【従業員向け】年末調整はいつまでにおこなう?期限と提出書類の種類を紹介
更新日: 2024.10.18
公開日: 2021.3.26
OHSUGI
年末調整の書類の提出期限を過ぎると、自分で確定申告をおこなうことになります。多くの企業では11月頃から年末調整に向けた準備が始まり、同時期までには保険会社などから必要な証明書類が届きます。年末調整に必要な書類を把握し、会社から指示があった場合は速やかに提出できるように準備しましょう。
本記事では、従業員が年末調整で提出を求められる書類や提出期限について詳しく解説します。
目次
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1. 年末調整とは
まずは年末調整がどのような目的をもっておこなわれるのか、従業員側の対応とあわせて確認していきましょう。
1-1. 所得税の金額を調整して正しく納税するための手続き
会社などが役員又は従業員に対して給与を支払う際には、所得税と復興特別所得税の源泉徴収をおこなっているのが通常です。
源泉徴収とは、所得税と復興特別所得税とを会社などが給与からあらかじめ差し引くことです。源泉徴収される役員又は従業員にとっては、基本的に確定申告をする必要がなくなるというメリットがあります。
国にとっても、確実に所得税を徴収でき、税収を安定的に得られるという大きなメリットがあります。
しかし、源泉徴収をした所得税と復興特別所得税の合計額は、基本的に源泉徴収された人が納めるべき所得税と復興特別所得税の合計額とは一致しません。
会社が源泉徴収する所得税と復興特別所得税の額は、支払う予定の給与額に基づいて決めています。しかし残業代や昇進・降格などにより実際に支払われる給与額と予定の給与額が異なるケースが通常だからです。
そこで、給与から源泉徴収をした所得税と復興特別所得税の合計額と、源泉徴収された人が納めるべき所得税と復興特別所得税の合計額とを一致させる手続が必要になります。
この手続のことを年末調整といいます。
関連記事:年末調整とは?やり方や計算方法、確定申告との違いをわかりやすく解説
関連記事:年末調整とは?その必要性や基本的な書き方について解説
1-2. 従業員が提出する書類もある
年末調整の計算や税務署への書類の提出などは会社側がおこなうものです。これは企業の義務として定められているため、従業員が自ら申告する必要はありません。
しかし、会社が年末調整をするには従業員個々の給与だけでなく、家族構成や加入している保険などを知る必要があります。家族構成や保険の加入状況などは、従業員ごとに異なり、それに合わせた控除が必要になるからです。
そのため、従業員は会社が求める書類をそろえて提出しなければなりません。遅れたり、内容が間違っていたりすると、正確な年末調整ができず、後日修正や従業員本人が確定申告をすることになります。
2. 年末調整で提出する書類
給与の支払を受ける給与所得者(従業員)は、年末調整に関して大きく分けて、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書、給与所得者の保険料控除申告書、給与所得者の基礎控除申告兼給与所得者の配偶者控除等申告兼所得金額調整控除申告書、の3種類の書類を提出しなければなりません。
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書、給与所得者の保険料控除申告書、給与所得者の基礎控除申告兼給与所得者の配偶者控除等申告兼所得金額調整控除申告書の記載例に関しては以下をご参照ください。
【参照】
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 記載例
給与所得者の保険料控除申告書 記載例
給与所得者の基礎控除申告兼給与所得者の配偶者控除等申告兼所得金額調整控除申告書 記載例
令和2年分以後の「給与所得者の配偶者控除等申告書」は、「給与所得者の基礎控除申告書」及び「所得金額調整控除申告書」との兼用様式となりました。また、令和2年分以後、所得金額調整控除という控除が新しく適用されるようになりました。
所得金額調整控除とは、一定の給与所得者の総所得金額を計算する場合に、一定の金額を給与所得の金額から控除するというものです。所得金額調整控除には、次の1又は2の2種類の控除があります。このうち1の控除は年末調整において適用することができます。
2-1. 子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除
子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除は、その年の給与等の収入金額が850万円を超える給与所得者で、(1)のa~cのいずれかに該当する給与所得者の総所得金額を計算する場合に、(2)の所得金額調整控除額を給与所得から控除するものです。
適用対象者
a.本人が特別障害者に該当する人
b.年齢23歳未満の扶養親族を有する人
c.特別障害者である同一生計配偶者又は扶養親族を有する人
扶養親族とは、その年の12月31日に、次の①~④の要件のすべてに当てはまる人です。
①配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族をいいます。)又は都道府県知事から養育を委託された児童や市町村長から養護を委託された老人であること。
②納税者と同一の生計で暮らしていること
③年間の合計所得金額が48万円以下でること (給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
④青色申告・白色申告における給与の控除を受けていない
また、同一生計配偶者とは、納税者と同一の生計で暮らしている配偶者で、次のいずれにも該当する人のことです。
a.その年の大晦日時点で、納税者と同じ生計で暮らしている
b.その年の合計所得金額が48 万円以下である
c.青色申告・白色申告における給与の控除を受けていない
関連記事:年末調整の障害者控除とは?その範囲や金額を詳しく解説
所得金額調整控除の金額
{給与等の収入金額(1,000万円超の場合は1,000万円) - 850万円}×10%=控除額(1円未満の端数があるときは、その端数を切り上げます。)
年末調整においてこの控除の適用を受けようとする給与所得者は、その年最後に給与等の支払を受ける日の前日までに、会社に所得金額調整控除申告書を提出する必要があります。
この控除は、扶養控除と異なり、同一生計内のいずれか一方のみの人に適用するという制限がありません。条件を満たせば夫婦が2人ともこの控除を受けるといったケースもありえます。
2-2. 給与所得と年金所得の両方を得ている人に対する所得金額調整控除
その年において、次の(1)に該当する人の総所得金額を計算する場合に、(2)の所得金額調整控除額を給与所得から控除するものです。
適用対象者
その年分の給与所得控除後の給与等の金額と公的年金等に係る雑所得の金額がある給与所得者で、その合計額が10万円を超える人
関連記事:年末調整の対象者になるケースとならないケースの違い
所得金額調整控除額
{給与所得控除後の給与等の金額(10万円超の場合は10万円) + 公的年金等に係る雑所得の金額(10万円超の場合は10万円)}-10万円=控除額
上記1の所得金額調整控除の適用がある場合は、その適用後の給与所得の金額から控除します。
3. 年末調整の提出期限はいつまで?
年末調整は例外的な場合を除き、一般的に年末におこなわれます。会社は税務署に年末調整の書類を期限までに提出しなければなりませんが、従業員が会社に提出書類には法律で定められた提出期限はありません。しかし、会社がスムーズに年末調整を進められるように、ある程度の期限を把握しておきましょう。
3-1. 会社が守るべき提出期限
年末調整は、その年の1月1日から12月31日の期間の給与などについて対象としています。そのため通常、会社は12月に年末調整をおこないます。そして、12月または1月支払の給与で還付もしくは追加徴収をおこなうという流れになります。
支払調書は年末調整をおこなった翌年の1月31日が提出期限です。会社はこの期限に向けて年末調整を進め、年末調整を完了させるには従業員から提出される書類が必須です。
そのため、従業員側は可能な限り早くに必要書類を会社に提出しなければなりません。
3-2. 役員・従業員の対応
多くの場合、11月から12月にかけて、前述した3種類の書類の提出を求められることになるでしょう。
年末調整で生命保険料の控除などを受ける場合、給与所得者の保険料控除申告書だけでなく、一緒に添付する書類を提出する必要があります。生命保険、地震保険、小規模企業共済などを利用していると、10月あたりに各会社から控除証明書が自宅へ送られてきます。それを提出しましょう。
年末調整業務において、必要書類は複数あるため、書類の準備と作成に抜け漏れがないか不安なご担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。年末調整にかかる書類は抜け漏れが発生したり、提出期限に間に合わなかったりすると、影響が大きい書類です。書類準備や提出においてミスが発生しないよう、当サイトでは、必要書類のリストや提出期限等をまとめた資料を無料で配布しております。年末調整業務を抜け漏れなくおこないたい方は、こちらから「年末調整ガイドブック」をダウンロードして、業務にお役立てください。
4. 年末調整はいつまでに提出する?
従業員から収集した各種申告書は、基本的には給与の支払者(会社)が保管します。しかし、税務署長や市区町村長から提出を求められた場合は各所へ提出しなければなりません。
いざというときに慌てないよう、会社側は事前に把握したうえで従業員から書類を収集する必要があります。
4-1. 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
国税庁のホームぺージによると、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書は、その年の最初に給与の支払を受ける日の前日(年の途中から勤める場合には、最初の給与の支払を受ける日の前日)までに提出するよう記載があります。そのため、原則的には、その日が給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の提出期限です。
なお、当初提出した申告書の記載内容から異動があった場合には、原則的には、その異動の日の後で最初に給与の支払を受ける日の前日までが、変更の内容等を記載した申告書の提出期限です。
また、非居住者である親族についての扶養控除又は障害者控除の適用を受ける場合には、原則的には、その年最後の給与支払日の前日までが、その親族と同一生計で暮らしている旨を記載した上での提出期限です。
4-2. 給与所得者の保険料控除申告書
国税庁のホームぺージによると、給与所得者の保険料控除申告書は、その年最後に給与等の支払を受ける日の前日までに提出するよう記載があります。
保険料控除申告書は、名前の通り保険料の控除を受けるために必要な書類です。
保険会社から送られてくる保険料控除証明書の内容と相違がないことが重要であり、会社側はこれをもとに計算をおこないます。こちらも必ずしも提出が求められるものではありませんが、年末調整をするうえでは必要な書類です。保険に加入している場合は、正確に記入して会社が設定する期日までに提出しましょう。
関連記事:年末調整の社会保険料控除とは?対象となる保険の種類まとめ
4-3. 給与所得者の基礎控除申告兼給与所得者の配偶者控除等申告兼所得金額調整控除申告書
国税庁のホームぺージによると、給与所得者の基礎控除申告兼給与所得者の配偶者控除等申告兼所得金額調整控除申告書は、その年最後に給与等の支払を受ける日の前日までに提出するよう記載があります。そのため、原則的にはその日が提出期限になります。
企業は、国税庁から通達されているこれらの提出期限と、提出に必要な業務にかかる日数を計算したうえで、従業員からの収集期日を設定しています。従業員からの申告が遅くなると、この期日を守れなくなるという点を従業員側も知っておく必要があります。
関連記事:年末調整はいつ提出?時期や期限、申告書の種類をくわしく解説
5. 年末調整に関連する書類の提出が遅れるとどうなる?
従業員側からの年末調整に関連する書類の提出が遅れた場合、会社は年末調整の業務が滞ってしまいます。
会社の対応が間に合わないと、3月15日までに従業員が自分で確定申告をおこなわなければなりません。確定申告は慣れていないと非常に時間がかかり、複雑な内容です。会社側で年末調整をしてもらった方が楽なため、年末が近づいてきたら早めに準備することが大切です。
なお、期限を過ぎて変更された生命保険料等の保険料控除や扶養控除を申告したい場合や、年末調整で控除できない分は、個別に確定申告が必要になります。
確定申告せずに放置した場合、還付金が受け取れないだけでなく、不足があった場合は追徴課税を科せられます。確定申告の期限後に、自己申告した場合も追徴課税は免れることができません。不注意や失念で忘れてしまわないように、年末~3月にかけては忘れ物がないか十分に注意しましょう。
関連記事:年末調整をしないとどうなる?考えられる5つのリスクを解説
6. 会社から年末調整関連の書類を求められた際は迅速に対応しよう
年末調整は会社が主体でおこなう手続きですが、従業員側からの情報がないと業務を進めることができません。提出期限も定められているため、従業員は年末が近づいたら必要書類を準備し始め、会社から指示があり次第迅速に提出する必要があります。
年末は忙しいことも多いため、慌てないように必要書類を把握して早めに準備を進めるようにしましょう。
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