労働安全衛生法とは?関連法令との違いや企業の義務をわかりやすく解説
更新日: 2026.9.1 公開日: 2024.12.25 jinjer Blog 編集部

職場における労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境の形成を目的とする法律が「労働安全衛生法」です。人事担当者にとっては、法律の内容を理解し、自社に求められる義務を正しく把握することが重要です。
本記事では、労働安全衛生法の基礎知識をはじめ、実務で混同しやすい「施行令」や「施行規則」との違いを解説します。また、ストレスチェック制度など近年の法改正のポイントや、法令違反があった場合に企業が負うリスクも紹介します。
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1. 労働安全衛生法とは


労働安全衛生法とは、労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とした法律です。
企業には労働災害や健康障害を防止するためのさまざまな措置が義務付けられており、違反した場合には行政指導や罰則の対象となることがあります。
また、労働者にも安全衛生に関するルールを守り、事業者が実施する安全衛生対策に協力するとともに、自ら健康の保持・増進に努めることが求められています。
1-1. 労働安全衛生法の対象者
労働安全衛生法は、原則として事業を営む事業者と、その事業場で働く労働者を対象とする法律です。
ここでいう「労働者」とは、正社員に限らず、契約社員、パートタイマー、アルバイトなど、労働基準法上の労働者に該当する人を指します。
ただし、同居の親族のみを使用する事業または事務所で働く人や、家事使用人は対象外です。
また、個人事業主や業務委託契約で働く者は、原則として労働安全衛生法上の労働者に含まれません。
しかし、2025年5月に成立した改正労働安全衛生法では、個人事業者等(一人親方やフリーランスなど)の安全衛生対策が強化されています。
例えば、建設業や製造業など複数の事業者が同一の作業場所で働く現場では、個人事業者等も含めた労働災害の防止がより重視されるので、改正内容を確認しておくことが重要です。
参考:労働安全衛生法・作業環境測定法等改正の主なポイントについて~令和8(2026)年度から本格的に施行されます~|厚生労働省
関連記事:労働基準法第9条に規定された労働者について詳しく解説
1-2. 【2028年4月施行】ストレスチェックが50人未満の職場でも義務化!
労働安全衛生法改正により、2028年4月からは従業員50人未満の事業場においても、ストレスチェックの実施が義務化されます。
これまでストレスチェックは、常時50人以上の労働者を使用する事業場のみ義務とされ、50人未満の事業場では努力義務でした。
しかし、メンタルヘルス不調の予防や早期発見を目的として制度が見直され、すべての事業場へ対象が拡大されることになりました。
ストレスチェックとは、質問票で労働者のストレスの程度を把握し、自身のストレス状態に気付くための制度です。
高ストレス者から申し出があった場合には面接指導を実施し、必要に応じて就業上の措置を講じることで、メンタルヘルス不調の予防につなげます。対象となる企業は施行に向けて早めに準備を進めることが重要です。
参考:労働安全衛生法及び作業環境測定法改正の主なポイントについて|厚生労働省
関連記事:ストレスチェックとは?必要性・メリット・効果を高める方法を解説
2. 労働安全衛生法と関連法令の違い


実際には労働安全衛生法だけでなく、労働基準法や労働安全衛生法施行令、労働安全衛生規則などの関連法令が一体となって運用されています。
これらの法令にはそれぞれ役割があり、適用範囲や定めている内容が異なります。ここでは、それぞれの違いについて詳しく解説します。
2-1. 労働基準法との違い
労働基準法は「働く条件」を定める法律、労働安全衛生法は「安全で健康に働ける環境」を整えるための法律という違いがあります。
労働基準法は、賃金や労働時間など、労働条件の最低基準を定める法律です。企業はこの基準を下回る条件で労働者を働かせることはできません。
一方、労働安全衛生法は、職場における労働者の安全確保や健康維持を目的としており、安全管理体制の整備や健康診断の実施、危険防止措置などを規定しています。
関連記事:労働基準法とは?法律の要点や人事が必ず押さえたい基本をわかりやすく解説
2-2. 労働安全衛生法施行令との違い
労働安全衛生法施行令は、労働安全衛生法を実施するために必要な具体的事項を定めた政令です。
労働安全衛生法の基本ルールを補うため、労働安全衛生法施行令では対象となる業種や設備、有害物質、機械などを具体的に定めているのです。
例えば、労働安全衛生法第13条では、一定規模の事業場ごとに産業医を選任することを事業者に義務付けています。
一方、労働安全衛生法施行令第5条では、「常時50人以上の労働者を使用する事業場」がその対象であることを具体的に定めています。
2-3. 労働安全衛生規則との違い
労働安全衛生規則は、労働安全衛生法および労働安全衛生法施行令に基づき、事業者が講ずべき具体的な安全衛生措置や手続きなどを定めた厚生労働省令です。
例えば、労働安全衛生規則第13条では、産業医を選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任しなければならないことなど、産業医の選任に関する具体的な手続きを定めています。
なお、労働安全衛生法・労働安全衛生法施行令・労働安全衛生規則は、それぞれ「法律」「政令」「省令」という関係にあり、相互に補完しながら労働者の安全と健康を確保するためのルールを構成しています。
労働安全衛生法施行令や労働安全衛生規則は法律より下位の法令ですが、法律に基づいて制定された法令であり、事業者には遵守義務があります。
3. 労働安全衛生法に基づく企業の主な義務


労働安全衛生法では、企業に対して次のようなさまざまな義務を課しています。
- 安全衛生管理体制の整備
- 危険を防止するための措置
- 安全衛生教育の実施
- 健康診断の実施
- 長時間労働者に対する面接指導の実施
- 労働災害発生時の報告・再発防止対応
これらの義務は、労働災害の防止だけでなく、従業員の心身の健康維持や生産性の向上にもつながる重要な取り組みです。ここでは、企業が特に押さえておきたい主な義務について解説します。
3-1. 安全衛生管理体制の整備(安全管理者や衛生管理者の選任)
企業は事業場の規模や業種などに応じて、安全衛生管理体制を整備しなければなりません。
具体的には、安全管理者や衛生管理者、安全衛生推進者、産業医などを選任し、それぞれの役割に応じて労働者の安全と健康の確保に取り組みます。
必要な管理者を選任しない場合には、職場の危険箇所や健康上の問題を適切に把握できず、安全・健康に関するリスクが高まるおそれがあります。
適切な安全衛生管理体制を構築することで、職場のリスクを継続的に改善し、労働災害や健康障害の未然防止につなげられます。
3-2. 危険を防止するための措置
企業は、機械設備や作業環境などに起因する労働災害を防止するため、必要な安全対策を講じなければなりません。
例えば、機械への安全カバーの設置、高所作業での墜落防止措置、有害物質の適切な管理、保護具の適切な着用の徹底などが挙げられます。また、安全な作業手順を整備し、危険箇所を定期的に点検することも重要です。
職場の危険要因を事前に把握し、リスクを減らすことで、事故や健康被害の発生を防止できます。
3-3. 安全衛生教育の実施
企業は従業員が安全に業務をおこなえるよう、必要な安全衛生教育を実施する義務があります。
特に、新たに雇い入れた従業員や作業内容が変更になった従業員には、担当する業務に応じた安全衛生教育を実施しなければなりません。
教育内容には、機械設備の正しい操作方法や保護具の使用方法、災害発生時の対応などが含まれます。また、危険・有害な業務に従事する場合には、特別教育や技能講習が必要となることもあります。
このような教育や必要に応じた能力向上教育を実施することで、従業員の安全意識や知識・技能の向上につながり、ヒューマンエラーによる労働災害の防止が期待できます。
3-4. 健康診断の実施
企業は従業員の健康を確保し、健康障害を早期に発見・対応するため、健康診断を実施する義務があります。
一般健康診断では雇入時健康診断や定期健康診断などを実施し、有害な業務に従事する労働者に対しては特殊健康診断も実施しなければなりません。
健康診断を実施するだけでなく、その結果を本人へ通知し、異常所見が認められた場合には医師の意見を聴取したうえで、必要に応じた就業上の措置を講じなければなりません。
また、健康診断の結果を適切に活用することは、従業員の健康維持・増進につながるだけでなく、健康経営を推進するうえでも重要です。
関連記事:健康診断は会社の義務!健診内容や項目、結果の扱い、費用負担を徹底解説
3-5. 長時間労働者に対する面接指導の実施
健康障害を防止するため、長時間労働により疲労の蓄積が認められる労働者に対しては、医師による面接指導を実施する必要があります。
例えば、一般の労働者が月80時間を超える時間外労働・休日労働をおこない、疲労の蓄積が認められる従業員から申し出があった場合、企業は医師による面接指導を実施しなければなりません。
近年は長時間労働によるメンタルヘルス不調や過重労働が社会問題となっており、企業には労働時間を適切に管理し、従業員の健康を守る取り組みが求められています。
参考:長時間労働者への医師による面接指導制度について|厚生労働省
関連記事:残業時間によっては産業医面談が義務になる?面談の流れやポイントを解説
3-6. 労働災害発生時の報告・再発防止対応
労働災害が発生した場合、企業は状況に応じて労働基準監督署へ報告をおこなう義務があります。
また、災害の原因を調査・分析し、同様の事故が再び発生しないよう再発防止策を講じることも重要です。具体的には、設備の改善や作業手順の見直し、安全教育の強化などが挙げられます。
労働災害への対応は、法令上の義務を果たすだけでなく、従業員の安全確保や企業の社会的信用を維持するためにも欠かせません。
4. 労働安全衛生法に違反した場合のリスク


ここでは、労働安全衛生法違反による主なリスクと、法令違反を防ぐための実務上のポイントを解説します。
4-1. 行政指導・罰則の内容
労働安全衛生法に違反した場合、労働基準監督署による監督指導や立入検査が実施されることがあります。法令違反が確認された場合には、是正勧告などの行政指導がおこなわれ、改善が求められます。
また、労働者に重大な危険が及ぶおそれがある場合、設備や作業の使用停止などを命じる「使用停止等命令」が出されることもあるでしょう。さらに、労働安全衛生法で罰則が定められている義務に違反した場合には、刑事罰が科されることがあります。
例えば、健康診断を実施しなかった場合は労働安全衛生法第66条に違反し、同法第120条に基づき50万円以下の罰金が科されるおそれがあります。
また、法令違反が原因で労働災害が発生した場合には、安全配慮義務違反が問われ、企業が民事上の損害賠償責任を負う可能性もあるのです。
加えて、法令違反が公表された場合には、取引先や求職者からの信頼低下につながり、採用活動や企業イメージに大きな影響を及ぼすリスクもあるでしょう。
参考:労働安全衛生法第66条、第120条|e-Gov法令検索
関連記事:労働安全衛生法に違反した場合の罰則と違反事例、企業の果たすべき対策を解説
4-2. 法令違反を防ぐための実務上のポイント
労働安全衛生法違反を防ぐためには、法令を正しく理解し、それに基づいた安全衛生管理を継続的に見直すことが重要です。
すべての法令を一度に把握することは容易ではありません。そのため、自社の業種や事業内容に応じて適用される法令を確認し、必要な安全衛生対策を講じることから始めるとよいでしょう。
また、労働安全衛生関係法令は社会情勢などに応じて改正されます。そのため、最新の法改正を定期的に確認し、施行時期も考慮して社内ルールを適切に見直すことが重要です。
さらに、安全衛生活動は現場任せにせず、経営層・管理職・従業員が一体となって取り組むことが大切です。法令遵守を徹底し、継続的に改善を進めることで、労働災害の防止とコンプライアンスの強化につながります。
5. 労働安全衛生法を理解して適切な職場環境を整えよう


企業には、労働安全衛生法に基づき、安全衛生管理体制の整備や健康診断の実施など、さまざまな義務が課されています。適切に義務を履行することは、労働災害の防止はもちろん、従業員が安心して働ける職場環境の実現にもつながります。
一方で、法令違反は罰則だけでなく、企業の信用低下を招くおそれがあります。また、労働安全衛生関係法令は改正されることも少なくないので、最新の情報を継続的に確認し、自社の安全衛生管理体制を定期的に見直すことが大切です。



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