休日出勤した従業員に代休を取得させる際の基本ポイント
更新日: 2022.12.8
公開日: 2021.9.3
目黒颯己

急な業務の繁忙やトラブル対応などが発生した場合、やむを得ず休日出勤となるケースは少なくないでしょう。通常なら休みである日に勤務となった際には、当然ながら何かしらの埋め合わせが必要です。
そうした場合に使用者から与えられるのは賃金や代わりの休暇ですが、支給方法については労働基準法で細かく設定されています。規定に沿った正しい運用をしていなければ違法となってしまうため、休日出勤の取り扱いには十分に注意しなければなりません。
そこで今回は、休日出勤をカバーするにあたって代休を取ってもらうケースに注目し、基本として押さえておきたいポイントをご紹介していきます。
1. 休日出勤手当は法定休日の勤務に対して支払う
そもそも休日出勤とは、労働基準法では法定休日(週1日)に労働することを指します。もちろん会社としての所定日やシフト休に勤務する場合も、便宜上は休日出勤と呼んでいるケースも多々あるでしょう。
しかし法的にいうと、厳密には法定休日でない日(所定休日)の労働は「時間外労働」として取り扱います。休日出勤や時間外労働が生じた際には、その分については割増賃金を手当として支給しなければなりません。
ただしそれぞれで割増率が異なるため、勤務したのが法定休日であるか否かは非常に重要です。あらかじめ所定休日と区別しておかないと、トラブルの原因になる可能性があります。
ちなみに具体例を挙げるとすれば、実働8時間×5日の週休2日制で、土曜を所定休日、日曜を法定休日としている場合、土曜に勤務したとしても、休日出勤における割増賃金は適用されません。
一方で日曜に勤務したとすれば、休日出勤の割増賃金の支払いが必要です。さらに同様の例で、1週間のうちに土曜・日曜の両日勤務したとします。
この場合なら土曜分は労働基準法の法定外労働(週40時間超過)となるため、追加支給するのは時間外労働における割増賃金です。加えて日曜分は、休日出勤における割増賃金が生じます。
2. 代休取得は休日出勤手当の代わりにならない
休日出勤では割増賃金の手当が発生しますが、これを代わりの追加休暇で補てんした場合にはどうなるのでしょうか。
基本的に代休とは休日出勤が生じた「事後」に与える休日を指し、なおかつ割増賃金の手当も支払わなければならない休日の取り方です。要するに急な休日出勤があってから、後日に「代休を与えたから手当は支給しない」といった手続きはできません。
ただし代休を与える場合には、勤務するはずだった労働日分は相殺となり、割増分のみ支払うことは認められています。
仮にすべての休日出勤手当の代わりに休暇としたい場合、原則は代休ではなく「振替休日」を取得してもらうことになります。
振替休日とは、休日出勤となる前に、あらかじめ他の勤務日を法定休日と交換する方法です。このケースであれば、交換した週の労働時間のうち、法定基準を超過した分(時間外労働の割増)のみの賃金が発生することになり、休日出勤手当は不要になります。
このように事後と事前ではルールが大きく異なるため、注意しておきましょう。
当サイトでは、休日労働させた場合の割増賃金の計算方法をまとめた資料を無料で配布しております。また、定義や使い分けなども解説しておりますので、代休と振替休日について不安なことがある担当者様は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
【関連記事】代休の定義や振休との違い・運用のポイントを詳しく解説
3. 休日出勤手当の計算方法
先ほども出てきたように、通常は代休を取得してもらったとしても、休日出勤分の手当は必ず支給する必要があります。
では実際に休日出勤手当を支払う場合における、具体的な金額の計算方法を見ていきましょう。
3-1. 休日出勤時の割増分は「時間単位の所定賃金×1.35以上」
割増賃金は大きく分けて時間外・休日・深夜の3つで比率が設定されており、休日出勤では「×1.35」の割増率をベースに、上限「×1.5」まで各企業で柔軟に決めることが可能です。
また時間外なら「×1.25~1.5」、深夜なら「×1.25~」に割増比率は変わります。もし法定労働時間外の所定に出勤すれば、適用するのは時間外の「1.25~1.5」の比率です。
さらに割増賃金は時間単位で計算するので、まずは該当する従業員の時間単価の所定賃金を算出します。例えば月給制の社員であれば、1ヶ月の所定労働時間(年間平均)で割った金額です。仮に月給25万2000円・1ヶ月の所定労働時間168時間だとすると、1時間あたりの所定賃金は1,500円です。
そしてこの社員が法定休日に8時間労働すれば、その分の手当(×1.35~)は1万6,200円~となります。なお代休を取得させた場合には通常勤務分は相殺できるので、割増分(×0.35~)の4,200円~の支払いが必要です。
またこの社員が振替休日を取得し、法定休日に8時間労働して週40時間を超えた勤務になった場合、休日出勤手当はありませんが、時間外労働の割増分(×0.25~)のみは支払い義務があるため、1,500円×0.25~×超過時間分の賃金が発生します。
ちなみに休日出勤と時間外労働は全く別の扱いとなるため、もし休日出勤時に残業(1日当たり法定労働時間より超過)があっても、割増比率は変動しません。
しかし深夜勤務についてはどんな場合にも必ず発生するため、法定休日で深夜に労働した際には、休日出勤の割増比率に上乗せします。
それぞれ法定基準の最小ラインで設定しているのであれば、休日出勤+深夜勤務になったら「×1.6」が割増比率です。
【関連記事】割増賃金の基礎となる賃金とは?計算方法など基本を解説
4. 月60時間を超える残業は例外的に休暇とすることが可能
原則として時間外労働の割増比率は「×1.25~1.5」の規定がありますが、月60時間を超えた際には、例外的に「×1.5~」に引き上げられます。
これに伴って月60時間を超過した分の時間外労働については、一部割増賃金の代わりに有給休暇とすることが可能で、代替休暇と呼ばれる制度です。
具体的には、月60時間超過時の割増率より「-1.3」の賃金分を有給休暇にできます(別途労使協定によって「-1.25」まで可)。
例えば月60時間超過時の割増率を「×1.5」としているなら、「×0.2」を換算率として計算し、代替休暇にできるのです。仮に月60時間超過時の割増率「×1.5」、月の時間外労働80時間の場合、代替休暇にできるのは、60時間を超えた部分のみです。
計算式にすると「(80時間-60時間)×0.2」で、4時間分は賃金ではなく代替休暇にできます。
あくまで時間外労働における制度なので、法定休日の休日出勤時間分を加算することはできません。通常勤務時と所定日の出勤の合計で、月60時間を超えた分だけで考えます。
関連記事:休日出勤を振替休日ではなく有給取得に変更できるケースとは
5. 休日出勤や代休を運用する上での注意点
休日出勤や代休には数々の細かな規定がありますが、的確な方法で運用していかないと、従業員とのトラブルが起きる可能性もあります。
では実際にどのような部分に注意しておくべきなのか、以下から詳しくみていきましょう。
5-1. 休日出勤や代休のルールは従業員に広く周知する
従業員が休日出勤や代休のルールを把握していないと、認識の齟齬によってトラブルになるケースが考えられます。
特に代休と振替休日との違いや法定休日と所定休日の取り扱いなど、法律としての規定が非常にややこしい部分も少なくありません。
振替休日は就業規則に記入しないといけないという決まりもあるため、従業員の入社時や更新時など、振替休日と代休の違いは定期的に伝えるようにしましょう。
当サイトでは、振替休日と代休の違いについてまとめた資料を無料で配布しております。休日と休暇の違いから解説しておりますので、従業員に説明する際のわかりやすい資料をお探しの方や、休日出勤時の対応について正しく理解したい方は、こちらから「休日・休暇ルールBOOK」をダウンロードしてご覧ください。
5-2. 従業員に強制してはならない
基本的に休日出勤や残業は、会社側から命じることはできても、強制するものではありません。同様に月60時間超過分の代替休暇についても、労働者の意思にもとづいて決定するものです。
割増賃金によって支給してほしいとの意向があれば、それを汲んだ対応をする必要があります。当然ながら、いずれも拒否したからといってペナルティを科すなどの行為は禁止です。
6. 休日出勤も代休も基本的には賃金が発生する
代休は振替休日とは異なり、法定休日における出勤でも所定休日での勤務でも、必ず割増賃金は手当として支払わなければなりません。代休は休日出勤手当の代わりにはできないので、まずはこの点を覚えておくと良いでしょう。
また例外的に、一部の時間外労働については代替休暇とすることも可能です。いずれにしてもこれらの規定は労働者の権利であり、各従業員にもしっかりと把握してもらう必要があります。
ぜひ一度、本記事を参考に、就業規則を見直してみてください。
【関連記事】休日出勤は残業に含まれる?残業時間の数え方と賃金計算方法
【関連記事】休日出勤の振替休日は強制できない?割増賃金が必要?運用ルールの注意点
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