従業員の残業対策で企業が今すぐ取りかかるべき5つのこと
更新日: 2025.11.21 公開日: 2020.6.8 jinjer Blog 編集部

働き方改革の推進により、残業削減への意識はますます高まっています。
強制退社時刻や残業条件の厳格化といった取り組みを実施している企業も増えていますが、業務量に対する従業員の数や能力のバランスが崩れていると、なかなか上手くいかないのが現実です。
従業員の意識改革や労働時間に関する制度や体制の見直し、労働の平準化やIT化推進などによる業務改善をおこなうことで、「残業の原因」を排除していきましょう。
この記事では、残業対策として取り組むべき5つのポイントや残業対策に関する法律、具体的な成功事例などをご紹介します。
目次
人事労務担当者の実務の中で、勤怠管理は残業や深夜労働・有休消化など給与計算に直結するため、正確な管理が求められる一方で、計算が複雑でミスや抜け漏れが発生しやすい業務です。
さらに、働き方が多様化したことで管理すべき情報も多く、管理方法と集計にお困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか。そんな担当者の方には、集計を自動化できる勤怠システムの導入がおすすめです。
◆解決できること
- 打刻漏れや勤務状況をリアルタイムで確認可能、複雑な労働時間の集計を自動化
- 有給休暇の残日数を従業員自身でいつでも確認可能、台帳の管理が不要に
- PCやスマホ・タブレットなど選べる打刻方法で、直行直帰やリモートワークにも対応
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1. 残業対策が必要な理由


残業対策を実施しても目的が明確になっていなければ、結果をだすことはできません。はじめに、残業対策が企業に必要な理由を確認しておきましょう。
1-1. 労働基準法遵守のため
働き方改革関連法案によって、残業時間に罰則付きの上限規制が設けられました。36協定を結んでいる場合は原則として月45時間、年360時間以内が上限です。特別条項を結ぶ場合でも、年720時間以内、複数月(2~6ヶ月)平均80時間以内(休日労働含む)、単月100時間未満(休日労働含む)のいずれも順守する必要があります。この上限時間を超えて労働させた場合は、法律違反となり処罰される可能性があります。
処罰されなかったとしても、労働基準監督署による臨検監督が入った場合は世間的に「従業員に長時間労働させている会社」というイメージを持たれて、社会的信用を損なうリスクがあります。
1-2. 従業員の満足度や幸福度を高めるため
残業時間の上限を守っていたとしても、残業時間が40時間という状況は1日あたり2時間ほどの残業をしていることになります。これは残業が少ないとは言えません。
もし月に45時間残業する場合、1日平均10時間以上働く必要があります。
法定内の労働時間が8時間なので、毎日2時間以上残業しなければなりません。
通勤時間などを含めると、1日が仕事だけで終わってしまう
残業時間を削減することは、従業員の満足度や幸福度を高めることにつながります。また、残業時間の少なさは採用でも有利にはたらきます。優秀な人材を集めるには、さまざまな角度から自社の魅力を訴求する必要がありますが、残業が少ないことや、長時間労働を防ぐためのユニークな制度がある企業は、数ある競合企業の中でも求職者からの目を引く可能性が高いでしょう。
特に、近年ではワーク・ライフバランスを保ち、満足度や幸福度を重視する層が増えています。残業が少なく、私生活と仕事のバランスがとりやすい企業は、求職者から良いイメージをもたれやすくなっています。
1-3. 従業員の心身の健康を守るため
長時間労働が続くと肉体的・精神的な健康を損なうリスクが高くなります。
十分な休息が取れないまま働き続けていると、疲れや睡眠不足が蓄積し、不調や病気のリスクを高めてしまいます。また、長時間労働によるストレスは、気分の落ち込みや意欲の低下、うつ病の原因などになるため、メンタルヘルスにも大きな影響を与えるでしょう。
そうした状況が長引くほど症状は悪化しやすく、重篤な病気になる可能性や、精神的に追い詰められて休職や離職、最悪の場合は過労死や自死というおそれも出てきます。
こうしたリスクを減らし、従業員が心身共に健康な状態で働ける環境を維持するためにも残業対策が必要です。
1-4. 適正な勤怠管理をするため
残業対策が適切にできていないと、サービス残業の常態化やタイムカード打刻後に仕事をするなど、隠れ残業が横行しやすいです。
サービス残業は勤怠管理が正確になされていないことに問題があるほか、残業代未払いという大きな問題もはらんでいます。これは従業員による訴訟を起こされるリスクがあるほか、従業員が労基署へ相談すると臨検監督が入る場合もあり、企業の社会的信用を損なう可能性があるため、注意が必要です。
また、隠れ残業は前述した従業員の健康を守るという観点からもなくさなくてはなりません。適正な勤怠管理で企業の健全性を守るためにも、残業対策が求められます。
【関連記事】残業代はタイムカードの打刻通りに支払おう!労働時間の把握が企業の義務
2.残業が減らない原因


残業対策を有効的に講じるためにも、自社の残業が減らない原因を把握しておくことが必要です。ここでは、残業が減らない主な原因を3つご紹介します。
2-1. 業務分担ができていない
残業が減らない原因の一つに、特定の人に業務が偏っているケースが挙げられます。いわゆる「属人化」という状態です。属人化は、多忙のため教育や育成に時間が回らない、本人が業務を抱え込んでしまっていることなどが理由として想定できます。
属人化を放置していると、担当者の残業はますます増える一方です。特定の人に業務が集中しないように、業務の標準化やマニュアルの整備を早急におこなっていく必要があります。
2-2. 退勤しづらい雰囲気がある
日本の企業の中には「遅くまで残業していることが偉い」という風潮が、未だに残っているところも少なくありません。特に、上司が遅くまで残っていたりすると、部下である自分たちが先に退社するのは後ろめたいという気持ちもあるでしょう。
いつまでも退勤しづらい雰囲気があると、残業は一向に減りません。上司が声かけして退勤を促す、トップダウンで残業対策をするなど、退勤しやすい環境づくりが重要です。
2-3. 残業代を稼ぎたい
残業代を得るため、意図的に残っている従業員も中にはいます。生活のために残業代を稼ぐ行為を「生活残業」と言います。この生活残業は、残業ありきで従業員の生活が成り立っていることで発生するため、まずは「残業をしないことが当たり前」であることを周知する必要があります。
また、残業の管理が従業員任せになっていると、自由に生活残業ができてしまいます。業務がないのにだらだらと残ることや、不要な残業がしやすくなるため、残業対策と勤怠管理の徹底を同時におこない、残業を許可制にするなどの対策が求められます。
3. 残業対策の方法5つ


残業対策を成功させるには、経営トップが強い意思を持ち、経営トップ主導で残業削減を推進することが重要です。無理のない目標を段階的に設けながら、次の5つのポイントを改善していきましょう。
3-1. 残業に対する意識の改革
ただ残業削減に向けた取り組みを施すだけでは、成果を上げることは難しいでしょう。まずは管理職や従業員が「不要な残業」に対する理解や意識を高めることが大切です。
特に管理監督者は、自らの役割や働き方を見直すことが大切です。
管理職の仕事はチームが最大限の成果を上げられるよう、部下を束ねることです。そのなかには、部下が仕事をしやすい環境を作り上げることも含まれます。
管理監督者自身ができるだけ定時で帰る、年次有給休暇を積極的に取得するといった働き方を続けていれば、部下にも「仕事は定時で終わらせるもの」という意識が広がっていくでしょう。
評価制度を見直すことも効果的
評価制度を整えて残業しない人に賞与を出すことで、残業時間の削減によって減った分の残業手当を還元することが可能です。残業申請のルールをきちんと明文化し、従業員に浸透させることができると、無駄な残業を削減することが期待できます。
残業申請の方法の見直しと同時に、社内で「定時内にきっちり業務を終わらせて長時間残業をしない」という風潮を作ることで、残業抑制にもつながるでしょう。
さらに、管理監督者や管理職の人事考課の項目に、残業対策や勤怠管理を盛り込むのも効果的です。残業が少ないことや、適切に勤怠管理がおこなわれていることを評価すれば、意識も大きく変わるでしょう。
3-2. 労働時間制度や管理体制の見直し
繁忙期と閑散期で稼働率に差がある業種では、変形労働時間制やフレックスタイム制の導入を考えましょう。
月単位や年単位で労働時間を調整することで残業代削減につながります。ほかにも残業を申請制にしたり、勤怠管理システムを導入することなどで残業対策ができます。
残業の事前申請制度の導入
「いつ・どれくらい残業するのか」をすべて従業員の意思に委ねる体制では、ムダな残業を減らしていくことは困難でしょう。
そこで有効なのが、残業の事前申請制度です。定められた申請書に、従業員自身が残業の時間や業務内容、残業の必要性を記載して上司に提出し、上司が申請内容を確認・許可したうえで残業をするという仕組みです。
従業員は時間管理を意識的におこなうことで、管理者は一人従業員ひとりの時間外労働状況を細かく把握できるでしょう。
ノー残業デーの導入
「特定の曜日は残業をしない」とルール化するノー残業デーの導入も、残業の事前申請制度と合わせてよく見かける取り組みです。従業員の中には他の人が残っている手前、自分だけが退勤しづらいと感じている人も少なくありません。ノー残業デーを取り入れることで、退勤しやすい環境づくりを推進できます。
ノー残業デーを実施するにあたっては、ノー残業デー当日の朝礼で上長が声かけする、終業時間がきたらPCをシャットダウンするなど、形だけのルールとならないよう適切な運用が必要です。
また、ノー残業デーを一律ではなく、個々の自由に設定できる方法も有効です。人によって業務の進捗度合いが異なるため、無理のない適切なタイミングでノー残業デーを取り入れられるメリットがあります。
勤怠管理システムの導入
労働時間の管理体制を見直すことも重要です。各部署や従業員それぞれの勤怠状況や実績をリアルタイムで確認するためには、就業管理システムの導入がおすすめです。法定労働時間の上限に近づいたときにはアラートが表示されるなど、残業状況の可視化も可能です。可視化させることで、残業が増えた原因や残業時間を調整するための話し合いにつながり、残業削減への意識がより高まります。
また、残業が超過してしまう主な理由である、「月単位の集計時などでしか残業時間数がわからない」ということを防ぐことも可能です。
当サイトでは、それらの機能を搭載した勤怠管理システムである「ジンジャー勤怠」を参考に、システムでどのように残業対策するか管理画面の画像付きで解説した資料を無料で配布しております。システムの導入により残業への意識が変わりそうだと感じた方は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
3-3. 最適な人材配置や労働の平準化
部署ごとに時期的な業務量の偏りや属人化している業務があると、一部の従業員に長時間労働が集中してしまうことがあります。
この問題は、多能工社員を増やすことで業務を平準化したり、マニュアルを作成して誰でも業務ができるようにすることで解消しやすくなります。多能工従業員は日常的な業務ローテーションによって計画的に育成していきましょう。
各部署に必要な技術や資格、能力などを明確にし、適材適所の人材配置をおこなうことでも業務を効率化できます。
3-4. IT化による業務効率化
オンラインストレージを導入することで書類の作成・管理や資料の共有などをペーパーレス化し、業務の効率化を図ることも残業対策になります。昨今ではRPAの導入による定型作業の自動化なども注目されています。
この他にも、業務効率の向上に役立つITツールには次のようなものもあります。
- 営業支援システム(SFA)
- WEB会議システム
- タレントマネジメントシステム
- ワークフローシステム など
まずは自社の業務でIT化できるものは何があるか、洗い出ししてみると良いでしょう。
【関連記事】残業削減対策の具体的な方法・対策と期待できる効果について解説
3-5. 残業削減への意識を高める
長時間労働の要因として、管理職の意識の低さやマネジメント不足が要因として挙げられます。
具体的には、労働時間が長い従業員を高く評価したり、優秀な人材に仕事量が偏ったりなど、管理者層やリーダーのマネジメント不足が長時間労働を引き起こす原因となっています。そのため、管理側と現場の従業員がともに協力しながら残業削減に向けて取り組んでいくことが大切です。
さらに、企業文化として「残業がよい」という価値観を見直し、定時で業務を終えることが評価される風土を醸成する必要があります。これは、管理職が自ら率先して定時に帰ることで、部下にもその流れが伝わります。また、業務プロセスの簡素化や効率化を図ることで、業務の負担を軽減し、残業を減らす効果が期待できます。
さらに、タスクの優先順位を明確にし、チーム全体で業務を見直すことで、適切なスケジュール管理がされ、結果として残業の削減につながります。このような取り組みを通じて、労働環境を改善し、働きやすい職場作りを実現することが可能です。
4. 時間外労働の上限規制について


日本の少子高齢化による働き手の減少や働き方に対するニーズの多様化に対応するため、生産効率の向上や労働時間の短縮化は大きな課題となっています。
働き方改革関連法により、大企業は2019年4月、中小企業は2020年4月から、時間外労働の上限規制の導入が義務付けられました。
これは過度な長期間労働を規制することで従業員のワーク・ライフ・バランスを改善し、長時間労働によるうつ病や過労死を防ぐことを目的としています。
これまで、時間外労働の上限は厚生労働大臣の告示により定められていました。
また、臨時的で特別な事情があり、36協定の特別条項によって労使間での合意があった場合には、年6ヵ月までは上限なしの時間外労働が可能でした。
しかし、この法改正によって時間外労働の上限は月に45時間・年360時間が原則となり、特別条項がない場合はこれを厳守しなければならなくなりました。
特別条項があったとしても、以下の上限が定められています。
- 年720時間以内
- 月100時間未満(休日出勤を含む)
- 2~6ヶ月の平均80時間以内(休日出勤を含む)
- 45時間を超えられるのは年6ヶ月まで
違反した場合は、罰則として6ヶ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が課される可能性があります。法律上の観点からも、長時間労働の是正対策は企業が継続的に取り組まなければなりません。
【関連記事】働き方改革で残業時間の上限規制はどう変わった?わかりやすく解説!
5. 残業対策の具体的な事例


さまざまな企業で残業対策がおこなわれ、成果を上げる企業も多くでてきています。ここでは、長時間労働の削減に成功した企業の好事例を4つ紹介します。
5-1. 商社:朝方勤務と申請制度の導入
ある商社では、9時から17時15分の所定労働時間を基本とした「朝方勤務」を残業対策として導入しました。20時から22時の労働を原則禁止、22時以降の深夜勤務は禁止とし、20時〜22時の残業がやむを得ない場合は事前申請が必要です。
推進している5時から8時の早朝時間勤務には、深夜勤務と同じ50%(※管理監督者は25%)の割増賃金を支給しています。また、8時前に出勤した従業員には朝食が無料で配布されます。
結果、20時以降に退社する従業員は導入前の30%から7%になり、時間外労働勤務時間が大幅に削減されました。
5-2. システム会社:意識改革と業務改善
某システム会社では、働き方改革として2013年から独自の取り組みを実施し、従業員の意識改革や業務改善を定着化させ、働きやすい職場作りを目指しています。
具体的な施策としては、浮いた残業代を従業員に還元するインセンティブ制度の導入(2014年まで)、月80時間以上の残業は社長の承認が必要な長時間労働の是正による残業対策です。
そのほか、フレックスタイム制の適用、ノー残業デーの推進、17時以降の会議の禁止など、さまざまな取り組みをおこなっています。結果、2008年当時は35時間だった月間平均残業時間が、2016年には17.8時間にまで減少しました。
5-3.建設業:労働時間の適正管理を評価項目に起用
サービス残業の増加が問題だった建設業の取り組み事例です。従業員へヒアリングを実施したところ、残業を正しく申請すると評価に影響が及ぶと感じ、過少申請となっていたことが分かりました。
そこで、労働時間を適切に管理することを人事考課にくわえ、管理者からも従業員へ正しく残業時間の申請をおこなうことを継続的に指導しています。また、勤怠を管理する専任者を配置し、労働時間に乖離がないか逐一チェックし、サービス残業撲滅の推進を図っています。
5-4. その他の事業:残業申請がないPCは強制的にシャットダウン
勤怠管理システムを使って労働時間を管理していた某企業では、退勤の打刻後にパソコンの使用履歴が残されていたことが分かり、労働時間を適切に管理するための対策に乗り出しました。
まずは、全従業員に残業する際は必ず申請するように指導し、それでも改善されない場合は、該当の従業員に直接面談をおこなうなどして、事前に残業理由を明確にするよう徹底させています。
くわえて、残業申請のない従業員のパソコンは退勤時間後に、強制的にシャットダウンされる仕組みを構築し、残業時間の適切な管理を実現しました。
このほかにも厚生労働省によって「時間外労働削減の好事例集」が掲載されています。さまざまな企業の取り組みを見て、自社に適した残業対策をしていきましょう。
関連記事:ノー残業デーを導入するメリット・デメリットと継続のコツ
6. 残業対策の成功の鍵は「残業の原因」を突き止めて対策すること


「時間を削る」ことばかりに焦点を当てた施策では、残業対策は成功しません。従業員の意識改革や労働体制の見直し、業務上の負荷や非効率を排除することで、「残業の原因」をつぶしていくことが重要です。
さまざまな残業対策からどれを導入するかは、企業の業種や規模によって変わります。他企業の成功事例などを参考に、自社にあった取り組みをしていきましょう。
【関連記事】残業時間の定義とは?正しい知識で思わぬトラブルを回避!
【関連記事】勤怠管理をペーパーレス化するには?電子化のメリット・デメリットも解説



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