残業を代休で相殺できる?注意点や残業代の取り扱いを解説
更新日: 2025.11.21 公開日: 2020.6.24 jinjer Blog 編集部

月60時間を超える法定時間外労働をおこなった従業員の健康を確保するために、代替休暇の付与が可能です。従業員の時間外労働に代休を付与して対応するためには、2つの条件を満たさなければなりません。企業と従業員の間に合意があり就業規則で規定すること、代休扱いにした残業にも時間外残業として25%の割増賃金を支払うことです。
割増賃金の支払いを怠ると、労働基準法違反となるため、給料計算の際には注意が必要です。この記事では、残業を代休扱いできる条件や、代休扱いにできないケースをご紹介します。
関連記事:残業時間の定義とは?正しい知識で思わぬトラブルを回避!
代休を与えた分、残業代を減らすことは違法な取扱いです。ただし、残業時間分の代休を付与することは可能です。
「なぜ代休で残業代を相殺できないのか確認したい」「どうすれば残業時間分の代休を付与できるか知りたい」という方に向け、本記事の内容をわかりやすくまとめた資料を無料で配布しておりますので、こちらからダウンロードしてご確認ください。
目次
1. 残業を代休で相殺することは可能?


1-1. 残業は代休で相殺できる
残業を代休で相殺することは可能です。ただし、「残業代」を相殺することはできません。
代休は一般的に休日出勤した際に、別の日に休日が取得できることを指します。例えば、従業員の残業時間が1日の所定労働時間に達した場合には1日分の代休を付与するといった方法があります。このような仕組みを残業代休と呼びます。
残業代休を取得する場合は、労働基準法に注意しなければなりません。また、残業を代休で相殺したとしても時間外労働分の割増賃金は支払う必要があるため、人件費の削減を目的とする場合は残業代休は適さないでしょう。
なお、企業によっては残業代休とは異なる名称で呼んでいることもあります。
1-2. 代休と振替休日の違い
代休と似た休暇の仕組みとして振替休日が挙げられます。
代休は休日出勤をした日のあとに、出勤した日の代わりに与える休日です。休日出勤をしているため、別の日に休みを取らせたとしても休日出勤に対する割増賃金が発生します。
一方、振替休日はあらかじめ休日としていた日を勤務日にして、代わりに他の勤務日を休日とする仕組みです。振替休日の場合、いつの休日を勤務日に振り替えるかを前日までに決めて従業員に通知する必要があります。休日を入れ替えているため、この場合は休日出勤には該当せず、割増賃金も発生しません。
振替休日と代休にはこうした違いがあるため、残業した日や時間を代休で相殺することはできますが、割増賃金は代休でも発生します。残業代の相殺はできないことを覚えておきましょう。
1-3. 残業を代休で相殺できないケース
残業した日や時間を代休で相殺できるという説明をしましたが、代休のタイミングによってはできないことがあります。
労働基準法第24条により、残業代を含む賃金の全額は1ヵ月ごとに1回以上、期日を定めて支払う義務があります。したがって、代休扱いにする時間外労働と代休付与の日は同じ月(同一給与計算期間)にしなければなりません。
4月の給与計算期間の時間外労働を5月の給与計算期間の代休扱いにするといった、「月またぎ」で代休対応する場合も賃金は残業した月に支払わなければなりません。代休が月をまたぐからと給与計算から抜いてしまうと労働基準法違反になるため注意しましょう。
2. 残業を代休で相殺する場合は労働基準法に注意


8時間以上の残業が発生したときに1日分の代休を付与して対応する行為自体は違法ではありません。しかし、36協定を結んだうえで残業した時間分に対しては、割増賃金を支払わなければなりません。割増賃金を支払わなかった場合は、労働基準法違反になります。
代休扱いにしたとしても、その分の労働時間が「時間外労働」でなくなるわけではないからです。残業を代休扱いにするという対応は、時間外労働に対する賃金を代休付与日にまとめて支払うことであり、給与計算上では通常の残業代を支払うことと変わりありません。
また、時間外残業のなかに22時以降の深夜労働が含まれる場合は注意が必要です。その分の残業には時間外手当25%以上のほか、深夜手当として25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
割増分の残業代を支払わなければ、労働基準法第37条(時間外、休日および深夜の割増賃金)違反となり、労働基準法第119条により、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課されます。
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関連記事:代休の定義や振休との違い・運用のポイントを詳しく解説
3. 残業を代休で相殺できる2つの条件


残業時間に対して代休で対応するためには、労働基準法第37条により、次の2つの条件を満たす必要があります。それぞれの条件を詳しく見ていきましょう。
3-1. 代休・振替休日について就業規則で定めている
残業時間を代休扱いとする場合には、基本的に従業員との間で合意が必要です。就業規則等の代休や時間外労働の項目規定に、具体的な要件を記載しておく必要があります。
ちなみに、企業と従業員の間に「代休扱いになった分の残業代には割増手当を支払わない」といった申し合わせがあった場合でも、労基法第37条によりその合意は無効となります。就業規則や社内規定よりも労働基準法が優先されるためです。
3-2. 時間外労働として25%の割増賃金を支払う
上述のとおり、残業を代休扱いにしたとしても、時間外労働の割増賃金まで相殺することはできません。例えば、1ヵ月の残業時間の上限を30時間とし、上限を超えた残業は8時間ごとに1日分の代休で対応する場合を考えてみましょう。
30時間の残業はもちろん、代休扱いになった労働時間も「時間外労働」として、1時間あたりの賃金に対し、25%の割増賃金を支払う必要があります。
例)月給:32万4,000円(1時間あたりの賃金2,000円)
- 残業時間:46時間
- 代休付与日数:2日
46時間分の残業代は、
- 2,000円×1.25×46時間=115,000円
です。この残業時間のうち、残業時間の上限30時間の残業代は、
- 2,000円×1.25×30時間=75,000円
になります。残り16時間は2日間の代休扱いとして、
- 2,000円×16時間(2日分)=32,000円
相殺されますが、実際は「時間外労働」として25%の割増率を換算しなければならないため、
- 2,000円×1.25×16時間(2日分)=40,000円
から差し引いた割増分の残業代、
- 40,000円−32,000円=8,000円
が支給されていないことになってしまいます。このことからもわかるように、代休を与える代わりに残業代を出さないことは従業員にとって不利益になります。さらに、本来支払わなければならない賃金を支払っていないことになるため、法律違反となるのです。
残業に対して代休を付与すること自体に問題はありませんが、残業した時間分の割増賃金の支払いが必要であることを覚えておきましょう。
残業代や代休・休日出勤・振替休日などの関係は非常に複雑な部分があります。
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4. 残業を代休と相殺しても残業代は減らない


残業に対する割増賃金は人件費の増大につながるため、削減を目指す企業は多いです。しかし、代休では残業の割増賃金を削減することはできません。
改めて代休と残業代の関係を整理し、残業代削減のためにできることを考えてみましょう。
4-1. 残業を代休と相殺しても割増賃金は残る
ここまででも解説してきたように、法定時間外労働を代休の付与で対応すること自体は違法ではありませんが、時間外労働の割増賃金を相殺してできるわけではありません。
時間外労働手当として25%の割増賃金を支払わない場合は、労働基準法違反となります。代休とは、時間外労働や休日労働がおこなわれた際、従業員の健康の維持や回復、自由時間の確保を図るという趣旨で取り組まれるものです。
そういった観点からも、残業の代休扱いによる残業代削減や人件費の抑制などは原則に反することを覚えておきましょう。
4-1. 残業時間を削減するためにできること
残業代を削減したい場合は、残業時間そのものを削減しなければなりません。残業時間を減らすためには、ノー残業デーの導入や、事前申請制度にするなど、残業に関連する新しい制度を導入することが効果的です。
ノー残業デーを導入する
残業の削減にはノー残業デーの導入がおすすめです。ノー残業デーは企業が従業員に対して、定時に帰宅することを促す施策です。
ノー残業デーを成功させるには、管理者や上司などの積極的な参加がポイントになります。管理者や上司などがノー残業デーで定時に帰宅することで、その他の従業員も帰宅しやすくなるでしょう。
残業を事前申請にする
残業を事前申請にすることで、従業員の無駄な残業を削減可能です。
残業の事前申請は、従業員が残業する旨を会社に伝えて承認を待つ仕組みです。会社の承認が得られた場合にのみ残業が可能なため、不要な残業の是正につながります。また、誰がどのくらい残業しているかも把握しやすくなります。
勤怠管理システムを導入する
勤怠管理システムは残業時間を自動で集計可能です。そのため、従業員の残業時間をリアルタイムでスムーズに把握できます。例えば、事前に従業員の残業時間を把握できていれば、過度な残業が発生しないように調整ができます。
5. 残業を代休で相殺する場合は割増賃金に注意しよう


残業時間が1日の所定労働時間に達した場合、代休を与えることが可能です。しかし、残業による代休を付与した場合であっても、残業時間分の割増賃金の支払いは必要です。
残業の代休を付与することは残業時間の削減にはつながりません。そのため、ノー残業デーの導入や勤怠管理システムの導入などを検討してみましょう。
代休を与えた分、残業代を減らすことは違法な取扱いです。ただし、残業時間分の代休を付与することは可能です。
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