社会保険料の会社負担割合は?計算方法と注意点を解説
公開日: 2024.7.30 OHSUGI
「社会保険料の会社負担について理解を深めたい」
「社会保険料の会社負担分の計算方法は?」
上記のようにお悩みではありませんか。
社会保険料は従業員と会社で折半して負担します。会社負担分の計算方法を理解して、適切に納付することが重要です。
この記事では、社会保険料の会社負担割合と計算方法、注意点や支払いが難しい場合の対処法を解説しています。人事担当者や経理担当者の方はぜひ参考にしてください。
目次
1. 社会保険料の会社負担割合
社会保険料の負担割合は、以下のようになります。
社会保険の種類 | 会社の負担割合 | 従業員の負担割合 |
健康保険 | 50% | 50% |
厚生年金保険 | 50% | 50% |
介護保険 | 50% | 50% |
雇用保険 | 業種によって異なる | 業種によって異なる |
労災保険 | 100% | 0% |
企業は従業員負担分の保険料を給与から引き、会社が負担する分を加えて納付します。健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料の納付期限は、翌月の末日です。
雇用保険料の納付は1年に1回まとめて納付しますが、従業員負担分は毎月従業員の給与から分割して天引きします。
社会保険料額は、標準報酬月額・標準賞与額をもとに決定されます。
参照:令和6年度の雇用保険料率について|厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク
2. 社会保険料を決める標準報酬月額・標準賞与額とは
標準報酬月額・標準賞与額とは、健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料を計算するために、日本年金機構が定めている報酬の区分です。
標準報酬月額・標準賞与額は、各都道府県によって異なります。確認したい場合には、全国健康保険協会が発表している「健康保険・厚生年金保険の保険料額表」を確認しましょう。
- 標準報酬月額
- 標準賞与額
それぞれの決め方について、詳しく解説していきます。
2-1. 標準報酬月額
標準報酬月額とは、社会保険料の計算がスムーズにおこなえるよう、従業員の報酬(給与や賞与)を一定の範囲ごとに区分したものです。現在の等級は、1等級(88,000円)~32等級(650,000円)に分かれています。
従業員が社会保険に加入する際には、資格取得時の報酬(給与)によって標準月額が決まる仕組みです。
従業員の給与は変動するので、標準報酬月額は毎年9月に従業員の4~6月の報酬金額(給与)で決められます。しかし、2等級以上の大幅な変更があった場合には随時改定をする必要があるでしょう。
2-2. 標準賞与額
標準賞与額とは、賞与の金額によって区分したもので、賞与額の税引前の額から1千円未満の額を切り捨てた金額です。150万円が上限となります。
賞与は、給与以外に年3回以下の回数で支給されるものです。ボーナス・手当など、呼び方は関係ありません。定期的な支給でない場合でも賞与に該当するので注意しましょう。
また年4回以上の支給になる場合には、賞与ではなく給与とみなされるので、標準報酬月額をもとに保険料を算出します。
3. 社会保険料の計算方法
社会保険には、以下の5つの種類があります。
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 介護保険
- 雇用保険
- 労災保険
それぞれの社会保険料の計算方法を解説していきます。
3-1. 健康保険
健康保険料の計算方法は、以下のとおりです。
給与の場合 | 健康保険料=標準報酬月額 × 健康保険料率 | 会社負担:50% |
賞与の場合 | 健康保険料=標準賞与額 × 健康保険料率 | 会社負担:50% |
健康保険料率は、健康保険の種類や事業所のある都道府県によって異なります。健康保険の種類は以下の2つです。
種類 | 従業員数など | 保険料率 |
健康保険組合 | ・常時700人以上の従業員がいる
・同種・同業の事業所が集まり、3,000人以上の従業員がいる |
組合によって異なる |
全国健康保険協会(協会けんぽ) | ・人数にかかわらず、法人は加入義務がある
・適用業種の個人事業主は、常時5人以上の従業員がいる場合に加入義務がある ・上記以外でも条件を満たせば任意適用事業所として加入できる |
事業所がある都道府県によって異なる |
健康保険組合を設立できるのは、大企業または同じ業種の中小企業の集まりです。全国健康保険協会(協会けんぽ)は、健康保険組合を設立できない中小企業が対象となっています。
全国健康保険協会(協会けんぽ)の保険料率を確認したい場合は、全国健康保険協会のホームページで確認してください。
参照:令和6年度保険料額表(令和6年3月から)|全国健康保険協会
3-2. 厚生年金保険
厚生年金料の計算方法は以下のとおりです。
給与の場合 | 厚生年金保険料=標準報酬月額 × 厚生年金保険料率 | 会社負担:50% |
賞与の場合 | 厚生年金保険料=標準賞与額 × 厚生年金保険料率 | 会社負担:50% |
厚生年金保険料料率は、2024年5月時点では18.3%です。具体的な金額は、健康保険料と同じく全国健康保険協会のホームページで確認しましょう。
参照:令和6年度保険料額表(令和6年3月から)|全国健康保険協会
3-3. 介護保険
介護保険料の計算方法は以下のとおりです。
給与の場合 | 介護保険料=標準報酬月額 × 介護保険料率 | 会社負担:50% |
賞与の場合 | 介護保険料=標準賞与額 × 介護保険料率 | 会社負担:50% |
介護保険料率は、加入している健康保険の種類によって異なります。全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合は、都道府県によって異なるので、全国健康保険協会のホームページで確認しましょう。
参照:令和6年度保険料額表(令和6年3月から)|全国健康保険協会
3-4. 雇用保険
雇用保険の計算方法は以下になります。
給与の場合 | 雇用保険料=給与額 × 雇用保険料率 | 会社負担:業種によって異なる |
賞与の場合 | 雇用保険料=賞与額 × 雇用保険料率 | 会社負担:業種によって異なる |
令和6年度時点で、雇用保険料率は以下になります。
業種 | 労働者負担 | 事業主負担 | 雇用保険料率 |
一般の事業 | 6/1,000 | 9.5/1,000 | 15.5/1,000 |
農林水産・清酒製造の事業 | 7/1,000 | 10.5/1,000 | 17.5/1,000 |
建設の事業 | 7/1,000 | 11.5/1,000 | 18.5/1,000 |
雇用保険料率は毎年更新されるため、随時厚生労働省のホームページをチェックしましょう。
3-5. 労災保険
労災保険の計算方法は以下になります。
給与の場合 | 労災保険料=給与額 × 雇用保険料率 | 会社負担:100% |
賞与の場合 | 労災保険料=賞与額 × 雇用保険料率 | 会社負担:100% |
労災保険料率は、業種ごとに異なります。厚生労働省のホームページにて、該当の業種を確認しましょう。
4. 社会保険料を計算する際の2つの注意点
社会保険料を計算する際の注意点は以下になります。
- 社会保険が免除される期間がある
- 介護保険は従業員の年齢に注意する
それぞれの注意点を詳しく解説します。
4-1. 社会保険が免除される期間がある
社会保険料を計算する際には、社会保険が免除される期間がある点に注意しましょう。
産前産後や育児休業期間中の方は、経済支援として厚生年金保険料と健康保険料が免除となります。期間中は、従業員本人ならびに会社も保険料を納める必要がありません。
産前産後休業期間とは、産前6週間(多子妊娠の場合は14週間)~産後8週間のうち、出産を理由に労務に従事しなかった期間です。
また育児休業期間は、子どもが3歳になるまでとされています。具体的な期間は、育児休業を開始した月から終了した日の翌日が含まれる月の前月までの期間です。
手続きとして事業主は、「健康保険・厚生年金保険産前産後休業取得者申請書」・「健康保険・厚生年金保険育児休業等取得者申出書」を提出する必要があります。
参照:育児休業、産後パパ育休や介護休業をする方を経済的に支援します|厚生労働省
4-2. 介護保険は従業員の年齢に注意する
介護保険は、従業員の年齢に注意して計算しましょう。
従業員が40歳未満の場合は、介護保険を納める必要がありません。介護保険の被保険者となるのは、40歳の誕生日の前日が属する月からです。
40〜65歳の方は、介護保険の第2号被保険者となり、労使折半で保険料を納入する必要があります。
しかし65歳からは第1号被保険者となり、従業員本人が住んでいる市区町村に介護保険を収めるので、会社が対応する必要はありません。
5. 社会保険料の支払いが難しい場合
社会保険料の支払いが難しい場合には、社会保険の猶予制度、分納制度の利用を検討しましょう。
社会保険料を滞納した場合は督促状が届くだけでなく、延滞金の発生や財産調査、差し押さえなどを受けるリスクが生じます。
会社の社会的な信用も低下し、融資や取引が難しくなることも考えられるでしょう。保険料の支払いが難しい場合には、できるだけ早めに各納付先へ相談しなくてはなりません。何より保険料の滞納を放置しないことが重要です。
6. 社会保険料の会社負担分を把握して保険料を正しく納付しよう
社会保険料には5つの種類があり、それぞれ会社負担分が異なります。計算方法だけでなく、保険料が免除される期間、支払う年齢についても理解する必要があるでしょう。支払いが難しい場合には、各納付先への早めの相談が必須となります。
社会保険の計算は、それぞれの従業員ごとにおこなう必要があるため、かかる労力も大きいです。しかし社会保険料に関する業務は、事業の経営には避けて通れない要素といえます。正しく、適切に対応しましょう。
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