連勤は何日まで可能?上限の12日や法律上違反になる場合も解説
一般的なオフィスワークなどでは、1週間のうち平日に5連勤する週休2日制の働き方が多く見られます。
しかし業種や業態によっては、一定のリズムで働くのが難しい場合もあるでしょう。週休2日制があることから、5連勤までは常識的な範囲だと分かります。では8連勤や9連勤など、実際はどこまで連続して労働することが認められているのでしょうか。
本記事では、具体的な連勤日数の上限について、詳しく解説していきます。
「繁忙期で勤務に入ってもらわないと困るけど、何連勤までお願いできるのだろうか?」など、連勤に関する法的なルールについて疑問のある方に向け、当サイトでは連勤させられる日数や注意点について、本記事の内容をわかりやすくまとめた資料を無料で配布しております。
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目次
1. 連勤にまつわる法律
連勤に関する法律として、労働基準法があります。労働基準法とは、日本国憲法に基づき、労働基準を定めるために制定された法律です。
以下では、労働基準法の中でも、連勤にまつわる重要な条文を3つ解説します。
1-1. 労働基準法35条1項|最低でも週1回は休日としなければならない
第三十五条 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
引用:e-Gov法令検索「労働基準法」
1つ目は、労働基準法第35条1項に規定されている、「最低でも週1回は休日としなければならない」です。
つまり日曜日が休みの場合は、翌週の土曜日までに休みがあれば「週1回以上の休み」の規定を守っていることになります。なので現実的ではありませんが、12連勤が可能になるということです。
1-2. 労働基準法35条2項|月4日の休日があれば1項は適用されない
② 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。
引用:e-Gov法令検索「労働基準法」
2つ目は、労働基準法第35条2項に規定されている、「月4回の休日があれば1項は適用されない」です。
4週間の中に4日間の連休があれば、最大で24連勤も「法律上では可能」になります。ただしあくまでも法律上の話です。ほとんどの人が連勤には嫌気がさすと思いますし、健康的にも悪影響を及ぼす可能性があるので、極力避けるようにしましょう。
関連記事:労働基準法に定められた休日とは?そのルールを分かりやすく解説
1-3. 労働基準法37条1項|1日に8時間、1週間で40時間以上の勤務は2割5分増し
第三十七条 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
引用:e-Gov法令検索「労働基準法」
3つ目は、労働基準法37条1項に規定されている、「1日に8時間、1週で40時間以上の勤務は2割5分増し」です。規定の時間数を超えて仕事をすると25%以上の割増賃金が発生します。
これまでに説明してきた「週1日以上の休み」と「4週間の間に4日間以上の休日」が守られていたとしても「1週で40時間、1日に8時間」を超えると、25%以上の割増賃金が発生します。
「人件費が増える」「給料計算のミスによる賃金未払いのリスク」など、雇用側にも大きなデメリットが発生するので可能な限り連勤はさせないべきでしょう。
関連記事:労働基準法第37条における割増賃金規定の正しい計算方法
2. 労働基準法の原則から考えると上限は12連勤
労働基準法では、基本的に「1週間に1日」は必ず休日を設けなければならないとされています。そのため例えば2週続けて6日間出勤したと考えても、必然的に最大で12日間までしか勤務できません。
またもう1つ押さえておきたいのが、休日の定義についてです。労働基準法で定める休日とは、午前0時から午後12時までの連続した24時間すべてが労働から解放されなければならないとしています。そのため例えば3時間や4時間といった短時間勤務でも、「1週間に1日」未満の休日しか設定していないのは違法です。休日を設定する際には、必ず「丸1日」と考えて決めるようにしましょう。
2-1. 12日以下の8、9、10、11連勤であれば違法にはならない?
上記で解説したとおり、12日以下の連勤であれば基本的に違法になりません。8連勤、9連勤、10連勤、11連勤ような1週間の7日間を超えるような労働でも、法律的には可能になります。違法になってしまうのは13連勤以降です。
さらに、注意しておくべき点として、法律で定められている割増賃金や休日が付与されていなければ違法になります。
2-2. パート・アルバイトの場合は何連勤まで可能なのか
パートやアルバイトに関しても正社員と同じで、労働基準法第35条にのっとり、「週に1回の休日」もしくは「4週間の中で4日間の休日」を付与しなければいけません。そのため正社員と同様に変形労働時間制の例外であれば24連勤、労働基準法の原則としては12連勤が上限の日数になります。
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3. 変形労働時間制の例外なら上限24連勤まで可能
労使協定の締結や就業規則などによる規定により、一定期間の平均が週40時間となる範囲で、所定労働時間を変動的に設定できる「変形労働時間制」という勤務方法も可能です。
変形労働時間制では1週間・1ヶ月・1年単位で、特定の期間のみ、労働基準法の原則(週40時間・1日8時間)を超えた労働ができます。つまり週によっては所定労働時間が週48時間になったり、1日10時間になったりもできるという制度です。
ただし、いずれにしても、4週間を通じて4日以上の休日を設けなければならない規定があります。ここから考えると、最後の1週間に4日間の休日を設けたとして、最大で連続して働けるのは24日間です。
なお1週間や1ヶ月単位の変形労働時間制では特に連勤の上限はありませんが、1年単位の場合では、対象期間における連勤は原則6日間までとされています。また所定労働時間が多くなる特定期間でも、労働基準法と同様に、最低でも1週間に1日の休日が取れる日数が上限です。そのため1年単位の変形労働時間制では、12日間が連勤の上限になります。
下記の記事では1年単位の変形労働時間制に関する概要はもちろん、1か月単位の変形労働時間制との違いや残業の計算方法など網羅的に解説しておりますので、変形労働時間制に正しく理解しておきたい方はぜひご覧ください。
関連記事:1年単位の変形労働時間制とは?休日や残業の計算方法もわかりやすく解説
3-1. 変形労働時間制で連勤にする場合の注意点
変形労働時間制でも、当然ながら無制限で所定労働時間や連勤を設定できるわけではありません。あくまで平均して、週40時間を超えない範囲で設ける必要があります。
例えば各変形労働時間制の上限時間内に収まった合計数になったとしても、最終的に平均値が週40時間内になっていなければ違法です。連勤を設定する場合には、「平均週40時間」のルールについても十分に留意することが求められます。
また、変形労働時間制では、特に繁忙期における業務の波に対応するために、労働者の健康を守るための措置も重要です。過度な連勤が続くことは、労働者の心身に悪影響を及ぼしかねません。
したがって、企業は従業員に対して適切な休暇を提供し、労働時間や休日の管理を徹底することで、労働基準法に抵触しないように注意する必要があります。また、年次有給休暇の取得促進や労働環境の見直しも、健全な職場づくりに寄与すると言えるでしょう。
4. 連勤の上限日数を超えた場合に考えられるリスク
ここからは実際に連勤の上限となる労働日数を超えてしまった場合のリスクについて詳しく解説していきます。
4-1. 罰金や懲役などの法律違反
大前提として、連勤の上限日数を超えている時点で、労働基準法上は違反です。ちなみに休日に関する労働基準法第35条では、違法によって6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。さらに労働基準法違反が発覚すれば、労働基準監督署による調査が入って事件化される上に、悪質と認められるケースでは各労働局のサイトにて社名が公表される可能性も。
単純に刑罰に処せられるだけでなく、自社の名前に大きな傷をつけることになるのです。またこうした法的な事態だけでなく、限度を超えた連勤は従業員にも悪い影響が出ます。また労働基準法以外にも、具体的には、次のような例で法律違反するケースが考えられます。
労働契約法違反になるケース
労働契約法に違反するケースは、主に使用者が労働者の安全を確保するための配慮を怠る場合に該当します。
具体的には、長時間の連勤を強いることで、労働者が健康を害するリスクを高める状況が考えられます。このような過度な連勤は、労働契約法第五条に基づく「安全配慮義務」を侵害するため、使用者は法的責任を問われることがあります。
労働安全衛生法違反になるケース
労働安全衛生法に違反するケースとは、職場の安全や健康を確保するための基本的な基準を逸脱する状況を指します。
具体的には、労働者に対して過度な連勤を強要し、健康が害される結果を招く場合が該当します。このような行為は、使用者に対して厳しい法的責任が課せられることがあります。
4-2. 従業員の健全な心身状態をむしばむ
連勤で常に仕事をしている状態が続くことは、身体的にも精神的にも大きなストレスになります。また、時間外労働や休日出勤に関しても労使協定(36協定)で締結したルールに基づいて管理される必要があります。36協定に反して適度な休暇が取れていないと、当然ながらどんどん負担が蓄積され、解消できないまま働くことになってしまうでしょう。
疲れが残ったままでは本来の生産性は発揮できませんし、場合によっては休んでも休みきれずに、各従業員の私生活にも影響を及ぼす可能性もあります。あまりに連勤が続くと、単純にただ負担になるだけでなく、結果的にうつ病を発症するなどのメンタルヘルスをむしばむ状況も考えられます。
4-3. 従業員のエンゲージメントを下げる
連勤ばかりの職場では、どんどん業務に対するモチベーションは下がってしまいます。どんなに好きな仕事をしていても、適度な休みがなければやりたくなくなってしまうのは当然です。また従業員から労働環境が整備されない職場だと思われてしまえば、それだけで会社に対する信頼もなくなっていきます。
このように従業員の職場環境への満足度が確保できなければ、人材がなかなか定着しないなどの問題が発生する可能性も出てくるでしょう。限度を超えた連勤は、従業員の離職を進める原因にもなり得ると考えられます。
4-4. 労災が適用される可能性がある
仮に連勤によって各従業員に過度の疲労が溜まっていた場合には、状況によっては労災が認められる可能性もあります。多大な金額の慰謝料が発生すると同時に、もし何かしらの事故が発生してしまったら損害賠償責任も負わなければなりません。
さらに作業上の怪我などによって一定期間働けなくなってしまえば、労働力を失うことにもなります。連勤からくる心身の疲れやストレスが、最終的には大きな問題に発展してしまうことも考えられるでしょう。
5. 連勤の上限を超えないための対策
では過度な連勤にならないようにするためには、どのような取り組みをすべきなのか、次から具体的な例をご紹介します。
5-1. 適切な人員をそろえておく
従業員1人あたりの労働量が増えてしまう原因は、やはり人員不足が原因になっているケースが少なくありません。例え適切な運用をしていたとしても、結果的に割増賃金分などで多大なコストがかかっており、新たに採用したほうが人件費の削減になるなどの場合も考えられます。
誰か1人でも連勤が続いている状況があれば、人員体制や業務フローについて、1度見直してしてみると良いかもしれません。
5-2. 徹底した労務管理ができる体制を確立する
やはり連勤を防ぐためには、そもそも会社としての労務管理を徹底しておく必要があります。きちんと適切な労働環境が整えられる体制を確立しておくことで、勤務状況に偏りが出ていたり、過度な働き方をしていたりとった事態も防げるでしょう。
例えば労務や勤怠管理のシステムを導入するのも1つの手です。システムによって、各従業員の労働環境をリアルタイムで把握することは、適切な対処を取ることにつながります。
5-3. 休暇取得の奨励日を設定する
休暇取得の奨励日は、従業員が計画的に休みを取りやすくするための重要な施策です。定期的に休養を促すことで、労働者の健康を守り、業務効率を維持することができます。特に、連勤が続く職場環境では、有給休暇の取得を奨励する日を設定することが効果的です。
これにより、従業員はリフレッシュしやすくなり、職場のモチベーションアップにも寄与します。
5-4. 勤務間インターバルの導入
労働時間等設定改善法に基づき、平成31年4月1日より「勤務間インターバル制度」が施行されました。遵守しなくても罰金が発生することがない努力義務とはいえ、労働者の健康を考えると、必要性は高いといえるでしょう。
勤務間インターバルの導入は、業務の効率化や残業時間の縮減につながります。また、この制度の導入で厚生労働省の同友事例ページに取り上げられるなどすれば、会社のイメージアップを図ることが可能です。さらに、導入する際に政府に申請をすれば、目標時間の達成状況に応じて助成金を支給してもらえるため、比較的取り入れやすい制度といえるでしょう。※2021年度の交付申請は終了しています
関連記事:勤務間インターバル制度とは?導入方法や助成金について解説
6. 十分な管理体制で過度な連勤にならない職場へ
労働基準法の法定休日で考えれば、連勤の上限は12日です。また1ヶ月の変形労働時間制であれば最大24日の連勤ができなくもありませんが、平均週40時間のうちに収まるよう所定労働時間を設定する必要があります。ただしいずれにしても、過度な連勤はさまざまなリスクが考えられるので注意が必要です。
法律違反になるだけでなく、従業員にも悪影響が出てしまいます。連勤による問題発生を防ぐためにも、まずは十分に労務管理ができる体制を作ることがベストでしょう。
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