時短勤務者の有給付与について企業が知っておくべきこと
更新日: 2024.9.24
公開日: 2021.11.12
OHSUGI
時短勤務における有給付与については、どのような扱いにすればよいかわからないという人事担当者の方も多いのではないでしょうか。
働き方改革の意識が強まるにつれ、時短勤務制度は今後さらに広く活用されることが予想されます。そのため、従業員が安心して時短勤務制度を活用できるよう、企業も理解を深めておくことが重要です。
この記事では、「時短勤務者の有給付与日数は?」「有給1日あたりの賃金は?」「そもそも時短勤務で有給は発生する?」「何時間勤務すれば有給が発生する?」など、企業が知っておくべき時短勤務者の有給付与ルールを分かりやすく解説します。
▼時短勤務についてより詳しく知りたい方はこちら
時短勤務とは?導入するための手順と問題点を解説
目次
「社内で時短勤務をした例が少ないので、勤怠管理や給与計算でどのような対応が必要か理解できていない」とお悩みではありませんか?
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1. 時短勤務制度とは
時短勤務制度とは、特定の条件を満たしている従業員が労働時間を短縮したり残業免除の申請をしたりできる制度です。
時短勤務者の有給休暇について理解するためには、まず時短勤務制度の内容をしっかり把握しておくことが求められるので、ここでは時短勤務制度の概要を解説していきます。
1-1. 所定労働時間の短縮や残業の免除が認められる
育児・介護休業法が定める時短勤務制度とは、育児が必要な子供や要介護者の家族を抱える従業員に対し所定労働時間の短縮や残業の免除を認める取り組みのことです。要件を満たした従業員が時短勤務を申請した場合、事業主は該当従業員の1日の所定労働時間を「原則6時間」に短縮しなければなりません。
なお、契約上の所定労働時間を変更せずとも実態として労働時間が短縮されていれば制度を実施しているとみなされます。
ただし、その場合は本記事のテーマである「有給休暇」について混乱を招く恐れがあるため、扱いを明確にするためにも時短勤務時の所定労働時間を就業規則で定めておきましょう。
1-2. 時短勤務時の給料計算方法
時短勤務時の給料は労働時間の短縮に応じた減額が可能です。これは給料計算の「ノーワーク・ノーペイの原則」に則るものであり、違法ではありません。ただし、必要以上に多く減額することは従業員の不利益に該当するため禁止されています。
時短勤務時における給料の計算式は以下の通りです。
時短勤務時の給料=基本給×時短勤務の所定労働時間÷通常の所定労働時間
通常の所定労働時間が8時間、時短勤務時の所定労働時間が6時間である場合、労働時間は25%短縮されます。給料も同じく25%以内の減額であれば違法性はありません。これは後述する有給休暇の賃金でも同様のため覚えておきましょう。
関連記事:時短勤務時の給料はどうなる?知っておきたい減額率の考え方
2. 時短勤務者の有給付与日数の考え方
時短勤務者であっても、法令で定められる要件を満たしている場合は有給付与が必要です。
ここでは有給付与の対象となる従業員の要件と、時短勤務者に対する有給付与日数の考え方を解説します。
関連記事:有給休暇の付与日数はこれで完璧!考え方・仕組みをわかりやすく解説
2-1. 有給付与の要件
有給付与の対象なる従業員の要件は以下の通りです。
【新規採用の従業員の場合】
- 雇入れ日から起算して6ヵ月以上勤続していること
- 雇入れ日から6ヵ月間の全労働日数の8割以上出勤していること
【雇入れ日から6ヵ月以上経過した従業員の場合】
- 1年間(※)の全労働日数の8割以上出勤していること。
※雇入れ日から6ヵ月経過した日を毎年の区間の起算日とする。
有給休暇の付与対象か否かの判断には雇用区分や1日の所定労働時間は考慮されません。そのため、時短勤務者はもちろん、パートタイマーやアルバイトも有給付与の対象です。ただし、週5日勤務する場合と週4日以下で勤務する場合では有給付与日数の算出方法が異なるので注意しましょう。
2-2. 週5日勤務であれば通常正社員と同日数を付与
週5日間勤務する時短勤務者に対しては、通常勤務の従業員と同じ日数を付与しますが、付与日数は勤続年数によって異なります。
法令で定められる、勤続年数ごとの有給付与日数は以下の通りです。
勤続年数(年) | 付与日数(日) |
0.5 | 10 |
1.5 | 11 |
2.5 | 12 |
3.5 | 14 |
4.5 | 16 |
5.5 | 18 |
6.5以上 | 20 |
2-3. 週4日以下30時間未満の勤務では比例付与
週の所定労働日数が4日以下かつ週の所定労働時間が30時間未満の時短勤務者は、パートタイマーやアルバイトと同様に出勤頻度に応じた比例付与をおこないます。
出勤日数・勤務時間に応じた有給付与日数は以下の通りです。
– | 週所定労働日数 | 1年間の所定労働日数 | 継続勤続年数(年) | ||||||
0.5 | 1.5以上 | 2.5以上 | 3.5以上 | 4.5以上 | 5.5以上 | 6.5以上 | |||
付与日数 | 4日 | 169日~216日 | 7 | 8 | 9 | 10 | 12 | 13 | 15 |
3日 | 121日~168日 | 5 | 6 | 6 | 8 | 9 | 10 | 11 | |
2日 | 73日~120日 | 3 | 4 | 4 | 5 | 6 | 6 | 7 | |
1日 | 48日~72日 | 1 | 2 | 2 | 2 | 3 | 3 | 3 |
ここまで解説してきたように、有給付与の要件には所定労働時間は関係ありません。
正しい知識を持っていなければ、「所定労働時間5時間だけだし、有給付与する必要ないのでは?」と勘違いしてしまう可能性も考えられます。
そこで当サイトでは、労働基準法に則った有給休暇の付与ルールを、表を用いてわかりやすくまとめた資料を無料で配布しております。自社の有休付与ルールに問題がないか確認したい方は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
3. 時短勤務者の有給休暇の賃金決定方法
時短勤務者の有給休暇1日あたりの賃金は、給料と同じく所定労働時間に応じて減額する措置が妥当です。
ここでは、時短勤務における有給休暇の賃金決定方法を解説します。
3-1. 有給休暇の賃金の3つの決め方
労働基準法が規定する有給休暇1日あたりの賃金決定方法は以下の3つです。
- 過去3ヵ月間の平均賃金
- 所定労働時間働いた場合の通常賃金
- 上記1、2を基準として厚生労働省が定める額の賃金(標準報酬日額)
事業主は上記の方法から自社の賃金決定方法を選び、就業規則に明記しなければなりません。
3-2. 時短勤務時は所定労働時間に応じて減額する
時短勤務者の有給休暇の賃金は、所定労働時間に応じて減額することが適当とされます。また、法令上、時短勤務における有給休暇の扱いについて明確な規定は存在しません。
しかし、労働基準法第39条9項では、有給休暇の賃金を「平均賃金」もしくは「所定労働時間働いた場合に支払われる賃金」を基準とすることが規定されているため、時短勤務時もこれに倣うべきと考えられます。
つまり、時短勤務時の所定労働時間が6時間である場合は、有給休暇1日当たりの賃金も6時間分に換算することが正しい対応です。
関連記事:有給休暇取得日の賃金計算で知っておきたい3つのポイント
4. 時短勤務者の有給休暇で知っておくべきポイント
最後に時短勤務制度における有給休暇に関して知っておくべきポイントは、2つ挙げられます。
今後は時短勤務制度を利用する従業員も増加することが予想されますので、適切に運用できるよう予め備えておきましょう。
4-1. 所定労働時間と実際の勤務時間が乖離する場合は勤務実態に合わせる
雇用契約上の所定労働時間と時短勤務時で実際に働く時間が乖離している場合、勤務実態に合わせた賃金を支給することが適切な対応です。
企業によっては、雇用契約上の所定労働時間を変更せずに時短勤務を実施しているケースもあります。例えば、所定労働時間は従来通り8時間とし、時短勤務で早く退勤した分は早退扱いとして給与から控除するような方法です。
この場合、所定労働時間を基準に有給休暇の賃金を支給してしまうと、通常の給料との整合性や一般従業員との公平性が保てません。法令違反ではありませんが、労使トラブルに発展する恐れもあります。
無用なトラブルを避けるため、勤務実態に沿った所定労働時間への契約改定も検討しましょう。
4-2. 時間単位の有給休暇の上限は時短勤務に合わせる
時間単位の有給休暇制度を採用している企業の場合、有給の取得上限も時短勤務の緒低労働時間に合わせて考えましょう。
労働基準法が規定する時間単位有給休暇の取得上限は、「年5日以内」です。1日の所定労働時間が8時間の場合、40時間(8時間×5日間)まで時間単位の有給が取得できます。
一方、時短勤務で1日の所定労働時間を6時間とする場合、取得上限は30時間(6時間×5日間)です。
このように、所定労働時間によって取得上限が異なるため、有給休暇の残日数の管理を間違えないようにしましょう。
5. 時短勤務者への有給付与を適切に実施しよう
時短勤務の有給休暇に関しては、特別な取り決めがある訳ではありません。そのため、労働基準法が定める有給休暇の規定に則り、時短勤務権の勤務実態に従って有給休暇を付与しましょう。
ただし、有給休暇の賃金計算に関しては所定労働時間、もしくは勤務実態に従って金額を変更することが求められます。時短勤務者と他の従業員との不公平が生じないよう、適切な賃金を支給しましょう。
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