労働保険料とは?計算方法や納付方法を解説
更新日: 2025.6.11
公開日: 2025.5.18
jinjer Blog 編集部
労働保険料とは労災保険料と雇用保険料の2つのことで、それぞれ計算方法や納付方法が異なります。
本記事では、労働保険料の計算方法や納付方法、労働保険料を扱う際の注意点を解説します。保険料の計算から納付までの流れをしっかり理解し、正確に納めるための参考にしてください。
給与計算業務でミスが起きやすい社会保険料。
保険料率の見直しが毎年あるため、更新をし損ねてしまうと支払いの過不足が生じ、従業員の信頼を損なうことにもつながります。
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1. 労働保険料とは
労働保険料とは、労働保険制度の利用で支払う保険料のことで、以下の2つを合わせたものをいいます。
- 労災保険料
- 雇用保険料
それぞれの保険料について詳しく解説します。
1-1. 労災保険料
労災保険料(労働者災害補償保険料)は、従業員の仕事中や通勤中のケガ、仕事が原因の病気などを補償する保険です。従業員本人や、従業員が死亡した場合は遺族に対して保険金が給付されます。
労災保険の対象に雇用形態は関係なく、正社員だけでなくアルバイトや契約社員などの非正規社員も対象です。事業主は基本的に対象外ですが、事業主も現場に携わっている場合は労災保険の特別加入ができます。
1-2. 雇用保険料
雇用保険料は、労働者が失業などで収入が得られなくなった際に経済的支援をするための保険です。再就職に向けたサポートや訓練なども提供されます。
雇用保険は以下の条件を満たしている場合に対象となり、雇用形態は関係ありません。
- 所定労働時間が週20時間以上ある
- 継続して31日以上雇用される見込みがある
ただし、経営者や取締役は対象外であり、原則として昼間に教育を受けている学生も雇用保険の対象外です。
2. 労働保険料の納付対象者
労働保険料の納付対象者は、労災保険料の場合は企業、雇用保険料の場合は企業と従業員です。
労働保険料は全額企業が負担するため、従業員の給与から控除しません。
一方、雇用保険料は、一般事業の場合令和7年度は企業が0.9%、従業員が0.55%の雇用保険料率をそれぞれ負担します。雇用保険料は給与からの控除が必要な点に注意しましょう。
3. 労働保険料の計算方法
労働保険料の計算方法について、以下それぞれの場合を解説します。
- 労災保険料の計算方法
- 雇用保険料の計算方法
3-1. 労災保険料の計算方法
労災保険料は賃金総額×労災保険の保険料率で求められます。
賃金総額は、賞与や各種手当も対象です。
労災保険の保険料率は業種ごとに異なり、例えば以下の表のように定められています。
業種 | 令和7年度の労災保険料率 |
---|---|
道路新設事業 | 0.11% |
食料品製造業 | 0.55% |
卸売業・小売業、飲食店または宿泊業 | 0.3% |
金融業、保険業または不動産業 | 0.25% |
交通運輸事業 | 0.4% |
したがって、食料品製造業で働いており賃金総額が400万円の従業員の場合なら、年間労災保険料は以下の計算式で求められます。
400万円×0.55%=2.2万円
参考:労災保険率表|厚生労働省
3-2. 雇用保険料の計算方法
雇用保険料は賃金総額×雇用保険の保険料率で求められます。
雇用保険の保険料率は以下の表を参考にしてください。
企業負担 | 従業員負担 | 雇用保険料率 | |
一般事業 | 0.9% | 0.55% | 1.45% |
農林水産・清酒製造事業 | 1.0% | 0.65% | 1.65% |
建設事業 | 1.1% | 0.65% | 1.75% |
したがって、食料品製造業(一般事業)で働いており賃金総額が400万円の従業員の場合なら、年間雇用保険料は以下の計算式で求められます。
400万円×1.45%=5.8万円
4. 労働保険料の納付方法
労働保険料の納付方法は以下のとおりです。
- 前年度労働保険料の確定・差額調整をする
- 今年度労働保険料を計算する
- 保険料の申告・納付をする
4-1. 前年度労働保険料の確定・差額調整をする
労働保険料を納付するには、まず前年度の労働保険料を確定して差額を調整しましょう。
労働保険料はその年度の予定賃金総額にもとづいて計算し、毎年6月1日から7月10日の間に概算保険料を前払いします。そのため年度終わりに確定した労働保険料と差額が生じることがあり、調整が必要です。
不足分があれば追加で支払い、過剰分は新年度の保険料に当てましょう。
4-2. 今年度労働保険料を計算する
前年度の労働保険料の調整が終わったら、今年度の労働保険料を計算しましょう。
4月1日から3月31日分の予定総額賃金をもとに概算を出します。ただし、予定総額賃金が前年度の金額の2分の1から2倍の間である場合は、前年の確定総額賃金と同額で計算してください。
4-3. 保険料の申告・納付をする
今年度の労働保険料の概算が出たら、申告書を作成して所轄の労働基準監督署や労働局などに保険料を納付します。各種金融機関の窓口や電子納付も利用可能です。
7月10日までに納付しなかった場合、延滞金が発生することがあるため注意しましょう。
5. 労働保険料を扱う際の5つの注意点
労働保険料を扱う際の注意点は以下のとおりです。
- 最新の保険料率を確認する
- 事業ごとの保険料率で計算する
- 保険対象者を正しく把握する
- 出向社員や派遣社員の保険料の扱いを理解する
- 賃金総額が大幅に増える場合は年度途中でも申告する
5-1. 最新の保険料率を確認する
労働保険料を扱う際は、最新の保険料率を確認するよう注意しましょう。
労災保険料率は3年ごとに見直され、雇用保険料率も数年ごとに変更されています。
保険料率が誤っていると正しい労働保険料が算出できないため、必ず最新の保険料率を確認してから計算しましょう。
5-2. 事業ごとの保険料率で計算する
労働保険料を扱う際は、事業ごとに正しい保険料率で計算する点にも注意しましょう。
一つの企業で複数の事業を展開しており、労災保険番号を複数取得している場合、それぞれの事業に適用される保険料率での計算が必要です。
例えば、食料品製造業と清酒製造事業を展開している企業なら、食料品製造業には1.45%、清酒製造事業には1.65%の雇用保険料率がかかります。
ただし、主要な事業にもとづいて保険料率を決定する場合もあるため、所轄の労働基準監督署や労働局に正しい保険料率を確かめるとよいでしょう。
5-3. 保険対象者を正しく把握する
労働保険料を扱う際の注意点として、保険対象者を正しく把握することも重要です。
従業員全員が加入対象となる労災保険と異なり、雇用保険は従業員の働き方によって加入の有無が決まります。週20時間以上の所定労働時間があり、31日以上雇用する見込みの場合は雇用保険の対象です。
とくにアルバイトやパート従業員の労働時間をしっかり把握し、雇用保険料を納める必要があるかどうかよく確認しましょう。
5-4. 出向社員や派遣社員の保険料の扱いを理解する
出向社員や派遣社員がいる場合、労働保険料の扱いをよく理解しましょう。
他社に出向している従業員は、出向先で労災保険に加入します。出向社員の給与を出向元が払っている場合、出向先に正確な賃金を伝え、正しい労災保険料が算出できるようにしましょう。
また、派遣社員は派遣元の企業が労災保険に加入しますが、保険料率は派遣先の事業内容にもとづいて計算します。派遣先が複数の事業を展開している場合や複数箇所に派遣されている場合は、主要な作業実態をもとに保険料率を計算しましょう。
5-5. 賃金総額が大幅に増える場合は年度途中でも申告する
予定よりも賃金総額が大幅に増える場合は、年度の途中でも増加概算保険料を申告・納付しましょう。
労働保険料は予定総額賃金をもとに前払いするため、業績次第では予定よりも賃金が大幅に増え、申告時の保険料と大きくずれることがあります。
賃金が大幅に増えた場合は、年度の途中であっても増加概算保険料として差額を申告・納付しましょう。
6. 労働保険料を正しく理解して納付しよう
労働保険料は、労災保険料と雇用保険料の両方を合わせた保険料です。労災保険料と雇用保険料はそれぞれ加入対象者や納付対象者、計算方法が異なる点に気をつけましょう。
労働保険料を扱う際は、最新の保険料率や事業ごとの保険料率をよく確認してください。計算から納付までの手順をしっかり理解し、正しい金額を納めましょう。
給与計算業務でミスが起きやすい社会保険料。
保険料率の見直しが毎年あるため、更新をし損ねてしまうと支払いの過不足が生じ、従業員の信頼を損なうことにもつながります。
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