パート従業員の残業時間に上限はあるの?気になる法律上のルール
更新日: 2025.12.24 公開日: 2020.7.10 jinjer Blog 編集部

「繁忙期にはどうしても従業員に残業時間増加の負担をかけてしまう」、という経験をした管理者も多いのではないのでしょうか。しかし、度を超えた長時間労働や休日出勤が心身の健康に影響を及ぼすとして、2019年4月に「働き方改革関連法」が施行されました。これによって、たとえどんなに忙しくても、時間外労働の上限規制を超えて働かせることはできなくなっています。
しかし、「この規制はパート・アルバイト従業員にも適用されるのか」という点について、理解が曖昧になっている担当者の方もいるかもしれません。働き方が多様化している現在、人事担当者としては各雇用形態ごとに規制や関連法がどこまで適用されているのか、正しく把握しておくことが大切になってきます。
今回は、パート従業員の労働時間と残業時間の上限、管理方法などを解説します。
【関連記事】働き方改革による残業規制の最新情報!上限や違反した際の罰則を解説
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目次
1. 残業時間の上限はパート・アルバイトも月45時間


2019年4月に施行された「働き方改革関連法」の中に、時間外労働の上限規制が設けられています。
労働基準法では、労働時間を1日8時間・週40時間と定めています。この法定労働時間を超える部分は「時間外労働」とされ、厚生労働省のガイドラインにより上限は原則として月45時間・年360時間(特別な事情がある場合のみ、単月100時間未満、複数月80時間、年720時間)と規定されています。
この上限規制は正社員だけでなく、パートやアルバイト従業員にも適用されます。そのため、例え短時間勤務であっても、シフトの都合で週40時間を超える場合には時間外労働となり、上限規制が適用される点に注意しましょう。
人事や総務部門は勤務シフト作成時に、雇用形態を問わず残業時間を厳格に管理しなければなりません。
1-1. パート・アルバイトの残業時間上限の対象範囲
残業時間上限規制には「猶予期間」があり、当初の規制対象は大企業のみでした。しかし、猶予期間が終了し2020年4月からは中小企業にも適用開始となり、現在は全企業に適用されるようになりました。そのため、中小企業の従業員に対しても残業時間の上限規制が適用されています。
したがって、パート・アルバイト従業員に時間外労働をさせる場合は、この上限時間に従う必要があります。パートやアルバイトは所定労働時間が短いことが多く、通常は法定労働時間に達しない勤務形態となるケースが多いでしょう。
しかし、週40時間や1日8時間を超えて労働させた場合には、雇用形態を問わず時間外労働として扱われます。例えば、普段は1日5時間勤務の従業員が繁忙期にフルタイムで働き、週40時間を超えると、その超過部分は残業に該当するため、上限を意識した調整が必要です。
また、時間外労働には、上限規制以外にも割増賃金のルールがあるため、担当者はしっかりとルールを確認しておきましょう。
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2. パート・アルバイトに残業をさせるには36協定の締結が必要


法定労働時間を超えて労働させるには、労働基準法第36条に基づく「時間外・休日労働に関する協定(36協定)」の締結が必要です。
これは正社員に限らず、パートやアルバイトに残業を依頼する場合も同様に適用されます。36協定を結ばずに残業を命じた場合は違法となり、労働基準監督署からの是正勧告や罰則の対象となります。
36協定は、労働組合または従業員代表との合意を得るだけでなく、労働基準監督署に届け出なければ効力を持ちません。雇用形態に関係なく、企業が残業を命じる際に必須の法的手続きなので、締結をして届出をしておきましょう。必ず
2-1. 36協定とは?
36協定とは、労働基準法第36条に基づいて作成された労使協定のことをさします。企業と従業員が、この協定を締結しない状態で法定労働時間を超える労働をさせることは禁止されています。
そのため、あらかじめ労働組合、または従業員の過半数から同意を得て選出された労働者代表と内容を協議した上で、36協定を締結する必要があります。また、36協定を締結した場合であっても、月45時間、年360時間の残業時間の上限規制が免除されることは原則ありません。ただし、パート・アルバイトの従業員の労働時間に関しては、「扶養内で働きたい」「社会保険に加入できるように働きたい」という希望があがってくることがあります。従業員から労働時間に関する希望がある場合は、本人の希望に沿って、扶養内で働くには労働時間を月何時間におさめなければならないか、などを計算しましょう。なお、社会保険に加入できるのは所定労働時間が週20時間以上の場合です。
関連記事:36協定における残業時間の上限を基本からわかりやすく解説!
2-2. 36協定の特別条項とは
会社と従業員とが36協定を締結している場合、月45時間、年360時間の残業が認められます。しかし、業種によっては繁忙期に対応するために、月45時間、年360時間以上の残業が必要になるケースがあるでしょう。このような際に締結されるのが、特別条項付きの36協定です。
特別条項付きの36協定を結ぶことで月45時間、年360時間を超える残業が可能になります。しかし、無制限に残業が認められるわけではなく、次のような規制が設けられています。
- 1ヵ月の時間外労働と休日労働の合計時間が100時間未満
- 1年の時間外労働の時間が720時間
- 1ヵ月45時間の限度時間の超過は1年間で6ヵ月以内
- 時間外労働と休⽇労働の合計時間が2~6か月平均して1⽉当たりすべて80時間以内
例え特別条項がついているとしても、これらの規制を超えて残業をさせてしまうと違反となるため、時間外労働の時間は正確に管理しましょう。
3. 残業時間の規定に違反した場合の罰則


通常の36協定、特別条項付きの36協定を結んでいても、残業時間に関するルールを守らないと罰則が科せられる可能性があります。残業時間に関する主な罰則は次のとおりです。
- 36協定を結ばずに残業した場合:6ヵ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金
- 残業の上限時間を超えた場合:6ヵ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金
なお、残業時間についてのルールを守らなかった場合、企業にとってデメリットとなるのは罰則だけではありません。違反内容によっては、厚生労働省より企業名を公表される恐れがあります。
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4. パート・アルバイト従業員は残業代の支給対象になるのか


時間外手当とは、労働基準法で定められた労働時間(1日8時間)を超えて労働した従業員に対して、割増賃金として支給される支給される手当のことです。
時間外手当には通常の時給よりも25%以上を上乗せして残業時間分を支払う必要があります。ただし、残業であっても割増分を上乗せしなくてもよい場合もあるため、注意が必要です。
なお、残業代や休日手当、深夜手当などはパート・アルバイト従業員であっても支給しなくてはならないため、正しく計算できるようにしておきましょう。
4-1. ① 法定内残業
法定内残業とは、法定労働時間(1日8時間または週40時間)を超えない時間の残業のことをさします。
パートやアルバイトは所定労働時間が短く設定されることが多いのですが、シフトによっては所定時間を超えて勤務する場合があります。例えば、9時~15時(休憩1時間を含む)を定時として定められているパート従業員の場合、1日の実労働時間は5時間です。このパート従業員が2時間残業したとすると、この日の実労働時間は7時間になります。
一見、2時間分の時間外手当が支給されるように思われますが、時間外手当は法定労働時間(1日8時間または週40時間)を超過した場合のみに適用されるため、この場合は時間外手当の支給対象にはなりません。
したがって、この2時間分の法定内残業時間には割増率をかけず、時給×残業時間で残業代を支給します。
一方、先ほどのパート従業員が9時~19時まで働き4時間残業したとします。この場合、3時間分は法定内残業で割増賃金が必要ありませんが、労働時間が8時間を超えた1時間分は割増賃金の支払いが必要になります。割増賃金を含めた時給は「時給×1時間×1.25」でで計算します。
関連記事:残業時間の定義とは?正しい知識で思わぬトラブルを回避!
4-2. ② 休日と休日手当の関係性
従業員の「休日」のなかには、法定休日と所定休日があります。
法定休日は労働基準法で定められた法律で、週1日もしくは4週間を通じて4日以上与えなければなりません。
所定休日は会社が定める休日で、週40時間以上の労働にならないように調整する役割があります。
この2つの休日の大きな違いは休日出勤したときの手当をだす義務があるかどうかです。
休日出勤手当(休日手当)は、この「法定休日」に働いた場合に35%以上の割増賃金として支給されます。
例えば、毎週土曜日を法定休日としているパート従業員の場合、日曜日や祝日といった法定外休日(所定休日)に勤務した場合、週の労働時間が40時間を超えていれば、その超過時間に対して時間外労働の割増賃金(25%以上)の支給対象になります。
しかし、土曜日に働いた場合は休日出勤としてみなされます。休日手当の割増率は35%以上です。
休日区分を誤ると未払いや過払い扱いになるため、、担当者は法定休日と所定休日の区別を正しく理解しておきましょう。
関連記事:休日出勤は残業に含まれる?間違いやすい賃金計算方法
4-3. ③ 深夜手当の定義
労働基準法第37条では午後10時から午前5時までを深夜労働と定め、この時間帯に勤務した場合は25%以上の割増賃金を支払うことと規定しています。さらに時間外労働と深夜労働が重なる場合は、時間外労働の25%に深夜労働の25%以上が追加で加算され、最低50%以上の割増率となります。
これは、パートやアルバイトも対象であるため、深夜シフトを組む業種では注意が必要です。例えば、パート従業員が法定労働時間を超えて働き、かつ残業時間が午後10時以降に及んだ場合は、「時間外手当(割増率25%)+深夜手当(割増率25%以上)」で50%の割増賃金を支給しなければなりません。
深夜手当を加算しないと、未払い賃金となるだけでなく、従業員からの信用も失ってしまうので、深夜手当の定義は必ず覚えておきましょう。
4-4. ④ 月60時間を超える残業
特別条項付きの36協定を結ぶことで、月45時間を超える残業を命じることができますが、この際に注意したいのが、月60時間を超えた場合の残業代です。
時間外労働が月60時間を超えた場合、超過した時間に対して25%ではなく50%の割増率を乗じて残業代を計算しなくてはいけません。
このルールは大企業のみに適用されていましたが、2023年4月からは中小企業を含めすべての企業で「月60時間を超える残業に対して50%以上の割増率」が適用されるようになりました。
この制度は正社員だけでなくパートやアルバイトにも同様に適用されます。例えば、繁忙期に残業が集中し月60時間を超えた場合、通常の25%割増ではなく50%以上の割増賃金を支払わなければなりません。割増賃金計算を間違えると未払い残業代が発生し、監督署から是正勧告を受ける恐れがあります。そのため、特別条項付き36協定を結んだ際は、特に注意しましょう。
ここまでで解説しました通り、残業には上限規制や割増賃金など様々なルールがあり、対応を誤ってしまった場合は法律違反となってしまいます。「知らなかった」「うっかりしていた」では済まされないため、しっかりと法律を理解しておきましょう。
関連記事:深夜残業とは?今さら聞けない定義や計算方法を徹底解説
5. パート・アルバイト従業員にも残業時間の上限はある!

法律上では、正社員やパート・アルバイトなど雇用形態に関わらず、どちらも労働者と定義されるため、法定労働時間や残業時間の上限に関する扱いは正社員と同様になります。また、パート・アルバイト従業員であっても法定労働時間を超えた労働をさせる場合は、あらかじめ労使間で36協定を締結しなければなりません。
さらに特別条項を設ける場合でも、年720時間・複数月平均80時間以内といった厳格な基準が課されています。違反した場合は罰則の対象となり、企業の信用失墜や労務トラブルにも直結します。また、残業代についても法定内残業や休日労働、深夜手当、月60時間を超える割増といった複数のルールがあるので、担当者はしっかりと理解しておく必要があります。
企業もルールをしっかり踏まえたうえで、勤怠管理を徹底していきましょう。
関連記事:残業管理をわかりやすく簡潔にするルール作りのポイント
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