法定休日と祝日の違いとは?出勤時は割増賃金になる?計算方法も詳しく解説
更新日: 2024.9.11
公開日: 2021.9.3
OHSUGI
「祝日に働いたのに残業代が少なくないですか?」と従業員から尋ねられた際、どのように返答すべきか困ってしまう担当者もいるでしょう。法定休日とは何かを正しく理解しておけば、このような質問にもスムーズに回答できるようになります。そこで今回は、法定休日と祝日との違い、割増賃金の計算法、法定休日に勤務する際の注意点について解説します。
目次
【労働基準法】休日・休暇ルールBOOK
人事担当者の皆さまは、労働基準法における休日・休暇のルールを詳細に理解していますか?
従業員に休日労働をさせた場合、休日はどのように取得させれば良いのか、割増賃金の計算はどのようにおこなうのかなど、休日労働に関して発生する対応は案外複雑です。
そこで当サイトでは、労働基準法にて定められている内容をもとに、休日・休暇の決まりを徹底解説した資料を無料で配布しております。
「休日休暇の違いや種類、ルールを確認したい」という人事担当者の方は「【労働基準法】休日・休暇ルールBOOK」をぜひご一読ください。
1. 法定休日・法定外休日と祝日の違いとは
法定休日とはどういうものなのか、祝日とは何が違うのかをしっかり理解できている人はあまり多くないかもしれません。ここでは、法定休日と祝日の違いについて説明していきます。
1-1. 法定休日の定義
法定休日とは、労働基準法第35条で定められている休日のことです。週に1回または月に4回以上、必ず与えられなければなりません*。
やむを得ず、従業員を法定休日に働かせる場合は、企業側は35%以上の割増賃金を支払う必要があります**。
参考:e-gov|労働基準法第三十五条
参考:e-gov|労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令
1-2. 法定外休日(所定休日)の定義
多くの企業では、週休2日制が導入されています。法定休日は週に1回なので、週休2日の場合は法定休日よりも休日が1日多くなります。
このような法定休日以外の休日のことを、「法定外休日」または「所定休日」と呼びます。週休2日の場合は、休日の1日が法定休日で、もう1日が法定外休日(所定休日)ということです。
週休2日制が多く導入されている理由は、法定休日の決まりとは別に、労働基準法第32条で労働時間が「1日8時間、週40時間を超えてはならない」と定められているためです*。
1日8時間勤務だと5日働いた時点で40時間なので、週の労働時間の上限となります。そのため、週のうち2日間を休日にする企業が多いのです。
関連記事:法定休日と所定休日の違いや運用方法をわかりやすく解説
1-3. 祝日の定義
祝日とは、国が定めた特別な日であり、一般的には国民が休むことができる日とされています。
日本には多くの祝日があり、例えば元日や春分の日、敬老の日などが含まれます。祝日は法定休日とは異なり、労働基準法の義務として定められているわけではありませんが、企業は従業員の福利厚生として祝日を休日にすることが一般的です。
これにより、働く人々に休息やリフレッシュを促進する機会を提供しています。
1-4. 祝日は休日に含まれるの?
週休2日制の場合、土曜日と日曜日は一方が法定休日、もう一方が法定外休日になることがわかりました。
では、祝日法によって定められている日本の祝日はどのような扱いになるのでしょうか。結論からいうと、企業によって祝日の扱いは異なります。企業が公休日にする場合もあれば、通常の勤務日にする場合もあります。通常は多くの会社が日曜日などを法定休日にしているので、祝日は法定外休日になることになります。
なお、企業が祝日を法定休日・法定外休日のどちらにも指定していない場合は、平日と同じ扱いとなります。「祝日が休日にならないのは問題があるのではないか?」と思う人もいるかもしれませんが、労働基準法上は問題ないとされています*。
しかし、従業員のモチベーション維持や優秀な人材の確保を考慮して、祝日を法定外休日としている企業も多いようです。
祝日を法定休日として定めている場合、企業は祝日に働いた従業員に対して、35%以上の割増賃金を支払うことになります。しかし、祝日を法定休日として扱っていない場合は、基本給に祝日に勤務した際の賃金が含まれると見なされます。そのため、割増賃金を支払う必要はありません。
ただし、祝日に働いたことで1日8時間・週40時間の労働時間を超えている場合、企業は従業員に対して25%以上の時間外手当を支払う必要があります。創立記念日や盆休み、年末年始なども祝日と同じ扱いです。
2. 法定休日を与えないのは違法?
法定休日を与えないとどうなるのでしょうか。法定休日は労働基準法で定められている休日なので、従業員に法定休日を与えない企業には罰則が適用される可能性があります。違反した場合、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます*。
つまり、企業側は従業員に法定休日を必ず与えなければなりません。
また、実際の休日が法定休日しかない場合、週40時間を超えてしまう場合があるため、法定休日だけの場合には注意が必要です。
3. 法定休日・祝日における割増賃金の計算方法
次に法定休日や祝日に働いた際の割増賃金の計算方法を説明します。
※場合によっては、休日出勤しても割増が発生しない場合もあります。下記の記事では割増が発生しない場合や割増が出る際の計算方法などを解説しておりますので、理解に不安のある方はぜひご覧ください。
関連記事:休日出勤手当はもらえない場合も?条件や割増率の計算をわかりやすく解説
3-1. 法定休日の割増賃金の計算法
法定休日に働いた場合の割増賃金の計算式は次のとおりです。
法定休日の割増賃金=1時間あたりの基礎賃金×労働時間×割増率(1.35) |
法定休日の割増率は通常35%のため、「1.35」です。午後10時から午前5時までの深夜帯に働く場合はさらに25%が加算されて60%となります。1時間あたりの賃金は次の式で表されます*。
1時間あたりの基礎賃金=毎月の基礎賃金÷月平均所定労働時間 |
毎月の基礎賃金は給与の総額ではなく、通勤手当・家族手当・住宅手当・別居手当・子女教育手当のほか臨時に支払われた賃金やボーナスが除かれます。地域手当・役職手当・資格手当は基礎賃金に含まれます**。
また、月平均所定労働時間は次の式のとおりです。
月平均所定労働時間=(365-1年間の合計休日日数)×1日の所定労働時間÷12 |
所定労働時間は就業規則などで定められている労働時間です。
注意が必要なのは、休日休暇を取得している場合において、法定休日の割増賃金は発生しないという点です。ただし振替休日ではなく代休を取得する場合は、休日手当は発生します。
このように、休日や休日出勤の正しい対応について労働基準法に沿った正しい知識を身につけなければ、労使間トラブルに発展する可能性や、労働基準法違反につながる可能性もあるため気を付けましょう。
当サイトでは、休日と休暇の定義の違いや、休日出勤を従業員がした場合の正しい方法について解説した資料を無料で配布しております。休日の定義を正しく理解しているか不安な方や、休日出勤時の対応が正しいか知りたい担当の方は、こちらから「休日・休暇ルールBOOK」をダウンロードしてご覧ください。
*参考:e-gov 法令検索 |労働基準法施行規則第十九条
**参考: e-gov|労働基準法第三十七条
関連記事:割増賃金の基礎となる賃金とは?計算方法など基本を解説
3-2. 祝日の割増賃金の計算法
祝日が法定休日に定められていない場合、1日8時間・週40時間の制限を超えている場合のみ、時間外手当を割増賃金として支払わなくてはなりません。計算式自体は法定休日の場合と同じです。
1日8時間・週40時間を超えた場合の割増賃金=1時間あたりの基礎賃金×労働時間×割増率(1.25) |
割増率は25%なので、1.25となります。なお、深夜帯に働く場合は25%が加算されて50%です。
3-3. 法定休日と祝日(法定外休日)が 重なったらどうなるの?
では、法定休日と、法定外休日と会社で定めている祝日が重なってしまい、該当日に休日出勤をした場合はどう計算すればいいでしょうか?
法定休日と法定外休日が重なった場合、該当日は法定休日として扱います。
法定休日に休日出勤した場合は、35%以上の割増賃金を支払わなければなりません。そのため、「法定休日の割増賃金の計算法」に則って計算をおこないましょう。
4. 法定休日を管理する上での注意点
従業員を法定休日に働かせる際は、とくに以下2つについて注意が必要です。
4-1. 法定休日を決めておく
企業側は、法定休日を決めておくのが望ましいでしょう。労働基準法では「法定休日が必要」と定められているものの、曜日などは指定されていません。
しかし、たとえば週休2日制で土日が休日の場合、土曜日と日曜日のどちらが法定休日なのか決めておかないと、休日手当を支払うべき曜日が定まらないことになります。
正しい賃金計算が行えないと、従業員との間で大きなトラブルに発展する可能性もあるでしょう。厚生労働省の見解では週休2日で法定休日を定めていない場合、土曜日が法定休日になるとされています*。
しかし、裁判例では日曜日が法定休日と判断された例もあります。そのため、企業側は就業規則でどちらが法定休日なのかを定めておいたほうが安心です。
4-2. 代休と振替休日の扱い
法定休日にどうしても勤務しなければならない場合、「代休や振替休日で他の労働日と交換すればいいのでは?」と思われるかもしれません。この場合も注意が必要です。
まず、代休について解説します。代休は、法定休日に働いた後でいずれかの労働日に休みを取るものです。この場合、企業は従業員に対して、法定休日に働いた割増賃金を支払わなければなりません。
一方で、振替休日は事前に法定休日と労働日を交換するものです。この場合は法定休日の割増賃金を支払う必要はありません。ただし、以下の4つを守る必要があります*。
- 就業規則に振替休日の制度があることを規定する
- 振替の前日までに労働者へ法定休日の振替を通知する
- 振替休日の日付は明確に決めておく
- 週1日または4週4日の休日を確保した上で振替休日を決める
また、実際の休日が法定休日しかない場合、労働時間が1日8時間・週40時間の制限を超えてしまう場合も要注意です。法定休日のほか、法定外休日も設定しないと違法となってしまいます。
本章で解説したように休日管理を怠ると、複数の法律違反になる可能性があります。そのため、用語の定義や休日・休暇の種類から正しく理解しなければなりません。
当サイトでは、労働基準法に沿って休日と休暇について解説した資料を無料で配布しております。休日・休暇について不安な点がある担当者様は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
参考: 厚生労働省 青森労働局|賃金の支払いは足りていますか? 賃金台帳は整備されていますか?
関連記事:振替休日と代休の違いは?設定方法や法律違反になる場合を解説
5. 祝日を管理する上での注意点
ここまで、法定休日と祝日について解説してきました。本筋から外れた話にはなってしまいますが、周辺知識として祝日と労働時間について気を付けるべき点をご紹介します。よろしければご一読ください。
5-1. 月の労働日に応じて給与を支払っている場合は注意
働いた日数に応じた給与を支払う給与形態をとっている場合で、祝日を労働日と定めていない場合は、祝日が発生した分だけ給与が減ります。
このような制度を月給日給制と呼称したりします。 あまり耳にする制度ではないかもしれませんが、自社がどのような形態で給与を支払っているのか、担当者として把握しておきましょう。
5-2. 祝日が含まれる週の所定労働時間は40時間?
あなたの会社では、土曜日を法定外休日、日曜日を法定休日、祝日法で定められている祝日を法定外休日と定めています。
とある週において、月曜日が祝日となりました。この週の法定労働時間は何時間になるでしょう?
答えは、40時間です。所定労働日が4日だからといって法定労働時間が32時間にはなりません。
もし、上記にあげた状況で火~金曜日まで8時間労働をしたうえで土曜日に出勤となっても、土曜日の労働時間が8時間を超えない限り、時間外労働の割増賃金は発生しません。
6. 法定休日・祝日の労働には正しい割増賃金を!
法定休日と祝日は労働基準法での扱い方が全く異なります。法定休日は、企業が従業員に対して、最低限与えなけれならない休日です。違反すると罰則が適用されるため、注意しましょう。
また、法定休日と割増賃金の取り扱いを誤ると、企業側と従業員間で大きなトラブルに発展することもあります。法定休日と割増賃金は正しく適切に運用しましょう。
関連記事:休日と休暇の違いとは?休みの種類や勤怠管理のポイント
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