人事評価制度とは?目的や種類、メリット・デメリットも解説
更新日: 2026.4.24 公開日: 2022.5.2 jinjer Blog 編集部

人事評価制度とは、能力・実績に基づく人事管理・評価をする上で基礎となる重要なツールであり、人材育成にも活用されるものです。
社員のモチベーション向上や適切な人材配置、生産性の向上を目的として、人事評価制度を導入しようと検討しているのであれば、導入前にチェックしておきたいポイントがあります。
本記事では、これから人事評価制度を導入したいと考えてる方に向けて、人事評価制度の導入手順や、近年の人事評価制度の傾向などを紹介します。人事評価制度を導入して効果的に活用するために、しっかりポイントを押さえておきましょう。
参考:人事評価|人事院
関連記事:人事評価はなぜ必要?導入して考えられるメリットやデメリット
目次
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードの上、お役立てください。
1. 人事評価制度の目的

人事評価制度は、従業員の働きや貢献度、成果、意欲などを総合的に評価する重要な制度です。一般的に1年ごとまたは半年ごとに評価がおこなわれ、その評価に対して賞与や昇給や待遇向上などの形で報酬を反映するというのが一般的な手法です。
適切な人事評価制度を設けることにより、従業員の能力や実績が明確になるため、企業にとっては導入すべき制度といえるでしょう。ここでは、人事評価制度の目的をより具体的に解説していきます。
1-1. 従業員のモチベーション向上
人事評価制度の一番の目的ともいえるのが、従業員のモチベーション向上です。
人間は、頑張りや努力、成果を適切に認めてもらえると、モチベーションが一気に上がります。逆に、どんなに頑張っても評価されない、報酬も変わらないという状況では、優秀な人材であっても能力を発揮しなくなります。
企業を成長・拡大していくうえで、従業員のモチベーションは大事なポイントです。やる気のある従業員が多ければ多いほど、企業が活性化して業績が上向きになりやすく、苦しい状況に陥ったとしても、立て直すために労使が一丸となりやすいです。
人事評価制度は評価項目が決まっており、評価に根拠があるため従業員の満足度も高まります。さらに、報酬が上がったり役職が付いたりすることで、会社への帰属意識も高めることが可能です。
1-2. 人材の適材適所の把握
人事評価をおこなうと、従業員のスキルや能力を明確にできます。また、業務の成果を客観的に判断できるため、人材の適材適所の把握が可能になります。
例えば、営業職でなかなか契約が取れない従業員でも、プレゼン資料の作成や見積書の作成が正確で早いという評価が出れば、総務部や経理部に配置することで能力が発揮されるかもしれません。部署や役職ごとにスキルの指標を設けておけば、「チームリーダーに向いている」「運営管理に向いている」などの判断もしやすくなるでしょう。
最適な人材配置を実現し、従業員の能力開発やキャリアパスを構築することは、企業の業績アップや仕事の効率化につなげることも可能です。さらに、人事評価制度は教育の指標としても活用でき、優秀な人材の醸成に貢献します。
1-3. 客観的な業績の評価
人事評価には、客観的に業績を評価するという目的もあります。
営業部や運営部など、業績が数値化できる部署であれば、「目標達成率」や「成約件数」など客観的に評価するのは難しくありません。しかし、総務部や経理部など売上に直接関係のない部署の場合、「業績」が見えにくいため評価も難しくなります。
人事評価制度の項目は部署ごとに設定できるため、それぞれの部署にあった評価項目を作成するのが一般的です。例えば、経理部の場合、「ミスのゼロ率」「他の従業員へのサポート時間」など経理の業務に合わせた評価をおこなうことが可能です。ルーティンワークというのは評価されにくく、上司の個人的な感情で評価が変化することもありますが、人事評価制度を導入すれば客観的に評価ができます。
1-4. 経営方針の周知
人事評価制度を企業の目標や理念と連携させることにより、従業員に対して企業の方向性を明確に伝えることができます。従業員が企業の目標に共感し、それに向かって取り組む意識を持つことで、組織全体のパフォーマンス向上や成長につながります。「どの方向に努力すれば評価されるのか」という指針も見えるため、自己研鑽への意欲も高まりやすいでしょう。
適切な人事評価制度を設けることは、企業の体制を強化し、人材の育成と継続的な成長を促進する重要な手段です。従業員のモチベーションやエンゲージメントを高め、組織全体のパフォーマンスを向上させるために、人事担当者は綿密な評価基準の設定と公正な評価プロセスの実施に注力する必要があります。
2. 人事評価制度の構成要素

人事評価導入の際には評価基準を明確にすることが大切です。評価基準は、企業の目標や価値観に合致し、従業員のパフォーマンスを客観的に評価するための指標となります。
人事評価制度の構成要素となる3つのポイントについて詳しく説明します。
2-1. 等級制度
等級制度は、従業員の役割や職務に応じて目標や指針を分類する手法です。「格付け」や「ランク付け」と捉えるとわかりやすいでしょう。
等級制度では、従業員がどのレベルに位置し、どのようなスキルや職務を果たすべきかを明確化します。また、次のランクに上がるために必要な能力や成果もわかりやすくなるため、従業員はキャリアアップの道筋を見出しやすくなるでしょう。
2-2. 評価制度
評価制度は、等級制度を基準に従業員の能力や成果、勤務態度などを評価します。
- 能力評価
- 業績評価
- 情意評価
一般的にはこの3つの観点を組み合わせて評価をおこないます。
能力評価と業績評価に加えて、情意評価があることで個人のスキルや業績、成果だけでなく、勤務態度や数字になりにくい貢献度なども評価することが可能です。これらの観点については「4. 人事評価の3つの基準」で詳しく説明しています。評価制度は、定量的な評価基準や行動指針を設けることで、公平かつ客観的な評価を実現し、従業員の成長や改善のためのフィードバックを提供します。
2-3. 報酬制度
報酬制度は、評価結果に基づいて従業員に与えられる報酬を明示する手法です。報酬は給与やボーナス、昇進や昇給、福利厚生など多岐にわたります。報酬制度は従業員のモチベーションやエンゲージメントを高め、優れたパフォーマンスや成果を適切に評価して報いることで、従業員の働きに対する意欲を促進します。
これらのポイントを意識することで、組織は公正な評価を実現し、従業員のモチベーションや成長を促進することができます。評価基準は企業の文化や戦略に合致し、透明性と一貫性を持つことが重要です。
3. 人事評価制度の種類と近年の傾向

人事評価制度にはさまざまな種類があり、自社に適した制度を選ぶことが重要です。1つの人事評価制度では公平な評価ができないことがあるため、複数の制度を組み合わせて運用することも多いです。どのような人事評価制度があるのか、近年の傾向とあわせて見ていきましょう。
3-1. 人事評価制度の種類
まずは人事評価制度の種類を知っておきましょう。近年は以下のような人事評価制度が主に選ばれています。
目標管理制度「MBO」(人事評価・報酬の決定が目的)
MBOは目標管理の手法であり、従業員が個別の目標を設定し、それに向けて計画を立て、進捗を管理することを重視します。上司と従業員が定期的に目標達成度を評価し、フィードバックをおこないます。MBOは目標に焦点を当て、従業員の目標達成能力を重視して報酬を決めることが主な目的です。
目標管理制度「OKR」(組織成長・目標達成が目的)
OKRは目標と主要な成果指標を組み合わせた管理手法であり、目標設定と進捗管理を重視します。目標(Objectives)はビジョンや戦略に基づき設定され、主要な成果指標(Key Results)は目標達成度を測定するための具体的な指標です。OKRは目標の達成に焦点を当て、企業全体の方向性と従業員の成果を結びつけます。
【関連記事】MBOとOKRの違いとは?6つのポイントでわかりやすく解説
コンピテンシー評価
従業員のスキル、知識、態度、行動などのコンピテンシーに基づいて評価をおこなう手法です。特定の職務や役割に必要なコンピテンシーを評価し、従業員の能力や成長ポテンシャルを評価します。コンピテンシー評価は個々のスキルや行動の開発に焦点を当て、従業員の能力向上を促進します。
360度評価
従業員のパフォーマンスを評価する際に上司だけでなく、部下、同僚、顧客などからのフィードバックを組み合わせておこなう評価手法です。多角的な視点からのフィードバックを収集することで、より包括的な評価が可能となります。360度評価は従業員の全体的なパフォーマンスや相互関係の向上に役立ちます。
バリュー評価
バリュー評価とは、従業員が企業の価値観を反映した規範を守っているかを評価します。バリュー評価は企業と従業員の価値観を合致させることが可能です。また、従業員の価値観が揃っているため組織としての強度も増すでしょう。しかし、バリュー評価は数値化できる基準で評価するものではないことから、公平性が損なわれやすいです。導入する際は評価の基準を明確にする必要があります。
3-2. 人事評価制度は時代とともに変化する
日本では長い間年功序列の評価制度が選ばれており、現代でもそうした風潮は根強く残っています。
しかし、近年は若者を中心に能力主義や成果主義による評価が求められるようになっており、人事評価制度に対する考え方が変わりつつあります。
特に若くて優秀な人材は、自分の能力や成果が評価され、活躍できる場所を求める傾向が強いです。終身雇用という考え方が薄れ、転職のハードルも下がっていることから、古い人事評価制度のままでは人材の流出が増え、人材の確保も困難になっていくでしょう。
また、タイムパフォーマンスやワークライフバランスを重視する傾向も無視できません。「長時間働くことよりも、短時間で成果をだしてプライベートな時間を充実させることが大切」という意識も強まっていることから、評価基準も時代に即したものに変化させていく必要があります。
【関連記事】近年の人事評価制度に見られるトレンドの特徴についての解説
4. 人事評価の3つの基準

人事評価に取り組む際は次の3つの基準を把握しておきましょう。
- 業績評価
- 能力評価
- 情意評価
それぞれがどのような観点で評価するものなのか、重視する点を理解することでより正確な評価がしやすくなります。
4-1. 業績評価
業績評価は一定期間における従業員の成果や会社への貢献度を評価するものです。業績評価は具体的な数字を用いて、公平性を保った評価が必要です。各部門の業績評価の例は次のとおりです。
- 営業部門:売上高や利益率
- 企画部門:KPIの達成度
- 開発部門:プロジェクトの完了度
わかりやすい評価ですが、数字には現れない貢献もあるため、業績評価だけに偏ってしまうと公平性が失われます。
4-2. 能力評価
能力評価とは業務を遂行するために必要な能力の評価です。評価の対象となる能力の例は次のとおりです。
- 専門知識の習得度
- 問題解決能力
- コミュニケーションスキル
- リーダーシップ
- 企画力・実行力
- 交渉力
- 判断力
ほかにも指導力や改善力など、さまざまな能力が評価項目になり得ます。企業として重視する能力や、役職や職種で求められる能力に重点をおいて評価すると人材の成長を促せるでしょう。
なお、能力評価にあたっては厚生労働省発表の『職業能力評価シート』が活用可能です。
参考:職業能力評価シートについて|厚生労働省
4-3. 情意評価
情意評価は、仕事に対する姿勢や協調性、責任感、規律性などを評価します。例えば積極的に業務にチャレンジしていた、部署の士気を高めたなどの姿勢が評価されます。また、出退勤の状況も情意評価として含まれます。
情意評価は業績評価と異なり具体的に数値化できません。そのため、評価者である上司の主観に左右される恐れがあります。また、納得感が出にくいことも多いため、評価者と被評価者のコミュニケーションや、評価者の育成も求められます。
5. 人事評価制度のメリット

人事評価制度は、適切に運用することで従業員のモチベーション向上や組織全体の活性化など、複数のメリットを受けられます。どのようなメリットが考えられるのか見ていきましょう。
5-1. 従業員のモチベーション向上
人事評価制度が適切に運用されれば、従業員のモチベーション向上が期待できます。透明性を確保し、公平なルールに基づいて評価することで、従業員は自らの努力が正当に認められていると自信をつけられるでしょう。その結果、意欲をもって業務に注力できます。
また、報酬制度や等級制度も明確にすることで、キャリアアップやスキルアップに取り組む意欲も高まります。
5-2. 上司と部下のコミュニケーション促進
人事評価制度は、単に評価を決める判断基準を設けるだけでなく、部署ごとに目標を設定したり、評価後にはフィードバックをおこなったりします。目標設定をする際には、公平な評価ができる数値を決めるため、従業員同士で話し合いが必要になります。また、フィードバックの際には上司が部下と面談を実施するため、普段話す機会がない上司と部下とのコミュニケーションを取ることが可能です。
コミュニケーションが活性化されれば、従業員や上司・部下の信頼関係が高まり、人間関係の円滑化やパフォーマンスアップも期待できるでしょう。
5-3. 適材適所の人材配置ができる
人事評価制度によって従業員の能力や得意分野が可視化されると、適材適所の人材配置がしやすくなります。得意とする業務についてもらうことで、これまでよりも高い能力を発揮できれば生産性が上がり、企業全体が活性化していくでしょう。
また、適材適所の配置ができれば、業務効率も改善されます。残業を減らすことができれば、人件費の削減というメリットも得られるでしょう。
5-4. 組織全体が活性化する
人事評価制度は、従業員に適度な刺激を与えます。評価基準や報酬の変化が明確になることで、「頑張れば評価される」「勤務態度やサポート力も見てもらえる」といった意識が生まれ、同時に「貢献しなければ評価されない」という危機感も出てくるからです。
こうした刺激は企業全体を活性化させます。モチベーションが高い従業員が増えれば、新しいアイデアや積極的な営業などがおこなわれ、勢いのある元気な企業という印象も付くでしょう。
6. 人事評価制度の課題

人事評価制度にはメリットがある反面、会社や評価者が抱える課題もあります。人事評価制度のマイナスの側面をできる限り抑えるために、以下の点には特に注意しましょう。
6-1. 制度の運用に人員やコストが必要
人事評価制度の導入と運用には、時間と労力がかかります。導入時は制度の設計や従業員への周知が必要で、運用には継続的に従業員の調査やデータ管理、評価者の指導や教育などが必要です。
これまでになかった業務が増え、評価する人数が多いほど大きなコストになります。人的コストだけでなく、評価制度に関する業務で残業が増えれば、人件費も増えてしまうでしょう。人事評価制度の効果的な導入や運用には、長期的な目線で体制を構築する必要があります。
6-2. 評価を意識しすぎる従業員がでる
人事評価制度では、能力や貢献度を評価し、それが給与や職位に反映されます。そのため、評価を意識しすぎて人間関係や業務に支障をきたすことがあります。
例えば、より高い評価を得るために激しいライバル意識を持ち不和を生んでしまうケースや、失敗による評価の低下をおそれて挑戦できなくなるケースなどが考えられます。
多角的な項目による評価を実施し、上司と部下のコミュニケーションによって適切な意識を保てるようにしましょう。
6-3. 従業員の個性を狭めてしまうおそれがある
人事評価の項目や評価される基準が厳格すぎると、評価項目に該当する能力しか開発されなくなります。型にはまった人材ばかりが育成され、個性が消えてしまうことで組織全体が不活性化します。
自社に適した人材が育つことはプラスになりますが、他社との協力や方針の転換が必要になった際に、適した人材がいないという状況になりかねません。
ある程度の柔軟性をもたせ、自主性や独自性も考慮した評価をしましょう。
6-4. 評価への不満が意欲低下につながる
人事評価制度は従業員のやる気やモチベーションをあげる効果がある反面、納得いかない評価がされた場合は著しい意欲低下につながることがあります。
さらに悪化すれば、上司や会社への不信感につながり、転職を考える人も出てくるでしょう。
自己評価よりも低い評価が下された際に、不満を持つことはどうしようもありません。しかし、評価の根拠を提示してしっかりとコミュニケーションを取れば、不満をやる気へと変えることができます。評価者の育成もおこない、不満を継続させないようにすることが大切です。
7. 従業員をランク付けしない新しい評価手法

人事評価制度にはメリットと課題の両方があることがわかりました。近年は、人事評価制度の問題点を危惧し、従業員のランク付けをしない「ノーレイティング」という手法を導入する企業が出てきています。どのような人事評価制度なのか見ていきましょう。
7-1. 「ノーレイティング」という考え方
ノーレイティングとは、従業員をランク付けしない人事評価制度です。従来の人事評価制度では、従業員をA~Eのようなランクに分け、それぞれのランクで設定した報酬や待遇を適用させてきました。
ノーレイティングではこのランク付けやスコアによる序列化をしません。代わりに、個人の成果や行動を対話によって評価します。
ノーレイティングでは個人の成長や貢献を重視しするため、柔軟な評価がしやすく、多様化する働き方や従業員の個性を尊重した評価が可能になります。一方で評価者の負担が大きいことや、高いマネジメント能力が求められることなど、課題もあります。
7-2. どんな会社にノーレイティングが適している?
ノーレイティングはすべての企業に適している評価手法ではありません。作業内容が固定的であったり、人材が不足していてマネジメント層に余裕がない場合などは、効果的な運用ができないでしょう。
しかし、以下のような企業には適しており、ノーレイティングによって従業員の育成や企業の活性化につながる可能性があります。
- 若手の育成に力を入れている
- 個人の成果や貢献を重視している
- コミュニケーションが多い
- 多様な働き方を推進している
- 個性を伸ばした成長を期待している
- マネジメント層の育成にも力を入れている
ノーレイティングは従業員個人の働きをしっかりと見れるため、多様化する働き方や状況の変化に対応しやすいです。そうした部分を重視し、マネジメント層にも理解が十分にされる場合は、ノーレイティングは非常によい評価制度になるでしょう。
7-3. ノーレイティングが抱える課題
ノーレイティングはメリットがある一方で、見過ごせない課題もある評価手法です。特に以下の2点には気をつけましょう。
- 評価者の負担が大きく高い能力が必要
- コミュニケーション不足だと不満がでやすい
ノーレイティングでは、上司と部下が対話を通じて評価やフィードバックをおこないます。そのため、評価者の負担が大きくなりやすいです。
また、評価者の判断で評価が決まるため、多角的な視点や柔軟な思考を持った高いマネジメント能力が求められます。評価者に問題があったり、コミュニケーションが不十分なままだったりすると、適切な評価がおこなわれず、納得感がでません。その結果、ノーレイティングが不満の温床になる可能性が高いです。
こうした課題は、評価者の育成に加えてほかの人事評価制度と組み合わせることで解消できることもあります。ノーレイティングの導入を考える際は、十分に検討したうえで判断しましょう。
【関連記事】ノーレイティングとは?メリットや失敗しないためのポイントを解説
8. 人事評価制度の導入の流れ

新たに人事評価制度を設ける場合や、現状の人事評価制度を見直したい場合に、事前に気を付けるべきポイントや人事制度検討の流れ、運用していく際の注意点を解説します。
8-1. 現状の分析
人事評価制度を導入するにあたっては現状を分析しましょう。自社にはどのような従業員が必要なのかを考え、どのように課題を解決するのかを分析します。例えば、どの部署の従業員がどのような問題を抱え、理想像を明らかにします。現状分析の手法は主に次の2つです。
- 定量分析:具体的な数値に基づいて現状を分析する
- 定性分析:従業員へのインタビューなど数値では測れないデータに基づいて分析する
現状の分析は非常に重要です。分析結果をもとに、自社が重視すべき点を再確認し、評価制度の方向性を決めましょう。
8-2. 人事評価の目的の確認
人事評価制度を導入すると、社員のモチベーションや生産性を向上させるなど、さまざまなメリットがあります。ただ、人事評価を設定する目的や項目の設定についての調査が十分ではないと、せっかく人事評価制度を導入しても、思ったような効果を得ることができません。
人事評価制度を導入する際は、導入する目的を明確にし、項目の設定についてしっかりと調査をおこないましょう。
本章では、人事評価制度を導入する目的の確認や評価項目の設定方法を解説します。
①企業のビジョンを明示して共有する
人事評価制度を導入する際は、企業としてのビジョンや目指す姿、それを達成するために従業員に求めることなどを明確にする必要があります。そしてそれを従業員にわかりやすく共有することで、従業員は人事評価制度を意識した行動を取り、正当な評価が受けられるようになります。
企業のビジョンは人事評価制度導入前から設定しているはずですが、必ずしも従業員に浸透しているとは限りません。従業員は人事評価制度を導入したことで企業のビジョンを再認識でき、自分がそれに沿って行動することで会社が目指すかたちへの理解を深めます。
これにより従業員は日々の業務に目的を持って主体的に取り組めるようになり、それにより企業は業績向上を目指せるでしょう。
②最適な人材配置
日本の企業では年功序列をベースとした賃金体系や、終身雇用制度が独自の伝統となっていました。しかし、現在のグローバル化やバブル崩壊以降の不景気、市場や環境の変化によって、年功序列をベースとした賃金体系をやめ、従業員の能力や業績を評価する体系へと変わりつつあります。
人事評価制度を導入すれば、能力や業績に基づいた評価ができ、一人ひとりに最適な役職・役割を見いだすことが可能です。その結果、適材適所の人材配置ができるようになり、企業の生産性は向上します。
③人材育成の促進
人事評価制度では、目標を設定し、従業員がその目的を達成するために行動しながら軌道修正をおこない、評価を受けて、また次の目標を設定するというサイクルを繰り返します。これを繰り返すことで、自社が求める人材を育成しやすくなるのです。
また、公平公正な評価を受けていると感じたり、それに応じて昇給・昇進があると従業員のモチベーションは必ず向上します。「もっと向上したい」と考える従業員が増え、社内で優秀な人材が育っていく可能性が高いです。
④優秀な人材の確保
能力や業績に沿った待遇や人材配置をしている企業ということが知られるようになれば、自分の能力を活かしたいと考える人材が集まるようになります。導入してすぐこの効果が得られるわけではありませんが、長期的に見れば会社の業績を伸ばすことにつながるでしょう。
関連記事:人事評価は「目的の明確化」が重要!仕事の生産性やパフォーマンスがアップ
8-3. 評価項目の設定方法
先ほど説明した評価の目的を理解した後は、目的にあわせた評価項目の設定をしましょう。
人事評価においては「業績・能力・情意」という3つの基本項目に基づいて、一人ひとりの従業員に目標を設定します。公平性があり効果的な人事評価をするためには、基本項目は同じでも、職種や経験値、役職があるかどうかなどで、異なる評価項目を設定しなければなりません。
まずはサンプルやテンプレート、他社事例などを参考にしながら、どの立場の人材に対してどのような項目を設定する必要があるのか調査しましょう。サンプルや事例を参考に、自社オリジナルの視点を盛り込んだ評価項目の作成をする必要があります。
関連記事:人事評価制度で重要な3つの基準の評価項目について解説
8-4. 評価項目のウエイトを決める
基本となる評価項目は「業績・能力・情意」の3つですが、全ての職種や等級に同じ割合でウエイトを設定すると公平な評価ができなくなります。また人事評価方法には種類があり、どの評価方法を導入するかを決定することも重要です。
評価項目を決定したら、評価項目のウエイトを決めなければなりません。このウエイトは、従業員の等級や役職を考慮して決める必要があります。
基本的には等級や役職が上になれば、業績のウエイトが高くなり、等級が下になれば、情意や能力のウエイトが高くなります。特に経験が浅い新入社員は情意を重視した評価になります。
また、部署や職種を考慮することも重要です。営業のような個々の成果が数値化できる職種は業績の重要性が高くなりますが、チームで業務を進め、長期的な視点や専門性が必要な技術職は能力の重要性が高くなります。
人事評価制度を導入する目的もこうしたウエイトと関係することを覚えておきましょう。
人材育成を目的としているのであれば、能力や情意のウエイトが高くなり、従業員の待遇を決めたり適材適所の人材配置をするのであれば、業績のウエイトが高くなります。
また、ウエイトの計算方法は、評価項目に評点を設け、【評点】×【評価ウエイト】で算出するのが一般的です。
8-5. 評価方法を決める
人材評価の方法は、大きく分けて3つあります。
1つ目は、あらかじめ設定した目標の達成度で評価をする「目標管理」です。明確な目標を従業員ごとに設定するため、目標達成に向けて取り組みやすくなり、その結果企業の生産性が向上します。
2つ目はコンピテンシー評価です。これは業務遂行能力が高い人材が共通して持つ行動の特性をもとに評価項目を設定し、それに従って各従業員の評価をします。評価基準が明確になるため、公平な評価が下しやすいという特徴があります。
3つ目は360度評価です。上司からの評価だけでなく、先輩や同僚、後輩など、その従業員の周囲の複数名によって評価をします。異なる立場の複数の人から評価されることで、評価された人が評価内容に納得感を得やすいです。
このように評価方法は1つではないため、どの評価方法を取り入れるのか、メリット・デメリットを比較しながら決める必要があります。
9. 人事評価制度を効果的に運用するポイント

人事評価制度は、上手に運用すれば会社にとってたくさんのメリットを得られます。しかし、評価をおこなうのは人間であるため、ヒューマンエラーが起こるリスクがあるのも事実です。
不当な評価というのは従業員のやる気を失わせるだけでなく、業績の低下や社内の雰囲気が悪化することにもつながります。
ここでは、人事評価制度の注意点を解説します。
9-1. 明確なガイドラインを作成する
どのような評価制度を運用する場合でも、ガイドラインは必ず作成しましょう。ガイドラインが定められていないと、評価者は主観や感情が入った評価をしやすくなります。公平性を欠いた評価になれば、不満や不信感が強くでてしまうでしょう。
ガイドラインには、評価の期間や評価基準、フィードバック方法や処遇など細かいルールの設定が必要です。ガイドラインの内容は企業によって異なりますが、評価者が迷ったり、評価エラーを起こしたりせず、公平で客観的な評価を下せるように決めることが重要です。
9-2. 評価エラーに気を付ける
人事評価をする際、評価者は個人的な感情で評価をしないようにしましょう。「この従業員は仕事が遅い」「この従業員は笑顔で挨拶をしてくれて好感が持てる」など個人的な思い込みによる感情があると、間違った評価をつける可能性があります。
特に「能力評価」や「情意評価」のように、基準を明確にするのが難しい評価項目は、個人の感情や印象が入りやすいため注意が必要です。
「評価」というのは、従業員の報酬や昇進にも関わる重要なものであるため、不当な評価は絶対にあってはなりません。また、不当評価により会社への信頼が失われる可能性もあることを覚えておきましょう。
人事評価はあくまでも「客観的」におこなわれる必要があるため、評価項目と評価基準をしっかりと定めてください。
9-3. 人事評価担当者は慎重に選ぶ
人事評価の担当者は、いかなる場合でも客観的な視点で評価をおこなわなければなりません。評価者の選定を誤ると、評価にばらつきがでて公平性が失われたり、私情を挟んだりという弊害が起きてしまいます。
このようなことを防ぐためには、評価者に対して研修をすることなどが必要となりますが、選定の時点で細心の注意を払いましょう。
また、評価者と評価される人の間に信頼関係があるかどうかも重要です。部下に対してきちんと向き合っていない上司が評価者になってしまうと、きちんとフィードバックがなされなかったり、部下が信頼していないため評価を前向きに受け入れられなかったりして、人事評価の効果的な運用ができません。
適切な人事評価がおこなわれない要因として、根本的に人事評価制度の手順に問題がある場合があります。
当サイトでお配りしているガイドブック「わかりやすい!人事評価の手引き」では、人事評価の公平性が保たれなくなる原因や、その対処法をより細かく解説しています。自社の人事評価制度が正しい効果を得られるか確認したい方は、こちらからガイドブックを無料でダウンロードしてご確認ください。
9-4. 同一労働同一賃金を厳守する
同一労働同一賃金の実行は、政府が推し進める取り組みです。この制度は、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で発生する不合理な待遇差を解消することを目的としています。同じ企業内で同じ仕事をしている従業員間では、雇用形態が異なっていても報酬や評価が等しくなるよう決定しなければなりません。
従って、同一労働同一賃金の実現には、制度自体の見直しや社員間での待遇差の精査が不可欠です。これにより、社員が持つ能力や成果に基づいた公正な評価がおこなわれる環境が整うでしょう。
9-5. 定期的に評価制度の見直しをする
企業環境は常に変化しており、それに応じて人事評価制度も定期的な見直しが必要です。
従業員の増減や事業内容の変更によって、従来の評価基準が適切でなくなることはよくあります。このような状況では、必要とされるスキルや能力が変わるため、評価制度の見直しが不可欠です。
また、多様化する働き方や、変化する考え方への対応も必要です。近年は能力主義・成果主義による人事評価制度が注目されています。時代に適した評価制度で人材を保持するためにも、定期的に人事評価制度を見直しましょう。
10. 効果的な人事評価制度導入して従業員のモチベーションをあげよう

従業員の育成では、仕事ぶりや業績などをしっかりチェックし、褒めたりアドバイスをしたりする必要があります。しかし、業務が忙しいと細かいところまでチェックできないため、結果でしか判断できず頑張りや努力に気がつけないこともあるでしょう。人事評価制度を取り入れれば、従業員の働きを把握できるため、適切に評価できます。
しかし、人事評価制度は、ただ事例を見習って導入すればいいというものではありません。人事評価制度を導入した効果を感じるためには、制度導入に関係する担当者が目的や手法をしっかり把握することが重要です。
また、メリットだけでなくデメリットがあることも理解して、人事制度構築・改善を検討してみてください。
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人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
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