派遣社員の残業時間上限は何時間?注意点や残業代の計算方法を解説
更新日: 2025.11.21 公開日: 2020.7.17 jinjer Blog 編集部

2020年4月1日から、企業規模に関わらず、働き方改革関連法(一部は2021年4月1日)が適用されるようになりました。多くの企業で労働時間管理の見直しや是正、改革がおこなわれており、今まで以上に残業時間の取り扱いは厳格化されています。
人事担当者は、正社員だけでなく派遣社員の残業時間が上限を超えないように注意をしなければなりません。法律を厳守するには、法改正によってどのような変更がされているのかを十分に理解しておく必要があります。
本記事では派遣社員の残業時間の上限や、残業時間の考え方について解説していきます。ぜひお役立てください。
【関連記事】働き方改革による残業規制の最新情報!上限や違反した際の罰則を解説
目次
人事労務担当者の実務の中で、勤怠管理は残業や深夜労働・有休消化など給与計算に直結するため、正確な管理が求められる一方で、計算が複雑でミスや抜け漏れが発生しやすい業務です。
さらに、働き方が多様化したことで管理すべき情報も多く、管理方法と集計にお困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか。そんな担当者の方には、集計を自動化できる勤怠システムの導入がおすすめです。
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1. 派遣社員の残業時間の上限は何時間?


派遣社員の場合であっても、労働時間の扱いに関しては正社員と同様です。労働基準法により、労働時間は「1日8時間、週40時間」を超えてはならないとされています。
36協定を派遣元で締結した上での残業時間の上限も、正社員と同じ「月45時間、年360時間」であるため、これを超えて労働をさせないように注意が必要です。原則である月45時間の残業時間を超えて残業をするには、特別条項付きの36協定を派遣元で締結しなければなりません。
なお、残業時間の上限は派遣社員だけでなく、アルバイトやパート従業員にも適用されます。
2. 派遣社員の残業時間についての注意点


派遣社員の残業時間の上限は正社員と同様でした。しかし、派遣社員に残業が発生する場合は、正社員とは異なる取り扱いが必要になるため、以下の点に注意しましょう。
2-1. 36協定は派遣元企業で締結する
派遣社員は派遣先の企業で正社員と同様の業務をおこなう、という認識から36協定も派遣先企業で締結すると勘違いされやすいです。しかし、これは誤りで派遣社員と36協定を結ぶのは派遣元企業です。
派遣社員に残業を依頼する際は、派遣元で36協定を締結しているかどうか確認するようにしましょう。
また、派遣先企業がフレックスタイム制や変形労働時間制を採用している場合は、派遣元企業はその旨を就業規則に記載しておかなくてはいけません。
派遣元企業の就業規則にフレックスタイム制や変形労働時間制に関して記載がなかった場合は、定時制以外の企業に派遣社員を派遣して働かせることはできません。
2019年4月、働き方改革関連法が施行された当初、法律の適用範囲は大企業のみでした。そのため、『派遣元が中小企業であったが、派遣先が大企業であった場合、どちらの就業規則に従うべきかわからない』という声が上がっていました。
しかし、現在は法律の適用範囲が中小企業にも広げられたため、残業時間をはじめとした労働時間管理の方法は大企業・中小企業関係なく統一化されています。
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2-2. 派遣先は派遣社員に残業を命令できる?
派遣社員は派遣元と雇用契約を結ぶため、派遣先の企業が派遣社員に残業を命じたい場合は、派遣元との雇用契約に基づく必要があります。
具体的には、派遣社員と派遣元企業で結んでいる雇用契約書に残業をさせない旨の記載がある場合や、労働条件通知書に残業時間に関する記載がない場合は残業をさせることができません。
ただし、雇用契約書や労働条件通知書に残業がある旨が記載されていても、無制限に働かせたり自社の規則にそって残業を命じたりすることはできません。必ず派遣元と派遣社員が結んだ雇用契約や、派遣元の36協定に記載されている上限時間に残業がおさまるようにしましょう。
2-3. 派遣先を掛け持つ場合の残業時間
派遣先を掛け持つ場合は、2つの企業の労働時間を通算として上限を考えることになります。
《派遣先を2社掛け持っているAさんの場合》
・Aさんは1日あたり、B社で5時間働き、C社で5時間勤務している
→この場合、1日あたりの総労働時間は10時間となります。しかし、法定労働時間は8時間と定められているため、残業時間は2時間になります。
B社とC社それぞれでは法定労働時間を超過していませんが、法定労働時間は勤務先に関わらず労働をした時間の合計で計算する必要があります。
なお、残業に対する割増賃金は、後から契約を結んだ派遣会社が負担することが一般的です。
関連記事:派遣社員の勤怠管理にも必要!タイムカードの保管期間とは?
3. 派遣社員の残業時間の上限に関するルール


前述の通り、正社員同様、派遣社員も36協定を締結することで、「月45時間、年360時間」の残業時間の上限が適用されます。この他にも、働き方改革関連法が施行されたタイミングで、36協定の内容も改定されたため、ここからは具体的な変更内容について解説していきます。
3-1. 特別条項付き36協定の残業時間の上限
派遣社員・正社員など雇用形態にかかわらず、36協定を結んだ場合の残業時間の上限は月45時間、年360時間以内です。
しかし、繁忙期や決算の時期など、どうしても残業時間の上限を超えてしまう場合は、前もって特別条項付き36協定を結んでおくことで、残業時間の上限を伸ばすことができます。
特別条項を結んだ場合の残業時間の上限は月100時間未満、年720時間以内です。正社員でも派遣社員でもこの上限時間に変わりはなく、これよりも残業時間が超過した場合は、法律違反となります。
また、この他にも特別条項の残業時間には、「月45時間を超えられるのは、年に6ヶ月まで」「2~6ヶ月ごとの時間外労働時間の平均が80時間を超えてはならない」といった規制が設けられています。
ここまでで「何時間までなら残業しても違法ではないのか」という上限は理解したと思いますが、残業時間の正しい計算ができなければ意味がありません。そこで当サイトでは、残業時間の正しい考え方と法改正でどのように上限規制が変わったのかをまとめた資料を無料で配布しております。自社の残業時間の管理が正しいか不安な人事担当者は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
関連記事:36協定における残業時間の上限を基本からわかりやすく解説!
3-2. 違反した場合の罰則
36協定は働き方改革による法改正以前から存在していましたが、法的拘束力はありませんでした。
また、改正以前は特別条項を結んだ場合、残業時間の上限がなかったため、会社が自由に残業できる時間を決めることができました。その結果、長時間労働が常態化してしまい、過労死や心身の健康を損なう労働者が多発したのです。
そのため、今回の労働基準法改正では36協定に法的拘束力をもたせています。36協定を結ばずに時間外労働をおこなわせた、もしくは残業の上限時間を超えた場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則が設けられました。
違反した場合は従業員一人につき一罪とされ、たとえ派遣社員であっても上限規制を超えて残業させることはできません。
関連記事:働き方改革で残業時間の上限規制はどう変わった?わかりやすく解説!
4. 派遣社員の残業代の計算方法


派遣社員が残業をした場合の給与計算の方法も確認しておきましょう。
残業手当の計算式は
「1時間あたりの基礎賃金 × 残業時間 × 1.25(時間外労働に対する割増率)」
です。派遣社員の給与は時給制であることがほとんどなため、「1時間あたりの基礎賃金」には時給を使えば問題ありません。
なお、残業時間とは法定労働時間を超えて働かせた時間です。所定労働時間を超えていても、法定労働時間内であれば割増率をかける必要はありません。
例えば、時給1,500円で所定労働時間が6時間の派遣社員が9時間働いた場合、その日の給与計算は以下のとおりです。
(6時間+2時間)×1,500円+1時間×1,500円×1.25=12,000円+1,875円=13,875円
なお、22時~翌5時の深夜帯に残業させた場合は25%の割増率、残業時間が月60時間を超えた場合は50%での割増率でそれぞれ計算が必要となります。
関連記事:残業による割増率の考え方と残業代の計算方法をわかりやすく解説
5. 派遣社員の残業時間は派遣先が管理する


派遣社員に命じることができる残業時間の上限については、派遣元の36協定や雇用条件に従う必要があります。ただし、派遣社員の残業時間の管理は派遣先が責任を負うため、勤怠管理システムやタイムカードを活用し、正確に把握・管理しなくてはいけません。
万が一、残業時間の上限を超えて派遣社員を働かせた場合、労働基準法違反として罰せられるのは派遣元ではなく派遣先です。この場合、「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科される可能性があります。
残業に関する責任の所在は混同されがちですが、「36協定の締結・届け出は派遣元」「残業時間の管理は派遣先」という点を明確に理解してトラブルを防ぎましょう。
6. 派遣社員の残業時間上限を守って労働時間を正しく管理しよう


派遣社員の残業時間の上限は、正社員と同じく「月45時間、年360時間」が原則ですが、特別条項付きの36協定を締結すれば「月100時間、年720時間」まで延長可能です。ただし、派遣社員に実際に命じる残業時間は、派遣元が締結している雇用条件や36協定に基づく必要があるため、その内容を正確に把握することが求められます。
また、残業時間の管理義務は派遣元ではなく派遣先にある点も注意が必要です。不適切な管理をおこなえば労働基準法違反に問われる可能性があり、罰則の適用や社会的信用の喪失といった重大なリスクが生じるでしょう。
この機会に、自社の勤怠管理が法令を遵守しているかを見直し、改善点があれば早急に対応することをお勧めします。
関連記事:勤怠管理システムの導入が派遣スタッフの管理におすすめな理由を解説
関連記事:残業時間の定義とは?正しい知識で思わぬトラブルを回避!
関連サイト:転職派遣サーチ



人事労務担当者の実務の中で、勤怠管理は残業や深夜労働・有休消化など給与計算に直結するため、正確な管理が求められる一方で、計算が複雑でミスや抜け漏れが発生しやすい業務です。
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