代休の取得期限とは?振替休日との違いや今更聞けない休日管理のポイントを紹介
更新日: 2025.11.21 公開日: 2021.9.6 jinjer Blog 編集部

休日出勤した労働者に対し、代わりの休みを与えることを「代休」といいます。従業員の健康管理のためにも、代休は休日出勤日の直後に与えることが望ましいです。
しかし、業務が忙しくてなかなか代休が取れないというケースは、決して珍しくありません。このような場合、取得することができない代休はいつまで有効なのでしょうか。この記事では、代休の取得期限や振替休日との違い、管理のポイントなどを解説します。
関連記事:代休の定義や振休との違い・運用のポイントを詳しく解説
休日出勤や振休代休の付与に潜むリスク
休日・休暇の管理を誤ると、意図せず労働基準法に抵触してしまう可能性があります。
特に、従業員に休日労働をさせた場合、代休や振休はどのように取得させれば良いのか、割増賃金の計算はどのようにおこなうのかなど、休日労働に関して発生する対応は案外複雑です。
そこで当サイトでは、労働基準法にて定められている内容をもとに、振休や代休など休日を取得させる際のルールを徹底解説した資料を無料で配布しております。
◆この資料でわかること
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目次
1. 代休の取得に期限はある?

そもそも代休とは、休日に出勤した場合に後日その代わりとして取得する休日のことです。企業において労働時間を柔軟に調整し、従業員のワークライフバランスを維持するために重要な制度です。
この代休の取得期限は、企業によってルールが異なります。ここでは、法律上の代休の取得期限と、実務上の代休の取得期限について紹介します。
1-1. 労働基準法上の有効期限
労働基準法上では、代休についての具体的な規定はありません。しかし、労働基準法第115条には、「賃金その他の請求権の時効」が5年(当面の間は3年)であると記載されているため、代休の請求権も5年で時効を迎えると解釈するのが一般的でしょう。
そもそも、労働基準法では労働者に代休を取らせることを義務付けていません。休日と勤務日をあらかじめ入れ替えて休日に勤務させる「振替休日」や、一定の条件を満たす従業員に対して付与することが義務付けられている「有給休暇」とは違い、代休は必ず取得させなくてはいけないものではないのです。
したがって、例え休日出勤をしても、就業規則などに代休についての規定がない場合、会社は代休を付与する義務はありません。
一方、就業規則に代休についての規定があり、そこに自社ルールとして取得期限が記載されている場合は、そのルールが適用されることになります。
当サイトでは、本章で解説した代休と振替休日の定義の違いから、割増賃金の考え方までを解説した資料を無料で配布しております。給与の支払い不足等トラブルが起きやすい内容になるので、不安な方はこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1-2. 実務上では休日出勤の直後が望ましい
労働基準法における代休の時効は、賃金請求権の時効を類推適用すると5年(当面の間は3年)と解釈できますが、実務上でこの期限を採用している企業はほとんどありません。その理由は、休日出勤をした2年後にさかのぼって代休を請求することは、本来の目的に反するからです。
そのため、企業は自社で代休についてのルールを設定し、そのルールにのっとって制度を運用するのが一般的です。
代休の取得期限は、1ヵ月や2ヵ月というように自由に設定できますが、可能な限り休日出勤直後に設定することが望ましいでしょう。そもそも、代休は休日出勤をした従業員の体を休めることが目的の制度であるため、1週間以内の取得がもっとも適しています。
ただし、忙しい時期では休日出勤の直後に代休を取ることは難しいケースも多いため、余裕をもたせて1ヶ月後や3ヶ月後など期間を設定する企業も少なくはありません。
基本的に、代休の取得期限は企業が自由に設定できますが、従業員の健康管理を考慮のうえ、しっかりと取得できるルールを規定することが大切です。
2. 代休と振替休日の違い

振替休日は、代休と同じような意味で捉えられることがありますが、この2つには区別が必要です。その理由は、代休と振替休日とでは、申請方法や割増賃金の違いなど明確な違いがあるからです。
ここでは、人事担当者が対応を間違えやすい代休と振替休日の違いについて説明します。
2-1. 代休と振替休日の申請方法の違い
「代休」とは、休日労働がおこなわれた場合に、その代償として以後の特定の労働日を休みとするものであり、前もって休日を振り替えるものではありません。
一方で「振替休日」は、休日と勤務日をあらかじめ入れ替えることを指します。そのため、休日と勤務日を入れ替えて出勤させた従業員には、必ず入れ替えた勤務日に休みを取らせる必要があります。
つまり、代休は「休日労働がおこなわれた事後に申請するもの」であるのに対して、振替休日は「休日労働がおこなわれる前に、休日と勤務日を事前に入れ替えて申請するもの」という違いがあります。
2-2. 代休と振替休日の割増賃金の違い
代休と振替休日とでは、同じ法定休日に労働したとしても割増賃金に違いが生じます。
例えば、普段は木曜日が勤務日で日曜日が法定休日の従業員がいるとします。
振替休日によって、従業員の勤務日と休日を事前に入れ替えて従業員が日曜日に働き、木曜日を振替休日とした場合、従業員は労働時間に働いたという扱いになるため、休日労働の割増賃金は発生しません。
一方、日曜日に休日出勤をさせた後に代休で木曜日を休日とした場合、従業員は休日労働をしたことになるため、割増賃金が発生します。
割増賃金について、労働基準法32条と37条では、1日8時間、週40時間を超える労働をおこ
なったとき、25%の割増賃金を支払う義務があると定めています。また、法定休日に従業員を働かせたときは35%以上の割増賃金が発生し、所定休日の場合でも週に40時間を超える労働となった場合には25%以上の割増賃金が発生します。
このように、代休制度を利用するときはた割増賃金を正しく計算して支給しなければなりません賃金に関しては自社のルールで運用することはできないので、十分に注意しましょう。
法定休日と所定休日とは
法定休日とは、労働基準法第35条に基づき、労働者に毎週少なくとも1日、または4週間を通じて4日以上の休日を与えることを指します。この法定休日は、従業員に休息を確保するために設けられています。一方、法定外休日(所定休日)は、法定休日以外に会社が社員に与える休日を指します。
例えば、完全週休2日制の企業で日曜日を法定休日とした場合、土曜日が法定外休日(所定休日)となるので、就業規則にはどの日を法定休日にするかを明示しておきましょう。これらの違いは、特に代休の管理や割増賃金の計算においてとても重要です。
従業員の休暇を適切に管理することで、労働環境の改善と企業の法的リスクの軽減が期待できます。
2-3. 代休と振替休日は給与支払い方法の違い
給与の支払いについても、代休と振替休日では方法が異なります。同じ日に労働したとしても、振替休日を取得するか代休を取得するかによって給与の支払い方法が変わってくるので、必ず正しい処理方法を押さえておきましょう。
代休の場合は、取得日によって給与の支払い方法が異なります。
代休の取得日が同一賃金支払期間内であれば、休日出勤と代休で賃金を相殺できます。そのため給与計算の際は、休日労働割増賃金や時間外労働割増分の賃金を支払えば問題ありません。しかし、締日をまたいで代休を取得させる場合は一度休日出勤の給与を支払い、代休を取ったのちに割増賃金を除いた基礎賃金を控除する必要があります。
代休をすみやかに取ることは、給与計算の手間を減らすという意味で非常に有効なことです。そのため、できるだけ同一賃金支払期間内で代休を取得させるようにしましょう。
一方、振替休日は「あらかじめ休みと勤務日を入れ替える」制度であるため、事前に休日と入れ替える労働日を決めておかなくてはならないので代休とはなりません。つまり、給与の支払い方法は通常のままで良いというのが代休との違いになります。
例えば、「今週の日曜日に出勤する代わりに、来週の火曜日は休む」といったように決めてから勤務させるので、代休の賃金計算期間などは関係ないのです。ただし、長期間振り替えた休日を取らせない場合は、制度の要件を満たせなくなってしまうので注意しましょう。
3. 代休の期限が切れた場合は給与で清算する

代休制度というのは、労働基準法で決められているものではなく、各企業が独自に決めている規則です。そのため、企業によっては「休日出勤から2ヵ月以内」というように、取得期限を決めていることもあります。原則として、就業規則などで取得期限が決まっているのであれば、代休期限が切れた場合は取得できないため、企業側に代休の付与義務はありません。
ただし、取得期限を定めておらず、単に代休の期限切れで取得できなかった場合には、休日労働をした日の割増部分のみが追加で残業代として発生します。そのため、企業は給与清算の対応を取らなければなりません。
代休分の割増賃金を支払わないと、労働基準法第24条に違反することになるので注意してください。万が一未払いになっている場合は、会社の不手際になるので早急に謝罪し、もし当人が賃金よりも代休を希望するようであれば対応するのが望ましいでしょう。
4. 代休を取得させないと違法になる?

従業員が代休を希望していても、「繁忙期で業務量が多い」「人員が不足している」などの理由で取得を許可できないこともあるでしょう。
会社都合によって代休を取得させないのは、違法というイメージがあるかもしれません。しかし、代休に関しては労働基準法で規定がなく、「代休を与えなければならない」という法律上の義務はないため、取得させなかったとしても違法にはなりません。
ただし、休日出勤をしたのに代休を与えないことは、従業員の不満や会社への信頼を失うなどのリスクがあります。そのため、違法ではないとしても故意に取得させないようにするのは避けましょう。
5. 代休と有給休暇はどちらを優先すべき?

従業員に休日出勤をさせた場合、代休と有給休暇の取得についてどちらを優先すべきか迷ってしまうことがあるかもしれません。
まず、有給休暇は法律上従業員に保証された権利であり、従業員が希望する日時に取得する義務があります。これに対して代休は、法律上の義務ではなく会社のルールに基づくもので、取得させるかどうかは企業の裁量に委ねられます。
また、有給休暇は取得することで賃金が支払われますが、代休では賃金が発生しないため、従業員にとっては有給休暇を優先することが一般的です。特に、長時間労働を避けて従業員のモチベーション維持を図るためにも、確固たるルールが必要です。
さらに、有給休暇には取得にあたり2年の時効が設定されているのに対し、代休の時効は賃金請求権の時効から解釈すると「5年(当分の間は3年)」となっています。そのため、有給休暇の期限が切れる前に優先的に取得させることが望ましいといえるのです。
従業員の健康管理を促進する観点からも、休日出勤後に代休を勧めつつ、有給休暇の取得希望がある場合にはその希望を尊重することが求められます。企業は、これらの点を踏まえ、代休制度と有給休暇制度の運用を公平かつ明確にするルールを設定することが重要です。
6. 従業員の代休取得を管理するポイント

従業員の代休取得を正しく管理するためには、2つのポイントがあります。
- 代休の取得期限を長期化させない
- 代休ではなく振替休日で対応する
ここでは、この2つのポイントを解説していきます。
6-1. 代休の取得期限を長期化させない
企業は、従業員の未消化の代休が累積しないように気をつける必要があります。
法律上、企業には代休を取得させる義務はありません。しかし、就業規則に代休が取得可能なことを規定しているにもかかわらず、適切に代休を取得させない場合は労働基準法違反になるおそれがあります。また、従業員の健康やメンタルヘルスに悪影響を与えてしまう危険性も高まるでしょう。
従業員の休日確保や健康管理のためにも、業務量を調整したり上司が声かけをしたりするなど、代休が累積・長期化しない取り組みをすることが大切です。
6-2. 代休ではなく振替休日で対応する
代休の取得を促進したり管理の手間を減らしたりしたい場合は、代休ではなく振替休日で対応することが有効です。
振替休日とは「休日と勤務日を入れ替える制度」のことで、あらかじめ休日労働の代わりに休む日程を決定して運用する点が、代休との大きな違いです。
いつ休みをとってもいい代休とは異なり、振替休日では必ず決められた日に休みを取ることが義務付けられるため、取得できずに累積することはありません。
また、あらかじめ誰がいつ休むのかを把握しやすくなるので、企業が管理する手間も省けます。振替休日は休日手当の支払いも不要であるため、企業側はコスト面の恩恵も受けられます。
関連記事:振替休日とは?定義や代休との違い、付与のルールを分かりやすく解説
7. 代休の取得期限は短めに設定し正しく運用管理を!

代休の法律上の時効は、一般的に5年(当分の間は3年)と解釈されています。代休を取得しない場合、従業員は休日を取らずに働いていることになります。そのため、実務上では、なるべく休日出勤の直後に代休を取らせることが望ましいでしょう。取得期限を短くすることは、労働者の休日確保や健康管理につながります。また、給与計算や代休日数の管理にかかる手間を減らせるというメリットがあります。
ただし、職種や時期によっては代休が取れない可能性もあるため、臨機応変に対応できるようなルールにすることも重要です。代休に関するルールは、基本的に企業で決めて独自に運営することが可能なので、従業員にとって不利益がないようにしましょう。
ただし、法定休日や割増賃金、給与支払いなどに関しては労働基準法の規定があるので、代休の運用管理は十分に注意しましょう。
関連記事:休日と休暇の違いとは?休みの種類や勤怠管理のポイント
休日出勤や振休代休の付与に潜むリスク
休日・休暇の管理を誤ると、意図せず労働基準法に抵触してしまう可能性があります。
特に、従業員に休日労働をさせた場合、代休や振休はどのように取得させれば良いのか、割増賃金の計算はどのようにおこなうのかなど、休日労働に関して発生する対応は案外複雑です。
そこで当サイトでは、労働基準法にて定められている内容をもとに、振休や代休など休日を取得させる際のルールを徹底解説した資料を無料で配布しております。
◆この資料でわかること
- 罰則にもつながる、休日労働に関する法律(労働基準法第35・36・37条)の要点
- 割増賃金の未払いを防ぐための、休日形態に応じた正しい計算方法
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