賞与(ボーナス)に社会保険料はかかる?計算方法や注意点を解説
更新日: 2025.5.27
公開日: 2025.2.24
jinjer Blog 編集部
「社会保険料はボーナスにも適用される?」
「計算方法や控除対象外になる場合について詳しく知りたい」
このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
賞与は給与の一部とみなされ社会保険料が課されます。
しかし、計算ミスや制度の理解不足があると、従業員の信頼を損なう可能性があるため注意が必要です。
この記事では、賞与にかかる社会保険料の種類や計算方法、注意点について解説します。
記事を読めば、賞与に関する社会保険料の仕組みを正確に理解し、ミスなく処理できるようになるでしょう。
給与計算業務でミスが起きやすい社会保険料。
保険料率の見直しが毎年あるため、更新をし損ねてしまうと支払いの過不足が生じ、従業員の信頼を損なうことにもつながります。
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1. 賞与(ボーナス)からも社会保険料は控除される
賞与(ボーナス)にも毎月の給与と同様に、社会保険料と所得税が課されます。
なぜなら、賞与も給与の一部と見なされるためです。健康保険料や厚生年金保険料、雇用保険料などの社会保険料が適用され、実際の手取り額は控除後の金額となります。
また、所得税は年間所得に基づいて計算されるため、賞与も課税対象です。
ただし、住民税は賞与から控除されません。住民税は前年の所得に基づいて年間の税額が確定し、毎月の給与からあらかじめ決まった額を控除する仕組みが採用されているためです。
2. 賞与から社会保険料が控除された背景
賞与から社会保険料が控除されるようになったのは「特別保険料」の廃止と「総報酬制」の導入によるものです。
かつて社会保険料は給与からのみ控除され、賞与については「特別保険料」として別途1%が徴収されていました。
しかし、特別保険料は従業員の年金には反映されず、当時の高齢者への年金給付に充てられていたため、不満の声が多かったのです。
また、社会保険料負担を軽減するために給与を減らし、賞与を多くする方法をとる企業も少なくありませんでした。
このような問題を解決するために、2003年4月から給与と賞与を合計した額から計算する「総報酬制」が導入された経緯があります。
総報酬制の導入により、従業員や企業の両者ともに社会保険料負担が増加しましたが、その一方で年金制度全体の安定性が向上しました。
3. 賞与にかかる社会保険料の4つの種類と計算方法
賞与にかかる社会保険料は以下の4種類があります。
- 健康保険料
- 介護保険料
- 厚生年金保険料
- 雇用保険料
それぞれ計算方法や注意点を確認しましょう。
3-1. 健康保険料
健康保険料は事業主と従業員が半分ずつ負担します。計算式は以下のとおりです。
健康保険料 = 標準賞与額 × 健康保険料率 ÷ 2
※標準賞与額:賞与から1,000円未満切り捨てした額 |
健康保険料率は加入する健康保険組合や事業所の所在都道府県により異なります。毎年改定されるため、最新情報を確認することが大切です。
上限金額は、4月1日~3月31日までの年間累計で573万円となります。
3-2. 介護保険料
介護保険料は40歳以上65歳未満の従業員が対象です。介護保険料も、健康保険料と同じく事業主と従業員が折半で負担します。
計算式は以下のとおりです。
介護保険料 = 標準賞与額 × 介護保険料率 ÷ 2
※標準賞与額:賞与から1,000円未満切り捨てした額 |
介護保険料率は全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合全国一律で、2024年度は1.60%となっています。協会けんぽ以外の場合は保険者に確認が必要です。
上限金額は健康保険料と同じく、年間累計で573万円となります。
3-3. 厚生年金保険料
厚生年金保険料も事業主と従業員が半分ずつ負担します。
計算式は以下のとおりです。
厚生年金保険料 = 標準賞与額 × 厚生年金保険料率 ÷ 2
※標準賞与額:賞与から1,000円未満切り捨てした額 |
厚生年金保険料率は18.3%で固定となっています。
上限金額は1ヵ月あたり150万円です。
3-4. 雇用保険料
雇用保険料の計算式は以下のとおりです。
雇用保険料 = 賞与支給額 × 雇用保険料率 |
雇用保険料はほかの社会保険料とは異なり、賞与支給額を基準に計算されます。1,000円未満を切り捨てないことに注意しましょう。
雇用保険料率は業種によって異なります。2024年度の業種ごとの雇用保険料率は以下の通りです。
業種 | 雇用保険料率(合計) | 労働者負担分 | 事業主負担分 |
---|---|---|---|
一般の事業 | 15.5/1,000 | 6/1,000 | 9.5/1,000 |
農林水産・清酒製造 | 17.5/1,000 | 7/1,000 | 10.5/1,000 |
建設の事業 | 18.5/1,000 | 7/1,000 | 11.5/1,000 |
なお、雇用保険料は上限がないため、賞与が高額であるほど控除額が大きくなります。
4. 賞与から社会保険料が控除されないケース
賞与から社会保険料が控除されない主なケースは以下のとおりです。
- 産前産後休業・育児休業中の場合
- 退職する月が賞与支給月の場合
それぞれのケースについて、詳しく解説します。
4-1. 産前産後休業・育児休業中の場合
産前産後休業や育児休業中の従業員は、賞与から社会保険料(雇用保険料を除く)が控除されません。
産前産後休業・育児休業中は、社会保険料免除が適用されるためです。
ただし、雇用保険料と所得税は、産前産後休業・育児休業中に賞与が支給される場合でも控除されます。
また、以下の場合は社会保険料免除の対象外です。
- 育児休業期間が1ヵ月未満の場合
- 育児休業の期間が月末を含まない場合
育児休暇の期間をもとに、社会保険料が控除されるかを確認しましょう。
4-2. 退職する月が賞与支給月の場合
従業員の退職月に賞与を支給する場合、退職日が月末か否かで、社会保険料が控除されるかどうかが決まります。
社会保険料は「月末時点で会社に在籍しているかどうか」で発生が決まる仕組みです。
退職日が月末の場合はその月の社会保険料が発生し、賞与からも控除されます。一方、月の途中で退職した場合はその月の社会保険料は発生しないため、賞与から社会保険料は控除されません。
5. 賞与から社会保険料を控除する際の注意点
賞与から社会保険料を控除する際の注意点は、以下のとおりです。
- 同月に2回以上賞与を支給する場合は支給額を合算する
- 年4回以上賞与を支給する場合は「報酬」として扱われる
各注意点について、詳しく見ていきましょう。
5-1. 同月に2回以上賞与を支給する場合は支給額を合算する
同じ月に賞与を2回以上支給する場合、支給額を合算した金額(標準賞与額)を基に社会保険料を計算します。
社会保険料は賞与ごとではなく、同一月に支給された賞与の合計金額から標準賞与額を算出するルールとなっているためです。
支給額を合算せず別々に計算すると、本来より控除額が少なくなる可能性があるため注意しましょう。
5-2. 年4回以上賞与を支給する場合は「報酬」として扱われる
賞与が年4回以上支給される場合は、社会保険料の計算方法が変わります。年4回以上支給される賞与は、実質的に定期的な給与の一部(報酬)とみなされるためです。
賞与が報酬扱いとなった場合、年間賞与額から1ヵ月あたりの平均額を算出し、月々の給与に加算して社会保険料を計算します。
例えば、年間の賞与額が240万円の場合は、20万円が月々の給与に加算され、標準報酬月額として社会保険料の計算に反映される仕組みです。
従業員は月々の手取り額が減少するため、この仕組みを従業員が理解していないと不満や混乱を招く可能性があります。
賞与を年4回以上支給する場合は、事前に従業員に対して制度変更の内容や影響をしっかり説明し、納得を得ることが重要です。
6. 賞与の社会保険料を理解しミスなく支払いをおこなおう
賞与には健康保険料や介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料などの社会保険料が課されます。正確な計算と処理をおこなうことは、事業主の重要な責任です。
控除額に誤りがあると、従業員からの信頼を損なうだけでなく、事業主にとっても信頼性や運営の透明性に影響を及ぼします。
従業員の信頼を得るためにも、計算方法や注意点を正しく理解し、ミスなく対応することが大切です。
給与計算業務でミスが起きやすい社会保険料。
保険料率の見直しが毎年あるため、更新をし損ねてしまうと支払いの過不足が生じ、従業員の信頼を損なうことにもつながります。
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