源泉徴収票の乙欄の意味とは?記載すべき内容や甲欄・丙欄との違いを解説

源泉徴収票は、従業員の1年間の給与収入や納付した税金、控除額などが記載されている書類です。源泉徴収票には乙欄があり、これに〇がある場合は扶養控除等申告書が提出されていないことになります。
この記事では、源泉徴収票の乙欄の意味を理解するため、源泉徴収の仕組みや源泉徴収税額表の甲欄・乙欄・丙欄の違いについて解説します。また、乙欄を使用する場合の年末調整や確定申告の必要性についても紹介します。
目次
令和7年度の税制改正によって、令和7年12月の年末調整から変更が生じます。また、令和7年11月20日に施行された通勤手当の非課税限度額の改正によって、新たに年末調整の対応が必要となるケースもあります。
- 「令和7年分の年末調整で提出する書類は?」
- 「年収の壁の引き上げで年末調整はどう変わった?」
- 「通勤手当の非課税限度額の改正で年末調整が必要になる従業員は?」
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1. 源泉徴収票の乙欄とは?
源泉徴収票の乙欄とは、「扶養控除等申告書」の提出状況や、年末調整が実施されたかどうかを確認するための欄です。乙欄に〇があれば、「扶養控除等申告書」が提出されておらず、年末調整を受けていないことが確認できます。
この乙欄を正しく理解するためには、まず源泉徴収の仕組みを押さえることが重要です。ここでは、源泉徴収の3つの税区分(甲欄・乙欄・丙欄)について詳しく紹介します。
1-1. 源泉徴収は3つの税区分に分かれている
毎月の給与から源泉徴収をおこなう際、「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」を用います。この源泉徴収税額表には甲欄と乙欄があります。ほとんどの従業員が甲欄を使用して計算をおこないますが、特定の条件にあてはまる従業員については乙欄を用いて計算します。
また、賞与(ボーナス)についても源泉徴収が必要であり、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使用して計算をおこないます。この算出率の表についても甲欄と乙欄に区分されています。
さらに、パート・アルバイトや日雇い労働者などのように、週ごとや日ごとに給与が支払われる場合、「給与所得の源泉徴収税額表(日額表)」を使用します。この源泉徴収税額票はほかと異なり、甲欄・乙欄・丙欄の3区分があります。このように、まずは源泉徴収をおこなう際、甲欄・乙欄・丙欄の3区分があることを理解しておきましょう。
1-2. 乙欄は扶養控除等申告書がない場合に適用する
源泉徴収税額票の乙欄は、給与所得者の扶養控除等申告書の提出がない場合に適用されます。扶養控除等申告書は、年末調整の際に必須です。
しかし、2箇所以上の企業で兼業をしているなどの事情を持つ従業員は、複数の企業に対して同時に提出することはできません。
そのため、副業や兼業などで2箇所以上の企業から給与を受け取っており、従たる給与、つまり別の企業に対して給与所得者の扶養控除等申告書を提出している場合には、乙欄を適用することになります。
一般的には、より勤務時間が長い勤務先や給与総額が高くなる勤務先が主たる給与の支払者となります。年末調整をするのも、主たる給与の支払者です。
関連記事:年末調整を2箇所でしてしまったら?ダブルワークの注意点と正しい対処方法を解説
2. 源泉徴収税額表の甲・乙・丙欄の違い


源泉徴収税額票の上部にある甲欄・乙欄・丙欄は区分を示すもので、従業員の雇用状態に応じて最適な区分を選び、源泉徴収をおこなうことが大切です。
多くの場合には甲欄が適用となりますが、乙欄・丙欄を使わなければならないケースもあります。そのため、それぞれの欄についての正しい知識を持っておく必要があります。
ここでは、それぞれの違いや適用の条件について詳しくみていきましょう。
2-1. 源泉徴収税額表の甲欄とは
源泉徴収税額票の甲欄とは、給与所得者の扶養控除等申告書とよばれる書類を提出した従業員に対して適用する税区分です。
扶養控除等申告書を受け取った企業が主たる給与の支払先になり、書類をもとに源泉徴収税額表の甲欄を使って処理をします。
日本国内で給与の支給を受ける人は、原則として扶養控除等の申告をしなければなりません。扶養控除の手続きというと、配偶者や扶養親族がいる場合にのみ適用されるというイメージを持つ方もいますが、源泉控除対象配偶者や扶養親族がいない場合でも、申告自体は必要となります。
この申告がされなかったときには、源泉徴収にあたって受けられるさまざまな控除の対象外となります。さらに、年末調整もできなくなってしまいます。
甲欄に該当する場合にはまず、その従業員の給与所得者の扶養控除等申告書を確認し、扶養家族の人数を確認します。その後、従業員の社会保険料などを除いて実際の給与額を確認します。
続いて、その年の給与所得の源泉徴収税額表の甲欄から、扶養家族の人数に該当する列を見ていきます。さらに、社会保険料等控除後の給与等の金額欄から、給与額をチェックします。それぞれの項目の交わる部分が、源泉徴収額ということになります。
2-2. 源泉徴収税額表の乙欄とは
源泉徴収税額票の乙欄は、給与所得者の扶養控除等申告書の提出がない場合に利用する区分です。
扶養控除等申告書の提出がないケースで多いのは、従業員が期限までに書類を提出しなかった場合です。企業が従業員に対して扶養控除等申告書を配布し忘れたなど、ミスがあった場合に、やむを得ず乙欄が使われることもあります。
また、従業員が副業や兼業をしているときに乙欄を使用するケースもあります。2箇所以上の企業に勤めて給与支払いを受けている人は、原則として、1つの企業(主たる給与の支払者)にしか扶養控除等申告書を提出することはできません。提出しない方の企業(従たる給与の支払者)では、源泉徴収票の乙欄を使って処理をします。
なお、一定の条件に該当する場合、従たる給与の支払者のもとで、配偶者控除や扶養控除を適用することが可能です。そのためには、従たる給与の勤務先に対して、「従たる給与についての扶養控除等申告書」を提出する必要があります。この書類が提出されている場合、毎月(毎日)の乙欄を使った源泉徴収の方法も変わってくるので注意しましょう。
参考:No.2520 2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収|国税庁
2-3. 源泉徴収税額表の丙欄とは
源泉徴収税額表の丙欄は、日額表にのみ設けられています。その給与等が労働した日ごとに支払われる給与等(所得税法第185条第1項第3号)に該当するときは丙欄を使用することになります。
ただし、同じ相手に対して2ヵ月を超えて継続して支払うことになった場合、その超過期間分の給与は労働した日ごとに支払われる給与等にあてはまりません。この場合は、丙欄ではなく甲欄または乙欄を用いて税額を計算します。
3. 源泉徴収票の乙欄に記載する際の注意点


ここでは、源泉徴収票の乙欄に記載をするときや記載があるときの注意点について詳しく紹介します。
3-1. 扶養控除等申告書の提出がなければ年末調整ができない
従業員から扶養控除等申告書の提出がない場合、扶養親族の人数などを把握できないため、源泉徴収をおこなう際は乙欄を使用することになります。また、扶養控除などの控除情報を正しく反映できないので、年末調整を実施することもできません。
扶養控除等申告書の提出期限は、その年に最初の給与が支払われる日の前日(中途入社の場合は、入社後に初めて給与が支払われる日の前日)までです。従業員に書類の重要性を正しく周知し、期限までに提出してもらうようにしましょう。
参考:A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告|国税庁
3-2. 乙欄を使用する場合も社会保険料控除後の給与額で源泉徴収をする
源泉徴収票の乙欄に該当する従業員についても、源泉徴収をおこなう際は、甲欄と同様で社会保険料控除後の給与額で源泉徴収をおこないます。給与額面で税額を計算しないよう注意が必要です。
なお、乙欄の場合、甲欄よりも源泉徴収税額が高く設定されています。そのため、従業員の手取り額に大きな影響を与えます。納め過ぎた源泉徴収税額は年末調整や確定申告により取り戻せますが、不当に手取り額が低くならないよう、正しい期限までに扶養控除等申告書を提出してもらうようにしましょう。
4. 源泉徴収票の乙欄に関連するよくある質問


ここでは、源泉徴収票の乙欄に関連するよくある質問への回答を紹介します。
4-1. 源泉徴収票の乙欄に〇がある場合は確定申告が必要?
源泉徴収票の乙欄に〇が付けられている場合、源泉徴収が乙欄でおこなわれていて、年末調整が済んでいないことになります。確定申告をしない場合、源泉徴収により所得税を納め過ぎている可能性が高いです。
この場合、確定申告をすることで、納付し過ぎた所得税の還付が受けられます。また、確定申告の期限を過ぎたとしても、還付申告の期限に間に合えば、所得税の還付を受けることが可能です。
4-2. 前職の源泉徴収票の乙欄に記載がある場合はどう年末調整をする?
転職によりその年の途中に入社した人の場合、前職の源泉徴収票を提出してもらえば、前職分も含めて年末調整をおこなえます。
しかし、前職の源泉徴収票の乙欄に〇が付けられている(前職において扶養控除等申告書を提出していなかった)場合、前職分を年末調整に含めることはできません。そのため、自社分のみで年末調整を実施します。この場合、その年のすべての収入を含めて所得税を計算できていないので、該当する従業員には確定申告をするよう促しましょう。
5. 甲欄や乙欄の区分を理解して源泉徴収票を正しく作成しよう


源泉徴収票の乙欄とは、扶養控除等申告書が提出されていない場合に〇を付ける欄です。つまり、源泉徴収票の乙欄に〇があれば、源泉徴収税額表の乙欄で源泉徴収がおこなわれていることがわかります。
従業員から扶養控除等申告書の提出がなければ、会社は年末調整をおこなうことができません。また、源泉徴収税額表の乙欄は甲欄よりも、税額が高く設定されています。
そのため、乙欄を使用している場合、所得税を納め過ぎている可能性が高いです。ダブルワークなどにより乙欄を用いて源泉徴収をする場合は、従業員に確定申告の必要性があることを周知してあげましょう。



令和7年度の税制改正によって、令和7年12月の年末調整から変更が生じます。また、令和7年11月20日に施行された通勤手当の非課税限度額の改正によって、新たに年末調整の対応が必要となるケースもあります。
- 「令和7年分の年末調整で提出する書類は?」
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- 「通勤手当の非課税限度額の改正で年末調整が必要になる従業員は?」
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