生活残業とは?企業への影響と対策(やめさせる方法)を徹底解説
更新日: 2025.6.13
公開日: 2024.12.16
jinjer Blog 編集部
生活残業とは、なくても業務に支障がでない不要な時間外労働です。企業には支払うべき残業代が増加するなどの影響があります。しかし、急な制度改定による残業禁止などの対策は、生活のために残業している従業員の不満になりかねません。
本記事では、生活残業が多い理由や、企業への影響と対策方法を徹底解説します。
不要な時間外労働が発生する理由がわかれば、自社に合った生活残業への対策方法を見つけやすくなるため、ぜひ参考にしてください。
目次
「サービス残業」「持ち帰り残業」「付き合い残業」…このような見えない残業、見過ごしていませんか?
もしかしたら、あなたの会社にも、見えにくい形で労働時間が増えている従業員がいるかもしれません。
こうした「隠れた残業」は、単に労働時間を超過するだけでなく、企業の未来を蝕むリスクになっている可能性があります。
- 法令違反のリスクを高め、予期せぬ未払い賃金請求や労働基準監督署からの指導につながる可能性
- 従業員の心身の負担を増大させ、モチベーション低下や離職を引き起こす可能性
このような見えない残業を放置することは、結果的に従業員のエンゲージメントを低下させ、組織全体の活力を損ねてしまうリスクになります。
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1. 生活残業とは生活費を稼ぐための不要な時間外労働
生活残業とは、生活費を稼ぐことを目的とした時間外労働で、残業しなくても業務に支障はないことがほとんどです。
厚生労働省の労働時間に関する調査によると、約1割の人が残業時間を増やしたいと考えています。残業の増加を希望する人のうち、7割近くが残業代を稼ぎたいことを理由にあげている状況です。
残業時間が制限されるようになったものの、残業代のために時間外労働する従業員は減らず、対策を迫られている企業は多いといえます。
参考:労働時間制度等に関するアンケート調査結果について(速報値)|厚生労働省
1-1. 生活残業は違法なのか?
生活残業は違法ではありません。会社は労働の対価として従業員に賃金を支払う義務があります。そのため、従業員が生活費を稼ぐためにダラダラと仕事をして時間外労働をおこなっていたとしても、会社側はその時間に対して正しく賃金を支払わなければなりません。
ただし、本来仕事していないにも関わらず、申請時に残業時間を水増しするような行為は違法です。また、時間外労働には上限が設けられています。労働基準法や36協定による時間外労働の上限を超えた場合は、企業側に罰則が課せられる恐れもあるので、気を付けて勤怠管理をおこないましょう。
関連記事:勤怠の改ざんが発覚!従業員への処分方法と不正予防について徹底解説
2. 生活残業をする従業員が多い要因
生活残業がおこなわれることには理由があります。ここでは、生活残業をする従業員が発生する要因について詳しく紹介します。
2-1. 基本給が低く残業代がなければ生活できない
基本給の金額の低さは、生活残業を発生させる理由の一つです。
近年では物価高や燃料費高騰などの影響で、食料品や生活必需品、電気料金などあらゆるもののコストが増えています。このため、基本給の金額によっては、生活が苦しくなっている従業員も少なくありません。
残業代で稼がなければ生活が厳しい状況も、不要な時間外労働が増える原因といえます。
2-2. 自由に残業できる
時間外労働を規制するルールがないことも、生活残業をする従業員が増える要因です。上司の承認がなければ残業できないなどのルールがある場合、残業代のためだけの時間外労働はできません。
特別な制限がなく自由に時間外労働できる職場環境では、生活残業が発生しやすくなります。
2-3. 長時間労働を評価する人事制度がある
業務の効率性だけでなく、長時間労働を評価する企業文化がある場合、生活残業が増える傾向にあります。日本では、定時で退社することが評価されない企業もあり、残業することが仕事の成果や努力の証とみなされるケースがあります。
労働時間の長さが人事評価や査定に影響を与える社風では、急ぎの業務がなくても、評価を得るために残業をする従業員が増える可能性が高くなります。
2-4. コンプライアンスに関する意識が低い
企業や従業員のコンプライアンス意識が低い場合、生活残業が発生しやすくなります。労働基準法や社内の就業規則に基づき、正しく勤怠管理がおこなわれていれば、違反行為を未然に防止し、必要以上の残業をなくすことが可能です。
一方、コンプライアンスが軽視されると、社内の秩序が乱れ、不要な時間外労働が生じやすくなり、その結果、生活残業が増加する可能性もあります。
3. 生活残業をする人の特徴
生活残業をしやすい組織だけでなく、人にも特徴があります。ここでは、生活残業をする人の特徴について詳しく紹介します。
3-1. 繁忙期も閑散期も残業時間が変わらない
生活残業をする人は、業務の必要性によらず残業代を得ることを目的としているため、繁忙期・閑散期にかかわらず残業時間が大きく変動しない傾向があります。通常、業務量に応じて繁忙期には残業が増え、閑散期には減少するのが一般的です。
3-2. 効率よく業務を進める意欲が見られない
生活残業をおこなう従業員は、残業代を目的とするあまり、業務効率を意識しにくくなる場合があります。このような状況は、会社の人事制度が効率的な働き方を十分に評価できていないことに起因している可能性も考えられるでしょう。効率的に業務を遂行した社員を適切に評価する仕組みを導入することで、不要な残業の抑制につながる可能性があります。
3-3. 不要な離席や休憩が多いまたは長い
残業代を稼がなければ生活していくことが難しい人は、本来は効率的に業務を終えられるにもかかわらず、業務時間内に不要な離席や休憩を挟むことで、業務の進行を意図的に遅らせてしまうケースも考えられます。このような行動も個人の問題だけでなく、固定給や評価制度など、会社側の制度設計にも起因している可能性があるため、制度全体を見直すことが重要です。
3-4. 周囲の雰囲気に流れやすい
生活残業が職場で常態化している場合、たとえ残業代を目的としていなくても、職場の雰囲気や周囲の働き方に影響を受けやすい人は、本来必要のない時間外労働をおこなってしまうケースがあります。このような状況を放置すると、生活残業が職場全体に波及し、結果として本来支払う必要のなかった人件費が膨らむリスクがあります。
4. 生活残業で企業が受ける影響
生活残業によって企業にどのような悪影響があるのでしょうか。ここでは、生活残業で企業が受ける影響について詳しく紹介します。
4-1. 不要な残業により人件費が増加する
本来、生活残業は必要ない時間外労働です。不要であっても従業員が残業した事実がある以上、企業には賃金の支払い義務が生じます。
不要な時間外労働への残業代の支払いは、企業にとっての損失であり、利益を減らす要因です。企業の利益を減らさないためにも、不要な生活残業を減らすための対策が必要不可欠といえるでしょう。
4-2. ほかの従業員のモチベーションが低下する
企業には効率を考えて業務をこなし、必要なときだけ残業する従業員もいます。生活残業を黙認していると、必要なときだけ残業している従業員が不満を持ち、モチベーションが下がりかねません。
モチベーションが低下した従業員が退職すると、優秀な人材を失う原因になります。人手不足が深刻化している企業も多い中で、人材の流出を防ぐためにも生活残業への対策は極めて重要です。
4-3. 残業時間が多いと労働基準監督署から指導を受ける
労働基準法では労働させられる時間の上限「法定労働時間(1日8時間、週40時間)」が定められています。しかし、36協定を締結・届出すれば、法定労働時間を超えて働かせることが可能です。
ただし、36協定を結んだとしても、残業時間の上限「月45時間・年360時間」が設けられています。この上限は、臨時的な特別の理由があり、特別条項付き36協定を締結・届出していなければ、超えることができません。
あまりにも残業時間が長い場合、従業員が通報するなどによって、労働基準監督者から調査がおこなわれる可能性もあります。その際、労働基準法に違反していたら、指導を受けることになります。悪質な場合には、罰金や懲役などの罰則が課せられる恐れもあるので注意しましょう。
関連記事:36協定における残業時間の上限を基本からわかりやすく解説!
4-4. 社外からのイメージが下がる
生活残業が常態化すると、長時間労働が当たり前になり、組織全体の平均残業時間が増加します。また、業務を効率的に進める優秀な人材ほど、より働きやすい環境を求めて転職を検討する可能性も高まり、離職率の上昇につながるリスクがあります。
このような状況が続けば、社外から「労働環境に問題がある企業」とみなされ、いわゆるブラック企業としてのイメージが定着する恐れもあります。そのため、生活残業が常態化している場合には、放置するのでなく、早期に対策を講じることが大切です。
5. 生活残業を防止する方法
生活残業は、企業に多くの悪影響を及ぼします。そのため、生活残業をなくすための対策を講じることが大切です。ここでは、生活残業を防止する方法について詳しく紹介します。
5-1. 給与体系を見直す
自社の給与体系を見直すことは、生活残業を抑制する有効な手段の一つです。とくに基本給を適切な水準に引き上げることで、従業員が生活費を残業代に頼らずに賄えるようになり、結果として不要な残業を減らす効果が期待されます。
企業側にとっては、基本給の支出が増加する一方で、割増賃金が必要となる残業代の支払いを削減できる可能性があり、長期的にはコストの最適化につながるメリットもあります。
5-2. 残業を評価しない人事制度に改定する
人事制度の見直しも、不要な時間外労働の削減に有効な手段となります。従来、長時間労働を評価するような企業文化や評価制度がある場合、それが不要な残業を助長する一因となっていることがあります。
そのため、労働時間の長さではなく、成果や効率を重視する評価制度へと転換することで、評価を下げたくないという意識から発生する生活残業を抑制する効果が期待できます。
5-3. 正当な理由がない場合に残業できない仕組みにする
残業を原則申請制とし、正当な理由がない限り時間外労働を認めない制度を導入することも、不要な残業を抑制する効果的な方法です。生活残業では、緊急性の低い業務をあえて時間外に処理するケースが多く見られるため、業務の必要性が確認できる場合に限り、上司の事前承認を要する仕組みが効果的です。
ただし、制度を運用する際は、従業員が本当に必要な残業を申請しにくい雰囲気を生まないよう、上司の運用姿勢にも十分な配慮が求められます。過剰な制限がかえって業務効率を損なわないよう、柔軟でバランスの取れた対応が重要です。
5-4. ノー残業デーを設定する
ノー残業デーの導入も、生活残業の削減に向けた有効な取り組みの一つです。たとえ生活残業が常態化している職場であっても、「定時退社を推奨する日」として明確に位置付けることで、職場全体に定時退社を促す雰囲気を醸成しやすくなります。
また、特定の曜日などに定期的に残業できない日を設定することで、従業員が日々の業務を効率的に進める意識を高めるきっかけにもなり、働き方そのものの改善につながることが期待されます。
関連記事:ノー残業デーを導入する会社のメリット・デメリットを解説!形骸化させない継続のコツとは
5-5. 固定残業代制を導入する
固定残業代制(みなし残業代制)とは、あらかじめ一定時間分の残業代を含めて給与を支給する制度のことです。例えば、「月20時間分の固定残業代」が含まれている場合、実際の残業が20時間以内であれば、追加の残業代は発生しません。
生活残業が多い場合、固定残業代制を導入すれば、早く業務を終えても給与が大きく変動しないため、従業員が業務効率を意識して働く動機付けになります。ただし、固定残業時間(みなし残業時間)を超えて働いた場合には、超過分について法定の割増率に従って追加の残業代を支払わなければなりません。制度の適正な運用と、従業員への十分な説明が求められます。
関連記事:固定残業代とは?制度の仕組みや導入のポイントをわかりやすく解説
6. 生活残業による影響を理解して適切に対策しよう
生活残業とは、残業代を稼ぐためにおこなう不要な時間外労働です。不要な残業が多い企業には、以下のような影響があると考えられます。
- 不要な残業による人件費が増加する
- ほかの従業員のモチベーションが低下する
- 残業時間が多いと労働基準監督署から指導を受ける
不要な残業代の支払いや、モチベーションが低下した従業員の退職による人材流出は、企業にとって大きな損失です。また、労働基準法上の残業時間の上限を超えると、法令違反として労働基準監督署の指導を受けることになります。
自社の生活残業の現状と受ける影響を理解し、適切な対策方法の検討が必要です。
「サービス残業」「持ち帰り残業」「付き合い残業」…このような見えない残業、見過ごしていませんか?
もしかしたら、あなたの会社にも、見えにくい形で労働時間が増えている従業員がいるかもしれません。
こうした「隠れた残業」は、単に労働時間を超過するだけでなく、企業の未来を蝕むリスクになっている可能性があります。
- 法令違反のリスクを高め、予期せぬ未払い賃金請求や労働基準監督署からの指導につながる可能性
- 従業員の心身の負担を増大させ、モチベーション低下や離職を引き起こす可能性
このような見えない残業を放置することは、結果的に従業員のエンゲージメントを低下させ、組織全体の活力を損ねてしまうリスクになります。
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