変形労働時間制の労使協定の内容を期間別に詳しく解説
更新日: 2025.12.25 公開日: 2021.9.1 jinjer Blog 編集部

繁忙期と閑散期がある事業者において、繁忙期に長い労働時間を設定しつつ、閑散期に短い労働時間を設定することが可能になるのが、変形労働時間制です。変形労働時間制を導入すれば、指定した期間内の労働時間を柔軟に調整できるようになるため、従業員の総労働時間の短縮が可能です。
変形労働時間制は非常に便利な制度ですが、導入時は労使協定を締結して所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。この記事では、変形労働時間制における労使協定を中心に解説します。
目次
変形労働時間制は、通常の労働形態と異なる部分が多く、労働時間・残業の考え方やシフト管理の方法など、複雑で理解が難しいとお悩みではありませんか?
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1. 変形労働時間制の導入に必要な労使協定とは

変形労働時間制の導入には「労使協定」が必要です。まずは、労使協定に関する基本知識を身につけておきましょう。
1-1. 労使協定とは
労使協定とは、労働者と会社の間で取り交わされる契約を書面にしたものです。労使協定の書式やひな形はインターネットからダウンロード可能です。
労使協定にはさまざまな種類があります。今回紹介する「変形労働時間制に関する労使協定」だけではなく、「時間外・休日労働に関する労使協定(36協定)」や「事業場外労働のみなし労働時間制に関する労使協定」といったものが存在しています。
なお、労使協定は届け出が必要なものと届け出が不要なものの2種類があります。変形労働時間制に関する協定や36協定は届け出が必要ですが、「フレックスタイム制の労使協定(清算期間が1ヵ月の場合)」など、届出が不要なものもあります。
1-2. 変形労働時間制は労使協定の違反に注意
変形労働時間制は、労使協定の届出をしないまま(労使協定を締結したのみの状態)運用をスタートすることはできません。届出をしなかった場合は、30万円以下の罰金が課される可能性があるため注意しましょう。また、1年単位、1ヵ月単位、1週間単位のいずれであっても、労使協定条項の要件を満たさない労働があった場合、労働基準法32条違反として罰則を受けることになります。
変形労働時間制は複雑な制度で、労使協定の締結や届出には専門的な知識が必要です。十分な知識がないまま運用すると、罰則を受けて会社の信用を落としてしまうリスクもあるため、しっかりと調べて導入を検討しましょう。
2. 1年単位の変形労働時間制の労使協定

ここからは、変形労働時間制に関する労使協定に定める項目について詳しく紹介します。
まずは、厚生労働省の「1年単位の変動労働時間制導入の手引 」をふまえ、1年単位の変形労働時間制の労使協定について詳しく見ていきましょう。
関連記事:1年単位の変形労働時間制とは?休日や残業の計算方法もわかりやすく解説
2-1. 対象となる労働者の範囲
1年単位の変形労働時間制の労使協定を締結する場合、まずは変形労働時間制のもとで働いてもらう労働者の範囲と人数を明確にします。ここでは、常時使用する労働者の人数と対象労働者の人数が異なっていても問題ありません。
なお、1年単位の変形労働時間制は勤務期間が対象期間に満たない中途採用者や退職者に対しても適用できます。この場合、対象期間を平均して週40時間を超える労働時間があれば、その超えた時間に対し割増賃金を支払うなど、労働時間の清算方法をしっかりと明記する必要があります。
また、年少者(満18歳に満たない者)は原則として1年単位の変形労働時間制で労働させることができません(1週48時間、1日8時間以内であれば可能)。加えて、妊産婦からの請求があった場合も、変形労働時間制だとしても1週40時間、1日8時間を超えて労働させることはできません。
2-2. 変形の対象となる期間
次に、変形労働時間制の対象となる期間を定めます。変形労働時間制の対象期間中は、その期間を平均して1週間あたりの労働時間が40時間を超えなければ問題ありません。
1年単位の変動労働時間制を導入するときは、1ヵ月を超えて1年以内の期間内であれば自由に対象期間を設定できます。具体的には、3ヵ月や6ヵ月、8ヶ月といった任意の期間を設定可能です。
変形労働時間制を適用させる期間を幅広く決められることから、偏ったシフト編成になることがあります。それを防止するために、労働時間の限度として1日あたり10時間、1週間で52時間、連続勤務の限度は6日までという決まりがあります。
2-3. 変形期間の起算日
起算日とは、労使協定で定める変形労働時間制の始まりとなる日を指します。起算日を定める法律はないため、企業は自由に設定できます。繁忙期と閑散期を考えて設定しましょう。
起算日から変形労働時間制の日数や労働時間などが計算されるため、慎重に設定しなければなりません。
労使協定では具体的な起算日を決定し、協定届にも記載します。「対象期間の起算日は令和◯年◯月◯日とする」など、具体的に定める必要があります。
2-4. 特定期間
特定期間とは、対象期間のうちでとくに業務が繁忙になる期間のことです。
通常は、労働基準法施行規則第12条の4第4項において、変形労働時間制を導入していても連続して労働させる日数の限度は原則6日とされています。しかし、労使協定に特定期間を定めておくと、期間中であれば1週間に1日の休日が確保できる日数(最長12日)とすることができます。
ただし、これはあくまでも例外的扱いであり、「対象期間の大半を特定期間」とするといったことはできません。また、一度協定した特定期間を途中で変更することもできないため、慎重に規定する必要があります。
2-5. 変形期間中の各日および各週の労働時間
変形労働時間制を導入するときは、対象期間における1週間の平均労働時間が40時間を超えないようにする必要があります。
労働日および労働日ごとの労働時間の定め方は2種類あります。
- 対象期間中すべてを定める方法
- 対象期間を1ヶ月以上の期間ごとに区分し、各期間が始まるまでにその労働日と労働日ごとの労働時間を定める方法
の場合には対象期間が始まるまでに労使協定において下記事項を定めます。
- 最初の期間における労働日および労働日ごとの労働時間
- 最初の期間以外の各期間における労働日数および総労働時間
計算方法は、「40時間×対象期間の暦日数÷7=対象期間における労働時間の総枠」です。あらかじめ決定した労働日数や労働時間は、やむを得ない場合以外はあとから変更することができません。
なお、対象期間における労働日数の限度は、対象期間が3ヵ月を超える場合「280日×対象期間中の暦日数÷365日(1年間の場合は280日)」となります。労働時間は1日10時間、1週間52時間が限度です。ただし、対象期間が3ヵ月を超える場合は、労働時間が48時間を超える週が連続するのは3週まで、48時間を超える週の回数は3ヵ月ごとに3回以内とするなど、追加で制限があります。こういった注意点も踏まえ、労働日や労働時間のスケジュールを組むことが大切です。
2-6. 労使協定の有効期限
最後に、労使協定の有効期限を決めておきましょう。実際に運用して、この制度を継続したほうがよいのか、もしくは自社に適さないのかについて判断できるよう、初めはあまり長すぎない期限を定めておくことをおすすめします。
1年単位の変形労働時間制を適切に運用するには、対象期間とおなじ1年程度とするのが望ましいとされています。1年ごとに見直しをおこない、再締結と届出をおこなうことで制度を適切に運用できます。
関連記事:変形労働時間制とは?1ヵ月・1年単位の違いや導入方法をわかりやすく解説
3. 1ヵ月単位の変形労働時間制の労使協定

次に、1ヵ月単位の変形労働時間制の労使協定について見ていきましょう。前項と重複する部分も多いですが、厚生労働省の資料をもとに必要な項目について解説します。
関連記事:1ヶ月単位の変形労働時間制とは?採用事例や4つの導入ステップを紹介
3-1. 対象となる労働者の範囲
1ヵ月単位の変形労働時間制の場合も、変形労働時間制のもとで働いてもらう労働者の範囲を明確にする必要があります。
1年単位の変形労働時間制とは異なり、法令上は対象者についての制限はありません。全従業員を対象にすることや、特定の部署に限定するなど、企業側が自由に決められます。
しかし、従業員の混乱や誤解を防ぐために、対象となる労働者の範囲はしっかり規定しておきましょう。
3-2. 対象期間および起算日
対象期間および起算日は、1年単位の変形労働時間制と同様です。
対象期間と起算日は労働時間を計算する際に非常に重要です。従業員側も把握しやすいように「毎月1日を起算日とし、1ヵ月を平均して1週間あたり40時間以内とする」といったように、具体的に定めましょう。
なお、1ヵ月単位の変形労働時間制の場合は、対象期間は必ず1ヶ月以内にしなくてはなりません。
3-3. 変形期間中の各日および各週の労働時間
1ヵ月単位の変形労働時間制の場合は、対象期間すべての労働日ごとの労働時間をあらかじめ具体的に決めておく必要があります。シフト表を作成したり、会社のカレンダーなどで分かりやすく労働時間を明示しておきましょう。
作成したシフトは、変形労働時間制が始まる前(起算日よりも前)に通知する必要があります。また、通知後にシフトを変えることは原則的にできないため、注意が必要です。
変形労働時間制の対象期間中は、1日の労働時間が8時間を超えても問題ありません。、しかし、期間中を平均して1週間あたりの平均労働時間が40時間を超えることはできません。
3-4. 労使協定の有効期限
1ヵ月単位の変形労働時間制に関する労使協定の有効期限は、対象期間よりも長い期間にする必要があります。この場合、適切に運用するためには3年以内程度の有効期限にしておくことが好ましいです。
1ヵ月単位の変形労働時間制では、シフトをあらかじめ決めて通知するという点に注意が必要です。また、シフトを変更した場合で1日8時間、1週間で40時間を超える労働時間になった場合は割増賃金が発生するため、この点も十分に認識しておく必要があります。
4. 1週間単位の変形労働時間制の労使協定

最後に、1週間単位の変形労働時間制の労使協定について見ていきましょう。この場合の労使協定の内容は非常にシンプルで、以下の2点を定めておけば問題ありません。
- 1週間の労働時間が40時間以下となること
- 1日の労働時間の限度を10時間とすること
1年単位や1ヵ月単位の変形労働時間制における協定内容と比べると、定めるものは少ないです。しかし、この場合でも労使協定の締結に加えて届け出も必要です。また、1ヵ月単位の変形労働時間制と同様に、シフトを決めて先に通知しておかなくてはなりません。
なお、1週間単位の変形労働時間制を導入できるのは、常時使用する労働者が30人未満で、小売業・旅館・料理店または飲食店の事業者のみです。また、1週間の各日の労働時間を、該当する1週間が開始する前までに書面で周知する必要があります。
5. 変形労働時間制の導入による経営への影響

変形労働時間制の導入は、企業にとって大きな経済的メリットをもたらす可能性があります。しかし、同時に課題となる部分も存在します。
メリットとしてまず取り上げたいのは、繁忙期と閑散期で労働時間を調整できる点です。業績の波が大きい事業者にとっては、忙しさに応じて労働時間を調整することで、人件費の最適化が期待できます。
また、労働時間の柔軟な調整は、労働者の働きやすさを向上させることも可能です。従業員のストレスを軽減し、ワークライフバランスを改善することで、結果的に生産性の向上につながると考えられます。
一方で労使協定と労働基準法をしっかりと守った制度運用が課題として挙げられます。ルールを守った運用をするために、業務負担も増えるでしょう。
万が一労使協定が守られなかった場合は、労働基準法違反となり、罰則が科せられる可能性があります。この罰則は、企業の罰金や担当者の刑事罰として具体化することがあります。そのため、企業は労使協定を適切に遵守することが重要です。
6. 導入する変形労働時間制に応じた労使協定を定めて正しく運用しよう

変形労働時間制を導入するときは、労使協定で対象期間や労働時間などについてしっかりと定めておかなくてはいけません。労使協定を締結しない場合や、内容を遵守しない場合は罰則が課されてしまうため、十分に注意しましょう。
導入する変形労働時間制の種類によって、労使協定で定める内容は異なります。しっかりと導入する制度に必要な項目を理解し、適切な労使協定を締結しましょう。
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