休日手当の計算方法とは?休日出勤した場合の割増賃金や間違えやすいポイントを解説
更新日: 2025.9.29 公開日: 2021.11.15 jinjer Blog 編集部

休日手当は、週に1回・4週に4回で必ず取得させなければならない「法定休日」に出勤させた場合に、通常勤務から割増した賃金を支払うものです。この休日手当の計算にはさまざまな法律上のルールがあり、正しく理解していないと、場合によっては違法になったり余分なコストが発生したりする可能性があります。
そこで今回はきちんと的確な賃金計算ができるように、しっかりと押さえておきたいポイントについてご紹介していきます。
▼そもそも休日手当とは?という方はこちらをお先にお読みください。
休日手当とは?法的な取り決めと正しい計算方法を徹底解説
目次
人事担当者の皆さまは、労働基準法における休日・休暇のルールを詳細に理解していますか?
従業員に休日労働をさせた場合、代休や振休はどのように取得させれば良いのか、割増賃金の計算はどのようにおこなうのかなど、休日労働に関して発生する対応は案外複雑です。
そこで当サイトでは、労働基準法にて定められている内容をもとに、振休や代休など休日を取得させる際のルールを徹底解説した資料を無料で配布しております。
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1. そもそも休日手当とは
休日手当とは、従業員が法定休日に出勤した際に、その働きに対して支払われる割増賃金のことを指しますが、法定休日や所定休日の取り扱いが異なるため、正しく理解する必要があります。ここでは休日手当ついて、まずは概要を説明します。
1-1. 休日出勤時に割増賃金を支払う手当
休日出勤時に割増賃金を支払う手当を休日手当と呼びます。この手当の目的は、休日出勤を奨励することなく、従業員が適切な休息を取れるようにするためのものです。パートやバイト、正社員など雇用形態に関わらず、大前提として休日手当は全員に支払われるものです。
これは、従業員が法定休日に出勤する際に会社から支払われる賃金の一部であり、労働基準法に基づき、その金額は通常の賃金に対して35%以上の割増率が適用されます。この制度は、従業員の適切な休息を保障し、休日出勤を抑制する目的も兼ねています。
1-2. 休日手当の割増率は3割5分以上
労働基準法に基づき、法定休日に働かせた場合は、通常の賃金に35%を上乗せすることが求められます。
なお休日手当は時間単位で計算するため、仮に対象の従業員が月給制だったとすれば、年間を通じた平均の1時間あたりの賃金をもとに算出するのが基本です。日給制であれば、日給額を1日の所定労働時間数で割って求めます。当然ながら時給制なら、そのまま1.35倍以上にする計算で問題ありません。
ここで勘違いしてはいけないのが、休日手当の対象となるのは法定休日に出勤をした場合のみになることです。そのため、所定休日は休日手当の対象にはなりません。また、振替休日に関しても、法定休日と通常の出勤日を事前に入れ替える制度であるため、休日手当の対象外となります。
1-3. 法定休日と所定休日の違い
法定休日と所定休日は、休日出勤時の割増賃金を理解する上で重要な概念です。
法定休日とは、労働基準法によって雇用主が従業員に与えなければならない休日であり、通常、週に1日または4週間に4日以上の設定が求められます。
一方、所定休日は、企業が独自に定めた休日であり、法定休日に含まれません。
従業員はこれらの休日に出勤した場合、法定休日では35%以上の割増賃金が支給されるのに対し、所定休日の場合は労働時間の上限を超えた際にだけ25%以上の割増賃金が適用されます。このため、両者の違いをしっかり理解することが休日手当の計算において不可欠です。
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2. 休日手当の計算方法

それでは実際に休日手当を計算するために、必要なステップについても見ていきましょう。以下からは、対象の従業員が月給制だった場合を想定して解説します。
2-1. まずは1時間あたりの基礎賃金を算出
ではここからは、具体的な数字の例を挙げて説明していきます。例えば対象の従業員について、月給24万6,000円の給与を毎月支払っている場合、はじめに1年間の総所定労働時間に対する、時間単位の基礎賃金を算出する計算が必要です。
仮に1日の実働時間が8時間、年間の所定休日数が119日なら、次のような計算で1時間あたりの基礎賃金が出せます。
<計算例>
365日(年間の暦日)-119日(年間の所定休日数)=246日(年間の労働日数)
246日(年間の労働日数)×8時間(1日の実働時間)÷12ヶ月=164時間(1ヶ月の平均労働時間)
24万6,000円(月給)÷164時間(1ヶ月の平均労働時間)=1,500円
対象となる従業員の時間単位の基礎賃金は「1,500円」と算出できました。
ちなみに日給制に関しては、日給額÷1日の平均労働時間によって時給換算します。日給1万2千円、1日の実働時間8時間であれば、時間単位の基礎賃金は1,500円です。
関連記事:割増賃金の基礎となる賃金とは?計算方法など基本を解説
各従業員の私的な事情に関わる手当は含まずに計算する
平均賃金を算出する際に注意したいのが、どの範囲まで月給に該当するかという点です。
割増賃金の計算では、例えば家族手当や通勤手当といった、各従業員の個人的な事情によって金額が変動するものは含みません。ただし職能手当などの一律支給の手当は、月給に含めて考えます。
2-2. 実際に働いた時間数を当てはめて計算
次は先ほど算出した「1,500円」をもとに、実際に法定休日に勤務した分の賃金を計算します。もし通常の実働時間どおりに働いたのであれば、上記の例でいうと8時間を掛けたものが休日手当です。具体的には、以下のように算出できます。
<計算例>
1,500円(1時間あたりの平均賃金)×1.35(割増率)×8時間(実働時間)=16,200円
上記の例の場合、「16,200円」がその日の休日手当です。
小数点以下の端数処理のやり方
休日手当のような割増賃金を計算する場合には、小数点以下の割り切れない数字になるケースも多くあります。
こうしたケースでは、いずれも50銭未満は切り捨て・50銭以上1円未満は切り上げで考えるのが基本です。例えば計算結果が「○○.49…」となったらそのまま切り捨て、「○○.50…」となったらプラス1円になります。
端数処理が適切におこなわれていないと、労働基準監督署によるチェックがあった際に問題点として指摘される可能性もあります。企業としては、こうしたリスクを避けるためにも、正確かつ透明な賃金計算を心がけることが必要です。
3. 休日出勤した場合の割増賃金の種類
休日出勤した場合、従業員に支払われる割増賃金には複数の種類があります。
具体的には、法定休日に出勤した場合や所定休日に出勤した場合では、適用される割増率や計算方法が異なります。また、法定休日に深夜労働をおこなった場合や60時間超過の残業が発生した際にも、それぞれ特有の割増賃金が規定されています。これらの違いを理解しておくことが、適切な給与計算をおこなう上で重要ですので詳しくみていきましょう。
3-1. 法定休日の割増賃金
冒頭から説明してきた通り、従業員が法律で定められた休日、つまり法定休日に働いた場合、企業は通常の賃金の35%以上の割増率を適用して支払う義務があります。法定休日の割増賃金は、労働基準法に基づいて設定されている重要な給与の一部です。
この制度は、休日に働かせることによる労働者の権利を保護し、適切な休息を確保するために設けられています。従って、法定休日に勤務した際の割増賃金は、従業員にとっても企業にとっても非常に重要な要素となります。
3-2. 所定休日の割増賃金
所定休日に出勤した場合の割増賃金は、法定休日と異なり通常の休日手当は発生しません。しかし、所定休日に働く際、労働時間の上限(1日8時間・週40時間)を超えた場合には、時間外労働(残業)として25%以上の割増賃金を支払う必要があります。
例えば、週休2日の体制で1日の所定労働時間が8時間の場合、所定休日に働いた時間は全て割増率が25%以上となります。このため、所定休日の労働に対しては「1時間当たりの基礎賃金×所定休日の労働時間×1.25以上」という計算式で割増賃金を算出することが求められます。
3-3. 法定休日に深夜労働した際の割増賃金
仮に法定休日に出勤して、深夜勤務になった場合も、計算の考え方が変わってくるため注意が必要です。
深夜労働については、いかなる場合でも割増賃金を支払わなければなりません。もし法定休日に22時~5時の勤務が発生した場合には、休日手当の割増比率に、深夜労働分も足して計算する必要があります。
そのため法定休日における深夜労働では、深夜労働の割増比率(×1.25~)をプラスするので、「×1.6~」で計算します。このように、法定休日における深夜労働については、特に計算を注意深くおこなう必要があります。
また、企業としては、労働者に対する正当な給与を支払うため、計算ミスを避けるための体制を整えることが大切です。
3-4. 法定休日に60時間超過の残業が発生した際の割増賃金
時間外労働が1か月60時間を超えると、割増賃金の割増率が50%以上になるため、特に注意が必要です。
通常、時間外労働の上限は1か月45時間、1年360時間ですが、特別条項付きの労使協定がある場合には、特別な必要に応じて月45時間を超えることができます。この際、所定休日に働いた時間と通常の出勤日の残業時間を合計した結果、60時間を超えた場合には、通常の賃金の1.5倍以上の割増賃金を支払うことが求められます。
したがって、企業側には月ごとの労働時間の管理が重要となり、適正な労働時間を従業員に守らせる義務があります。特に60時間を超える場合では、割増率が一段と高くなるため、従業員に対して公正かつ適切な賃金が支払われているかをしっかりと確認する必要があるでしょう。
関連記事:月60時間を越える時間外労働の割増賃金について解説
4. 休日手当の計算で間違えやすい要注意ポイント3選

基本的には、ここまでにご紹介した計算例に当てはめる算出方法で問題ありませんが、各条件によっては少し考え方が変わってきます。そこで以下からは、休日手当の計算において、特に気を付けておきたいポイントも見ていきましょう。
4-1. 会社指定の公休日の取り扱い
休日手当が発生するのは、あくまで「法定休日」です。もし法定休日ではなく、各企業で決めている公休日に出勤した場合には、休日手当は発生しません。例えば「土日休み」としている場合には、労働基準法では必然的にいずれかの曜日が法定休日になります。仮に日曜を法定休日にしている場合、土曜に出勤しても休日手当を支払う必要はありません。
ただし上記のような週休2日のケースでは、もし1日の実働時間が8時間であれば、土曜出勤によって法定外の時間外労働が生じたことになります。そのため上記の例の土曜出勤に対しては、時間外手当を支給しなければなりません。
ちなみに時間外手当も割増賃金となり、その比率は「1.25~1.5」で、前述にある計算例にそのまま当てはめて算出することが可能です。
関連記事:時間外労働の割増率とは?計算方法や適用されない場合を解説
4-2. 振替休日の取り扱い
休日出勤の対処として、振替休日や代休を与えるのは全く問題ありませんが、それぞれで取り扱いが異なるため注意が必要です。そもそも振替休日と代休では、対応が事前もしくは事後かによる違いがあります。
振替休日とは、あらかじめ法定休日と通常出勤日を入れ替えるもので、休日手当は発生しません。ただし例えば土日休みで日曜を法定休日とした場合に、翌週の平日のどこかを振替休日にしたとします。
その際は法定休日に出勤した週では「週6日勤務」となり、もし1日の実働時間が8時間なら、労働基準法の週40時間を超えた分は時間外労働です。そのため時間外労働分の割増手当が必要になりますが、休日を取得しているので、通常の上乗せ分のみ(×0.25~)の支払いで問題ありません。
4-3. 振代休の取り扱い
代休とは、法定休日に出勤した後に、代わりの休日を取得させるものです。事後対応となる代休の場合には、休日手当が発生するので気を付けておきましょう。
なお代休を取った場合も、休んだ分は相殺できるため、通常の上乗せ分のみ(×0.35~)を休日手当として支給します。
この場合、実際に働いた日と代休を取得する日が異なるため、代休の取り扱いを明確にすることが重要です。代休の日数や、その日数に対する手当の支給方法を適切に管理することで、従業員の権利を守り、企業側の適正な運営を促進します。
関連記事:振替休日と代休の違いとは?労働基準法違反になりかねないポイントを事例と併せて解説!
5. 休日出勤をしても休日手当が付かないケース
休日出勤をしても休日手当が付かないケースには、特定の条件があります。
まず、管理職(管理監督者)の場合、法定休日に出勤しても休日手当が適用されないことが多いです。また、固定残業制を採用している企業では、休日出勤に対する割増賃金が支払われないことがあります。
これらのケースでは、基本的な賃金の範囲内で労働が評価されるため、注意が必要です。従業員が条件によって適切な休日手当や割増賃金を受け取るためには、事前の確認が不可欠です。
5-1. 管理監督者が休日出勤をした場合
管理職(管理監督者)が休日出勤をした場合、労働基準法の適用外となるため、休日手当は支給されません。
具体的には、管理監督者の労働時間や休日に関する規定は、一般の従業員と異なり、割増賃金は発生しません。ただし、深夜勤務であった場合には深夜割増賃金が支給されることがあります。
管理監督者に該当するかは、役職名だけでなく、その職務内容や責任、権限、勤務状況などを総合的に考慮して判断されるため、職務の実態が重要です。
また、たとえ「課長」や「店長」といった役職名が付いていても、管理職としての責任や権限、優遇措置などが伴っていなければ管理監督者とは認められません。このような観点から、管理監督者の役職にある場合でも、休日出勤に対する賃金の取り扱いを確認し、適切な対応をおこなうことが求められます。
5-2. 固定残業制が適用されている場合
固定残業制においては、従業員が実際に残業した時間に関係なく、あらかじめ設定された時間分を労働したものと見なして残業代が支給されます。
この制度では、所定休日の出勤がみなし残業時間の範囲に入っている場合、追加の割増賃金を支払う必要がありません。しかし、法定休日に出勤した場合には、別途休日手当を支給しなければならず、その割合は35%となります。
したがって、みなし残業制を採用している企業でも、法定休日に出勤させた場合は適切な休日手当の支払いが求められます。
6. 休日手当の計算ミスがもたらす影響

計算ミスは、労働者と企業の両方に深刻な影響を及ぼします。これは単なる金銭問題だけでなく、企業の評判や労働者のモラルにも影響を与えます。
なお、計算ミスにより割増賃金の未払いが生じている場合、労働基準法違反となる可能性があり「6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金」の罰則が適用される点に注意が必要です。
6-1. 従業員への影響
従業員が休日に働くことは、彼らの個人生活に大きな影響を及ぼします。その報酬が適切に計算されていない場合、これは従業員の不満を引き起こし、モラルを低下させる可能性があります。
特に法定休日に出勤した場合は、法律に基づいた割増賃金が適用されるため、その計算ミスは企業にとって重大な問題となります。
適正な休日手当を支給することで、従業員の労働意欲を高め、企業全体の生産性向上にも寄与することが期待されます。また、休日手当の支払いに関する明確なルールを策定し、従業員にその内容を周知することは、信頼関係を築く上でも重要です。
6-2. 企業への影響
休日手当の計算に関しては、企業がその重要性を認識し、徹底したルール設定と従業員への周知をおこなうことが求められます。
特に、法定休日に働いた際の割増率や、所定休日との違いを正確に理解しておくことで、従業員の権利を守ることができます。また、休日手当の計算をソフトウェアや専門家に委託することも一つの手段であり、ミスを未然に防ぐために役立つでしょう。
適切な計算がおこなわれることで、従業員のモチベーションが向上し、業務の効率化にもつながります。企業が信頼される存在であり続けるためには、休日手当の適切な管理が不可欠です。
7. 休日手当の計算は細かな部分まで十分に確認することが必須

そもそも法律上での休日出勤とは、非常にイレギュラーなケースと考えられており、手当が発生する条件も非常に細かく決まっています。自社で独自に定めている休日手当もあるかもしれませんが、あくまで法的な義務を満たしていることが必要です。また労働基準法で定められている休日手当のルールは最低ラインなので、なるべく上回る社内規定を決めておきましょう。
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