年末調整で固定資産税は控除対象?書類の書き方なども解説
更新日: 2025.11.21 公開日: 2021.10.1 jinjer Blog 編集部

年末調整は、給与所得者(会社員やパート・アルバイトなど)の1年間の所得税を精算するための手続きです。年末調整に固定資産税を直接控除する制度はありませんが、住宅ローンを利用している場合は、2年目以降に住宅ローン控除を受けられる可能性があります。
この記事では、まず年末調整で従業員が負担する固定資産税を控除できるかどうかを解説します。また、従業員から固定資産税の軽減措置を年末調整で適用したいと相談された場合の適切な対応方法についても紹介します。
目次
令和7年度の税制改正によって、令和7年12月の年末調整から変更が生じます。
- 「令和7年分の年末調整で提出する書類は?」
- 「アルバイトやパート、退職者に年末調整は必要?」
- 「年収の壁の引き上げで年末調整はどう変わった?」
このような疑問をお持ちの方に向けて、令和7年分の年末調整に必要な書類から対象者、計算の流れまで、年末調整に関する基本的な業務を図解でわかりやすくまとめた資料を無料で配布しております。
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1. 年末調整で固定資産税は控除対象になる?


年末調整では扶養控除や社会保険料控除など、従業員からさまざまな控除を申告してもらい実際に納付すべき所得税を計算します。ここでは、年末調整で固定資産税を控除できるかどうかについて詳しく紹介します。
1-1. 年末調整で固定資産税は控除対象外
結論から述べると、年末調整で固定資産税は控除できません。年末調整は給与所得にかかる所得税の精算をおこなう手続きであり、固定資産税は直接関与しないためです。
ただし、副業で固定資産(建物や土地など)を使用している場合や、会社員として働きながら不動産経営をしている場合には、事業所得(雑所得)や不動産所得の必要経費として固定資産税を差し引けることがあります。このようなケースでは、年末調整とは別に確定申告が必要です。
関連記事:年末調整とは?【令和7年最新】確定申告との違いや必要書類、計算の流れをわかりやすく解説
1-2. 年末調整で適用できるのは住宅ローン控除(1年目は確定申告が必要)
年末調整では固定資産税を控除できませんが、税額控除として住宅ローン控除(正式名称:住宅借入金等特別控除)を適用できます。住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用してマイホームを購入・新築・増改築した場合に、年末時点のローン残高に応じた一定額を所得税から差し引ける制度です。
初めて住宅ローン控除を適用する年分については、年末調整で対応できないため従業員自身による確定申告が必要です。ただし、2年目以降は、従業員が「住宅借入金等特別控除申告書」を会社に提出すれば、年末調整で住宅ローン控除を適用できます。
参考:No.1212 一般住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁
1-3. 年末調整の書類の書き方
年末調整では、従業員に次の書類を配布し、記入・提出してもらいます。なお、「住宅借入金等特別控除申告書」は税務署から従業員本人へ直接送付されるため、会社で配布する必要はありません。
- 扶養控除等(異動)申告書
- 基礎控除申告書
- 配偶者控除等申告書
- 特定親族特別控除申告書(令和7年度税制改正により2025年分の年末調整から新設)
- 所得金額調整控除申告書
- 保険料控除申告書
- 住宅借入金等特別控除申告書
これらの書類の書き方は、国税庁が公式サイトで記入例を公開しています。記入ミスや記載漏れがあると、差し戻し対応や控除額の誤りにつながるおそれがあるので注意が必要です。
そのため、年末調整前に書類の書き方を従業員へ周知し、正しく申告してもらうことが重要です。また、提出後の確認をスムーズにおこなうため、「書類チェックリスト」や「確認ポイント」を社内でまとめておくと、抜け漏れ防止に役立ちます。
参考:令和7年分 年末調整のしかた 2-4 (特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書の受理と内容の確認|国税庁
関連記事:【2025年最新】年末調整の書き方を申告書別にわかりやすく解説【記入例あり】
2. そもそも固定資産税とは?


固定資産税は、土地・家屋・償却資産といった「固定資産」を対象とする地方税で、固定資産課税台帳に登録された評価額(課税標準額)に税率を乗じて算出されます。東京都23区内では、課税は都税としておこなわれますが、性格としては市町村税に相当します。
固定資産を所有しているだけで課税されるので負担に感じる人もいますが、固定資産税は市町村が道路・福祉・教育などの行政サービスを提供するための重要な財源となっています。
2-1. 固定資産税は土地・家屋・償却資産にかかる税金のこと
「固定資産」に含まれるのは、土地・家屋・償却資産の3種類です。
土地には住宅用の土地だけでなく田畑や沼地、山林なども含まれ、家屋には住宅のほか店舗や工場、倉庫などが含まれます。また、償却資産では土地や家屋以外の、事業に使われる機械類を指します。
固定資産税の納税義務は、固定資産を所有し、固定資産課税台帳に登録されている方にあります。納付方法は自治体ごとに異なりますが、年1回の一括納付または年4回の分割納付が一般的です。
2-2. 固定資産税は固定資産の価格をもとに計算される
固定資産税は、総務大臣が定める「固定資産評価基準」に基づいて、市町村長(東京都23区は都)が決めます。このとき決められた値は、固定資産課税台帳に登録され、固定資産税を計算する場合は、この台帳に登録された値をもとに計算されます。
固定資産税額 = 課税標準額 × 税率
税率は多くの自治体が1.4%としていますが、特例措置がある場合など、自治体の制度によっては0.1%単位で変動する可能性があります。
参考:固定資産税|総務省
3. 固定資産税が軽減される場合や制度


固定資産税には、条件に応じて税負担を軽くできるさまざまな減税措置が設けられています。ここでは、どのような場合に固定資産税が軽減されるのか、具体的な制度内容について詳しく紹介します。
ただし、減税の内容や条件は自治体ごとに異なる場合があり、また期間限定で実施されている制度もあります。そのため、最新の情報は必ず国土交通省や各自治体の公式ウェブサイトで確認することが重要です。
3-1. 新築住宅に関する固定資産税の軽減制度
良質な住宅の建設を促進し、住環境の向上や長期的な住宅ストックの形成を図ることを目的に、新築住宅に対して固定資産税の軽減制度が設けられています。具体的には、次の通りです。
- 戸建て住宅:3年間、固定資産税が通常の半額に減額
- マンションなどの集合住宅:5年間、固定資産税が通常の半額に減額
さらに、認定長期優良住宅(「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づき、長期間良好な状態で使用できる措置が講じられた住宅)に該当する場合は、一般住宅と比べて軽減期間が2年間延長されます。
- 戸建て住宅:5年間
- マンションなどの集合住宅:7年間
本制度の適用期限は令和8年3月31日です。この措置により、新築住宅の取得にかかる負担が軽減され、快適で質の高い住まいづくりを後押しすることが期待されています。
参考:固定資産税、登録免許税、不動産取得税の優遇措置|国土交通省
3-2. 中古住宅のリフォームに関する軽減制度(リフォーム減税制度)
中古住宅のリフォームに関する軽減制度(リフォーム減税制度)とは、特定のリフォームをおこなった場合に、所得税の税額控除や、固定資産税の減額措置が受けられる制度です。
固定資産税の減額措置は、住宅に耐震やバリアフリー、省エネ、認定低炭素住宅化といった特定のリフォームをおこなった場合に受けられます。なお、所得税の税額控除の措置と併用できるケースもあります。
それぞれ細かく条件が定められているので、国土交通省や居住する市区町村のサイトでよく確認したうえで手続きが必要です。
参考:リフォーム促進税制(所得税・固定資産税)について|国土交通省
3-3. 住宅用地(土地)に関する固定資産税の軽減制度
住宅用地に対しては、固定資産税の負担を軽減する制度が設けられています。また、固定資産税だけでなく、都市計画税についても同様の軽減措置があります。具体的には、次の通りです。
|
区分 |
面積 |
固定資産税(課税標準の軽減) |
都市計画税(課税標準の軽減) |
|
小規模住宅用地 |
200㎡以下の部分 |
6分の1 |
3分の1 |
|
一般住宅用地 |
200㎡を超える部分 |
3分の1 |
3分の2 |
また、商業地や開発による税負担の急増が見込まれる土地については、地方公共団体が定める条例に基づき、固定資産税の課税標準や税額の減額が認められることがあります。この特例措置は、令和9年3月31日までの期間限定で実施されており、地域の状況に応じて税負担を調整できる仕組みです。
4. 従業員から年末調整で固定資産税の軽減が受けられるかと聞かれたら?


従業員から年末調整で固定資産税の軽減を受けられるかどうか質問されることもあるかもしれません。ここでは、そのような場合の対応方法について解説します。
4-1. 年末調整で固定資産税の軽減措置が受けられないことを説明する
年末調整とは、その年に給与から源泉徴収された所得税の合計額と、実際に納めるべき所得税額を照らし合わせ、過不足を精算する手続きです。まず年末調整は所得税に関する手続きであり、固定資産税の軽減措置は適用できないことを明確に伝えることが大切です。
4-2. 年末調整で適用できる控除内容を伝える
従業員が誤解しないように、年末調整で適用できる控除と、固定資産税とは関係がないことを明確に伝えると理解しやすくなります。年末調整で利用できる所得控除は次の通りです。
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 障害者控除
- 寡婦控除
- ひとり親控除
- 勤労学生控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 特定親族特別控除(※令和7年度税制改正により2025年分の年末調整から適用可能)
- 基礎控除
また、年末調整では住宅ローン控除(2年目以降)も適用できます。住宅ローン控除は税額控除のひとつで、税負担を大きく軽減できるため、申告を忘れないよう従業員に案内するとよいでしょう。
一方で、医療費控除、寄附金控除、雑損控除、住宅ローン控除(1年目)は年末調整では適用できません。これらの控除を受ける場合は、従業員自身による確定申告が必要です。確定申告は負担を感じやすい手続きなので、申告方法や手順を案内してあげることで、従業員がスムーズに申告を進められるようになります。
4-3. 固定資産税の軽減措置を受けるための窓口を案内する
固定資産税の軽減措置を受ける場合、相談先を案内してあげると、従業員はスムーズに手続きを進めやすくなります。固定資産税の軽減措置は基本的に各市区町村が管轄しているため、自治体の相談窓口を案内するとよいでしょう。
また、申請に必要な書類や期限についても伝えると、従業員は安心して手続きを進められます。案内する義務はありませんが、従業員が適切に軽減措置を受けられるようサポートしてあげることが望ましいでしょう。
5. 年末調整で固定資産税の軽減措置は利用できない


年末調整は給与所得にかかる所得税の精算手続きのため、固定資産税の軽減措置は適用できません。その代わり、住宅ローン控除については、初年度は確定申告が必要ですが、2年目以降は年末調整で控除を受けられます。
従業員から固定資産税の軽減措置について問い合わせがあった場合は、年末調整の仕組みを説明し、年末調整では固定資産税の軽減はできないことを伝えましょう。あわせて、固定資産税の軽減措置を受けるための申請方法や相談窓口も案内すると親切です。



令和7年度の税制改正によって、令和7年12月の年末調整から変更が生じます。
- 「令和7年分の年末調整で提出する書類は?」
- 「アルバイトやパート、退職者に年末調整は必要?」
- 「年収の壁の引き上げで年末調整はどう変わった?」
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