会社員であれば、基本的に全員が年末調整を行います。しかし、年末調整の対象とならない一部例外もあるため、両者の違いをしっかり理解しておきましょう。
本記事では、年末調整の対象者になるケースとならないケースの違い、年末調整をしても確定申告が必要なケースを解説します。年末調整をより確実に終わらせるためにも、ぜひ最後までご覧ください。
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年末調整をはじめとする必ず発生する業務の効率化は、企業全体の効率化に最も早く繋がります。
しかし、効率化といっても、これまでのやり方と異なることでイメージが湧きにくかったり、効率化が成功するのか不安なご担当者様も多いのではないでしょうか。
今回は「システム化で変わる年末調整の2つのポイント」を資料にまとめました。
年末調整をペーパーレス化した際の業務を具体的にイメージしたい方は、ぜひご覧ください。
1. 年末調整の対象者になるケース
まずは年末調整の対象者になるケースをみていきましょう。年末調整は原則、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を会社に提出している人全員が行います。
年末調整が対象となる主な条件は下記のとおりです。
1.1年を通して会社に勤務している人
2.年の途中で就職して年末まで会社に勤務している人
3.年の途中で海外の転勤などによって非居住者となった人
4.死亡によって退職となった人
5.著しい心身の障害が原因で退職となった人
6.12月に支給されるべき給与等の支払いを受けたあとに退職した人
7.パートやアルバイトで働いていた従業員が退職し、本年に支払われる給与総額が103万円以下である人
関連記事:年収103万以下のアルバイトは年末調整しなくていい?
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2. 年末調整の対象者にならないケース
反対に年末調整の対象者にならないケースも解説します。「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を会社に提出している場合でも、年末調整の対象にならない一部例外があるのです。
年末調整の対象にならない条件は下記をご参考ください。
1.1年間の主たる給与の総額が2,000万円を超える人
2.災害減免法の規定により、その年の給与に対する所得税と復興特別所得税の源泉徴収について徴収猶予や還付を受けた人
3.2箇所以上の会社から給与の支払いを受けている人(ほかの会社に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している、もしくは年末調整までに「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していない場合)
4.非住居者
5.同一の雇用主に継続的に雇用されない日雇労働者
以上に当てはまる人は年末調整の対象となりません。
3. 年末調整における作業の流れ
年末調整の対象者がわかったところで、年末調整における作業の流れを解説します。
年末調整は1年間の給与所得にかかる所得税を算出する作業であり、扶養の人数や生命保険料などの金額を考慮して所得税額が決定する仕組みです。年末調整の大まかな流れは下記をご覧ください。
1.年末調整の準備をする
2.年末調整の計算をする
3.源泉徴収票を作成する
4.過不足の精算と源泉税を納付する
5.法定調書を作成する
毎年1月31日までに、「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」に源泉徴収票を添付して提出します。また、従業員全員の「給与支払報告書」を作成し、それぞれの住所に所在する市区町村ごとにまとめて提出を行います。
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4. 年末調整に必要な書類
年末調整に必要な書類は下記の4つです。
毎年11月頃に税務署から会社に送られ、その後従業員に配布されます。
1. 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
2.給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書
3.給与所得者の保険料控除申告書
4.住宅借入金等特別控除申告書
なお、「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」は令和2年の年末調整から新しく設けられた申告書です。
これら年末調整に必要な書類を事前に確認し、申請の抜けがないよう注意しましょう。ちなみに、年末調整で申請漏れがあった場合は自身で確定申告をしなければなりません。2度手間にならないよう慎重に進めていきましょう。
5. 年末調整をしても確定申告が必要となるケース
一般的な会社員の場合、年末調整を済ませればほかの申告等は必要ありません。しかし、雑損控除や医療費控除、寄付金控除については年末調整で適用されないほか、住宅取得等特別控除の還付も受けられません。
そのため、会社に属していたとしても確定申告が必要となるケースもあります。以下の会社員は確定申告をしなければならないため注意が必要です。
1.1箇所の会社から給与を受けており、給与所得以外の収入が20万円を超える人
2.2箇所以上の会社から給与の支払いを受けている人
3.1年間の主たる給与の総額が2,000万円を超える人
4.動産の貸付などで家賃収入がある人
5.災害による被害を受けて災害減免法の規定を用いて、源泉徴収の猶予や還付を受けた人
6.源泉徴収による規定が適用されない給与を受けている人
このように、会社員でも確定申告を行うケースがいくつか考えられます。その事実に気づかず放置していると、あとで取り返しのつかないことになりかねません。自身が確定申告の対象者なのかを事前に確認しておきましょう。
6. 納税義務があるのに確定申告をしない場合のペナルティ
納税義務があるのに確定申告を行わない場合に、どのようなペナルティがあるのか解説していきます。納税義務のある人が故意に申告書を提出しないことは重大な犯罪です。
故意による無申告が発覚した際には「5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、または、その両方」が課せられます。また、確定申告を怠ると下記のペナルティを受けるケースもあるため、納税義務がある場合は必ず申告しましょう。
6-1. 無申告加算税が発生する
原則として確定申告を3月15日までに行わなかった場合、本来納付すべき税金に加えて無申告加算税が課せられます。これは罰金的な性質のものであり、納付すべき税額に対して50万円未満は15%、50万円を超える部分については20%の割合として計算されます。
ただし、税務署の調査前に自主的に期限後申告をした場合は無申告加算税が5%の割合に減額されます。以上のことから確定申告の遅れがあった際には、できるだけ早めに期限後申告をしましょう。
6-2. 延滞税が発生する
確定申告の期限である3月15日を過ぎると延滞税が発生します。
期限までに完納しない場合に課せられる税金であり、法定納期限の翌日から納付までの日にちに応じて利息が自動的に計算されます。
なお、国税庁が定める延滞税が発生する条件は下記のとおりです。
1.申告などで確定した税額を法定納期限までに完納しないとき
2.期限後申告書または修正申告書を提出した場合で、納付しなければならない税額があるとき
3.更正または決定の処分を受けた場合で、納付しなければならない税額があるとき
この延滞税は本来支払うべき税金に対して課せられるものであるため、加算税などに対しては発生しません。
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年末調整しないことによる罰則内容を詳しく紹介
7. 年末調整の対象者になるケースとならないケースを理解しておこう
本記事では、年末調整の対象者になるケースとならないケースの違い、年末調整をしても確定申告が必要なケースなどを解説しました。
年末調整は原則、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を会社に提出している人全員が行います。しかし、一部例外として年末調整を行わないパターンもいくつか考えられます。
また、年末調整を行っても確定申告が必要となるケースもあるため、それぞれのケースを事前に理解しておきましょう。納税義務があるのに確定申告をしない場合は、いくつものペナルティを課せられます。
そういった最悪の事態を防ぐためにも、ぜひ本記事で知識を深めておくことをおすすめします。