派遣社員の残業時間上限は何時間?法律で決められているルールをご紹介
更新日: 2024.5.8
公開日: 2020.7.17
OHSUGI
2020年4月1日から、企業規模に関わらず、働き方改革関連法が適用されるようになりました。そのため、多くの企業で労働時間管理の見直しや是正、改革がおこなわれています。
多くの従業員の人事管理を担当する人事担当者は、一つの企業で働く正社員と異なり、派遣会社から派遣されてくる従業員に対して、今回おこなわれた法改正はどのように適用されるのかという点が気になる方もいらっしゃるのではないのでしょうか。
そのような疑問点を解決すべく、本記事では、派遣社員と残業時間について解説します。
【関連記事】働き方改革による残業規制の最新情報!上限や違反した際の罰則を解説
この記事を読まれている方は、「法改正によって定められた残業時間の上限規制を確認しておきたい」という方が多いでしょう。
そのような方のため、いつでも残業時間の上限規制を確認でき、上限規制を超えないための残業管理方法も紹介した資料を無料で配布しております。
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目次
1. 派遣社員の残業時間の上限は何時間?
派遣社員の場合であっても、労働時間の扱いに関して正社員と同様になります。そのため、36協定を締結している場合は、「月45時間、年360時間」の残業上限が適用されます。派遣社員だけでなく、アルバイトやパート従業員にも適用されるため気をつけましょう。
1-1. 36協定は派遣元企業で締結する
派遣社員は派遣先の企業で正社員と同様の業務をおこなう、という認識から36協定も派遣先企業で締結すると思われることがありますが、これは誤りです。派遣社員に残業を依頼する際は、派遣元で36協定を締結しているかどうか確認する必要があります。
また、派遣先企業がフレックスタイム制や変形労働時間制を採用している場合は、派遣元企業はその旨を就業規則に記載しておかなくてはいけません。もし、派遣元企業の就業規則にフレックスタイム制や変形労働時間制に関して記載がなかった場合は、派遣社員は定時制が設けられている企業限定で、従業員を派遣することが可能です。
2019年4月、働き方改革関連法が施行された当初、法律の適用範囲は大企業のみでした。そのため、『派遣元が中小企業であったが、派遣先が大企業であった場合、どちらの就業規則に従うべきかわからない』という声が上がっていました。
しかし、現在は法律の適用範囲が中小企業にも広げられたため、残業時間をはじめとした労働時間管理の方法は大企業・中小企業関係なく統一化されています。
当サイトでは、上記の働き方改革関連法の施行前後で、どのように変化したのかを解説した資料を無料で配布しております。また、本資料の内容は、残業の定義から残業管理に関する課題、その解決法までを幅広く解説しておりますので、残業に関して知識を深めたい担当の方はこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1-2. 派遣先は派遣社員に残業を命令できる?
派遣社員は派遣元と雇用契約を結ぶため、派遣先の企業が派遣社員に残業を命じたい場合は、派遣元との雇用契約に基づく必要があります。
具体的には、派遣社員と派遣元企業で結んでいる雇用契約書に残業をさせない旨が記載されていたり、労働条件通知書に残業時間に関する記載がない場合は残業をさせることができません。
ただし、雇用契約書や労働条件通知書に残業がある旨が記載されていても、無制限に働かせたり自社の規則にそって残業を命じることはできず、必ず派遣元と派遣社員が結んだ雇用契約や派遣元の36協定に記載されている上限時間に残業がおさまるようにしなくてはいけません。
1-3. 派遣先を掛け持つ場合は残業時間をどのように考える?
派遣先を掛け持つ場合は、2つの企業の労働時間を通算として上限を考えることになります。
《派遣先を2社掛け持っているAさんの場合》
・Aさんは1日あたり、B社で5時間働き、C社で5時間勤務している
→この場合、1日あたりの総労働時間は10時間となります。しかし、法定労働時間は8時間と定められているため、残業時間は2時間になります。
関連記事:派遣社員の勤怠管理にも必要!タイムカードの保管期間とは?
2. 派遣社員の残業時間の上限に関するルールを覚えておこう
前述の通り、正社員同様、派遣社員も36協定を締結することで、残業時間の上限を月45時間、年360時間の上限が適用されます。また、働き方改革関連法が施行されたタイミングで、36協定の内容も改定されたため、変更内容を解説していきます。
2-1. 特別条項付き36協定に残業時間の上限が設けられた
派遣社員・正社員など雇用形態にかかわらず、36協定を結んだ場合の残業時間の上限は月45時間、年360時間以内です。
しかし、繁忙期や決算の時期など、どうしても残業時間の上限を超えてしまう場合は、前もって特別条項付き36協定を結んでおくことで、残業時間の上限を伸ばすことができます。
特別条項を結んだ場合の残業時間の上限は月100時間未満、年720時間以内です。正社員でも派遣社員でもこの上限時間に変わりはなく、これよりも残業時間が超過した場合は、法律違反となります。
また、この他にも特別条項の残業時間には、「月45時間を超えられるのは、年に6ヶ月まで」「2~6ヶ月ごとの時間外労働時間の平均が80時間を超えてはならない」といった規制が設けられています。ここまでで「何時間までなら残業しても違法ではないのか」という上限は理解したと思いますが、残業時間の正しい計算ができなければ意味がありません。そこで当サイトでは、残業時間の正しい考え方と法改正でどのように上限規制が変わったのかをまとめた資料を無料で配布しております。自社の残業時間の管理が正しいか不安な人事担当者は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
関連記事:36協定における残業時間の上限を基本からわかりやすく解説!
2-2. 36協定に法的拘束力が生まれ、違反した場合の罰則が設けられた
36協定は働き方改革による法改正以前から存在していましたが、法的拘束力はありませんでした。
また、改正以前は特別条項を結んだ場合、残業時間の上限がなかったため、会社が自由に残業できる時間を決めることができました。その結果、長時間労働が常態化してしまい、過労死や心身の健康を損なう労働者が多発したのです。
そのため、今回の労働基準法改正では36協定に法的拘束力をもたせています。36協定を結ばずに時間外労働をおこなわせた、もしくは残業の上限時間を超えた場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則が設けられました。
違反した場合は従業員一人につき一罪とされ、たとえ派遣社員であっても上限規制を超えて残業させることはできません。
関連記事:働き方改革で残業時間の上限規制はどう変わった?わかりやすく解説!
3. 派遣社員に残業代を支給するときの計算方法
最後に、派遣社員が残業をおこなった場合の給与計算の方法を確認しておきましょう。
残業手当の計算式は「1時間あたりの基礎賃金 × 残業時間 × 1.25(時間外労働に対する割増率)」です。派遣社員の給与は時給制であることがほとんどなため、「1時間あたりの基礎賃金」には時給を使えば問題ありません。
なお、残業時間とは法定労働時間を超えて働かせた時間であるため、所定労働時間を超えていても、法定労働時間内であれば割増率をかける必要はありません。
例えば、時給1,500円で所定労働時間が6時間の派遣社員が9時間働いた場合、その日の給与計算は以下のとおりです。
(6時間+2時間)×1,500円+1時間×1,500円×1.25=12,000円+1,875円=13,875円
関連記事:残業による割増率の考え方と残業代の計算方法をわかりやすく解説
4. 派遣社員の残業時間は派遣先で適切に管理する必要がある
派遣社員の残業については派遣元の36協定や雇用条件に従う必要がありますが、残業時間の管理については派遣先が責任を負うため、勤怠管理システムなど活用して適切に管理しなくてはいけません。
万が一、残業時間の上限規制を超えるなど労働基準法に違反した場合は、派遣元ではなく派遣先に罰則が科せられます。残業に関する責任の所在はよく混同されがちですが、「残業時間に関する36協定の締結・届け出は派遣元」「残業時間の管理は派遣先」という風に覚えておくと良いでしょう。
5. 派遣社員は正社員の残業時間の上限と同じ
派遣社員は、職場が変わることが多いため、労働時間管理の基準が派遣元企業、派遣先企業のどちらになるのか曖昧になりがちです。しかし、労働時間は従業員の給与に直結することはもちろん、ずさんな管理をしていると、社会的信頼を失ってしまうことも考えられます。
これを機に自社の管理方法が法律に抵触していないか確認されてみるのはいかがでしょうか。
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