労使協定(36協定)の有効期間とは?下限や更新が必要なケース・理由を解説
更新日: 2025.10.7 公開日: 2022.2.4 jinjer Blog 編集部

時間外労働や休日労働に関する取り決めを定める36協定は、有効期間を設定しなければなりません。有効期間のある労使協定は、期間内で一方的に破棄することができなくなるのがポイントです。
36協定は、多くの場合で1年の有効期間を定め、定期的に内容を見直すのがよいとされています。今回は労使協定(36協定)と有効期間の関係性を詳しく解説していきます。
関連記事:労使協定とは?種類や労働協約・就業規則との違い、届出義務に違反した場合を解説
目次
毎年対応が必要な36協定の届出。しかし、働き方改革関連法による上限規制の変更や複雑な特別条項など、正確な知識が求められる場面は増え続けています。
36協定届の対応に不安な点がある方は、今のうちに正しい手順と注意点を確認しませんか。
◆この資料でわかること
- 働き方改革関連法による上限規制の変更点
- 罰則を避けるための「特別条項」の正しい知識と運用
- ミスなく進めるための締結・届出の具体的な手順
- 【記入例付き】新しい届出様式の書き方
本資料では、届出作成~提出の流れまで36協定の届出について網羅的に解説しており、毎年発生する煩雑な業務の効率化に役立ちます。ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 労使協定(36協定)の有効期間とは?


36協定を締結する際は、実際に労働時間を延長できる「対象期間」と、36協定が効力を発揮する「有効期間」を定めます。対象期間と有効期間では言葉の意味が異なるので、使用する際には注意が必要です。
それぞれの違いや36協定の更新の必要性、提出期限についても紹介します。
1-1. 対象期間と有効期間の違い
36協定における対象期間とは、協定によって労働時間を延長できる期間を指します。延長できる時間数はそれぞれ1日、1ヵ月、1年間と定められています。
一方、有効期間とは、協定が効力を発揮する期間のことです。効力を発揮する期間と、実際に労働時間を延長できる期間は、異なる点がポイントです。36協定の有効期間は、対象期間よりも長く設定しなければならないため、短い場合でも最低1年間(事業完了・業務終了までの期間が1年未満などは例外あり)となります。
ただし、定期的な見直しが必要なことから、有効期間は1年間とするのが望ましいとされています(※労働協約による36協定である場合を除く)。
参考:時間外労働・休日労働に関する協定届 労使協定締結と届出の手引|厚生労働省
1-2. 労使協定(36協定)は定期的に更新が必要
36協定の有効期間が満了すると、その効力は失われます。例えば、有効期間を1年間と定めている場合、毎年あらためて協定を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。
この更新手続きを怠ったまま時間外労働や休日労働を命じた場合、労働基準法違反になるため注意が必要です。
1-3. 労使協定(36協定)の提出期限
36協定が効力を発揮するには、労働者に時間外労働や休日労働をさせる前に、労働基準監督署に協定届を提出する必要があります。また、36協定届には、対象期間の起算日を記載しなければなりません。
そのため、36協定届に記載する起算日より前に届出を済ませる必要があります。36協定の更新をおこなう場合も、有効期間が切れる前に新たな協定を締結・届出し、空白期間が生じないよう気を付けましょう。
なお、36協定には労働者に対する周知義務も定められています。正しく周知されていない場合、たとえ届出をしていても効力が認められない可能性があるので注意が必要です。
関連記事:36協定の提出期限とは?いつまでに更新が必要?提出忘れの罰則も紹介
2. 労使協定において有効期間の定めが必要なものについて


有効期間が必要なのは、労使協定として規則を定める場合です。労働協約として使用者と労働組合で規則を定める労働協約では、有効期間を定めないこともできます。
労使協定と労働協約の有効期間の考え方も含め、それぞれの定義についても今一度おさらいしておきましょう。
2-1. 労使協定とは
労使協定とは、労働者と使用者が合意のもとに労働条件や職場のルールを定め、書面で締結する必要がある協定です。代表的な例として、時間外・休日労働に関する36協定があり、これは労働基準法第36条に基づいて締結・届出が求められます。
このほかにも、変形労働時間制や裁量労働制、代替休暇、一斉休憩の適用除外など、さまざまな制度において労使協定が必要となります。協定の内容によっては、有効期間の設定や労働基準監督署への届出が義務付けられており、協定ごとに必要な手続きや要件が異なる点に注意が必要です。
▽有効期間の定めが必要な労使協定
- 1ヵ月単位の変形労働時間制に関する協定
- 1年単位の変形労働時間制に関する協定
- 時間外・休日労働に関する協定(36協定)
- 事業場外労働に関する協定
- 専門業務型裁量労働制に関する協定
参考:労使協定とは|厚生労働省
関連記事:労使協定の届出義務とは?届出が必要な種類一覧と36協定の新様式を紹介
2-2. 労働協約とは
労働協約とは、労働組合と使用者の間で締結する契約です。労使協定が労働基準法上の制度であるのに対し、労働協約は労働組合法に基づくもので、主に労働条件などの統一的な基準を定めるものです。
労働協約は、書面で作成し、双方の署名または記名押印によって効力が発生します(労働組合法第14条)。有効期間を設けるかどうかは当事者の自由ですが、3年を超える有効期間を定めた場合でも、法的には「3年の有効期間」として扱われます(労働組合法第15条)。
関連記事:労使協定と労働協約の違い・位置付けと違反時の罰則とは
3. 労使協定(36協定)が必要な理由


36協定が必要となる理由の一つは、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えた労働を可能にするためです。労働基準法第32条により、原則として法定労働時間を超えて労働させることは認められていません。
しかし、繁忙期や急なトラブル対応など、どうしても時間外労働が必要となる場面は少なくありません。こうした場合に備え、労使間で36協定を締結し、所轄の労働基準監督署に届け出ることで、例外的に法定労働時間を超える労働が認められるようになります。
ここからは、36協定が必要となる具体的なケース、協定によって可能になる残業時間の上限、さらに36協定に違反した場合に生じる法的リスクについて詳しく解説していきます。
3-1. 時間外労働・休日労働をさせる場合は労使協定(36協定)が不可欠
36協定が必要になるのは、従業員に法定労働時間を超えた労働(時間外労働)をさせる場合だけではありません。法定休日(1週1日もしくは4週4日)に労働(休日労働)をさせる場合にも、あらかじめ36協定の締結および届出が必要です。
関連記事:労使協定と36協定の関係や違いとは?わかりやすく解説
3-2. 36協定の上限は?
労使間で36協定を締結した場合、その協定書に記載された「時間外労働の上限時間」や「休日労働の日数」が、実際に労働させる際の上限となります。これを超えて労働させた場合、労働基準法違反となるため注意が必要です。
また、時間外労働には法律上の上限が設けられており、原則として「月45時間・年360時間」が限度です。労使間で合意があっても、この上限を原則的に超えることはできないので気を付けましょう。
関連記事:36協定の協定書とは?書くべき項目や記載例・協定届との違いを解説
3-3. 特別条項付き36協定を締結すれば上限を延長できる
繁忙期などやむを得ない事情がある場合には、特別条項付きの36協定を締結することで、原則的な36協定の上限を超えることが可能です。ただし、下記のいずれもの条件を満たす範囲で認められます。
- 時間外労働:年720時間以内
- 時間外労働+休日労働:月100時間未満、月平均80時間以内
- 時間外労働が45時間を超えられる回数:年6回まで
関連記事:36協定の特別条項とは?働き方改革関連法との関係や時間外労働の上限に関する注意点
3-4. 36協定に違反する場合の罰則とは?
もし36協定を締結しない状態で、法定労働時間を超えて労働させたり、法定休日に働かせたりした場合は、労働基準法違反となります。。労働基準法違反とされると、同法第109条の罰則である「6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金」が適用されるリスクもあります。
一方で、法定労働時間を超える労働や法定休日の労働が一切発生しない場合、36協定は必要ありません。しかし、一度でも時間外労働や休日労働が生じる可能性がある場合には、必ず36協定を締結し、所轄の労働基準監督署へ届出をおこなう必要があります。
4. 36協定の有効期間は1年を目安に!有効期間は36協定の効力が発揮される期間を示す


36協定の有効期間は最低でも1年以上にする必要があります。理由として36協定では1年間の延長時間を定めなければならないためです。定期的な見直しが必要となることから、1年間と定めるのが望ましいとされています。
有効期間は36協定が効力を発揮する期間を指し、一方で対象期間は実際にその効力を受けて時間外労働や休日労働が可能になる期間を指す点がポイントです。
36協定は、残業や休日出勤を従業員にお願いする場合に必ず必要になる労使協定です。36協定がないまま時間外労働・休日労働をさせてしまうと、労働基準法違反で罰則が科せられる恐れもあります。
また、36協定を結んでも労働時間に制約があるので、使用者、労働者両方で意識するのが大切です。36協定締結後は、従業員に労働時間に関する取り決めの周知を徹底し、上限を超えないように注意しましょう。



毎年対応が必要な36協定の届出。しかし、働き方改革関連法による上限規制の変更や複雑な特別条項など、正確な知識が求められる場面は増え続けています。
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