試用期間中も最低賃金法は適用される!支払い対象の手当や注意点を解説
更新日: 2025.7.8 公開日: 2025.7.8 jinjer Blog 編集部
「試用期間中も最低賃金を払わないといけないのか知りたい」
「試用期間の従業員に必要な手当を知りたい」
従業員の採用業務に携わるなかで、上記のような疑問を抱く方もいるのではないでしょうか。
試用期間中であっても最低賃金法は適用されるので、条件によっては手当の支払いも必要になります。知らずに違反すると、企業側に罰則が科されるおそれもあります。
本記事では、試用期間中の賃金や手当の決まり、特例により最低賃金を減額できる場合などを解説します。試用期間中の待遇を決める際の参考にしてください。
雇用契約の基本から、試用期間の運用、契約更新・変更、万が一のトラブル対応まで。人事労務担当者が押さえておくべきポイントを、これ一冊に凝縮しました。
法改正にも対応した最新の情報をQ&A形式でまとめているため、知識の再確認や実務のハンドブックとしてご活用いただけます。
◆押さえておくべきポイント
- 雇用契約の基本(労働条件通知書との違い、口頭契約のリスクなど)
- 試用期間の適切な設定(期間、給与、社会保険の扱い)
- 契約更新・変更時の適切な手続きと従業員への合意形成
- 法的トラブルに発展させないための具体的な解決策
いざという時に慌てないためにも、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 試用期間中も最低賃金法は適用される


使用期間中であっても、最低賃金法により最低賃金が保障されます。原則として、特例を除き最低賃金を下回る給与で働かせることはできません。
以下では最低賃金法や最低賃金額について解説します。
1-1. 最低賃金法とは
最低賃金法は、労働者の生活を経済的に保障し、労働力の質を維持・向上させるために1959年に定められました。
最低賃金法がなければ、企業は一方的に給与を引き下げられるため、労働者がどれほど働いても最低限の生活すら営めない状況に陥りかねません。
最低賃金法によって、すべての労働者は一定額以上の賃金を保障され、経済的に安定した労働環境の実現が図られています。
仮に、最低賃金を下回る給与を支払った場合は法律違反となり、最低賃金との差額に加え、50万円以下の罰金が科されるおそれがあります。
従業員の生活を保障し、企業として法律遵守を徹底するためにも、最低賃金法の重要性を理解しておくことが大切です。
1-2. 最低賃金額
最低賃金額は都道府県ごとに異なり、従業員が実際に働いている事業所の所在地によって適用されます。したがって、事業所が複数の地域にある場合は、各地域の最低賃金額の把握が必要です。
また、最低賃金額は毎年10月に改定され、7月ごろに新しい最低賃金額が発表されます。給与計算ミスを防ぐためにも、毎年必ず最新の最低賃金額をチェックしましょう。
各都道府県の最低賃金額は厚生労働省のホームページで確認できます。
2. 試用期間中も支払い対象になる手当


試用期間中は最低賃金が保障されるだけでなく、以下の手当も支払いの対象となります。
- 時間外手当
- 休日手当
- 深夜手当
- 解雇予告手当
2-1. 時間外手当
試用期間中であっても、法定労働時間を超過する労働があった場合には時間外手当を支給する必要があります。
時間外手当(残業手当)は、従業員が1日8時間、週40時間を超えて働いた場合に支払う手当です。
労働基準法により、超過分には通常の賃金の1.25倍以上の割増賃金を支払います。月60時間を超える時間外労働があった場合は1.5倍以上の賃金が適用されます。
なお、時間外手当は法定労働時間を超えた労働に対して支払うものです。
例えば、所定労働時間が1日6時間の従業員が2時間残業しても、法定労働時間内(8時間以内)であれば割増賃金は発生しません。この場合、企業は通常の賃金を2時間分追加で支払います。
一方、残業が3時間となり、1日の労働時間が8時間を超えた場合には、超過分に対して割増賃金の支払いが必要です。
2-2. 休日手当
法定休日に従業員を働かせた場合、試用期間中であっても休日手当の支払いが必要です。
休日手当とは、法定休日に出勤した従業員に対して支払う手当で、通常の賃金の1.35倍以上の割増賃金を支払う必要があります。
ここでいう「法定休日」とは、労働基準法で週1日以上の付与が義務づけられている休日です。一方、「所定休日」は会社が独自に定めている休日であり、法定休日とは区別されます。
なお、休日手当の対象は法定休日のみで、所定休日は対象になりません。
そのため、例えば土曜日を所定休日、日曜日を法定休日に定めている場合、休日手当の支払い対象となるのは日曜日のみです。
2-3. 深夜手当
22時から翌5時の間に従業員を働かせた場合、試用期間中であっても深夜手当の支払いが必要です。
深夜手当とは、労働基準法で定められた深夜時間帯(22時から翌5時の間)の労働が発生した場合に支払う割増賃金のことで、通常の1.25倍以上が必要です。
例えば、18時から23時まで働かせた場合、18時から22時までは通常の賃金、22時から23時の1時間分は深夜手当として1.25倍以上の賃金を支払う必要があります。
2-4. 解雇予告手当
試用期間中であっても、労働者が14日を超えて働いている場合は、介護の際に解雇予告手当を支払う必要があります。
解雇予告手当とは、30日前までに解雇の予告をおこなわなかった場合に、不足日数分の賃金を支払う制度です。
例えば、一日の平均賃金が1万円の従業員に対し、解雇を10日前に通知した場合、30日−10日=20日分の賃金、すなわち20万円を解雇予告手当として支払う必要があります。
3. 特例により最低賃金を減額できるケース


都道府県労働局長の許可を受けた場合に限り、特例として最低賃金の減額が認められることがあります。
申請対象となる労働者の例は下記のとおりです。
- 精神または身体の障害のため著しく労働能率の低い労働者
- 試用期間中の労働者
- 認定職業訓練中で一定の条件を満たす労働者
- 軽易な業務に従事する労働者
- 断続的労働者
試用期間中の従業員も、特例の対象になり得ますが、減額が認められるのは以下のように合理性がある場合のみです。
- 該当業種・職種の賃金水準が最低賃金と同程度である場合
- 試用期間中に著しく低い賃金を支払う慣行が業界として存在する場合
単に「試用期間中だから」との理由だけでは最低賃金を減額できませんが、合理性を説明できる場合は減額が認められる可能性があります。
最低賃金の減額の特例に関する詳しい条件は、厚生労働省のホームページを参考にしてください。
4. 試用期間中の賃金に関する注意点


試用期間中の賃金に関する注意点は以下のとおりです。
- 最低賃金法に違反すると罰金が課されるおそれがある
- 試用期間中の待遇を明記する
- 従業員に不信感を与えないよう合理性を重視する
4-1. 最低賃金法に違反すると罰金が課されるおそれがある
最低賃金法に違反した場合、雇用形態や労働期間にかかわらず、50万円以下の罰金が科されるおそれがあります。
たとえ試用期間中であっても、都道府県労働局長の特例許可を得ていない限り、最低賃金を下回る賃金を支払うことは違法です。
また、研修期間中で座学のみ、または見学だけであっても、業務に付随する労働とみなされる以上、最低賃金の支払い義務があります。
意図的に違反している場合など、悪質と判断されれば、罰金だけでなく企業の信用低下にもつながります。
事業主の独断で最低賃金未満の賃金を設定することは避け、必ず法令に基づいた対応をおこないましょう。
4-2. 試用期間中の待遇を明記する
試用期間中と本採用後で待遇が異なる場合は、認識の相違による賃金トラブルを防ぐため、求人票や雇用契約書に内容を明記しましょう。
本採用後の待遇のみを記載し、試用期間中の条件に触れていない場合は、情報の不備や虚偽表示とみなされるおそれもあります。
誤解やトラブルを未然に防ぐため、以下の内容は求人票や雇用契約書に含めましょう。
- 試用期間の有無と期間
- 試用期間中の給与や条件
- 本採用後の給与や条件
また、面接時にも待遇に違いがあることを丁寧に説明し、応募者に納得してもらったうえで契約手続きを進めるようにしてください。
4-3. 従業員に不信感を与えないよう合理性を重視する
試用期間中の賃金を本採用より低く設定する場合は、待遇の合理性を従業員にしっかり説明しましょう。
理由の説明がないまま低賃金の試用期間が長引くと、「人件費削減のために意図的に試用期間を延ばしているのでは」と不信感を抱かれるおそれがあります。
従業員に納得してもらうには、「研修用カリキュラムが3ヵ月あるため」など、期間や賃金に対する合理的な根拠が必要です。契約時や面談の場で丁寧に説明することが求められます。
5. 試用期間中の最低賃金を正しく理解してトラブルを防ごう


試用期間中であっても、原則として最低賃金以上の賃金を支払うことが必要です。
最低賃金額は地域ごとに異なり、毎年改定されるため、事業所の所在地ごとに最新の情報をチェックしましょう。
最低賃金法に違反した場合は、最大で50万円以下の罰金が科される可能性があり、企業としての信用にも影響を及ぼします。
試用期間中と本採用後の待遇に差がある場合は、合理的であるか考慮し、求人票や雇用契約書に明記することで、トラブルの未然防止につながります。



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