法定調書の書き方は?種類やミスなく作成するためのポイントをわかりやすく解説 - ジンジャー(jinjer)|クラウド型人事労務システム

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法定調書の書き方は?種類やミスなく作成するためのポイントをわかりやすく解説

書類の作成

法定調書とは、所得税法などに基づき、税務署への提出が義務付けられた書類の総称です。法定調書は支払った金銭の流れを明確にし、脱税や不正申告を防ぐ役割があります。
本記事では、法定調書の主な種類とそれぞれの書き方のポイント、法定調書合計表の作成方法、および作成ミスがあった場合の訂正方法について、わかりやすく解説します。

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令和7年度の税制改正によって、令和7年12月の年末調整から変更が生じます。

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1. 法定調書とは?

吹き出しのはてな

法定調書とは、所得税法や相続税法、租税特別措置法、国外送金等調書法によって税務署への提出が義務付けられている書類の総称です。全部で60種類ほどありますが、大半が所得税法に関するものとなっています。

例えば、年末調整に関連する「給与所得の源泉徴収票」は、従業員に給与や賞与を支払う際に作成・提出する義務があります。提出期限は、支払いがあった年の翌年1月31日(※令和7年分は令和8年1月31日が土曜日にあたるため令和8年2月2日)までと定められています。法定調書を期限内に提出しない場合、法律で罰せられる可能性もあるため注意が必要です。

参考:法定調書の種類及び提出期限|国税庁

関連記事:法定調書の提出期限や遅れた場合の罰則について紹介

1-1. 法定調書の役割

法定調書の主な役割は、支払った金銭の流れを明確にし、脱税や不正申告を防ぐことです。企業が支払った報酬や料金の情報を税務署に報告することで、税務署は支払った側と受け取った側の申告内容を照合でき、適正な納税がおこなわれているかを確認できます。

例えば、A企業がフリーランスのプログラマーBさんに200万円の報酬を支払った場合、A企業は「報酬・料金等の支払調書」を税務署に提出します。一方、Bさんは受け取った200万円をもとに確定申告をおこないます。このとき税務署は、A企業の支払調書とBさんの申告書を照合することで、過少申告や未申告がないかを確認できます。

もし支払調書が提出されなかった場合、Bさんが100万円として申告したとしても、A企業とBさんのどちらに誤りがあるのか判断することが難しくなります。その結果、適正な納税の確認が困難になり、税収の確保や公正な課税制度の運営にも影響します。

このように、法定調書は単なる事務手続きではなく、申告・納税の透明性を高め、税務リスクを低減する重要な役割を果たしています。また、適切に作成・提出することで、税務署からの問い合わせや調査のリスクを減らす効果も期待できます。

1-2. 法定調書合計表との違い

法定調書に似た名称の書類として「法定調書合計表」があります。一見、法定調書の略称のように思われがちですが、実際にはまったく別の書類です。両者に共通しているのは、どちらも税務署への提出が義務付けられている点です。しかし、記載内容や目的には明確な違いがあります。

まず、法定調書は、給与所得や退職所得、報酬・料金、不動産使用料など、個々の支払金額や所得を詳細に記録する書類です。これに対して、法定調書合計表は、法定調書の情報をまとめるための書類で、源泉徴収票や報酬・料金等の支払調書に記載された人数や支払合計金額を一覧で記入します。つまり、個別の明細ではなく、集計した数値を税務署に報告することが目的です。

1-3. 法定調書の作成から提出までの流れ

法定調書の提出義務者は、法定調書の種類ごとに定められています。また、支払金額が一定以下の場合など、一部のケースでは提出を省略できます。

提出が必要な場合は、まず対象者ごとの支払金額や源泉徴収税額を集計します。その後、各法定調書のフォーマットに沿って記載をおこないます。

作成が完了したら、提出方法として「税務署窓口」「郵送」「電子申請(e-Taxなど)」のいずれかを選び、期限内に提出します。提出期限は法定調書の種類ごとに異なりますが、給与所得の源泉徴収票や報酬・料金等の支払調書など多くの場合は、事実があった年の翌年1月31日です。

提出後は訂正や再発行に備えて、法定調書の写し(控え)を一定期間保存しておくと安心です。

参考:No.7400 法定調書の提出義務者|国税庁

2. 法定調書の主な種類と書き方のポイント

ポイントのブロック

先に法定調書は60種類ほどあると述べましたが、主に使われているのは次の6種類です。

  • 給与所得の源泉徴収票
  • 退職所得の源泉徴収票
  • 報酬、料金、契約金および賞金の支払調書
  • 不動産の使用料等の支払調書
  • 不動産等の譲受けの対価の支払調書
  • 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書

ここでは、それぞれの法定調書の特徴や書き方のポイントについて解説します。

なお、各法定調書の様式については、国税庁のホームページで確認できます。実際に法定調書を作成する際は、以下の国税庁のマニュアル(令和7年分)を参考にするとよいでしょう。

参考:令和7年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引|国税庁

2-1. 給与所得の源泉徴収票

給与所得の源泉徴収票は、従業員を雇用する事業主が発行する法定調書です。給与所得の源泉徴収票の書き方のポイントは、まず「給与所得者の氏名・住所・マイナンバー」を正確に記入することです。

次に「支払金額」「給与所得控除後の金額」「源泉徴収税額」などの金額欄は、給与明細や年末調整の計算に基づき正確に記載します。各種控除(扶養控除や配偶者控除など)がある場合は、漏れなく反映させることが重要です。

税務署へ給与所得の源泉徴収票を提出しなければならないケースは、年末調整をおこなったかどうかなどによって変わるため、事前によく確認しておくことが大切です。

参考:No.7411 「給与所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等|国税庁

関連記事:源泉徴収票の作成方法や作成手順を詳しく紹介

2-2. 退職所得の源泉徴収票

退職所得の源泉徴収票は、従業員が退職をするときに退職金を支払う際に作成する法定調書です。書き方のポイントは、まず「支払金額」と「退職所得控除後の金額」「源泉徴収税額」を正確に記入することです。

控除額は勤続年数や役職によって異なります。また、「退職所得の受給に関する申告書」の提出有無で源泉徴収税額の計算方法が変わる点にも注意が必要です。

なお、退職所得の源泉徴収票を税務署に提出しなければならないのは、法人の役員に退職金を支払った場合です。ただし、すべての退職金を支払った者に対して交付義務があるので注意してください。

また、死亡退職の場合は相続税法に基づく別の調書を提出するため、退職所得の源泉徴収票は不要です。

参考:No.7421 「退職所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等|国税庁

関連記事:退職所得の源泉徴収票を作成するときのポイントを徹底解説

2-3. 報酬、料金、契約金および賞金の支払調書

「報酬、料金、契約金および賞金の支払調書」は、税理士やフリーランスなどへ、源泉徴収の対象となる報酬や原稿料などを支払った事業者が発行する法定調書です。「支払先の名称や住所」「個人番号(または法人番号)」「支払区分」「金額」「源泉徴収税額」などを記載します。

この報酬、料金、契約金および賞金の支払調書は、外交員への報酬・料金や広告宣伝のための賞金などの一定のケースを除き、年間5万円を超える支払いがある場合に作成・提出が必要です。この判定は原則として消費税額等(消費税および地方消費税)の額を含めて判定します。

ただし、消費税等の額が明確に区分されて記載されている場合には、消費税等の額を含めないで判定しても差し支えないとされています。例えば、次のケースでは、消費税等の額を含めなければ5万円以下となるので提出しなくても問題ありません。

47,000円(原稿料)+ 4,700円(消費税等10%) = 51,700円

なお、ほかの法定調書も同様に判定をおこないます。この消費税額等については「摘要」欄へ記載するので留意が必要です。

参考:消費税等が含まれている場合の提出範囲の金額基準及び記載方法|国税庁

参考:No.7431 「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出範囲と提出枚数等|国税庁

2-4. 不動産の使用料等の支払調書

「不動産の使用料等の支払調書」は、不動産の使用料等の支払調書は事務所などの家賃、地代、更新料が発生した際に作成する法定調書です。一般的に、同一の者に対して年間15万円を超える支払いが発生した場合に提出義務が生じます。ただし、法人に対して家賃や賃借料のみを支払っている場合など、金額に関わらず提出が不要とされるケースもあるので注意が必要です。

参考:No.7441 「不動産の使用料等の支払調書」の提出範囲等|国税庁

2-5. 不動産等の譲受けの対価の支払調書

「不動産等の譲受けの対価の支払調書」は、不動産や建物の売買の際に発生した金銭を記入する法定調書です。同一の取引相手に対して、年間を通して100万円を超える支払額がある場合に税務署への提出義務が生じます。なお、不動産等の譲受けには、売買だけでなく、交換や競売、収用、現物出資などによる取得も含まれます。

参考:No.7442 「不動産等の譲受けの対価の支払調書」の提出範囲等|国税庁

2-6. 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書

「不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」は、不動産の売買や貸付であっせんをおこなった際に発生したあっせん手数料を記載する法定調書です。

年間で15万円を超える手数料が発生した場合には、この支払調書を作成し提出しなければなりません。たとえ「紹介料」「業務委託料」「コンサルタント料」といった名称であっても、実質的にあっせん手数料と同じ性質を持つ場合は、この調書の提出が求められます。

なお、「不動産の使用料等の支払調書」や「不動産等の譲受けの対価の支払調書」の適用欄に「あっせんをした者」の住所や氏名、支払金額などの詳細を記載して提出する場合、この支払調書の提出を省略できます。

参考:No.7443 「不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」の提出範囲等|国税庁

3. 法定調書合計表の書き方・作成方法

書類に記入する

法定調書合計表とは、法定調書を取りまとめた書類のことです。税務署へ法定調書を提出する際には、一緒に添えて提出しなくてはならないので忘れないように注意しましょう。

法定調書合計表は記入項目が多く、従業員が多ければその分作業量も多くなりますが、計算した結果を記入すればいいので書き方自体は難しくありません。とはいえ、ミスをしてしまうと後々修正が必要になります。

ここでは、「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」におけるそれぞれの項目の書き方や作成方法を解説します。実際に法定調書合計表を作成する際は、以下の国税庁のマニュアル(令和7年分)を参考にするとよいでしょう。

参考:令和7年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引 第8 給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表の書き方|国税庁

関連記事:法定調書合計表とは?書き方や提出方法、注意点を徹底解説

3-1. 給与所得の源泉徴収票

俸給、給与、賞与等の総額の人員の欄には、1年間に実際に給与の支払をした人数を記載します。

源泉徴収税額がない人数は、隣の欄に記入しますが、この欄は記載漏れが多い項目なので注意してください。

俸給、給与、賞与等の総額の支払金額と源泉徴収税額の欄には、給与の支払金額の合計と源泉徴収税額の合計を記載します。ただし、年の中途で就職した方が前職で支払受けた給与等の金額などは含めません。

丙欄適用の日雇労働者の賃金の欄には、該当する給与の支払金額の合計と源泉徴収税額の合計を記載します。源泉徴収税額は、給与所得の源泉徴収税額表(日額表)を基に算出します。

源泉徴収票を提出するものの人員の欄には、源泉徴収票を税務署に提出する人数を記入しましょう。なお、この欄には、年の中途で就職した方が就職前に他の支払者から受けた給与等についても含めてください。

3-2. 退職所得の源泉徴収票

1年間で退職手当を支払った人数を記入します。1年間に、退職手当の支払った人数、支払金額の合計金額、源泉徴収税額を記載してください。

さらに、税務署に退職所得の源泉徴収票を提出した人数、退職手当等の支払金額の合計金額と源泉徴収税の合計額を記載します。

3-3. 報酬、料金、契約金および賞金の支払調書

人員欄には、個人と法人を区別して記載してください。

支払金額欄と源泉徴収税額欄には、該当する区分ごとに、それぞれ1年間の合計金額を記載してください。なお、災害被害者が徴収の猶予を受けた源泉徴収税額は含めません。

支払調書を提出するものの欄には、それぞれの区分ごとに記載した人数のうち、税務署に支払調書を提出する人数の合計を記載してください。

3-4. 不動産の使用料等の支払調書合計表

1年間の支払の確定した不動産の使用料等の支払先の人数と、その総額を記載します。

支払調書を提出するものの欄には、上記で記載した人員の中から不動産の使用料等の支払調書を提出する人数の合計と、その総額を記載してください。

3-5. 不動産等の譲受けの対価の支払調書合計表

譲受けの対価の総額の欄には、不動産の譲受の対価として支払の確定した金額(未払の金額を含む)の総額を記載します。不動産等の移転に伴って生じた損失の補償金などを支払った場合にも、その譲受けの対価の総額に含めて記載しましょう。

支払調書を提出するものの欄には、上記のうち支払調書を提出する人数の合計を記載します。

3-6. 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書合計表

あっせん手数料の総額の欄には、不動産売買や貸付けのあっせんで支払の確定した手数料の総額(未払の金額を含む)を記載します。

支払調書を提出するものの欄には、上記のうち支払調書を提出する人数の合計を記載します。

(摘要)欄には、あっせん手数料に関する事項を、別の支払調書の(摘要)欄に記載して、この支払調書の作成と提出を省略したものについて、支払先の人員と支払金額の合計を記載します。

4. 法定調書の書き方に不安がある場合はどうする?

考える男女

法定調書の作成に自信がないまま進めると、記載ミスが発生し、訂正や再提出が必要になることがあります。書き方に不安がある場合は、国税庁のマニュアルや税務署への確認、あるいは税理士への相談など、正しい記載方法を事前に確認することが重要です。

ここでは、法定調書の作成時に迷いが生じた場合の具体的な対応方法を詳しく解説します。

4-1. 国税庁マニュアルを確認する

法定調書には種類が多く、給与や報酬、不動産取引など、さまざまな支払いに応じて異なる書類があります。そのため、記入方法も複雑で、初めて作成する場合は戸惑うことも少なくありません。

このような場合、国税庁が公開している法定調書の書き方マニュアルを活用することが有効です。マニュアルには、記載が必須となる項目や、金額の計算方法、書き方の注意点などが整理されており、具体的な記入例も掲載されています。例えば、「給与所得の源泉徴収票」の場合、支払金額や源泉徴収税額の記入方法がわかりやすく示されています。

作成を進める際は、まずマニュアルを確認しながら、支払先ごとに必要な情報を整理して順を追って記入していくとよいでしょう。また、法定調書の様式や記載ルールは毎年更新されるため、必ず最新のマニュアルを確認して作成することが重要です。これにより、記載ミスや提出後の訂正を防止できます。

参考:令和7年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引|国税庁

4-2. 税務署に問い合わせする

国税庁の書き方マニュアルを参考にしても、内容がわかりにくかったり疑問が生じたりすることは少なくありません。そのような場合は、所轄の税務署に問い合わせるのも有効です。

税務署では窓口や電話での相談が可能で、専門の職員から指導を受けられます。事前に住所や電話番号を調べておくと対応がスムーズです。

ただし、税務署の開庁時間は平日の限られた時間帯に限られ、混雑している場合にはすぐに相談できないこともあります。そのため、法定調書の提出期限や必要な手続きを考慮し、余裕をもって相談の計画を立てることが重要です。

参考:国税に関するご相談について|国税庁

4-3. 税理士に代行を依頼する

自社の法定調書の作成や提出に手間をかけられない場合や、記入方法に不安がある場合は、税理士に依頼するのが最も安全かつ効率的です。税理士は税務の専門家であり、法定調書の記載内容や提出期限を正確に把握しているため、ミスや再提出のリスクを避けながら安心して任せられるでしょう。

ただし、税理士資格を持たない者が他者の法定調書を作成・提出することは法律上認められていません(税理士法による独占業務)。自社の法定調書を自社で作成・提出する場合は、資格がなくても対応できます。また、税理士に依頼する場合は費用が発生するため、依頼内容や範囲を事前に明確にしたうえで、複数の税理士から見積もりを取り、比較検討することが重要です。

参考:2 税理士の業務|国税庁

5. 法定調書をミスなく作成するためのヒント

チェックボックスと虫眼鏡

法定調書の書き方を習得しても、作成作業には時間がかかり、入力ミスなどのリスクがあります。ここでは、法定調書を正確に作成するためのポイントを紹介します。

5-1. 法定調書の提出対象者を正しく把握する

法定調書は、給与や報酬など支払先ごとに提出対象が異なります。そのため、事前に提出対象者を正確に把握していないと、提出漏れが発生し、税務署から指摘を受けたり、最悪の場合は法律に基づく罰則が課せられたりするおそれがあります。

自社の従業員や取引先ごとに、どの取引にいくら支払っているかを明確にしておくことが重要です。例えば、給与や賞与に加えて退職金を支払っている場合は、「給与所得の源泉徴収票」だけでなく、「退職所得の源泉徴収票」も作成・提出する必要があります。

効率的かつ正確に対応するためには、給与台帳や会計ソフトを活用して、従業員や取引先の情報を整理しておくとよいでしょう。情報が整理されていれば、記載ミスや提出漏れを防ぎ、税務署からの問い合わせにも迅速に対応できます。

5-2. 最新の法改正を必ずチェックする

法定調書の作成・提出に関するルールは、税制改正によって毎年変更されることがあります。そのため、前年の情報や古いマニュアルをそのまま参考にすると、計算ミスや提出形式の不備が生じるリスクがあります。

例えば、令和7年度税制改正により、2025年分の所得税の計算から基礎控除や給与所得控除の引き上げ、特定親族特別控除の創設、扶養親族等の所得要件の見直しが適用されます。これにより、給与所得の源泉徴収票のフォーマットや作成方法にも変更が生じ、従来の作成手順をそのまま使用すると誤りが発生する可能性があります。

そのため、企業としては毎年の税制改正情報を社内で確実に把握・共有し、法定調書作成のマニュアルやチェックリストを最新化しておくことが重要です。また、税務担当者だけでなく、人事・総務・経理部門全体で改正内容を周知し、必要に応じて税理士や外部専門家の助言を得る体制を整えることで、ミスや申告漏れを未然に防止できます。

参考:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について|国税庁

5-3. 専用ツールを使用して作成する

法定調書は、手書きで作成し税務署の窓口に提出することも可能です。しかし、手作業や表計算ソフトでの作成では、入力ミスや計算ミスのリスクが高く、担当者の負担も大きくなります。そのため、国税庁が提供する「e-Taxソフト」や、法定調書作成機能を備えた「給与計算ソフト」の活用が推奨されます。

これらのツールを使用すれば、作成から提出までの作業を効率的に自動化でき、人的ミスを大幅に減らすことが可能です。また、従業員や支払先の情報をソフトに登録しておくと、翌年度以降もスムーズに作成でき、業務負担の軽減につながります。

さらに、一定規模以上の事業者には法定調書の電子提出義務が課されており、今後は電子申告の対象となる事業者が増えることが予想されます。早めに電子化に対応しておくことは、作業効率の向上だけでなく、法令遵守の観点からも重要です。

参考:法定調書(源泉徴収票、支払調書)の作成と提出|国税庁

関連記事:源泉徴収票は電子化しよう!義務基準やメリットをわかりやすく解説

6. 法定調書の訂正方法

はてなマーク

法定調書の内容に誤りが見つかった場合は、速やかに訂正をする必要があります。訂正をおこなう際は、以前に提出した法定調書を無効化するため、次の書類を合わせて提出します。

  1. 以前提出した法定調書
  2. 以前提出した法定調書合計表
  3. 訂正後の正しい法定調書
  4. 訂正後の法定調書合計表

なお、訂正の提出期限も変わらず、原則として翌年1月31日までです。期限ギリギリに作業すると不備に気づかないリスクがあるため、余裕を持って法定調書の確認・訂正をおこなうことをおすすめします。

参考:提出した法定調書に記載誤りを発見した場合の訂正方法|国税庁

6-1. 法定調書と法定調書合計表の写しを持参する

まずは、最初に提出した法定調書と法定調書合計表の写しを用意してください。
写しを用意していない場合は、前回提出したものと同じ内容の法定調書と法定調書合計表を作成します。

同じ物を作成したら、記載ミスをした法定調書の右上に赤で「無効」と記載し、法定調書合計表には「調書の提出区分」の欄に無効である「4」(無効)を記載します。

6-2. 正しい法定調書と法定調書合計表を作成する

間違ってしまった法定調書と法定調書合計表が用意できたら、次はミスを訂正した調書を作成します。

正しい内容で再度法定調書を作成し、右上に「訂正分」と赤書きしましょう。法定調書合計表も正しい数字を記入して作成し、「調書の提出区分」の欄には訂正である「3」(訂正)を記載してください。

6-3. すでに源泉徴収票などを交付している場合

法定調書や法定調書合計表に記載ミスがあった場合、従業員や取引先に交付済みの源泉徴収票や支払調書にも誤りがある可能性があります。

特に源泉徴収票は従業員への交付が義務付けられているため、必ず正しいものを作成して再交付する必要があります。一方、支払調書は法律上、取引先への交付義務はありませんが、企業によっては取引先の要望に応じて交付している場合もあります。

正しい法定調書を作成した後は、源泉徴収票や支払調書も正しい内容に基づき作り直しましょう。再交付する場合は、誤った書類と区別できるよう「再交付」と明記することを忘れないでください。

6-4. 提出期限が過ぎている場合

法定調書の提出期限を過ぎて誤りが判明した場合は、まず所轄の税務署に速やかに連絡し、訂正手続きや必要な対応を確認しましょう。

法定調書に誤りがある場合、従業員や取引先に交付済みの源泉徴収票や支払調書にも同様の誤りが含まれている可能性があります。そのため、これらの書類を基に確定申告をおこなった際には、納税額が正確でない場合があり、追加納付や訂正申告が必要になることがあります。

税務署への確認と並行して、従業員や取引先に対して誤りを謝罪し、今後の対応方針を説明するのが望ましいでしょう。税務署への相談と関係者への連絡をセットで実施することで、法定調書の誤りによるリスクを最小限に抑えられます。

7. 法定調書の書き方や訂正方法を確認しよう

会議する人

法定調書は、給与や報酬、不動産取引などの支払い状況を税務署に報告するための書類で、基本的に毎年作成・提出する必要があります。主な法定調書は一般的に6種類ほどありますが、種類ごとに記載方法や作成対象が異なるので、その年に作成すべきものを必ず確認しておくことが重要です。

提出期限は原則として翌年の1月31日までとなっており、期限を過ぎると罰則の対象となる場合があります。また、提出後の訂正も可能ですが、期限内に正しい内容で提出することが望ましいです。間違いを防ぐために、法定調書の正しい書き方をしっかり確認して作成しましょう。

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