
6. 勤怠管理システムなら運送業の労働時間管理が可能
運送業・運送業での労働時間管理を効率化したい方は、勤怠管理システムの導入がおすすめです。
勤怠管理システムとは、従業員の打刻データを収集し、労働時間や休憩時間などを自動で集計するソフトウェアのことです。勤怠管理システムには様々な打刻方法がそろっているので、直行直帰が発生する運送業でも会社に戻ることなく打刻できます。
深夜労働や長時間労働が発生しやすい運送業に対応したシステムも多く、従業員の拘束時間や休息期間が労働基準法や改善基準告示に違反していないかどうか、自動でチェックしたりアラートを通知したりすることも可能です。
特に、2024年問題を見据えて勤怠管理システムの導入を検討する企業も増えているため、より詳しく勤怠管理システムについて知りたい方は、勤怠管理システム「ジンジャー勤怠」のサービス紹介ページをご覧ください。
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7. 運送業の労働時間管理は勤怠管理システムを導入しよう
運送業の労働時間管理は、エクセルで効率的におこなうことができます。直行直帰や長時間輸送の仕事が多い運送業は、従業員の労働時間管理が煩雑になりがちです。エクセルの数式やマクロを使えば、従業員の拘束時間や休息期間を自動で集計できるので、計算間違いも防ぐことができるでしょう。
しかし、日付をまたぐ場合の経過時間の計算や労働基準法や改善基準告示に違反していないか、など細かいチェックをしたい場合は、IF関数が使えるなどオフィスソフトの運用ノウハウが求められるため、作業できる人材が限られてしまいます。
勤怠管理システムなら、ソフトウェアを導入するだけで労働時間管理を自動化できるため、オフィスソフトを扱える人材も必要ありません。リアルタイムの動態管理なら MOVO Fleet がおすすめでなので、運送業の勤怠管理の効率化をしたいという企業は導入を検討してみましょう。
運送業の法改正は2024年4月から!
運送業界では、36協定の特別条項における残業の上限規制は2024年4月から適用されることに加え、上限時間も通常の職種とは異なります。罰則付きの規制であるため、上限規制の内容をしっかりと把握して対応しなくてはなりません。
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