人事担当者必見!労働保険の対象・手続き・年度更新と計算方法をわかりやすく解説
「労働保険と雇用保険の違いがわからない」「入社した人の労働保険の手続きはどうすれば良いの?」「年度更新ってなに?」
こうした悩みをお持ちの人事担当者の方は多いのではないでしょうか。労働保険は手続きや保険料の仕組みが複雑で、正確に手続きをおこなうには制度への理解が欠かせません。
この記事では労働保険の対象者や手続き、年度更新についてわかりやすく解説します。保険料の申告や納付などの手続きをスムーズにおこなうヒントとしてご活用ください。
目次
従業員の入退社、多様な雇用形態、そして相次ぐ法改正。社会保険手続きは年々複雑になり、担当者の負担は増すばかりです。
「これで合っているだろうか?」と不安になる瞬間もあるのではないでしょうか。
◆この資料でわかること
- 最新の法改正に対応した、社会保険手続きのポイント
- 従業員の入退社時に必要な手続きと書類の一覧
- 複雑な加入条件をわかりやすく整理した解説
この一冊で、担当者が押さえておくべき最新情報を網羅的に確認できます。煩雑な業務の効率化にぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 労働保険とは


労働保険とは労働者災害補償保険と雇用保険の総称です。制度の内容や目的は両保険で異なりますが、保険料の納付などは一体のものとして取り扱われています。
まずは労災保険と雇用保険の概要を確認しましょう。
1-1.労災保険(労働者災害補償保険法)
労災保険は、労働者が業務上の事由や通勤が原因で負傷した場合、病気になった場合、亡くなった場合に被災労働者や遺族を保護するための保険給付をおこなう制度です。次の図の給付がなされます。
労働保険の加入手続きでは労働者を雇用し始めてから10日以内に、事業所を所管する労働基準監督署に次の書類を提出します。
- 保険関係成立届
- 事業の存在を確認する資料(法人の場合は登記事項証明書など)
- 概算保険料申告書
関連記事:労働保険の保険関係成立届とは?書き方など手続きを詳しく解説
1-2. 雇用保険
雇用保険は労働者が失業した場合や働き続けるのが難しくなった場合に、労働者の経済的な支援や雇用の安定を図るとともに、再就職を促進するため必要な給付をおこなう制度です。失業の予防、労働者の能力の開発や向上などの事業もおこなっています。
雇用保険の加入手続きでは、次の書類を事業所の設置から10日以内に管轄の公共職業安定所(ハローワーク)へ提出します。
- <手続きに必要な書類>
-
- 雇用保険適用事業所設置届
- 雇用保険被保険者資格取得届
- 保険関係成立届の控え(労働基準監督署が受理したもの)
- 事業の存在を確認する資料(法人の場合は登記事項証明書など)
- 労働者の雇用実態、賃金の支払い状況などを証明できる書類
- 労働者名簿
- 賃金台帳
- 出勤簿・タイムカード
- 雇用契約書(有期契約の場合)
関連記事:雇用保険とは?パート・アルバイトの加入適用や給付内容についてわかりやすく解説
2. 労働保険の対象者・加入条件


同じ労働保険でも、労災保険と雇用保険では対象となる事業や労働者が異なります。それぞれ違いを確認しましょう。
2-1. 労災保険の強制適用事業と加入対象者
労災保険への加入は事業主が自由に選べるわけではありません。次の暫定任意適用事業所(申請により保険関係が成立する事業所)を除き、全事業所に加入義務があります。
暫定任意適用事業所:次のいずれかに該当する事業
- 労働者数5人未満の個人経営の農業(危険または有害な作業が主の事業を除く)
- 常時使用する労働者がいない、年間の使用労働者数が延べ300人未満の個人経営の林業
- 労働者数5人未満の個人経営の畜産、養蚕または水産(総トン数5トン未満の漁船による事業など)業
労災保険は事業所単位で加入する仕組みです。加入する事業所で働く労働者は全員、労災保険の給付が受けられます。
なお、労働者とは、職業の種類にかかわらず事業に使用される者で、労働の対価としての賃金が支払われる者を指します。
正社員や契約社員、パート・アルバイトなどの雇用形態は問いません。他社からの派遣や出向により働いている人も、労働者に該当します。
2-2. 雇用保険の加入要件と労災保険との違い
雇用保険では、まず事業所としての加入要件を満たす必要があります。さらに、労働者一人ひとりが加入要件を満たしているかの確認も欠かせません。事業所が雇用保険に加入していても、労働者自身が要件を満たさなければ被保険者にはならず、保険給付も受けられません。
事業所単位では労災保険と同様、次の暫定任意適用事業所に該当せず、雇用保険の対象となる労働者を雇用し始めた事業所は必ず加入が必要です。
暫定任意適用事業所の要件:以下の3点を満たす事業所
- 法人でない
- 常時使用する労働者が5人未満
- 農林水産(船員が雇用されるものを除く)業、畜産業、養蚕業のいずれか
労働者は次の要件を満たした場合に、雇用保険の被保険者となります。
労働者が被保険者となる要件:次の2点を満たす
- 週の所定労働時間が20時間以上(※)
- 31日以上の雇用見込みがある
※2028年10月から週所定労働時間10時間以上に改正予定
関連記事:労働保険の加入手続き方法を徹底解説!加入条件や計算方法まで
3. 労働保険料の年度更新と計算方法


年度更新とは、1年間の労働保険料を申告・納付する手続きです。毎月納付する健康保険料などと異なり、労働保険では独自の仕組みで保険料の申告・納付をおこないます。
年度更新スケジュールや計算方法、申告書の作成方法を確認しましょう。
関連記事:労働保険の年度更新とは?提出期限や電子申請手続きのやり方をわかりやすく解説!
3-1. 年度更新とスケジュール
年度更新とは、4月から翌年3月の一年間を年度として労働保険料を計算・申告し納付する手続きです。労働保険では企業や政府の事務手続きの合理化や簡略化を図るため、労災保険と雇用保険の保険料を年に1度まとめて申告し、納付する仕組みを取っています。
年度更新では前年4月から3月までの保険料(確定保険料)を計算し、その年の4月から翌年3月までの1年間の保険料(概算保険料)と一緒に納めるサイクルを繰り返します。
年度更新の申告期間は毎年6月1日から7月10日です。1年分の賃金を集計する必要があり、作業に時間がかかるため、期限に間に合うよう計画的に手続きを進める必要があります。
3-2. 労働保険料の計算方法
労働保険料は次の3つの合計額です。
- 労災保険料:労災保険の対象者の賃金総額×労災保険料率
- 雇用保険料:雇用保険の被保険者の賃金総額×雇用保険料率
- 一般拠出金(※):労災保険の対象者の賃金総額×0.02/1,000(一般拠出金)
※「石綿による健康被害の救済に関する法律」にもとづく、アスベスト被害者救済のための負担金
確定保険料と概算保険料で計算式に違いはなく、確定保険料の賃金総額は1年間の実績を、概算保険料は申告時点の見込みの賃金総額を用いて計算します。
ただし、概算保険料の賃金の見込額が前年度と比較して1/2以上2倍以下の場合は、確定保険料の賃金総額と同額を見込額とします。大きな組織改編などがない限り、ほとんどの企業では同額で申告することになるでしょう。
賃金総額は労働者に支給した給与・賞与を全額計上するわけではありません。支給の性質を踏まえ、賃金に含めるものと含めないものを厚生労働省が例示しています。
賃金に含めるもの 賃金に含めないもの 基本賃金 時間給・日給・月給、臨時・日雇労働者・パート・アルバイトに支払う賃金 役員報酬 取締役などに対して支払う報酬 賞与 夏季・年末などに支払うボーナス 結婚祝金
死亡弔慰金
災害見舞金
年功慰労金
勤続褒賞金
退職金労働協約・就業規則などの定めの有無を問わない 通勤手当 課税分、非課税分を問わない 出張旅費
宿泊費
赴任手当実費弁償にあたるもの 定期券・回数券 通勤のための現物給与 超過勤務手当 深夜手当など
通常の勤務時間以外の労働に対して支払う残業手当など 工具手当 寝具手当
労働者が自己負担で用意した用具に支払われる手当 扶養手当 子供手当
家族手当
労働者本人以外の者に支払う手当 休業補償費 労働基準法第76条の規定に基づく費用 (法定額60%を上回った差額分を含む)
傷病手当金 健康保険法第99条の規定に基づく費用 技能手当 特殊作業手当
教育手当
労働者個々の能力、資格に対して支払う手当や、特殊な作業に就いた場合に支払う手当 解雇予告手当 労働基準法第20条に基づいて労働者を解雇する際、解雇日の30日以前に予告をせず解雇する場合に支払う手当 在宅勤務手当 在宅勤務をおこなうことのみを要件として、就業規則などの定めに基づき定額で支払う手当 調整手当 配置転換・初任給などの調整手当 財産形成貯蓄などのため事業主が奨励する奨励金 勤労者財産形成促進法に基づく勤労者の財産形成貯蓄を援助するために事業主が一定の額や率の奨励金を支払う場合 (持株奨励金など)
地域手当 寒冷地手当・地方手当・単身赴任手当など 企業が全額負担する生命保険の掛け金 労働者を被保険者として保険会社と生命保険等厚生保険の契約をし、事業主が保険料を全額負担するもの 住宅手当 家賃補助のために支払う手当 持家奨励金 労働者が持家取得のため融資を受けている場合で事業主が一定の率や額の持家補給金などを支払う場合 奨励手当 精勤手当・皆勤手当など 住宅の貸与を受ける利益(福利厚生施設として認められるもの) 住宅貸与されない者全員に対し(住宅)均衡手当を支給している場合は、賃金となる場合がある 休業手当 労働基準法第26条に基づき、事業主の責に帰すべき事由により支払う手当 宿直・日直手当 宿直・日直などの手当 雇用保険料 社会保険料など
労働者の負担分を事業主が負担する場合 昇給差額 在職中に支払いが確定したものを離職後に支払われた場合を含む 前払い退職金 支給基準、支給額が明確な場合は原則として含む 社会保険適用促進手当 短時間労働者への社会保険の適用を促進するため、労働者が社会保険に加入するにあたり、事業主が労働者の保険料負担を軽減するために支給するもの その他 労働協約、就業規則、労働契約、労使協定(休業協定)などによってあらかじめ支給条件が明確にされたもの
労働保険料率は労災保険と雇用保険で異なります。料率は送付される申告書に記載があるほか、厚生労働省のホームページでも確認可能です。
労災保険は業種によって細かく保険料率が異なっています。工場と営業所など、同じ企業でも事業所によって業種や保険料率が異なる場合があるため注意しましょう。
2025年度の労働保険料率は雇用保険料率が2024年度より1/1,000下がり、一般の事業で14.5/1,000となりました。労災保険料率は2024年度から変更はありません。
参考:令和7年度の労災保険率について(令和6年度から変更ありません)|厚生労働省
参考:雇用保険料率について |厚生労働省
関連記事:労働保険料とは?計算方法や納付方法を解説
3-3. 労働保険料申告書の作成・提出方法
労働保険料の申告書は労働局から事業所の情報が印字されている状態で送られてくるほか、労働基準監督署でも白紙の様式を入手可能です。厚生労働省のホームページにも様式が掲載されているため、印刷して使用することもできます。
様式自体が変わることはほとんどありませんが、労働保険料率は年によって変動があります。労働局から送付される申告書には労働保険料率も印字されているため、必ず最新のものを使いましょう。
申告書の提出には3つ方法があります。
- 電子申請
電子申請はe-Gov(イーガブ)というシステムを使っておこないます。e-Govとはデジタル庁が運営する行政向けの電子申請窓口です。
電子申請を使えば書き損じの心配がなく、郵送費や時間がかからないなどのメリットがあります。郵送
郵送の場合は管轄の労働局へ送付します。受付印が押印された控えが必要な場合は、事業所控分の申告書と返信用封筒を同封しましょう。
- 窓口
窓口提出の場合、次のいずれかに持ち込みます。- 金融機関
- 管轄の労働局
- 管轄の労働基準監督署
- 社会保険・労働保険徴収事務センター(年金事務所内)
受付印が押印された控えがすぐに必要な場合には、労働局や労働基準監督署、社会保険・労働保険徴収事務センターの窓口へ持参するのが最も確実です。
関連記事:e-Gov(イーガブ)とは?知っておくべき電子申請義務化と使い方を解説
3-4. 労働保険料の納付方法(口座振替)
申告書を提出したら、期日までに保険料を納付します。納付方法は次の3つです。
- 金融機関窓口
申告書と納付書を金融機関に持ち込み、窓口で振込みます。 - 電子納付
労働保険料申告書を電子申請で提出した場合に選択可能です。利用している金融機関のインターネットバンキングから納付するか、Pay-easy(ペイジー)に対応しているATMから納付できます。 - 口座振替
銀行口座を登録し、期日がきたら自動で引き落とされる方法です。窓口へ行く必要がなく、納付忘れの心配もありません。現金納付の期限よりも引き落とし日が遅いため、資金繰りの面でも有利です。
事前に申し込みが必要な点や、引き落とし日に納付額を口座に入金しておく必要がある点には注意しましょう。入金額不足で納付ができなかった場合、金融機関窓口で納付し直す必要があります。
3-5. 労働保険料の分割納付
労働保険料は原則として1年分をまとめて支払う必要がありますが、概算保険料が40万円以上であるなど要件を満たす場合に7月10日、10月末、1月末の3回に分けて納付する「延納制度」が利用できます。
延納制度を利用した場合の2025年度のスケジュールは次の表のとおりです。
| 第1期 | 第2期 | 第3期 | |
| 通常の納期限 | 7月10日 | 10月31日 | 2月2日 |
| 口座振替による納付日
(引き落とし日) |
9月8日 | 11月14日 | 2月16日 |
| 口座振替の申込締切日 | 2024年2月25日 | 8月14日 | 10月14日 |
延納は1度に労働保険料を支払わなくて済むため資金面で有利なうえ、手数料もかかりません。ただし、第2期・第3期の納付期限を忘れないよう注意が必要です。
労働保険料の申告は人事担当が、納付は経理担当がおこなうなど担当が分かれている場合は、企業内の連絡・調整やスケジュール管理に気をつける必要があります。
4. 労働保険の適用や年度更新の注意点


労働保険は加入要件や年度更新のルールが多岐にわたり複雑です。特に注意が必要な次の5つのポイントを確認しましょう。
- 適用範囲や加入要件の誤解
- 事業開始時の設置届・手続き漏れ
- 年度更新の申告期限誤りや料率反映ミス
- 賃金総額の集計誤り
- 帳票・書類管理の不備
4-1. 適用範囲や加入要件の誤解
同じ労働保険でも、労災保険と雇用保険では適用範囲や加入要件が次の表のとおり異なります。
| 労災保険 | 雇用保険 | |
| 事業所の要件 | 次のいずれかに当てはまる事業所以外は強制加入
※法人の場合は強制加入 |
次の3点すべてに当てはまる事業所以外は強制加入
|
| 被保険者の要件 | なし(事業所で働く労働者全員が対象) |
※2028年10月から週所定労働時間10時間以上に改正予定 |
特に雇用保険の被保険者要件には注意をしましょう。
例えば、「週3日、1日6時間勤務のアルバイト」の場合、週の所定労働時間が18時間のため被保険者に該当しません。一方で「週4日、1日6時間勤務のアルバイト」の場合は、週24時間勤務となり被保険者に該当します。
つまり、非正規雇用の方が全員対象外になるわけではないため注意しましょう。
4-2. 事業開始時の設置届・手続き漏れ
労働者を雇い始めた事業所は原則として、雇い始めた日から労働保険の適用事業となります。適用事業となった場合、10日以内に労働保険関係成立届や雇用保険適用事業所設置届の提出が必要です。
成立手続きをおこなわないと、政府の職権によって労働保険料が決められ、遡って労働保険料が徴収されます。さらに労働保険料の10%に相当する追徴金が課される場合もあります。
徴収されるのは労働保険料だけではありません。保険関係成立届を提出していない期間に労災が発生し労災保険の保険給付を受けた場合、保険給付にかかった費用が徴収されます。
徴収額は故意(指導を受けたにもかかわらず手続きをおこなっていない)の場合は保険給付の額の100%、重大な過失(指導は受けていないが1年以上手続きをおこなっていない)の場合は40%です。
4-3. 年度更新の申告期限誤りや料率反映ミス
年度更新では毎年6月1日から7月10日の期間内に、労働保険料の申告と納付をおこないます。期限を過ぎてから納付した場合、年率8.7%(2025年度の場合。初めの2ヵ月間は年2.4%)の延滞金が発生します。
労働保険料率にも注意しましょう。労災保険料率、雇用保険料率は年によって変更される場合があります。計算を始める前に最新の料率を確認することが重要です。
4-4. 賃金総額の集計誤り
年度更新で最も難しく、ミスが発生しやすいのが賃金総額の計算です。次の3点に注意しましょう。
- パート・アルバイトや退職者の集計漏れ
賃金総額にはいわゆる正社員だけでなく、パートやアルバイトの方の賃金も含まれます。対象期間に賃金を支払っているのであれば、すでに退職した労働者の分も集計が必要です。
- 翌月払いの賃金の計算
労働保険では発生月基準で賃金を計算します。
例えば基本給は当月中に支払うものの、残業代は翌月に支払う賃金形態の場合、残業代は残業をおこなった月、つまり前月へ戻して計算する必要があります。 - 対象賃金の範囲
支給項目が賃金総額に含まれるかの確認も重要です。
例えば、通勤手当は非課税の部分も含め全額賃金総額に含めますが、出張旅費は実費の精算にすぎないため賃金に含まれません。
ペット手当など他社にはあまり例がない手当の場合、支給の要件や実態などを踏まえて賃金総額に含めるか判断する必要があります。判断が難しい場合は管轄の労働局や社会保険労務士などの専門家に相談しましょう。
4-5. 帳票・書類管理の不備
過去の書類の不備にも注意が必要です。以前の申告書の控えが見つからないと、労働保険番号や前年度の申告内容がわかりません。
申告書に記入する情報を探したり、集計方法を改めて確認したりと、年度更新の作業がスムーズに進まない可能性があります。
労働基準監督署の調査では、労働保険料の申告・納付状況も確認されます。必要書類がすぐに提示できないと調査の対応に時間を取られるだけでなく、指摘につながる場合もあるでしょう。
原本をファイリングしておく、スキャンデータを残しておくなど、申告書や納付書の控えはすぐ取り出せる状態で保管しましょう。
5. 労働保険のよくある質問


最後に労働保険のよくある質問と回答をいくつかご紹介します。
5-1. 労働保険番号と雇用保険適用事業者番号とは何ですか?
労働保険番号は年度更新の申告や労災保険の手続きに、雇用保険適用事業者番号は雇用保険の手続きに必要な番号です。違いを次の表にまとめました。
| 比較項目 | 労働保険番号 | 雇用保険適用事業者番号 |
| 用途 | 年度更新の申告や労災保険の手続き | 雇用保険の手続き |
| 付与単位 | 事業所単位 | 事業所単位 |
| 桁数 | 11桁または14桁 | 11桁 |
| 確認方法 | 加入時の会員証や年度更新の申告書の控えに記載 | 適用事業所設置届の控えや被保険者資格取得時等確認通知書に記載 |
関連記事:労働保険番号とは?確認方法や項目の意味など基本知識を解説
5-2. 労働保険料の計算ツールはありますか?
厚生労働省が年度更新申告書計算支援ツールを提供しています。次のリンクからダウンロードできます。
参考:主要様式ダウンロードコーナー(労働保険適用・徴収関係主要様式)|厚生労働省
支援ツールは毎年新しいものを使いましょう。労働保険料率が変更されると、前年度以前のツールでは変更後の料率での計算ができず、誤りの原因となります。
ツールには申告書のイメージシートがありますが、このシートを印刷しても申告書として使うことはできません。計算ツールは補助として使い、計算後は実際の申告書や電子申請の入力項目へ転記しましょう。
5-3. 令和7年度の労働保険料率は?
労働保険料率は年によって見直される場合があります。見直されるタイミングは原則として労災保険料率が3年に1度、雇用保険料率が1年に1度です。
令和7年(2025)年度は次の表のとおり、雇用保険料率が見直されています。
労災保険料率は業種によって細かく分かれています。令和7(2025)年度の労災保険料率は前年度からの変更はありません。
5-4. 労災保険の特別加入とは何ですか?
労災保険の特別加入とは、中小企業の事業主や自営業の方など、本来労災保険に加入できない人を加入させる制度です。特別加入には、次の4種類があります。
- 中小事業主など
- 一人親方その他の自営業者
- 特定作業従事者(ITフリーランスなど)
- 海外派遣者
一人親方、その他の自営業者と特定作業従事者は、加入できる業種が決まっていますが、対象業種は年々拡大されています。
最近では2024年11月に、企業から業務委託を受けるフリーランスが特別加入の対象に追加されました。今後も対象者の範囲は拡大することが見込まれます。
特別加入をしている人が労災給付を受ける場合、企業による事故の状況などの証明が必要です。人事担当者として対応が必要なケースが増える可能性もあるため、制度改正には注意しましょう。
6. 労働保険の手続きと年度更新をマスターしよう


労働保険(労災保険・雇用保険)の手続きは、人事担当者の重要な業務です。
特に年度更新は確定保険料と概算保険料を申告・納付する労働保険特有の制度であり、正しく処理するには制度への正確な理解が必要になります。年度更新で計算ミスや手続き漏れがあると、延滞金や追徴金が課される場合もあるため、注意が必要です。
労働保険や年度更新の理解を深め、効率よく正確に手続きを進めましょう。
関連記事:労働者災害補償保険法とは?対象や給付金をわかりやすく解説



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